ゲタなしでの P55C への換装
はじめに
この改造は、高速版の P54C でも非力に感じてきた場合にお勧めする改造です。私もある時期までは P54C,166MHz を3倍速で使用してきましたが、新しい CPU がある程度出揃ってきたため、再び載せかえを考えました。その時に候補に上がったのが P55C と K6 でした。私はゲタを使いたくなかったので、当初は K6 と思っていたのですが、周りの人々が「まあ K6 は動いて当然だろう」と言っていたので、どうせなら動作実績のない P55C を搭載してみよう、と思ったわけです。
なお、ここではゲタを使用しない場合の改造方法を記してあります。また、P55C を搭載するからには、200MHz 以上で駆動するということになりますので、倍率設定などの説明は省きます(理由は P55C は BF0,BF1ともに High にすることで 3.5 倍速になるためです)。
改造に必要な材料
この改造には、以下の材料が必要です。
- P55C(PPGA版)
できれば SL27 系でシリアルナンバー 73〜 までのものを用意してください(この場合 166MHz 版でも問題ありません)。シリアルナンバー 74〜 以降は倍率プロテクトがかけられていますので、233MHz 版でなければ3.5倍速設定がありません。また SPGA 版(セラミックパッケージ版)の SL27K は、過電圧と冷却効率の悪さから確実に熱暴走しますので、使用しないで下さい。
それから、この改造を行う前に ALL SCSI 化を実行しておいてください。
改造の大まかな流れ
改造は以下の手順によって行われます。
- 背面パネルを取り外す
- 電源ユニットを取り外す
- 電源ユニットの 5v および 3.3v を調整する
- CPUを載せかえる
- 本体を組み立て直す
ですから、本体を分解できない方は必然的にこの改造は行えないことになります。
電源電圧の調整
さて、P55C は動作電圧は 2.8V となっています。ですから、通常の電圧である 3.3v を調整せずに載せかえを行うと、かなりの発熱になり、熱暴走をほぼ確実におこします(一応 4v 程度までであれば P55C は破壊されないようですが)。というわけで、電源ユニットのボリュームを調整します。背面側から見て左が 3.3v 系、右側が 5v 系ボリュームです。いずれも反時計回りで電圧が下がり、時計回りで電圧が上がります。なお 3.3v 系のボリュームは、比較的大幅に回しても問題ありませんが、5v 系のボリュームは、ほんの少し回しただけでも急激に上昇および下降しますので、調整には最大限の注意をはらってください。間違っても 5.25v 以上に上げないように・・・。
当方の PC-9821 An の電源ユニットは 5v と 3.3v が同調しており、5v を上げると 3.3v も上がってしまうタイプでした。おかげでかなり苦戦しましたが・・・。結局のところ、5v 系の電圧は 4.7v 程度、そして 3.3v 系は 3.1v 程度に設定し、まともに動くようになりました。
電源電圧の調整に関する注意点
以上のように電圧を下げるわけですが、3.3v 系の I/O 電圧を下げすぎると、電源投入時の倍率設定ピン初期化時に、BF0,BF1 ともに Low 扱いになってしまい、「リセットするまで 2.5 倍速」ということになってしまうので、慎重に調整してください。加えて 5v 系を落としすぎると SCSI が正常に動作しなくなりますので御注意下さい。とは言っても、ほんの少し電圧を上げ下げしただけでパリティエラーが出て止まるので、辛抱強く調整することが必要になります。
おわりに
この改造を行うと、電源投入時の「ピポ」がものすごく速くなります。また、速度も目に見えて速くなるのですが、なにより電圧の調整が鬼門です。それさえ越えてしまえば、あとは普通どおり使用できるようになります。ただ、我が家の PC-9821 An では、P55C に載せかえて1年以上経ってから、電源投入時の倍率設定が怪しくなったので、さらなる載せかえを迫られることになりました。
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