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目を大切にしましょう

英語による論文発表で成功するヒント

一部追記:2003年7月1日
一部改定:1999年2月10日
第1版投稿:1999年2月2日

小林健三

 

ここでは,
  1. なぜに学会から日本人は嫌われるか,
  2. なぜ,A氏の発表が褒められたか
  3. なぜ,B氏の発表が褒められたか
  4. コミュニティとは何か?
  5. きちんとした論文の書き方と発表の仕方
  6. 発表の実例(ビデオ)

に付いて,簡単に述べます。OHPの実例などは,後日まとめます。


システムエンジニアたるもの,一度は世界を股にかけて仕事をして,その成果を多数の聴衆を前にして発表したいという希望をお持ちではないでしょうか。ところが,どっこい,筆者が外国の学会のコミュニティのチーフの人たち(Editor-in-Chiefなど)と話をすると,一番彼らが恐れているのは,発表者の中に日本人,韓国人,中国人(本土)が含まれるということなんですね。(云っておきますが,これは人種偏見でも何でもありません。)

その理由は何でしょうか。

  • 学会から日本人などが嫌われる理由

    1. 聴衆が彼らの発表を好きではないから。だから,日本人の発表が有ると知ると,そのセッションの参加者が少なくなるし,聞きに来ても「やっぱり思った通りだ。分からない。」といって,すぐに退席してしまう可能性があるし,周りの人の講演もその影響を受けて,聴衆が集まらない可能性がある。
    2. なぜ好きでないか? それは,日本人の発表の内容が伝統的にさっぱり分からないからである。今までの先達の人たちの責任は重大です。
    3. なぜ分からないか? その1として,丁寧に書いた原稿を抑調も入れないで読むだけで,聴衆が何を期待して,どのような反応を示しているかを感知して,発表の内容を動的に変更してゆかないからである。
    4. なぜ分からないか? その2として,日本人の論文の論旨の進め方が,彼ら欧米人の論理的な考え方に従っていないからである。 飛躍があるのではないですか? それとも,順序立てて,易しいところから解きほぐしてゆかないからではないですか。 何も大上段に構える必要はないと思います。 単に,起承転結をきちんと守った説明をすればいいのです。
    5. 英語力の問題ではないと思います。 インド人の英語は聞きにくいことで有名ですが,彼らの発表は,欧米人には非常に人気があるのです。 分かりやすい!! 自分にやったことを強調して売り込んで説明するから,何が言いたいのか分かりやすい。
    6. きちんと前もって,どういう順序で何を話すのかという,イントロをきちんとOHPに作成し,今,予稿集のどこをしゃべっているかが十分に分かるようにすることが先決です。
    7. 非常に重要な事ですが、自分が「何を聴衆にアピールしようとしているのか」が分かっていないのです。それをきちんと説明しないから、この人は何を言っているのか、何を言いたいのか、全く分からないのです。これが一番重要ではないだろうか。
    8. ちょっと英語の問題も関係しますが,定冠詞 the の使用法が間違っていることが一番の問題です。一番最初に出てくる専門用語でも,機器などの名前でも,決してtheを付けないこと。theが付くのは,世界中で唯一しか存在しないと思われるものにtheを付けるのです。それと,既に説明したものには,堂々とthe machine などとthe 付けないと,聞いている人は分からないのです。I want to explain a methodology....としゃべった後は,the methodology is....と云う風になるのです。ここで未だ,a methodology is ...などとしゃべっていては,また,新しい methodology に付いての説明を始めるのか,と考えるのだが,発表者は既に説明したmethodologyについての説明を続けているつもりですから,お互いに観点が違ってきており,彼らはもうついてゆけないのです。どのmethodologyなんだ,..... と言うことになり,はっきり言って彼らの目が点になるのです。<笑い>
    9. と言うことで,発表の内容が優れている可能性が高いことはみんな認めているのですが,論文抄録自体も,theの問題,起承転結を守らないために論理が追いかけられない,と言う欠点があるので,日本人達の論文,論文発表は,彼らに非常に恐れられ,嫌われているのです。

  • なぜ,A氏の発表が素晴らしいと褒められたのか。

    1. A氏は,生まれて初めて,オーストラリアのワイン生産地で実施された学会で,論文発表をしました。 その前に,彼の怪しげな英語で書いた投稿論文が,査読をパスして論文誌に掲載され,その論文誌を中心とした学会だったので,是非,「俺の論文も新しく出すから採用して欲しい」と頼み,招待論文になりました。 もちろんそのワークショップは100名を越える参加者でにぎわっていましたが,A氏の発表したセッションは30名程度の参加者でした。 みんな何を言っているのかさっぱり分からない状態でしたが,急に,日本からの積極的な研究者が論文を提出してきたので採用した,と紹介されて,30分もしゃべらされました。ほとんど何をしゃべったのか覚えていないそうですが,OHPも何も無しで,きちっと上で述べたような論理を展開し,聴衆の顔を見ながら,質問を随時受け入れ,回答し,「俺の新しい理論は,これこれであり,この理論に従うと,このような現象が発生することが予測される。その予測が正しいかを実地のデータ収集にしたがって調査をした結果,予測とほぼ同じ統計的な検証がなされたので,俺の新しい理論は正しいことが証明された。この新しい理論を用いると,今後はこのような展開が可能であり,学会の発展にこのように寄与するであろう」と述べた,とのこと。
    2. これに対し,主催者であるEditor-in-ChiefやChief of Programme Committeeの皆さんから大歓迎を受けた。 このような発表をしてくれた日本人は始めてである。 実を云うと,おまえの最初の論文は,余りに変わりすぎており,理解を超えたから査読を通して論文集に採用した。実を云うと,今回の発表でやっとおまえの論文の意味が分かった。
    3. この時は,正直言って英語も不十分であったようだし,篠田先生の講義も受講していないから全く無手勝流であったが,とにかく,「自分のやったことを理路整然と話をし,彼らの質問に対し丁寧に回答をして理解を進めながら説明したことが成功の元になったのでは無いでしょうか」と云っています。正直言って,原稿無しで30分も英語でしゃべったのは初めての経験だそうです。それで,ベタ褒めされたのがA氏のその後のつまづきの原因なのかもしれません。

  • なぜ,B氏の発表が素晴らしいと褒められたのか。

    1. それから,10年ほどたって,全然違った仕事をしていたB氏ですが,友人からアメリカでかくかくの学会のワークショップがあるから論文を出さないかと誘いを受けたそうな。まあ,仕事の成果としては特許を10件ほど出していただけあって,内容的には大丈夫なものが書けると思って,OKをした。そして,A4で10ページくらいの論文を作成して,採択されたので,のこのことNapa Valleyまで出掛けていったとのこと。これまたワイン生産地で,暢気に1週間ほどワークショップ。100名ばかりの参加者が,全員集合で,和気相合の中,日本人の参加をEditor-in-Chiefさんや,Chief of Programme Committeeの皆さんは心配そうにB氏の登場を見守っていたそうな。
    2. 今度は20分程度の発表に10分程度の質問が出されるような設定でした。今回はOHPをきちんと作っておりました。(作り方は,後で紹介します。)もちろん,原稿は見ないと豪語。OHPには,大きい文字(18〜24ポイントの文字を使用)でばらばらと書かれてあるだけです。このOHPを中心にして,多少の動詞を追加して,説明したそうな。たとえば,Thank you for the chance to explain my paper. Today, my talk includes these four items....
    3. Background:で論文の背景を述べました。
    4. My proposal:で,自分の方法の提案を述べました。
    5. Merit & Demerit:で,自分の方法での利点と,従来の方法での欠点を比較しました。
    6. Experiment and Results:で,自分の方法での実験の内容と,結果を紹介しました。
    7. Conclusion:で,従来の方法では実現できなかったことが,自分の方法では実現でき,どのようなメリットが得られるかを説明しました。
    8. どんどん質問が発生したとのこと。10分はとうに経過してしまいましたが,議長は全然問題にはしていません。ワークショップは,主に質問と回答で進められる,実験的な課題が中心ですから。質問が出るということは,非常に良い発表であったということです。
    9. これが終わり,Editor-in-Chiefさんや,Chief of Programme Committeeの皆さんから祝福と歓迎の嵐を浴びました。日本人でこんなに素晴らしい発表をした人は始めてであると。是非,我々のコミュニティに参画してくれ,.....これで,A氏とB氏は彼らのコミュニティに加入を許されたわけですね。
    10. これが,A氏とB氏の今も延々と続く彼らとの付き合いの元です。コミュニティとは何か?

  • コミュニティとは何か?

    1. ボランティアを原則とする,「仲良しクラブ」なのです。普通は,欧米人でコミュニティは形成されています。義理で,1〜2名の東洋人(日本人も含む)が入ります。もちろん,他のアジア地域の人も入ります。香港,台湾,シンガポール,インド,マレーシアなどの東洋人は,別勘定でちゃんと入っています。(マレーシアの教授の給料が非常に高いことを御存知ですか。英語がしゃべれて,ちょっと気温が高いことが気にならない人は,一度マレーシアの教授の口を探されてはどうですか。)
    2. 何をやるか? 論文の査読,論文の投稿,良い論文を書く人を探して投稿させること,スポンサーを探すこと。(スポンサーになることはそれほど重要ではない。)そして,必ず,年1回の会合に出席すること。そしてそこで論文の発表もすること。セッションの議長(chair)をすること。
    3. 損得勘定では,良いことは余りありません。でも嬉しいですよ。彼らの仲間に入って,昼食,夕食も彼らの仲間と勘定してくれて声をかけてくれる。「いわゆる,横飯」ですが。贅沢は言っておられません。ワインをたらふく飲んだ後に,バーにも誘われて,ぐでんぐでんになることも,まま,ある。彼らは酒が強い。食事中,飲んでいる最中は研究の話は一切なし。何で話題を持たせるか。ジョークの連続。そして,次回の学会の開催を誰が面倒を見るか,Editor-in-Chiefの交代があるが,誰がその新しい役割にふさわしいか。そんな話ばっかり。普通の学会参加では経験できない。
    4. 通常,メインディナーないし,ディナー付きのツアーがある。その時は,コミュニティの連中は彼らだけが集まり,特別の計らいがあるというもの(1テーブルが割合良い場所にあてがわれるぐらいだが)。これに参画できるのもコミュニティの仲間である特権。絶対に断れない。
    5. だから,B氏は,その後も会社が不景気になって学会参加費用を負担してくれなかった数回分は,渡航費も,宿泊費も,学会参加費も自前で負担し,休暇を取って学会に参加するという彼らの義理を果たしてきました。それを彼らは知っているので,ますます彼らの信頼が厚くなります。お陰で,月あたり数編の査読原稿が回ってきます。そして,首の方は回らないのですね。....金も厳しく,首は回らない。いつものことですが.....。
    6. 誰か,喜捨をしていただける方があれば,喜んで受けますが.....メールをお待ちしております。<笑い>

きちんとした論文の書き方と発表の仕方

さていよいよ本論に入ります。きちんとした論文の書き方,および,きちんとした論文の発表の仕方を説明する必要があります。しかし,もう賢明な読者諸賢は,A氏とB氏がコミュニティに受け入れられた話で,もうそのコツはおわかりでしょう。

  • 彼らの論理に添った論旨で論文を書くこと。

    もうお分かりですね。起承転結ですよ。特許の書き方と何も変わらない。

    1. 従来の方法(背景)(引用,参考文献を十分に検討して背景を書くこと)
    2. 提案する方法(自分の理論ないし,提案,方法)
    3. 期待される効果(自分の提案により得られる効果,メリット)
    4. それの検証(特許では不用かもしれないが)
    5. 実験の実施と,結果
    6. 結論と将来の展開(この論文で全てを網羅することは不可能であろうから,常識的に考えて,これは必ず必要なはず。)
    7. 謝辞(これは必要ですね。)(これから,これを見て論文を書く方は,小林の名前を是非入れて下さい。.....冗談)
    8. 引用,参考文献

  • 論文を書くときは,必ず,MSWordなどのワープロではなく,アウトラインプロセッサと言うソフトウエアを使用すること。エディタも駄目です。<注:アウトラインプロセッサとは,章,節,などに分割され,その内容を表示したり,畳んだりして自由に閲覧が出来,また,章毎,節毎に移動が出来るようなソフトウエアのこと。> 内容が出来てから,初めてレイアウトソフトウエアを使用して,レイアウトする。TeXや,Adobe PageMaker,FrameMakerなどを使用する。図面がどこに入れられるか分からないようなMicroSoftのMSWordなどは間違っても使用しない。

    1. マックには良いソフトウエアが多かったのですがね。たとえば,
      ・More(現在でも使用している。)
      ・Acta 7(今はActa Advantageの名前ででている。)
      ・Voila! (バラ!と発音するのかな)
      ・Persuasion 3.0
      みんなマイクロソフトに潰されてしまった。<涙ぽろぽろ。。。。>
    2. これを用いて,先ず,起承転結に対応する章建てを検討すること。どのようにすれば,敵を説得できるであろうかと真剣に考えること。とにかく,論文というのは,内容はともかく,相手を納得させること,査読委員を納得させることです。
    3. いくら良いことが書かれて,美辞麗句が書かれていても,上記の論理にしたがった内容がなければ,査読委員は採択してくれない。上記の例のように,おまえの論文は何が書いてあるか分からないから,査読を通したなんて言うことは先ず無い。
    4. そして,次は,材料を用意して,埋めることの出来る内容を,章の中に探してゆき,節として設定する。誰でもそうだが,きちんと全部の材料が調っていることは先ず無い。だから,書ける内容を論理展開の中に埋め込んでゆく。
    5. そうすると,不足の部分が出てくるから,これは,「将来の課題」,とか,「一般論ではなく,今回はこの条件で検討する」などと云って逃げることになる。でも,全体の論理がきちんとしているから,この逃げは通用するはず。
    6. そして,例の英語の書き方を見習って,"the","a",などをきちんと分別して文章を埋めていって下さい。一つしかないものは"the" sun,複数あるものは "a" または"one" を付ける,物質は不定冠詞を付けない。
    7. Weとか,Iを主語としない。これは論文では常識。
    8. canは,やれば出来る,と言うことだから,やらないということに通じます。だから,よほどでないかぎり使用しないこと。I did something..... I will do something....,We manufacture this device....現在形は,現在進行していること,毎日毎日実施していることを指します。だから,会社が製造している製品は,We manufacture somethingと言う。We are manufacturing somethingなど進行形では云わない。
    9. on,to,in,uponなどの前置詞はきちんと使用すること。

  • 英語の書き方をマスターすること。これには,このホームページにちゃんと書いてあります。これを参照して下さい。「科学工業英語セミナー」の内容紹介はここをクリック。特に,最初に出てくる名詞,などには,よほど自信がないかぎり,the は付けないで下さい。それと,一度紹介したものをさす場合は,必ず,the を付けて下さい。これをするだけで相当に読みやすくなります。

  • 発表の仕方。

    1. 決して,原稿を読まない。原稿は,忘れたときの神頼みくらいのつもりで,項目だけを書いておく。
    2. 会場の聴衆の顔をじっと見つめてしゃべる。一人10秒以上,きちんと顔を見る。ざっと見るのは効果がない。
    3. そして,OHPに書いてある項目は,きちんとしゃべる。OHPに書いてあるから,聴衆が読んでいると考えないほうが良い。それに,これを棒で指しながら読むほうが,時間が持つし,項目の抜けがない。
    4. ゆっくり,大きい声でしゃべること。そうでなくても,下手な発音だから,相手に分かるように,きちんと丁寧にしゃべること。LとRを間違えないこと。アクセントは,非常に大事です。この2つをきちんとしゃべれば,後は問題ない。「アクセントと,LとRを間違えないこと」これが一番大事。
    5. 聴衆が面白くなさそうな顔をしているからと言って,ジョークなどしゃべる必要はない。しかし,時々,Are you following me? なんてことを云って,聞いてみるのが良い。
    6. どうしても駄目なら,一番最初の起承転結のしゃべる内容を表した項目のOHPを取出し,今,このところをしゃべっているのだが,分かるか? と聞く以外ないだろう。
    7. どうしようが無ければ,話題を変えて,前提などはすっ飛ばし,メリット,結果,結論と,俺がわざわざここに高い金を出してきているのだから,これだけは分かって欲しいということを,別のOHPを作っておいて,これだけはゆっくりとしゃべる。これで十分。
    8. It costed me very expensive to come and explain here. Therefore, I only explain my objective and conclusion again to be understood well by all of you.....The details are written in this paper, if you could understand English.....これは,十分にジョークで通じる。分かった,分かった,おまえの云いたいことは分かった。....と云ってくれるであろう。
    9. ひょっとすると,どんどん質問が飛んでくるかもしれない。そしたら,時間もないので後で指しでやろう,と言うと喜んで1時間ばかり引っ張られること請け合い。

発表の事例:ビデオです。

B氏の,上記のアメリカ,カリフォルニア州,ソモナ郡 Napa Valley で実施されたワークショップでの例を紹介します。(このサイトの管理者小林とは違いますので,お間違いなく)

目を大切にしましょう

ちょっとお休み

Let's have a break.

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