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つくづくやなタイトルだなぁ



映画「姑獲鳥の夏(うぶめのなつ)」公開!


※ めっさネタバレです。本作を未見・未読の方は回避運動を行ってください。



  ずっと待ってたんデス。

  というわけで、公開初日に柏市内の映画館に車でGo。入場料に匹敵する駐車料金を払って観てきたので、レポートをば一筆啓上。

  ※念のために説明しておくと、京極夏彦さんの小説「姑獲鳥の夏(講談社ノベルズ)」が映画になったものデス。非常に衒学的な小説で、映像化は難しいだろう、と云われていた原作を、しかし果敢に映像化した映画なんですね。

  ネットで評判を調べてから観に行こう、という御仁も多いでしょうから、参考にしておくんなせい。

  以下、原作を知らないと分かりにくい表現を平気でしますので、知らないヒトは「ふーん」とでも思ってやって下さいな。

  まずは素朴な感想から。

  イメージ映像集みたい

  という感じでございました。

  まぁ、読者が多種多様な映像をイメージしている小説を映画にしようと云うのですから、大多数を満足させられそうな標準偏差的な映像表現を行うか、特異な個性を前面に押し出した映像で押し切るか、二つに一つくらいしか方法は無いわけですが、今回は個性的な映像表現でイケイケGoGoな感じですな。なるほど実相寺サンだ、という映画になっています。正直、

  ちょっと面白かった

  というトコでやんした。くすっと笑えるトコロも2、3箇所。
  例によってこれでもかと出てくる予告編をやっと観終わって本編が始まると、意外な映像化が行われていて結構びっくりします。

  アタマに出てくる目眩坂は非常にビンボくさい坂で、たいへん短い。25mくらいしかないような感じですな。

  原作をアレンジして土蔵を改装したことになっているらしい京極堂店舗の映像では、土蔵なだけに、店内が二階建てになっていていきなりびっくり。本もすごく少ないので、なにか広々とした余裕のある店内になっています。 登場するなり原作から拾い集めたらしい台詞を喋る京極堂=中禅寺秋彦を演じる堤真一サンは意外にもフツーの役づくりで、別段不機嫌そうにも、書痴にも見えませんが、親しみ易い印象で。白い着物がなんだかおっされー。

  個人的に「鈍臭くハズしているダメ人間の割に、友人の前ではイッチョマエなつもりでいる甲斐性なしの小物(失礼)」という印象のある主人公(←たぶん)関口巽を演じる永瀬正敏サンは、管理人の印象よりもグッと柔らかく、「単にぬぼーっとした不器用な小市民」の関口を演じていて、これも親しみやすい感じ。いたってフツーです。

  そして次々とカットインされるイメージ映像。ぐるぐる回ってます。
  やめてー  という感じで。気分が悪い人は酔うかもしれません。体調が万全な時に観て下さい。

  原作では巻が進むにつれドンドン奇人変人になってゆく超絶探偵榎木津礼二郎は、阿部寛サンがこれもごくフツーに、ちょっと変わったところのある貴族のおニイちゃん、という感じで演じておられて、やっぱり親しみやすい。関口と二人で書庫に入るシーンは、なるほどそう処理しましたか、という感じで榎木津はドアの前で体調を崩している

  田中麗奈サン演じる敦子穣も、スネてみせたり怒ってみせたりと、原作より映像的な記号(小娘を表す記号性)を押し出した演技で、ちょっと昔の映画によく出てくるフツーっぽい小娘の役柄。全般にみなさんごくフツーの人を演じていらっしゃいます。役者サンたちの方針、というより演出の方向性がそうなんでしょうね。まぁ冷静に考えたら「物凄くヘンな人」しか出てこない小説ですから、あのまま演じてもらったら「奇人変人びっくりショー」になってしまいますし、無難なところでしょうか。

  男役はみなさん、そろって暑がる演技をしており、京極堂でさえ暑そうな素振りを何度も見せますから、原作よりずっと夏が意識されてますな。そう思って初めて納得したことには、「あぁ、謎解きのある怪談としてとらえられているのか」と。管理人には新鮮な解釈でございました。管理人はこの原作は本格ミステリーのつもりでいたもんで。そういう見方もあるのか、と。公開もちょうど初夏だし、なるほど丁度良いのかも。

  次々とくり出されるイメージ映像はやたらに多いです。どろどろした効果音に凄い量のイメージ映像が続き、ストーリーはちょっと端折ってある感じで、知っているから解るようなものの、知らないで観た人は困惑するかも知れません。もっとも逆に、原作を知らないで観たら、静かに怖くなるような演出、なのかも知れませんけど。ただ、やっぱり解り難いですネェ。

  こう、何と云うんでしょう、イメージカットと同質なものとして、役者サン達の演技のシーンも、原作から取り出したイメージ映像として作り上げ、それらをちょこちょこと繋いだような印象があって、物語をあらわすイメージ映像と、演出効果としてのイメージ映像が入れ替わりながら連続しているような映画でした。イメージカットを繋ぎあわせた映像特典DVD(予約特典とかによくあるヤツ)のような感じです。

  しかし凄い演技を見せてくれる方もいらっしゃって、いしだあゆみサン演じる久遠寺夫人はかなり怖いです。取り乱し方と、気の抜け方がかなり怖い。小太りのケンツクな貴族夫人、という原作の印象とは少し違いますが、後半で見せてくれる、あの妄執と後悔の演技はスゴイです。一見の価値アリ。原田知世サンの演じる久遠寺涼子もなかなか怖い演技で結構納得させられちゃいます。原作では思いっきり嫌らしい憎まれ役の内藤は、いいヤツじゃん、と思ってしまう小心者振りで、さほど嫌ったらしい印象はなかったものの、小猾そうな表情の演技はなかなか。

  原作とは、確かにだいぶ違います。しかし、実相寺流の映像詩と考えると、血と云い炎と云い、音と云い、どれもウルトラ○○そのまんまで、なるほど実相寺映像。そのテの好みがある方には向いているでしょう。影絵が出てこないのが不思議なくらいだなぁ、と思っていたら、ちゃんと出てきて笑ってしまうところでした。

  独特の捉え方をしたキャスティングの中で、意外にもどんぴしゃだと思ったのは関口家の奥方、雪絵サンと、最後にちょこっと登場する京極堂夫人の千鶴子サン。説得力あります。

  そういえば関口は目眩坂を登るシーンのある度に、わざとらしいくらい「くらっ」としてみせていましたが、 そんなにくらくらしなくても

  京極堂が猫を抱いて可愛がるのは意外ながらも結構好人物そうないい味を出していましたし、千鶴子夫人の不在を問われてムキになって動揺している演技は原作には無い人間味が強く出ていて、違うながらも楽しいシーンでしたな。

  個人的には、ず〜〜っと本に目を落としたまま不機嫌そうに、しかしべらべらべらべらべらべらべらべら喋りまくる京極堂をイメージしていたので、人間味溢れる普通人の京極堂というのは予想もしていなかった意外なセンでしたが、あれはあれでいい味なのかも。

  しかし彼の喋る内容の順番が入れ替わって表現されており、説得力が少々減っているのは気になりました。あれでは論理の一貫性に強引さを感じますから(もともと多少強引ですケド)、やはり謎解きのストーリーとしては破綻してしまっている、と云わざるを得ません。京極堂の喋る内容は、本人が語っている通り「順番が命」なのですから、あの映像から謎解きに説得力を感じることは難しいでしょう。

  まぁ怪談調の映像詩として作られているようなので、その辺は二の次なのかも知れませんけれど。

  そして最後にもう一つ。

  クライマックスで、関口が言う台詞、「かあさん」が 無かった

  これはひっじょ〜〜に残念でございました。ふらふらと近寄ってゆく永瀬サンの演技はグーなのですが、「かあさん」と声をかけて欲しかった。その上で、赤ん坊を返してもらう。そうでなくっちゃ。

  この点だけは、さすがに「くぅ〜〜っ、惜しい!」と思わずにはいられませんな。あのシーンにこそ、関口達の救いがあるはずなのに。あそこだけはイメージ映像で処理しちゃイカンよ、実相寺爺ちゃん。惜しい。惜しすぎる。ここだけは苦言を呈させていただくなら、虚仮威しに頼り過ぎだヨ、実相寺爺ちゃん!

  ついでにもう一つ。やはり、京極堂はもう少しだけ、滑舌を良く録音して欲しかった。彼の台詞に、一部聴き取りにくいところがあるのです。これも惜しい。京極堂は言葉が全てですから、彼の言葉は全カットにおいて良く聴こえ、はっきりと耳に届かなくてはイケマセン。次回作(あるのかしら?)への反省点の一つと云えましょうな。

  原作の再現を期待して観に行くと「あらっ?」てな映画ですので、夏の怪談映画の素材に京極小説を使ってみた映画、とお考えになると丁度よろしいかと思います。いしだあゆみサンの演技は充分に怪談の価値がありますし

  さよう、ミステリー映画、ではありません。怪談映画です。

  余談を云えば、怪談映画らしく、予算の少ないのがよく解ります(泣)
  劇中に暴徒の発生するモブシーンがあるのですが、これがまた良く云えば少々チープで。警備の甘い警官隊と云い、映画と云うより、そこだけ予算を削った舞台劇の1セットみたいになっているのが若干アレでございました。浅草十二階のごとき久遠寺医院も、最後に燃えるシーンを除いて模型らしい存在感がウルトラシリーズのごとくでやや目立ちます。若干眼をぼやかして御覧になると丁度良いでしょう。

  劇中、チョイ役で原作者の京極夏彦サンが出演しておられますが、テロップを見るまでそうとは分からない薄っぺらな存在感がいい味出してました  あの格好をしていると、単なる山出しのおっちゃんですな。尊敬してるのにぃ

  ことのついでに謎解きのシーンで非常に存在感のある演技をなさったいしだあゆみサンと久遠寺嘉親役のすまけいサンですが、一方の京極堂が名前を書いた半紙を用意していたのは「書いて持ってたんかい!」と突っ込めるナイスなポイントです。いつ書いたんスか  てゆーか京極堂がバカに見えてしまいます。これも惜しい。

  全体的に普通の好人物の集団として描かれている登場人物達と、めまぐるしくインサートされるイメージ映像の山に面喰らいはするものの、難解な怪談映画としてはよく出来ているかも知れません。

  京極小説の映像再現は際限なく難しいでしょうから、それを期待して観る京極ファンに対しては、泥をかぶった、というところでしょうか。しかし昔から変わりなく独特な映像は短編の奇怪な怪談映画として成立しています(強いて云えば怪談映画としては京極夏彦サンが邪魔ですけど)。ちょうど昭和中期の時代に映画がそうであったように、映画館で、ちょっと時間をつぶしてみるには向いている作品だと思います。←失礼な云い方かも。でも、ちょうどそんな感じ。

  実相寺流の京極怪談を、あなたも一つ、その目で確かめて御覧になっちゃあいかがですか。

  観劇料1700円なら、そう悪くないところでしょう。

  管理人は、たぶんこの夏の内にもうイッカイ観ます




  
だって、ずいぶん待ってたんだもん。楽しまなくっちゃ。ネェ?  
(2005.07.16)



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all Text written by @ Kaikou. "Hirohumi Kinoshita"