2001.12.30

SV-98でファイバーチャネル(第1回)

Written by かたあま☆彡  


はじめに

 最初に私がファイバーチャネルのデバイスに興味を抱いたのは、今から3年くらい前に秋葉原のとある UNIX 系の店で Sun の大きなディスクアレイ筐体を見た時でした。
 その筐体は通常のディスク筐体と比較にならないほど大きく、さらにコンピュータと接続するコネクタには光ケーブルを使うという話を聞き「いつかはファイバー」と心に決めたのでした。
 しかし、その大きなディスク筐体は Sun の SBus のファイバーチャネルのホストバスアダプタとの接続を前提としており、また当時は PCI のファイバーチャネルのホストバスアダプタ自体を目にしたことがなかったので「カードさえあれば接続できるんだろうけど、カードがないからなぁ」と、現実味はあまりありませんでした。

 しかし、最近になってその状況を一変させることが起きました。まず最初に、光ケーブルではないものの、銅ケーブル接続(High Speed Serial Data Cable)用の PCI のホストバスアダプタを某所で発見したため確保し、続いて本命たる光ケーブル接続用の PCI のホストバスアダプタが見つかったという情報を、当委員会の研究員から得たため、そのホストバスアダプタも確保しました。
 さて、首尾良くホストバスアダプタを用意することができましたが、これを AT 互換機で使ってしまっては面白くありません。当委員会はメーカー非サポートのデバイスを接続することも目的としていますので、このホストバスアダプタは SV-98 で稼働させることが最優先事項となりました。

 本稿は、その接続実験の結果をまとめたものですが、記載されている内容については、私は一切保証しませんし、それに伴って発生した如何なる事故にも責任は負いませんので、あらかじめ御了承ください。
 なお、接続実験に使用した OS は WindowsNT 4.0+SP5 の組み合わせです。


ファイバーチャネルとは

 ファイバーチャネルとは、光ケーブルまたは銅ケーブルを利用して、データの転送を高速なシリアル通信で行う規格です。
 近頃では Storage Area Network に関連してファイバーチャネルが登場することが多いため、ストレージデバイスを接続するためだけの規格と考えがちですが、実際には

 などがサポートされていて、後述する Qlogic 社の QLA2200 ホストバスアダプタには、SCSI プロトコルをサポートするドライバの他に、ネットワーク接続を行うための IP ドライバが用意されています。
 ファイバーチャネルには、従来の SCSI などの接続方式と比較して、接続可能な距離の面で特徴があります。ファイバーチャネルは、光ケーブルを使用すれば 10Km 先、銅ケーブルを使用すれば 25m 先にあるデバイスまで接続可能です。また、ファイバーチャネルは最大で1ループあたり126台のデバイスが接続でき、このあたりも特徴といえるでしょう。

 さて、ファイバーチャネルの接続方式には、

 などがありますが、今回はその中の Point to Point を実験することにしました。その理由は、本来はトポロジの形成などまで実験したかったのですが、残念ながらファイバーチャネルのスイッチが入手できなかったため、これは次回以降の課題となりました。


シングルループとデュアルループ

 ファイバーチャネルは、通常は送信用の1本と受信用の1本が対になった光ケーブルをデバイスとの接続に使用します。この一対の光ケーブル1セット(つまり送信・受信の光ケーブルが1本ずつ)でループを構成するものがシングルループといわれるもので、全二重転送の場合に 200MB/秒 の速度が実現されます。

 また、ホストバスアダプタによっては、最初から光ケーブルを接続するコネクタを2つ持っているものもあります。この場合には、一対の光ケーブル2セット(つまり送信・受信の光ケーブルが2本ずつ)を使ってデバイスを接続し、ループを構成することも可能です。これがデュアルループと言われるものです。

 デュアルループでは、全二重転送の場合に 400MB/秒 の速度が実現されます。なお、2つのコネクタを別々のループ構成、つまりシングルループ2つとして構成することも可能です。
 なお、光ケーブルを接続するコネクタが1つしかないホストバスアダプタの場合には、そのホストバスアダプタを2枚実装することで、デュアルループ構成が可能になります。


実験に使用した本体

 今回の実験には、SV-98 model2 および SV-98 model3 をそれぞれ1台ずつ使用しました。


左側が SV-98 model2 で、右側が SV-98 model3 です。


用意したホストバスアダプタ

 今回は以下の2種類のファイバーチャネルのホストバスアダプタを用意しました。

・Qlogic QLA2200(以下、QLA2200と表記)


コントローラは Qlogic 製。

・Compaq StorageWorks 64-bit/66-Mhz Fibre Channel Host Adapter(以下、CPQFCと表記)


コントローラはアジレントテクノロジー製。BIOS は非搭載。

※Compaqが提供しているファイバーチャネルのホストバスアダプタには、上記の他に QLA2200 の OEM 版もありますが、上記の CPQFC とは別物ですので注意して下さい。

 Qlogic のものは BIOS が搭載されており、SV-98 model2 および SV-98 model3 のいずれにおいても BIOS を電気的に切り離さないとメモリチェック後に固まりました。ですので、実装する前には BIOS を殺すようにして下さい。


用意したファイバーチャネルデバイス

 本来はファイバーチャネルで接続するものならば、テープでも何でもよかったのですが、やはりディスクアレイ系が一般的だと思いましたので、以下のデバイスを用意しました。

・Sun SPARC Storage Array


Sun SPARC Storage Array の筐体(前面)


Sun SPARC Storage Array のディスク実装部(前面)


Sun SPARC Storage Array のディスク実装部

・Sun StorEdge A5000


Sun StorEdge A5000 の筐体(前面)


Sun StorEdge A5000 のディスク実装部


 なお、SPARC Storage Array は調子が悪かったため、StorEdge A5000 のみで接続試験を行うこととなりました。また、Sun が推奨している PCI のホストバスアダプタは Qlogic 社製のものとなっています。


SPARC Storage Array と StorEdge A5000 の違い

 この2つのデバイスの間で違う点はいろいろありますが、Sun microsystems からの資料によると、信頼性、可用性、保守性などの面で、主に以下の表に示す違いがあります。


SUN SPARC Storage ArraySUN StorEdge 5000
電源ユニットの冗長化なしあり
アレイのインターフェースの冗長化なしあり
ドライブのインターフェースの冗長化なしあり
ドライブのホットスワップなしあり
電源ユニットのホットスワップなしあり
冷却ユニットのホットスワップなしあり
インターフェースユニットのホットスワップなしあり
ユニットリビジョンの表示なしあり
ホストバスアダプタの状態表示なしあり
アレイインターフェースの状態表示なしあり
ループの自動フェイルオーバーなしあり

 また、使用するディスクのコネクタ形状もそれぞれで異なります。SPARC Storage Array は、ホストバスアダプタとの接続にはファイバーケーブルを使用しますが、筐体内部で使用されるインターフェースは 80PIN の SCA コネクタになっています。ですから、外部はファイバーでも、内部は SCSI という接続になっています。
 StorEdge A5000 は外部の接続にファイバーケーブルを使用することはもちろんのこと、内部も 40PIN の SCA コネクタになっており、正真正銘のファイバーチャネルでの接続になっています。


SEAGATE ST19171WC(80PIN SCA)
 
SEAGATE ST19171FC(40PIN SCA)

SEAGATE ST19171WCのラベル
 
SEAGATE ST19171FCのラベル

SEAGATE ST19171WCのコネクタ
 
SEAGATE ST19171FCのコネクタ

 ですから、一般的にはディスク単体での入手が比較的容易な SPARC Storage Array の方が個人での導入にはおすすめできるのですが、Sun microsystems から公開されている資料によると、速度は StorEdge A5000 の方がはるかに速いということなので、どちらを選ぶかは難しいところだと思います。


ホストバスアダプタの実装

 ホストバスアダプタの実装については、特に問題となることはないと思いますが、必ず BIOS が電気的に無効化されている状態で実装して下さい。
 なお、SV-98 model3 においてクロックアップをソケット化で行っている場合には、最下段の PCI スロットにはどちらのホストバスアダプタも、物理的に実装できませんのでご注意下さい。


SV-98 model3 に CPQFC を実装。


ドライバのインストール

 ドライバのインストールについては、それぞれのホストバスアダプタで若干の違いがあるので注意が必要です。

・QLA2200

 他の SCSI ホストバスアダプタなどと同様で、普通にドライバをインストールすれば問題ありません。

・CPQFC

 このホストバスアダプタに付属している INF には、3種類のドライバ定義が含まれています。

 このうち、最低限必要となるのは Compaq StorageWorks Fibre Channel Host Contorollers のみのようです。残りのドライバはどのような状況で必要になるのか不明なため、調査中です。
 ドライバのインストールが終わったら、再起動を促すメッセージが出ますので、再起動して下さい。


使用できないホストバスアダプタ

 ここまでは問題なく進行してきた今回の実験ですが、再起動後にはそれぞれのホストバスアダプタで明暗が分かれました。

 結論から言いますと、QLA2200 は SV-98 では使用することができません。ドライバのインストールまでは問題なかったので、当然使えるものと思っていたのですが、NT 4.0 の再起動後に待っていたのは「1つ以上のサービスまたはドライバが・・・」の警告メッセージでした。

 ということで、ここから先の実験は CPQFC のみで行うことになってしまいましたが、このホストバスアダプタであれば SV-98 でも使用できるということがわかりました。


ドライバインストール後の表示

 さて、CPQFC のドライバをインストールすると、コントロールパネルの SCSI アダプタのところには、次のように表示されます。


 このように、ホストバスアダプタは1枚しか実装されていないのに、2種類表示されます。なぜこのように表示されるのかは不明ですが、正常に動作しているらしいことがわかります。


Sun StorEdge A5000の設定

 ホストバスアダプタ単独で動作することがわかっても、デバイスを接続しなくては導入した意味がないというものです。ですから、今度は接続するデバイスの設定を行います。
 StorEdge A5000 の設定は、前面にあるタッチパネルで行います。


Sun StorEdge A5000 のタッチパネル部。

 ただ、内部に実装されているドライブが正常であれば、動作確認を行うというレベルで設定する必要があるのは、ループの設定ぐらいだと思います。


ホストバスアダプタとデバイスの接続

 ホストバスアダプタとデバイスをマルチモードのファイバーケーブルで接続します。ホストバスアダプタに付属していなかった、もしくは不慮の事故で折ってしまったような時には、秋葉原の愛三電気で調達するとよいでしょう。

 なお、StorEdge A5000 は単体でデュアルループをサポートしていますが、たいていの PCI のファイバーチャネルのホストバスアダプタは1つの GBIC しか搭載しておらず、SV-98 は PCI スロットの数も AT 互換機と比較すると決して多いとは言えないので、シングルループで運用するのが現実的ではないかと思います。


実験に使用したマルチモードのファイバーケーブル。


ファイバーケーブルでホストバスアダプタと SUN SPARC Storage Array を接続している。
SUN SPARC Storage Array の不調が判明したのは、この直後だった。


接続後の SCSI アダプタウィンドウでの表示

 めでたくホストバスアダプタと StorEdge A5000 が接続できたら、どのように個別のディスクがホストバスアダプタに接続されているように見えるのか、確認してみましょう。レイによってコントロールパネルの SCSI アダプタのところで見るわけですが・・・。


 このように個別にディスクが見えます。StorEdge A5000 は、前面のバックプレーンに7個、背面のバックプレーンに7個という配分でディスクが接続されていますが、この表示もそれにそった表示になっているようです。
 ただ、気になるのはディスク以外にもデバイスが接続されていることになっているらしいうえ、そのデバイスが何をするものなのか不明である、ということです。
 とはいえ、ディスクが個別に接続されていることはわかったので、次のステップとして、ディスクがシステムから認識しているかを確認してみましょう。


ディスクアドミニストレータでの表示

 はやる心をおさえつつ、ディスクアドミニストレータで確認してみると・・・。


 このように、ファイバーチャネルで接続されたドライブは、すべてオフラインとして認識されてしまっています。このままではどうにもならないので、実験的に StorEdge A5000 に実装されているディスク(SEAGATE ST19171FC SUN9.0G)を別のドライブ(SEAGATE ST118202FC)に置き換え、再度確認しましたが、状況はいっこうに変わりませんでした。

 この「ちゃんと接続されているように見えて、動いているのにオフライン」というのは、その昔にジャンクで買ってきた SCA のハードディスク接続した時に体験し、どうやっても動くようにできなかったというつらい思い出があるので、今回の結果は非常にショックでした。


今後の展望

 ということで、現在のところ NT 4.0 を使った場合に SV-98 シリーズで動作可能なものは、Compaq の CPQFC に限られます。
 ただし、このホストバスアダプタの製品情報には Compaq StorageWorks RAID Array 4100(RA4100) 専用という表記がありますので、今後はこのアレイユニットの入手が目標となります。
 ただ、今回は COMPAQ のアレイコンフィグレーションツールを使っていない状態での試験だったので、念のためにコンフィグレーションツールも使って状況が変わるかどうかを確認したいと思います。

 それから、当方の手元には今回の実験で使用した2種類のホストバスアダプタの他に Adaptec AHA-F940 と、それに使えるであろう D-sub 9Pin − HSSDC のケーブルも持っているのですが、HSSDC の GBIC を持っていないので実験ができません。かといって MIA は高いしなぁ・・・。まあ、とりあえず GBIC が手に入れば StorEdge A5000 に実装して実験してみるとは思いますが。
 また、今回は機材の調子の問題で実験することができなかった SPARC Storage Array との接続実験を次回までに行う予定ですので、どうぞご期待下さい。


連絡先

 本稿に対してご質問があれば、 にメールを送っていただければ幸いです。

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