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つくづくやなタイトルだなぁ


The sick, be ambitious  病人よ、大志を抱け


  なってみると判るが、原因不明の軽い病人というのは気鬱なものである。
  死に至る重病ではないのだから、決して不幸ではないのだが、原因が判らないので治す方法が判らず、治る希望がないものだから気が重くなる。長期となればなおさらである。
  酷くもなんともない軽症なのに、まともに行動することも危うい中途半端な身の故に餓死を覚悟せざるを得ないと思い、近い将来の死を意識することすら有るくらいだ。
  ひょいとそう思ってしまうと、それこそが病人の弱る時である。
  生活可能な未来が描けない。このまま死ぬ他ないのではとふと思ってしまうと、それは愕然とするほどに気を重くする。気が重くなった余り、病人がさらに他の病を併発したり、未来を儚んで自死したりすることがあるのはその故だ。元来死ぬ病気ではなかったとしても、治る予想がつかず、生きる希望を見失った時、死ぬほどの病気ではない病人が、ころりと死んだり、首を吊ったり飛び降りたりそれこそ不幸なことが起こる。
  さまでに、希望のない病気は身体を弱め、その結果、生きる気を弱め、弱気は生命を磨り減らし、軽い病人をしてさえ死に至らしめる。
  最悪だ。それも、避けられる事態だ。
  結局生きてゆけずに死ぬのかも、なんぞと思ったって、良いことなんか何一つない。そんな気分になってはいけない。
  そんな事態は能う限り避けるべきである。病人は図太くなくてはならない。しぶとく生きる気力を保たないと、本来自然治癒させることが可能だったかも知れない生命力を徒に弱め、治るものすら治らなくして、最悪は死ぬほどの病ではないのにも拘わらず死に至らしめてしまう。そんな巫山戯た暗黒の坩堝に自ら嵌ることはない。
  病人にこそ、図太くしぶとく逞しく、生きる力と意志が必要なのだ。
  そこで有名なクラーク先生の登場である。
  The sick men, be ambitious  病人よ、大志を抱け
  たぶんそうは言わなかったと思うが、そういうことにしておく。
  治す。まずはその意志を持って身体を探り、必要なら労り、必要なら無理をかけて鍛える。治す方法が判らないから、身体の様々なバランスの崩れを正し、食い物を食って身体が良くなる方法を探り探り治癒を身体自身と頭脳に託す。
  そのために絶望の反対の、希望が絶対に必要なのだ。絶望は気力を削ぎ、希望は気力を増す。気力なしには身体は生きない。
  最悪の場合、治らなかったとしても、治らなければつきあって生きる。その気力だけは失ってはならぬ。生き物は生きるべくして存在するからである。生き物が生きようとしなくて、どうするのか。
  生きようとするためには、なんとかなる、と信じる強さと図太さと、生きていこうとする希望が要る。そのために、病人は志を抱くべきである。
  一欠片のささやかな願いも良いが、どうせ持つなら、大志の方が豪快で良いから大志にすべきだ。小さな大志というのもあるから、別段大風呂敷を広げることはない。できる範囲の大志で充分。
  だから治る見込みの立たない病人達は、能うるかぎりの大志を持って生きようとするべきだ。偉そうに聞こえたってかまわないからとにかく生きろ。生きようとせよ。
  The sick men, be ambitious.   Be ambitious not for money or for selfish aggrandizement, not for that evanescent thing which men call fame. Be ambitious for the attainment of all that a man ought to be.
  病人よ、大志を抱け。
  お金のためでなく、私欲のためでなく、空虚な名声のためでなく、人はいかにあるべきか、その道を全うするために大志を抱け。
  病人よとは言わなかったし、全体に美談風で記録もなく、若干嘘くさい伝承ではあるのだが、かのクラーク先生はこう言い残して馬に飛び乗り、札幌農学校第一期学生達の前から颯爽と去って行ったと云う。大志の名にふさわしい内容であるから嘘でもそう思っておればよろしい。
  かくの如くして病人は強く生きるべきである。少なくとも生きようとするべきである。生きてやろうとするべきである。治るにはその意志が要る。さもなくば暗く弱った気力に蝕まれて希望を失い、身体を悪くしかねない。ただでさえ病人なのに。
  なに、どうせ暗い未来を思い描いて気力を無くし、諦めて死に至るなら、徹底的に悪足掻きをして抵抗し、あげくにやっぱり死んだとしても、同じことだから特に差はない。
  だから治るあてのない病人達よ、できることは全部やって、しぶとく治るつもりで居り、生命の磨り果て切るその瞬間まで、大志を抱いて粘るがよろしい。

(2012/12/30)



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