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つくづくやなタイトルだなぁ


消える田んぼ


  近所の田んぼにパワーショベルが入っているから何事かと思ったら、ダンプが運んできた大量の土を田んぼに詰め込み始めた。
  散歩の折に近くを通ってみると看板があって、農地にする工事なのだと書いてある。   畑にするということかいな、と思っていたらどうもそうではなくて、そのまま土を入れて放っておくのだそうだ。
  耕作放棄地はここ十年でずいぶん見かけるようになったし、田んぼがアパートになったり宅地になったりするのはよく見かけるが、田んぼをただ埋め戻すのはあまり聞いたことがない。
  農村はやっぱり消滅してゆくものらしいことを、にわかに証明されてしまったような気がして悲しい気持ちになった。
  他人様の田んぼとはいえ、見慣れた田の景色がなくなるのはけっこう衝撃的だったのだ。思ったより、田舎の田んぼ風景に意識が縛り付けられていたものらしい。
  新緑の頃に見渡す限りを埋め尽くす緑の海がもう欠けてしまうのだと思うとなんだか大事なものを失ったような気がする。
  自分が田を耕しているわけでもないのだから大きなお世話なのだが、これは危機的な話なのに違いない。アパートやヤードになったりするのはもっといやだから、まだ良かったなどと思ってちょっとほっとしているような話ではないのだきっと。
  気が付いたら軒並みアパートに、ヤードに、駐車場に、宅地になってこの身に沁みついた田の風景がことごとく消えてしまっていてもおかしくはないのだ、ということを、あのパワーショベルは示しているのに違いないのだ。
  この田舎ですらそうなのだから、都会に近い場所では推して知るべし。だからあの荒涼とした街の風景は、もはや他人事ではないということだ。
  継ぐ者がいないのだからそれはそうなるしかないのだろう。誰かが買って大規模な田んぼにでもしない限りは。
  そしてきっと、そうなったらその風景も、見慣れた田んぼの風景とは異なるものになるのに違いない。それはもう新しい風景だ。
  じゃあ、せめて今の風景をよく見て、よく感じておこう、そして新しい風景が生まれたのなら、その中を生きてゆこう、と志の低いことを思って窓の外を眺めている。

(2017/03/26)



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