こんな教室です・秋

 なにを言ってもなにをしても必ず反対の要素もある。近ければおもねり、遠ければ冷たく妬む。
身近なことには興味を持つが自然に生かされていることには私は気がつかない。
そんな中、人の性に説得力のある匂いがある。
「イモー、焼き芋の臭いがする」
毎度の出だしですが沈んでゆく季節の中にハツラツさを醸し出す本能の一つ思い出の一つ食欲。
生物を教えている知人が毎年無農薬で作ってくれる「ありがたきイモー」です。
なにやら今年はもぐらがいたずらをしたそうで数は少ない、けどダンボール箱2つもある。

「さっ今日は終わった人から持って帰って」と言っても兄弟姉妹の多い子は帰るまでに胃袋に収まっている。
年に一度の季節のたよりです。
教室で泣き笑い怒り楽しみ試合のバツゲームでは共に公園を走る、これからも体をいたわり、
明も闇も住む現実の世界に放ってゆく微力、ただそんな気持ちです。

水の底には揺らいだ光の波紋がキラキラとしている。
宮本輝作「泥の川」の終着点の運河の岸辺に立ち人影のある渡し舟がくるのをながめながら
良く言えばこの町は水のベネチアかなぁとキザに思っていると、近づいた渡し舟から
「なにしてんのー」と黄色い声がする。

「んっ、向こうの病院に、お見舞いに行こうと思ってたけどやめた」といって帰り道、話をしていると
「今日おじいちゃん仕事やからはよ帰らなあかんね」と言う、
陽に焼けて節の太くなった指を浮かべながら、たくましいなぁと頭の下がる気持ちになった。

毎日が暮らしの思いをふくんだ日記のような町と教室です。
秋の風が冷たくなる季節より。
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