ファイルスロットの SCSI ファイルベイ化
はじめに
最初にファイルスロットが登場した頃には、対応した周辺機器も出され、将来性があると思われていました。しかし、今ではファイルベイが主流になり、ファイルスロットは事実上、廃止されたと言ってもよいでしょう。
そこで、その空間を SCSI ファイルベイに変更し、各種の SCSI 機器を内蔵するための改造を行ってみたいと思います。
改造に必要な工具
この改造には、以下のちょっと特殊な工具が必要です。
- グラインダー
ファイルスロット内の金属レールを削り落とすときに使います。
- 鉄鋸
ファイルスロットの天井部分を切断するときに使います。
上記以外にもドライバーや、はんだごてなどの一般的な工具は、当然必要です。
改造に必要な材料
この改造には、以下の材料が必要です。
- 内蔵用 SCSI HDD のカードエッジ基板
これが入手できない場合には、自分で接続基板を作らなければなりません。
- 内蔵用 SCSI HDD のフラットケーブル部分
一時期は湘南通商で売っていましたが、今はあまり見かけないので、もしかすると自作するはめになるかもしれません。
- 機器を固定するためのネジ
機器を一定の位置で固定しておくためにネジと、横から押さえつける板のようなものが必要です。
いずれもちょっと入手しにくいですが、秋葉原を地道にまわれば入手できるはずです。それと、ファイルスロットの資料(テクニカルマニュアルなど)も入手しておいた方がいいでしょう。
改造の大まかな流れ
改造は以下の手順によって行われます。
- 本体を分解してファイルスロットの枠だけにする
- ファイルスロットの枠を改造する
- 前面パネルを改造する
- 接続基板を改造する
- 本体を組み立て直す
ですから、本体を分解できない方は必然的にこの改造は行えないことになります。
ファイルスロットの枠の改造
最初に(バックボードも外して)枠だけにしたファイルスロットの内側にある金属レール部分を、グラインダーを使って全て削り落として下さい。この時にプリント基板を保持するためのプラスチックレールを傷つけないように注意して下さい。
それが終わったら、今度は鉄鋸を使ってファイルスロットの天井部分をバックボード側から切断して下さい。ただし、この時に天井全部を切り取らないようにして下さい。切り取るのはせいぜい半分ぐらいまでにして下さい。
ここまで終わったら、切断面で手を切らないようにヤスリがけをした方がよいかもしれません。
前面パネルの改造
さて、このままで機器を増設した場合には、前面パネルがぶつかってしまうので、正しくはめられるように前面パネルを加工します。なお A-MATE 系の場合は、パネルのファイルスロット部分を外側の枠まで削り落として下さい。
接続基板の改造
次に、内蔵する SCSI 機器とカードエッジコネクタを接続する基板の加工に移ります。ここでは、内蔵用の SCSI HDD の接続基板を使う場合を説明します。
まず、枠から接続基板だけを取り外し、カードエッジ付近をよく観察します。その時に、カードエッジの端子のすぐ近くにコネクタ接続用のランドがあった場合には、そのランドを使いますので、既に接続されているフラットケーブルや電源ケーブルをコネクタごと傷つけないように外し、基板だけにして下さい。無傷でフラットケーブルを外せなかった場合には自作するか、全く同じ形状のケーブルを探してくる必要があります。
ランドがなかった場合には、かなり危険な接続方法になってしまいますので、あらかじめ中古屋などで接続基板の形状(というよりもカードエッジ付近のコネクタ用ランドの有無)をよく確認しておいて下さい。
ランドがあることを確認したら、コネクタ接続用ランドの端に近いところから基板をカッターなどで切断して下さい。ガラエポ基板の場合には切断しにくいかもしれませんが、根気よくやっていればいつかは切れます。この切断を行わないと、内蔵する機器のお尻に接続基板がぶつかってしまい、きちんと内蔵できずに出っ張ってしまうことになりますので、注意して下さい。
うまく切断できたら、切断面にヤスリがけをしておいて下さい。それが終わったら、コネクタ接続用のランドのピン番号と向きをよく確認し、あらかじめ用意しておいたフラットケーブルや電源ケーブルをハンダづけして下さい。
機器を内蔵する
本体を組み立てながら、同時に機器を内蔵します。組み立てる前にファイルベイ化したスペースに内蔵する機器を入れておいてもいいでしょう。この時にはプリント基板を保持するためのレールが残っていますから、その上に乗せる感じで内蔵して下さい。
そして、前面パネルを装着し、機器がパネルから出っ張らない程度まで押し込みます(が、この時にくれぐれも押し込み過ぎて接続基板を壊さないようにして下さい)。
自分で満足できる位置になったら、その位置を手で押さえながら、ファイルベイ化したスペースの横からネジと板で機器を押さえつけて固定します。なお、そのメーカーの機器しか将来的にも内蔵しない場合には、押さえつけて固定している板自体をファイルスロットの枠に固定してしまってもよいでしょう。一連の改造はこれで終わりです。
発生する問題
この改造によって、いろいろな面で若干の問題が発生する場合があります。以下では発生する問題と、その対処法を書いておきます。
- 本来のファイルベイよりも奥行きが短い
ファイルベイ化したスペースは、カードエッジコネクタがバックボードに存在しているなどの理由により、本来のファイルベイよりも奥行きがありません。ですから、内蔵しようとする機器の奥行きの長さには注意して下さい(だいたい 200mm 程度までなら内蔵可能なようです)。
- 内蔵できるのは SCSI 機器のみ
当然のことながら、内蔵できるのは SCSI 機器だけです。加えて、接続的にはファイルスロットに SCSI 機器を内蔵していると見なされますので SCSI 専用スロットに SCSI ボードを搭載する必要があります。
- ドライバ入手が難しい
内蔵する機器は、たいていはドライブ単体で買ってくることになりますから DOS で使用する場合には 98 用のドライバが添付されていない CD-ROM ドライブの場合には、ドライバを別途入手する必要があります。
今のところ、問題になると思われるのは以上の点だけです。ただ、あまりにも電流を必要とする機器は内蔵できませんので、あらかじめご了承下さい。
おわりに
この改造によって SCSI ファイルベイ(5インチベイ)用機器は(物理的には)ほぼ全て内蔵できるはずです。今まで遅かった CD-ROM ドライブも(寸法内であれば)好きなドライブが使えるようになります。また、その気になれば PD ドライブや CD-R ドライブすら内蔵可能ですから、それなりに効果はあるのではないかと思います。
ちなみに A-MATE 系で CD-ROM あるいはそれに準じたものを内蔵する場合には、音声出力ケーブルを LINE IN に接続することで CD の音が前面スピーカーからも出るようになります。
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