真川シンノ谷遡行〜太郎沢下降〜赤木沢遡行

日 時;2004年8月12日〜15日(夜行3泊4日)
メンバー;L宮内(眞)、西、松原、溝越、宮内(由)、蒲原

1日目(8月12日 晴れ)

(記録;西)

前日の8月11日、溝越さんと二人で剱沢から折立へ入り、折立バス停そばの折立キャンプ場にテントを張って本隊との合流に備えた。ちなみに折立キャンプ場は大きくりっぱなキャンプ場で水場、トイレも完備され快適に過ごせた。
 8月12日、6時40分。キャンプ場脇の駐車場に着いた宮内さんたち本隊と合流し、荷を整理して7時にみんなで出発した。有峰有料道路が真川線(一般車通行禁止)と右手に走る未舗装道路に分かれているが、その未舗装道路を10分ほど歩き、真川へ降りている本道と同じくらいの幅の脇道に入って入渓した。入った少し先に橋が見えた。
 身支度を調え7時30分に溯行開始。歩きやすく見通しの良い広い河原が続き、快晴の空の下、水の感触を楽しみながらの溯行であった。過去の記録に真川は、林道で距離を稼いで入渓するよりも早めに入渓するのがコツという趣旨の記載があったが、まったくそのとおりだと思った。
30分も歩くと、左から入る小沢の先に鉄橋が見えた。河原歩きからだんだんに腰下までの徒渉やへつり、そして釜も出てくるようになった。晴れ渡った夏空の下の溯行でそれらもまったく苦にならない。釜では、早くも飛び込む人も出た。流れが左へほぼ直角に曲がり、地形図との比較からもうじきハゲ谷出合と分かる。ハゲ谷出合まで入渓から約1時間。比較的いいペースで進んでいるか。それからまた1時間弱でヤクシ谷との出合。ヤクシ谷の入口は流木が通せんぼするように積み重なっていた。そこで少し長い休憩となった。
 シンノ谷出合には10時半頃到着した。一見すると、本流よりシンノ谷の方が水量が多そうに見えた。ここで11時半過ぎまで釣りタイムとなった。宮内、松原、蒲原、西が竿を用意してきていた。蒲原さんは2本用意してきており、1本を溝越さんに貸し、初心者の人に仕掛けづくりを手伝っていた。途中釣師のグループと出会ったのですでに竿が出ていた可能性もあり、日の昇った時間帯で、イワナの食いも悪いのではないかと心配したが、案に相違して全体で20?級5尾というまあまあの釣果であった。早速3枚におろして刺身にしたが、魚体がヌルヌルして、またナイフの切れ味も今ひとつでさばきにくかった。後で古川さんに、濡れタオルでイワナを押さえてやると良いと教わった。イワナの刺身に舌鼓を打ち、ソーメンを作っていただたりしていると、あっという間に2時間が経った。
 12時40分シンノ谷溯行開始。しばらくは明るく平坦な渓相、ついで小滝が続いた。1時間ほど歩いたろうか。やっと、中型の滝が現れ始めた。一つ目の滝は階段状で、沢2回目の溝越さんがやや緊張していたが、無事通過。二つめは、左から入る小沢の方へ階段状を登り、トラバースして本流へ合流。三つ目三条になっている滝は、左の土壁の階段状の足場を伝って越えた。中規模の滝が終わるとまた小滝だ。リーダーの「2時半すぎたら、ビバーク地を探し始め、なければ2000m地点の伏流点まで行く」との指示に従い、ビバーク地を探しながら溯行する。寝不足のメンバーに疲労の色も見えるので、早く探そうと思うが、両岸とも傾斜が急で、見つからない。結局午後3時半、標高2000mの伏流地点に到達した。伏流点のすぐ上のゴーロ&砂地の場所を整地してビバークすることにした。斜面にかからざるを得ないところはザックを敷いて補った。落ち着いてみると、なかなか快適なビバーク地だった。

2日目(8月13日 晴れ)

(記録;蒲原)

 シンノ谷の伏流になった幕場を7:00出発。4段ナメ滝など見せ場はあるものの源流域のゴーロ歩きは思いのほか疲れる。森林限界を越えると、雪がない源頭ゴーロ帯が稜線まで続く。稜線へは北ノ俣岳と2576ピークの鞍部を目指し左上する。最後はハイマツの藪コギ25分ほど。ハイマツなのでさして苦労もせずに登山道にでたが、Tシャツだったので腕が傷だらけになってしまった。ここまでで2ピッチ3時間ほど。少し遅れ気味か。大休止の最中に見た槍や鷲羽、水晶などの裏銀座の山、黒部五郎からの稜線が昔、縦走をしていた頃の事を思い出させる。
 黒部川への下降は薬師沢から。山行前に左俣の記録は見るものの本流下降の記録は見つけられず、一寸心配していた。地形図を見ると左俣のほうが滝マークもあり厳しいように見えるのだが。登山道を30分ほど歩き薬師沢を下降する。源頭はガレ場もなく降りやすいが、水がでてくると、10m前後の滝が短い間隔で連発する。懸垂3回、クライムダウウン3回を行うがかなり時間がかかってしまう。登山道と出会うところからは薬師沢の遡行を時間オーバーであきらめ、登山道で薬師沢小屋を目指すことにした。黒部に降り立つと水の量は思っていたほど多くなく、ちょっと拍子抜け。幕場を探しながらいくがなかなか適当な場所がみつからず、30分ほど遡行した場所に狭い砂地を見つけ、ちょっと土木工事をしてそこを幕場とした。
[雑感]
今回の山行で一番の核心は薬師沢の下降であったと思うのはメンバー一様の感想ではと思う。とは言っても時間がかかりすぎ。今回は登山道も含めた沢の遡下降で、近くに登山道があったからよかったが、ショートカットルートがなければこれは致命的になりえます。経験を積めば懸垂下降もクライムダウンももう少しスピードが増すと思うので、いろいろな沢に多く行って経験を積んでほしい。(新人が偉そうですが)また、簡単なクライムダウンの場所ではスタンスやホールドなどは自分で見つけられるようになりましょう。そうすれば今回の山行より、もっと楽しめると思います。

3日目(8月14日 雨)

(記録;松原)

 5時に起床した。テントを出るとコッヘルや空き缶が散乱している。前夜の宴のあとである。焚き火を復活させ、暖を取りながら朝食を作った。焚き火の後始末をし、荷物を整えて7時に出発。30分ほど歩いたところで、某氏が腹を抱えて立ち止まった。木陰に消えてゆき、10分ほどしてスッキリした顔になって戻ってきた。体重も500gくらいは軽くなったのだろうか。
8時前に赤木沢の出合に到着。ここで10時まで自由時間とし、西・宮内・松原の3人がイワナ釣りにチャレンジ。初日に空振り、2日目に大物を釣り上げた蒲原は、勝ち逃げするためにギャラリーに徹していた。2時間近く粘ったが、早朝に入った釣り師がイワナの警戒心を煽ってしまったのか、不調だ。終了間際に松原が小物を釣り上げただけでノーサイド。
10時に赤木沢に入渓。赤木沢は美しいナメが続く。ところどころ、深い釜もある。明るい快晴の日であれば、なお楽しめるだろう。いつか、高天原温泉と組み合わせて、もう一度来たい沢である。このあたりは、言葉で説明するよりもミゾーが公開してくれた写真を見るのがわかりやすい。11時半に大滝に到着。左岸から大きく高巻いて越える。12時に二俣を通過すると水が細くなってきた。12時半に赤木平。このあたりで水は完全に消えた。振り返ると二人足りない。数分遅れて現れた宮内新婚夫妻をミゾーが写真に収めると、カモちゃんがぼそりと一言。「俺、他人の幸せって大キライだよ」と。まさにgreen-eyed monsterですな。意味が解らない人は、『オセロウ』を読みましょう。1時間ほど高山植物を踏まぬように注意しながら赤木平を歩き、ハイマツの藪漕ぎを少しこなして、13時半に登山道に抜けた。足がふやけていたので靴を替えたかったが、小雨が降っていたのでそのまま通過。14時半に登山道が広くなったところで休憩。休憩中を見るに、宮内(由)はかなり辛そうだった。旦那が優しく水や行動食を分け与えているのを見て、再びgreen-eyed monsterの登場。40分ほど歩いてガスの中から小屋の発電機のエンジン音が遠くに聞こえてきたところで、松原・蒲原・溝越の3人が先遣隊として先行した。宮内(由)が辛そうだったので、先にテントを張ってお茶でも沸かして待っておきたかったのだ。先遣隊は16時過ぎにテン場着。6天を張れる広い場所を探している間に本隊も16時半に到着し、結果的に6人でテント設営をすることになった。
熱湯をこぼしてミゾーが太ももに火傷を負う事件はあったが、おおむね平和裡に宴会は続き、イワナご飯と麻婆春雨の晩飯を食べ、安らかな眠りについた。

4日目(8月15日 曇りのち晴れ)

(記録;宮内由美子)

前夜から強い雨が降っていたが、7時頃ゆっくりと起き出した時には雨も上がり、よそのパーティも大方は既に出発していた。私達もうどんを食べて、パッキングをし、9時にテント場を出発した。天気が良ければ薬師岳にも登る予定だったが、眺望は期待できず、一路折立を目指した。
折立まで、雨も降らず、時折太陽も見え隠れしながらの行程だった。昨日の雨からは想像できない程に天気が回復して幸いだったが、私は日焼け止めを塗らなかったことを後悔しながら歩いた。遠く日本海が見えたり、二日目に涙ながらに懸垂した滝や、シンノ谷で藪こぎしたハイマツなども拝むことが出来て、今日までの険しかった道のりをしみじみ思い出した。
運動して熱を帯びたら、溝越さんの火傷の傷が余計に痛むのではないかと心配だったが、なんとか降りきることが出来た。 私にとっては体力、技術ともに能力以上の沢の遡下行だったので、今日の下山も疲労し余力も無く、よろよろになって12時44分、折立に到着した。

(雑感)
2度目の沢で北アルプスまで来てしまった。周りの人は少々心配だったかもしれないが、本人は期待にワクワク。初日のシンノ谷では蒲原さんに準備してもらった竿でイワナ釣りに初挑戦。なんと、見事に1匹釣り上げる。これぞビギナーズラック。初めて食べるイワナの刺身に、さらに気持ちも盛り上がる。シンノ谷では何箇所か厳しい場所もあったが、西さん、宮内さん、蒲原さんのアドバイスに支えられつつもなんとか自力で登れたので、嬉しかった。ツメのハイマツ漕ぎは、初挑戦の興奮のせいか、意外にも少し楽しく感じてしまった。登りきった稜線からは、無事に登りきった喜びとともに、私の大好きな雲の平の景色が迎えてくれたので、もう一つの感動を味わう。
 薬師沢の下降は曲者であった。いきなり懸垂下降でその先は大嫌いな深い釜だ。下降後、泳げない私は溺れながらも西さんにロープで引っ張ってもらって、なんとかこの難関を突破する。ホッとしたのもつかの間。またも懸垂下降。ここでは下降途中に支点にしていた木の皮が剥けてロープが大きくずれたため、恐怖で暫く動けなくなってしまった。恐怖心が芽生えてしまったところに、さらに3回の懸垂下降。滝のクライムダウンや釜のへつりも多く、技量が足らない私にとっては精神的に非常に疲れた沢であった。
メインの赤木沢は、あいにくの雨。しかし、特に難しいところも無く、私でも余裕を持って遡行を楽しむ。こういう沢は快適で良い。明るい沢だし、ツメも草原なので、晴れていたら、もっと素晴らしさを味わえたであろう。
最終日は私の希望で薬師岳に登ることにしてもらったが、テントの中で火傷をして、あえなく断念。ただ、最終日だったのと、太郎平まで来ていたので下山口まで近かったことが幸いだった。
いろいろあった沢登りだったが、自分の技量不足も痛感した。もっと練習を積んで、余裕をもって歩けるようになりたいものだ。

(記;溝越)

(雑感)
 これまでの力を試す山行として企画しなかった合宿。
 北アルプスで沢歩きを楽しめるところとして赤木沢を・・そこまで行くルートとして「沢を繋いで」と考え、真川シンノ谷を遡行した。前半は天候にも恵まれて岩魚を釣り、焚き火に酒を飲み交わし、メインの赤木沢は生憎の天候だったが、それでも濁りのない優しい流れが心を癒してくれた。自分にとって初めての渓流釣りなど楽しめた4日間だった。下山後の民宿も寛げてかつ夏祭りを見ることも出来た。今回の山行は色々なエッセンスが入ったものと考え、渡渉・滝登り・巻き・藪漕ぎ・沢の下降・焚き火・釣りが含まれ、適度に長い山行。遡行は何とか出来ても、太郎沢の下降は厳しく感じた人もいただろうし、技量不足を少し感じた人もいたと思うし、体力が少し足りないと感じた人。それら感じたことを今後に生かしていけばいいと思う。こつこつとステップを踏んでいけば楽しい(厳しさもある)世界が広がると感じ、今後、岩トレなどのトレーニングを各自が進めていこうと思えば、この合宿は成功したのかな?と自分は思っている。

(記;宮内)

行動記録
8月12日〜15日(4日間)
初日(晴れ)
折立7時→真川入渓7時半→シンノ谷出合10時37分〜12時半→大滝上部伏流手前15時半

2日目(晴れ)
BP7時→稜線10時半→太郎沢下降地点11時→薬師沢出合15時→黒部本流16時→BP16時半

3日目(曇りのち雨)
BP7時→赤木沢出合8時〜10時→稜線13時半→太郎平テント場16時20分

4日目(薄曇りのち晴れ)
テント場9時→折立12時44分