大常木谷遡行記録と感想

記録係宮内眞裕

大常木谷は、多摩川源流の一つ一ノ瀬渓谷に流れる沢で、
飛竜山(2.069m)と大常木山(1.962m)を源とする沢です。

参加メンバー

リーダー;小池

メンバー;古川、蜷川、伊沢、源水、柳下、高橋(真)、中西(則)、松本、宮内

日程;2001年7月6日(金・夜発)〜7月8日(日)

山域;一ノ瀬川大常木谷

行程;2日間

1日目
テン場7:30→大常木谷入渓地点8:10<→五間ノ滝→千苦ノ滝10:00>→会所小屋跡手前13:00(後発隊着)
焚火開始14:30〜就寝20:00から21:00

2日目
起床5:00、テン場6:30→三ノ瀬10:35→車10:50

 

7月6日(金)

上大岡を22時に出発。中央高速の初狩サービスエリアで、南町田駅集合組と柳下くんと合流し、勝沼インターを経て、奥秩父にある大常木谷を目指す。一ノ瀬川下降点近辺で天幕。

7月7日(土)
仮眠テン場撤収後、7時30分出発。大常木の出合へ向かう。一ノ瀬川への降り口は、すぐに見つかり斜面を下る。事前に調べたイメージとは異なり、しっかりした道だった。降りてから川を下る。8時10分頃、出合に到着。

いよいよ遡行が始まる。メンバーを3つに分けて行動する。

先行は、古川・源水・高橋(真)。2番手、伊沢・柳下・松本。3番手、蜷川・中西(則)・宮内。リーダーは、流浪の人となる予定で出発。

この所の天気のせいか、緩やかなナメを進む。水温も高めで濡れても冷たくない。
五間ノ滝が現れる。釜の右側を伝って、水流の右側を登る。見た目にも足場がしっかりしている。続けて沢に行っていたせいか、簡単に行けてしまった。その後は、いくつかのナメ滝を越え、ゴーロ歩きをすると・・
千苦の滝が現れる。大きな滝だ。当然登れないので、巻き道を行く。左岸の斜面を巻く。途中滑りやすい所があったが、先発隊が巻き道にロープを張り、後続がロープを伝って歩く。楽チンである。今回、ロープ回収を任される。これまでただ付いて行く沢ばかりだったのが、ささやかだが役割を与えられた。何だか嬉しい。笑みがこぼれるのを押さえながら回収。

山女魚淵
幅が狭くなっていて、深さは3〜4m位あるのだろうか。そこには、魚が泳いでいた。山女でしょうか。松本さんは濡れたくないみたいで左岸をトラバースする。ほかは泳いだ。順番に泳ぐ。ヘルメットを被ったまま泳いだ。ヘルメットがずれる。ザックの背が高かったので頭が押さえられて前が良く見えずに苦労した。
泳ぐ時はヘルメットを外してもよかったらしい。「教えてくれればいいのに」と思わず口にすると、小池さんに「そんなものはいちいち教えるもんじゃない!」「自分(小池さん)の動きを見とけと言っただろう」と怒られました。

早川淵
山女魚淵よりこじんまりしていたが、ここも泳ぎ、右岸の岩に上がる。泳ぐのがこんなにも楽しいとは・・

3m滝
釜のある3m滝に着く。胸までつかって滝へ行く。右側を登る。釜の中の流れに引き込まれないように注意する。残置シュリンゲに掴まって体を揚げるのだが位置が低いので腕力に任せていこうとすると登れない。先発隊は難なく登ってしまったようだが、後発隊は、小池さんがもう一本シュリンゲを垂らす。シュリンゲに掴まり、左足を突っ張って、傍の岩に右足を乗せると難なく登れた。松本さんが思ったよりも苦労していた。

不動の滝
下2m上6mの2段の滝である。これを通過すれば、あとはゴーロ歩きのみ。「初めて落ちること無く遡行完了か!」胸高鳴る。下2mは、難なく通過。さて上6mである。正面左側を登る。カラビナにロープを通し、受け渡すロープを肩に背負い、最初に登ることになる。これを登り切れば、一度も落ちないで遡行が完了する予定。1歩、2歩、3歩・・ドボン。「?!?!?!」。あれ?水の中にいる。鼻から水を飲んでしまった。上を見るとビレイしている伊沢さんが見えた。「なぜ、釜の中に?」という顔。後ろから小池さんと蜷川さんが見事な落ち方と笑顔。ロープを引かれ、釜の中を前でなく後ろへ進む。釜から上がると、小池さんが先に行くと言う。「ロープを貸せ」と言われ渡す。登っている後ろ姿を見て、悔しさ込み上げる。

このあとは、ゴーロ帯を歩き、天幕場になりそうな所を探しながら歩く。小屋跡近くに見つける。テントとタープを張り、身に付けたものを乾す。その後は焚火の準備。午後3時ごろからアルコールに浸る。量があっという間に減っていく。夕食の準備をし、おなかの中に入る頃には日が暮れた。
 闇に包まれてきて、焚き火の火も強く感じられ始めた頃、光瞬く光景が現れる。「蛍だ!」沢の流れに光のハーモニーが重なる。音のない調べが漂う。目の前の火を見つめ、酒に酔い、火に酔い、調べに心が酔い、「そろそろ寝ますか?」
松本さんが置き火に水をかけ、火を消し、7月7日・七夕の日。21時前後に就寝。

7月8日(日)
三ノ瀬へ下る日。柳下君メニューの朝食を摂り、タープ・テント撤収後、6時30分、テン場出発。出発前、私が怪我をした。水を汲みに沢へ行き、自分のと蜷川さんの汲んだ後、起こった。両足が滑り、股裂き状態で前へ倒れる。手で支える間もなく、岩に顎の左を打つ。大きな傷も無く済んだ。皆にバッチリ見られた。真紀ちゃんがバンドエイドをくれた。「毎回バンドエイドを貼っているね」と言われた。毎回ではない。谷川岳西黒尾根での滑落訓練の以来だ。キュウハ沢では、消毒液をつけてもらいました。いずれも服巻さんの消毒液にお世話になりました。服巻さんが講師で参加していた登山教室でも滝で落ちました。主任講師に言われました。
「君は落ち着きがない!」そのようなことを思い出しながら出発。

三ノ瀬への道は、等高線をなぞるように歩く。笹が刈られていて歩きやすい。
単調な歩きになりそうだが、所々に出てくる倒木や朽ちそうな橋など、跨いだり潜ったりと歩きにスパイスを与えてくれた。雲が多いが、太陽が時々覗かせ、暑い。しかし、モミジやブナなどの緑や、汗をかいた体を包み込む涼風。まだ梅雨明けしていないのに、上を見れば初夏の顔を覗かせる青空。心地よい。山からエネルギーを貰いながら歩いている。
いくつかの沢の上流部を渡り、テンポ良く歩いていると、左の笹薮からガサゴソ。「何かが動いている。」と前を歩いていた伊沢さんと言葉を交わす。後ろを振り返り、後から来る中西(則)以下のほうを見ると黒い物体が現れた。短い声を発し中西(則)は小池さんの後ろへ瞬間移動。同時に物体は転げ落ちていったようだ。物体は熊である。中西(則)は、しっかり見たようだ。正面から見ることができるなんて、なかなか無い事なので「羨ましい」と口にしそうになった。林道に出てから少し下ると車の置き場に着いた。

温泉に入り、勝沼で桃を試食し、美味しいので母親の退院祝いに1箱買う。さらにワイン工場へ試飲しに行き、気持ちよくなって横浜へ向う。
帰り、自分の車のエアコンが壊れた。窓を開けて走る。高速道路では渋滞にはまる。
となりに伊沢さんの車が来る。「何故、開けているの?」わざとらしく聞いてきた。にこにこした顔が楽しそうだった。車内では、ある見ず知らず車の運転手(女性)を見て「年齢は何歳だろう」という事だけで結構盛り上がったりしながら、暑さを忘れて?帰浜にしました。