倍率設定ジャンパの作成
はじめに
既にご存じの方は多いと思いますが P54C は外部クロック対内部倍速比を2本のピン(BF0,BF1)によって定義します。さて X-MATE をはじめ、たいていの 98 では、その設定をジャンパスイッチでいろいろ変更できるようになっています。しかし、それよりも少し前の機種(もちろん PC-9821 An も含まれます)では、ジャンパスイッチはおろか、通常の状態では内部倍速比が変更できないようになっています。
そこで、最近の 98 と同様に内部倍速比を変更するためのジャンパスイッチを取り付ける改造を行ってみたいと思います。
改造に必要な工具
この改造には、ごく一般的な工具が必要になります。
改造に必要な材料
この改造には、以下の材料が必要です。
- ジャンパスイッチ
内部倍速比を手軽に切り替えるために必要です。なお、内部倍速比が固定で良いという場合には必要ありません。おすすめは3×3のジャンパスイッチです。
- 抵抗
内部倍速比を決定するピン(BF0,BF1,BF2)を GND に落とす際に、短絡防止のために使います。だいたい 1K Ω程度のものが4本程度は必要になります。
- 配線材
できるだけ細いものを用意して下さい。
- ジャンパピン
ジャンパスイッチに使用します。
改造の大まかな流れ
改造は以下の手順によって行われます。
- 本体を分解してマザーボードだけにする
- パターンをカットする
- ジャンパスイッチなどを取り付ける
- 本体を組み立て直す
ですから、本体を分解できない方は必然的にこの改造は行えないことになります。
マザーボードの改造
マザーボードを裏返して Y33(BF0) ピンと X34(BF1) ピン、および W35(BF2) ピンを探して下さい。探せたら、その各々をリード線を使って、ジャンパスイッチに接続します。
なお PC-9821 An では Y33 ピンが隣の Y34 ピンとパターンで接続されていますので、パターンカットして下さい。また、そのパターンカットによって Y34 ピンが NC になってしまいますので、Y34 を抵抗を用いて近くにある Vcc(3.3V) に接続して下さい。
続いて、ジャンパスイッチのもう一方を抵抗を経由して Vss に接続して下さい。マザーボードの改造は以上で終了です。なお、この部分の記述を読んでも、接続の方法が分からない場合には、改造しないことをおすすめします。
発生する問題
この改造によって、動作の面で若干の問題が発生する場合があります。以下では発生する問題と、その対処法を書いておきます。
- 熱暴走が起こる
改造後はペルチェと強制空冷を行うヒートシンクがあれば 75MHz 版の P54C でも 120MHz 程度までは動く場合があるそうですが、安定動作を望むならば、高速版の P54C を購入した方がよいでしょう。
- 内蔵 IDE HDD が使用できなくなる
改造したことによって CPU の速度が上がり IDE の BIOS が正常動作できなくなることがあります。この問題は内蔵 HDD を全て SCSI に変更することで解決できるでしょう。
今のところ、身の回りで起きている問題は以上の点だけのようです。ただ、状況によっては、メモリがついてこなくなるかもしれませんから、60ns のメモリに交換しておくと、安心できるかも知れません。
おわりに
最近の CPU は BF2 も使うようになっていますが、通常は BF0 と BF1 だけの改造で大丈夫なはずです。というのは BF2 を使用するのは AMD の K6 の系統なので、これらは単純に差し替えることができず、ゲタを使用せざるを得ないためです。また、P55C の 3.5 倍速のみを実現する場合には、この改造は不要です。
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