県界

2006年8月3日


 「県界」は、バス停の名の通り、佐賀県と長崎県の県境に位置する。鹿島からのバスは、終点の車内放送が流れるころ、国道を右に外れ狭隘路を下り、やがて小さな入江の集落に着く。エンジン音が切れると、ただ蝉時雨が響いた。 小さな川が流れ、古い橋が架かっている。これが県境。橋を渡り長崎県に入ると、粗末な待合小屋の奥に、真っ赤な長崎県営バスが出発の時を忘れたように眠る。その奥には、長崎本線の築堤が弧を描き、折しも"かもめ"が通過。ひと時静寂を破る。 国道は、入江にアーチを架け、この集落に見向きもしない。約40分の待ち時間、国道に戻り、その橋の上から集落を遠望した。振り返れば、少し霞んだ有明海が広がる。 模型にして残したくなるような構図、まさにここは聖地だ。


佐賀〜長崎〜平戸 乗り継ぎの旅