猫を撮るために散歩しているわけではないが、猫に出会うととても嬉しい。 顔見知りができることも嬉しいけれど、ときには悲しいこともある。 それでも歩いていると、いつの間にか猫の姿を探していたり。 そそくさと逃げる猫。出会った途端に大あくびをする猫。じっと見つめる猫。挨拶してくれる猫。しらんぷりの猫。 どんな猫もみんな、自分に与えられた運命を素直に受け入れ、黙々と生きている。 3年くらい前から撮りためていた写真の中から、110匹をピックアップ。 似ている猫はいるけれど、同じ猫は1匹もいない。 62番さんまではCAMEDIA、IXYで。それ以降は20Dで撮影。 物忘れがひどい今日このごろなのに、出会った時のことをみんな覚えている自分に少しびっくり。 飼い猫はいざ知らず、住む場所を追われるのは野生動物だけではないとしみじみ思う。 勝手に居着いたとはいえ、快適だったかもしれない場所を失った猫たちのその後を思う時も多い。 付かず離れず、さりげない距離をとりながらも人間のいる場所が猫たちの居場所だ。 嫌ってもいい。怒ってもいい。でも、憎むことだけはしてほしくない。 などというセンチメンタリズムは猫たちには無用なものだろう。淡々と、しなやかに、さりげなく生きる。 猫たちが全くいない街を想像してごらん。 なんて味気ない、なんてつまらない、なんて行きたくない街。 ふと空を見上げるように、そこの路地をのぞいてごらん。 さっきからずっとあなたを見ている猫がいるかもしれない。 悩みなどないかのように惰眠をむさぼっているかもしれない。 大きなあくびをした後、顔を洗っているかもしれない。 そして、あなたを待っているかもしれない。
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