2011.08.13

hp ProLiant DL580 G4

Written by かたあま☆彡  


はじめに

 前回と前々回のSV Magazineでは、Coreマイクロアーキテクチャを採用した4ソケットサーバを取り上げましたが、今回は NetBurst 世代の4ソケットサーバである hp ProLiant DL580 G4(以下、DL580 G4 と表記) について解説していきたいと思います。

 hp ProLiant シリーズは、もともとは Compaq が販売していたサーバです。2002年に hp が Compaq を吸収合併したことにより、それまで hp が販売していた Netserver シリーズは終了し、それ以降は ProLiant シリーズが hp のサーバとして開発・販売されるようになりました。

 そのような背景から DL580G4 はCPUやチップセットに Intel 製のものを採用する一方で、Intel をはじめとしたその他のメーカーとは異なる独自の筐体やマザーボードを採用しており、Compaq 時代の「無骨なエンタープライズサーバ」の風格を現在に伝えるものとなっています。

 なお、記載されている内容については、私は一切保証しませんし、それに伴って発生した如何なる事故にも責任は負いませんので、あらかじめ御了承ください。


ProLiant DL580 G4 とは

 hp ProLiant DL580 G4は、NetBurstマイクロアーキテクチャのCPUであるXeon 7000番台を搭載する4Uサイズのラックマウント型サーバです。
 2006年5月にXeon 7041/Xeon 7030を搭載した前期モデルの発表が行われ、それから4か月後の2006年9月には後期モデルとなるXeon 7100番台を搭載したモデルが発表されました。


hp ProLiant DL580 G4

 主なハードウェア面の特徴は、

 といったところです。最終モデルでの詳しい仕様については下記の表をご覧下さい。

機種名 ProLiant DL580 G4
プロセッサー デュアルコア インテル Xeon プロセッサー
Xeon 7140M(3.40GHz/16MB L3)
Xeon 7130M(3.20GHz/8MB L3)
Xeon 7120M(3.00GHz/4MB L3)
マルチプロセッサー サポート(最大4プロセッサー)
3次キャッシュ 最大16MB
システムチップセット Intel E8501チップセット
フロントサイドバス 800MHz
メモリ PC23200レジスタ付きECC DDR2 SDRAM、2GB(最小)〜64GB(最大)
ディスクコントローラ 最大搭載数8本(2.5インチ)(ホットプラグ対応)
ネットワークコントローラ NC371iマルチファンクションGigabit NIC ×2
(WOL、PXE サポート、オンボード)
RAIDコントローラ Smart アレイP400 コントローラ(標準搭載)
表示機能グラフィックス
コントローラ
オンボードATI Radeon ES1000グラフィックスコントローラ
解像度 1,280×1,024
ハードディスクドライブ
2.5インチ 3Gbps SAS 10,000回転 72GB・146GB
2.5インチ 3Gbps SAS 15,000回転 36GB・72GB
2.5インチ SFF SATA 5,400回転 60GB・120GB
拡張スロット 64 ビット/133MHz PCI-X×1 (3.3V)・PCI Express x4(x8 コネクタ)×4
※メザニンオプションでPCI-XスロットまたはPCI Expressスロットを追加可能
コネクタ/ポート 背面:シリアル×1、USB 2.0×2、モニタ×1
前面:USB2.0×2、モニタ×1
外形寸法 176mm×445mm×673mm(高さ×幅×奥行)
重量 約38kg
ラックマウント 対応
電源定格出力 冗長構成のみ(1,300W×2基)100-240V対応電源
サーバリモート監視 Integrated Lights Out 2 (iLO2)


ハードウェアの構成

 それでは、DL580 G4 がどのようなハードウェア構成になっているかを見ていきたいと思います。

(1)DL580 G4の前面
 向かって左側はCPUが実装されるボックスとメモリバックボードで占有されており、右側に2.5インチのSASハードディスクを8台まで内蔵できるハードディスクドライブベイやスリムラインDVD-ROMドライブ、ステータスインジケータ、UnitIDスイッチ、RGBコネクタ、USB 2.0ポートが集まるレイアウトとなっています。


hp ProLiant DL580 G4 前面


CPUボックス・メモリバックボード


電源スイッチ・UnitIDスイッチ・RGBコネクタ・USB 2.0ポート・ハードディスクドライブベイ・光学ドライブ


モデル名はフロントパネルの右側に小さく記載される

(2)DL580 G4の背面
 本体の背面には

 がそれぞれ用意されています。


hp ProLiant DL580 G4 背面


LANコネクタ・USB 2.0ポート・シリアルポート


RGBコネクタ・管理用LANコネクタ・UnitIDスイッチなど

(3)DL580 G4の側面
 DL580 G4は重量級のサーバのため、複数人で持ち上げるための取っ手が本体の両側面に用意されています。


本体の両側面には持ち上げるための取っ手が埋め込まれている

 この取っ手には樹脂製のコーティングが行われており、サーバを運搬する際には手前に引き出して利用します。なお、この取っ手を使えば1人でも持ち上げられないことはありませんが、非常に重いので腰を痛めないように注意してください。

(4)内部全景
 内部はかなりの密度で各コンポーネントが実装されており、ファンの多さが目に付きます。空間と呼べる部分はPCI Expressスロットの周辺と、電源ユニットの上部だけとなっています。


トップカバーはラッチを持ち上げて取り外す方式が採用されている


DL580 G4の内部全景


マザーボード部分の拡大(内部フレーム実装時)


マザーボード部分の拡大(内部フレーム撤去時)


内部には拡張スロットの位置やマザーボードの取り外し方などが記載されている


トップカバーには前面からアクセスできるコンポーネントの取り外し方などが記載されている


この個体の製造年月日は2007年7月2日となっていた

(5)電源ユニット
 電源ユニットにはhp製のものが使われていて、障害発生時にはホットスワップが可能になっています。
 この電源ユニットは100V・200Vのどちらにも対応できますが、最大出力は100Vの環境では910W、200Vの環境では1300Wとなっているため、100V環境で運用する際にはCPU・メモリ・ハードディスクの最大搭載量に制限があります。


最大で2個搭載される1300Wの電源ユニット


OEM元の表記はなくhp製の電源ユニットが使用されている


100V環境では最大出力が910Wなので本体の構成に制限が加わる

 一般的な電源ユニットと異なる点としては、給電のためのコネクタ形状があげられます。一般的なサーバの電源ユニットはC13コネクタのケーブルを使用しますが、この電源ユニットはC19コネクタを持った電源ケーブルを要求します。


運用にはC19コネクタの電源ケーブルが必要になる

 C19コネクタと並行二極アース付(NEMA 5-15P)の組み合わせになっている電源ケーブルはあまり見かけないうえ、見かけても高価なので変換ケーブルを作成しました。


C13コネクタをC19コネクタに変換するためのケーブル

(6)冷却ファン
 本体内部にはCPUボックスとメモリバックボードの冷却用に4個、ハードディスクドライブベイの冷却用に2個搭載されており、PWMによって回転数の制御が行われています。障害発生時にはホットスワップが可能ですが、本体のトップカバーを開けて交換するようになっています。

 使用されているファンはNidec VA450DCで、MAGNIA 7505R や PowerEdge R900 に使用されているものと同じ1分間の回転数が5,300回転という爆音モデルです。
 さらに、搭載されている個数が6個と多いこともあり、稼働時の騒音が非常に大きいという難点があります。


CPUボックスとメモリバックボード用の冷却ファンは4個


ハードディスクドライブベイ用の冷却ファンは2個


ファンは Nidec V34809-90(VA450DC) が使用されている


ホットスワップ可能なコネクタでの接続になっている


マザーボード側のファンコネクタ

 なお、DL580 G4は本体の電源が切れている状態でも、電源ケーブルが接続されているとファンが低速で回転してしまう仕様のため、待機時にも少なからず騒音が発生します。これは一般家庭で使用する場合には、非常に大きなマイナスポイントです。
 そのため、当方の環境では個別スイッチ付きの電源タップを間に入れ、非稼働時は電源タップのところで電気を遮断する方法を採用することで、家人からの追及を逃れています。

(7)2.5インチSASハードディスクドライブ
 ハードディスクのインターフェースにはSASが使用されています。2.5インチのSASまたはSATAハードディスクを8台まで内蔵することができ、障害発生時にはホットスワップ可能となっています。


2.5インチのSASまたはSATAディスクが8台まで搭載できるドライブベイ


2.5インチSATAハードディスク

 当方が入手した個体は、ハードディスクが全く装着されていない状態だったので、ディスクは費用と容量のバランスを考慮して日立グローバルストレージ製のSATAドライブ HTS54032B9A300 を8台搭載しています。


HGST製のSATAハードディスク HTS54032B9A300(5,400回転) を搭載した


ハードディスクをマウンタに固定するネジには低頭ネジが使用される

(8)光学ドライブ
 標準で搭載されている光学ドライブはTEAC製のDV-28Eで、ATAPIインターフェースのモデルでした。しかし、このDV-28EはDVD-ROMは読めるものの、DVD-RおよびDVD-RWの書き込みができないという大きな問題があったので、即座にパイオニア製の DVR-KD08 に換装しました。


標準搭載の光学ドライブはパイオニア製の DVR-KD08 に換装


本体のバックプレーンとの接続コネクタは専用形状になっている

 なお、DL580 G4には光学ドライブとフロッピードライブを搭載するためのベイが1つずつ用意されていますが、本体とそれぞれのドライブを接続するマウンタのコネクタは共通になっています。
 ですから、フロッピードライブをUSB経由の接続などで対応すれば、2つのベイを光学ドライブだけで占有することも可能です。


上側のベイはフロッピードライブのアイコンが書かれているがコネクタは共通

 というワケで、2台目の光学ドライブとしてパナソニック製のBDドライブ UJ-220 を搭載することにしました。
 このドライブは専用のマウンタに固定するためのねじ穴の位置が合わない箇所があったため、加工したワッシャーを間に挟んで固定しました。


2台目の光学ドライブにはパナソニック製の UJ-220 を選択


加工したワッシャーを使用して専用のマウンタに固定


無事に2種類の光学ドライブが実装された

 なお、BIOSからは上側のベイに搭載したドライブの方が若いドライブ番号で認識されますので、運用方法に合わせてドライブの種類と実装するベイを決めるとよいでしょう。

(9)インサイトディスプレイ・RGBコネクタ
 光学ドライブ用のベイの後ろ側には、インサイトディスプレイが設置されています。ファンの動作状態やPCIバスのパリティエラーの確認、プロセッサやメモリのエラー状況などを確認することができます。


インサイトディスプレイでは本体内部の状況を確認できる

 また、インサイトディスプレイが接続されるバックプレーンにはビデオ出力のコネクタがあり、このコネクタと本体前面のRGBコネクタが接続されています。


バックプレーンにはビデオ出力コネクタが用意されている


バックプレーンから出たケーブルの先端は本体前面のRGBコネクタになっている

(10)CPUボックス・ヒートシンク・VRM
 DL580 G4のCPUは前面からアクセスできるCPUボックスに搭載されています。CPUボックスにはCPUソケット・VRMソケット・Intel E8501チップセットが搭載されています。
 CPUボックスとマザーボードを接続するコネクタには非常に高密度なものが使われており、このあたりは Express5800 140Re-4 などと似通った構造となっています。


DL580 G4の心臓部ともいえるCPUボックス


CPUボックス背面にはマザーボードに接続するためのコネクタがある


マザーボード接続用のコネクタには非常に高密度なものが使用されている

 CPUボックスは取っ手に相当する部分を下げてロックを解除し、青いつまみを上に持ち上げることで内部にアクセスすることができます。
 DL580 G4は発熱量の多いCPUが搭載されるため、ヒートシンクは銅製のものが採用されています。


CPUボックスを開けるには取っ手の部分を下げてロックを外す


青いつまみを上に持ち上げると蓋が開く


CPUボックスの蓋の裏側にはCPUやVRMの実装手順が記載されている


ヒートシンクには熱伝導性に優れた銅製のものが採用されている


VRMはCPUの個数に合わせて実装しなければならない

 ヒートシンクにはCPUを固定するためのプラスチック部品が取り付けられています。他のメーカーのサーバではソケットにCPUを取り付け、その上にヒートシンクを載せてバネやビスを使って固定する構造のものが多いですが、DL580 G4ではヒートシンク側にCPUを固定してモジュール化しておき、それをソケットに実装する方式が採られています。


ヒートシンクには緑色の樹脂部品が取り付けられている


CPUは樹脂部品のツメによってヒートシンク側に固定される

 また、この個体は Xeon 7110M が2個搭載されたモデルでしたが、せっかくなのでXeon 7140Mを4個搭載することにしました。


Intel Xeon 7140M 3.40GHz

 CPUよりも大きなヒートシンクが取り付けられているので、ソケットに実装する際の位置決めはヒートシンクに空けられた3個の楕円形の穴を使って行います。また、緑色の樹脂部品はCPUソケットのレバー操作を妨げない形状になっています。


CPUソケットを囲む枠にはヒートシンクの穴に対応する「位置決めピン」がある


緑色の樹脂部品はCPUソケットのレバー操作を考慮した形状になっている


Intel Xeon 7140M は正常に認識されている


搭載されているCPUの情報はPOST中に表示される

(11)チップセットとI/Oコントローラハブ

 DL580 G4はチップセットとしてIntel E8501が採用されており、その下にI/OコントローラハブのIntel 82801ESBが接続されています。Intel E8501チップセットはCPUボックスの中央付近の銀色のヒートシンクの下に鎮座しています。


CPUボックスの中央付近にある銀色のヒートシンク


Intel E8501 チップセット NQ84010TNB

 また、I/OコントローラハブのIntel 82801EBはマザーボードの電源ユニットの下あたりに実装されています。


Intel 82801EB I/Oコントローラハブ

(12)メモリおよびメモリバックボード
 DL580 G4ではメモリバックボードを使ってメモリを搭載しています。メモリバックボードは本体に最大で4枚搭載することが可能で、メモリバックボード1枚につきDIMMスロットが4つずつ用意されています。
 使用するメモリはPC2-3200のRegisterd ECCのもので、この世代のサーバはメモリよりもCPUで大きな電力を消費するアーキテクチャになっています。


メモリバックボードには防塵カバーが取り付けられている


バックプレーンとはカードエッジコネクタで接続される


DIMMスロットは1枚のメモリバックボードに4つ用意されている

 このメモリバックボードは電源投入時でも取り外すことが可能になっており、運転中のメモリの追加や交換を行うことができます。
 また、耐障害性を考慮したオンラインスペアの設定だけでなく、搭載されたメモリの構成によって

 を選択することが可能です。このあたりはミッションクリティカルな環境で運用されるエンタープライズサーバならではの機能といえるでしょう。

 なお、本体にメモリバックボードを実装したら、ダイヤル式のロックスイッチを必ずロックしなければなりません。このロックを忘れてしまうと、電源ボタンを押しても電源が入らないので、注意が必要です。


本体に実装したらロックスイッチを必ずロック側に設定する

(13)SASアレイコントローラ
 この本体にはSASのアレイコントローラが搭載されていますが、オンボードではなくPCI Expressカードの形態となっています。実装されているのは hp SmartArray P400で、カード上にはSFF-8484を接続するコネクタが2つ実装されています。
 なお、このSmartArray P400はPCI Express x8に対応したカードですが、DL580 G4はPCI Expressスロットの速度が x4 となっています。そのため、後述するPCI Express x4-x8 バスエクスパンダを入手できないと、カード本来の転送速度が出せないことになります。


hp SmartArray P400(バックアップバッテリ付)


コントローラは LSI Logic のLSISAS1078


キャッシュメモリは 512MB を搭載している


バックアップバッテリは電源ユニットの上側に固定される

 このアレイコントローラからSASハードディスクドライブベイのSASバックプレーンまで、SFF-8484のケーブルが2本接続されています。ちなみにSmartArray P400は、SFF-8484を接続するコネクタの実装方向やプロファイルによって、複数のバリエーションが存在します。

 ディスクアレイの管理にはBIOSに含まれているコンフィグレーションユーティリティのほか、Windowsからはhpが提供しているHPアレイコンフィギュレーションユーティリティが利用できるようになっています。


HPアレイコンフィギュレーションユーティリティのディスクアレイ管理画面


コントローラのステータスに異常が発生するとメッセージが表示される

 また、SmartArray P400はハードディスクドライブの温度も監視している模様です。そのため、あらかじめ設定されている閾値を超えるとPOST時にオーバーヒートの警告がベイ番号とともに表示されます。


ハードディスクドライブの温度が閾値を超えると警告が表示される

(14)Integrated Lights-Out 2(iLO2)
 DL580 G4にはリモート管理機能として、Integrated Lights-Out 2(iLO2)が搭載されており、その多彩な機能を提供するチップは電源ユニットの下あたりに実装されています。


リモート管理コントローラ iLO2

 Integrated Lights-Out 2を利用してサーバを管理する場合には、本体背面の専用のLANポートにネットワークケーブルを接続しておく必要があります。

(15)ネットワークコントローラ
 オンボードのネットワークコントローラとしてギガビット対応のBroadcom BCM5706が2つ搭載されています。このネットワークコントローラは「NC371iマルチファンクションGigabitサーバアダプタ」という呼称になっていて、TCP/IPオフロードエンジン(TOE)に対応しています。


NC371iマルチファンクションGigabitサーバアダプタ(Broadcom BCM5706)


ネットワークコントローラはマザーボード上に2つ搭載される

 ネットワークコントローラについての設定は、HPネットワークコンフィギュレーションユーティリティを使用して行います。このユーティリティでは、チームの設定や統計情報の閲覧ほか、オプションライセンスのインストールが行えます。


HPネットワークコンフィギュレーションユーティリティのチーム設定画面


仮想NICのチームタイプは「自動」を含めた全7種類の中から選択できる


チームのMACアドレスとTOEに関連する項目の設定画面


構成された仮想NICの情報が表示できる


チームの使用率やスループットはグラフによるリアルタイムの確認が可能


オプションライセンスを登録することでiSCSIが利用可能になる

(16)PCI Expressスロット・PCI-Xスロット
 DL580 G4には標準で4本のPCI Expressスロットと1本のPCI-Xスロットが用意されていますが、ホットプラグには対応していません。また、PCI Expressスロットは全てのスロットの帯域が x4 となっているので、x8 対応のカードを実装すると速度の低下が発生します。


4本のPCI Expressスロットは帯域が全て x4 となっている

 この看過できない帯域の狭さを解決するには、PCI Express x4-x8 バスエクスパンダが必要になります。このカードは「隣接したスロットを x8 の帯域にすることができる」というもので、DL580 G4では拡張スロット5と拡張スロット7に実装することが可能になっています。

 当方の環境ではSmartArray P400を実装しているだけでなく、グラフィックカードの増設も計画されていたため、確実に2枚必要になる計算でした・・・が、国内では既に流通在庫も消滅しており、レイによって海の向こうから取り寄せることになりました。


PCI Express x4-x8 バスエクスパンダ


裏側にも部品らしきものは実装されていない

 手元に届いたカードを見たときには「こんなもので本当に帯域が x8 になるのか・・・?」という心境になりましたが、実装してみた限りではちゃんと x8 に拡張されているようです。

(17)メザニンオプション
 DL580 G4には拡張スロットを増やすためのメザニンオプションが用意されており、いずれもオプションとなっています。種類は以下の3つがあり、このうちの1つを実装することが可能です。

 当初はグラフィックカードのためにPCI Express x8 メザニンオプションを調達するつもりでしたが、作成される x8 スロットは電源ユニットのすぐ横の位置になり、隣接スロットを占有する大型のカードは実装できないことが判明しました。
 また、それと時を同じくして前述の PCI Express x4-x8 バスエクスパンダの入手に目処が立ったこともあり、ホットプラグPCI-X メザニンオプションを導入しました。


ホットプラグPCI-X メザニンオプション


裏側の2つのコネクタでマザーボードに接続される


マザーボード側のメザニンオプション用コネクタ


増設されたホットプラグPCI-Xスロット


ホットプラグの制御は固定用ラッチのスイッチで行う

(18)グラフィックコントローラ
 グラフィックコントローラはマザーボード上にATI ES1000が実装されています。解像度は1,280×1,024となっていますが、色数を増やした場合に描画速度が非常に遅くなるという問題があります。


グラフィックコントローラ ATI ES1000

(19)ディップスイッチ
 マザーボード上には2つのディップスイッチがあり、それぞれ「SW1」と「SW2」というシルク印刷がされています。


マザーボード上の2つのディップスイッチ

 このうち、SW1はシステムメンテナンススイッチとなっていて、設定内容は以下の通りとなっています。

番号設定項目OFFON
1iLO2のセキュリティ有効(Default)無効
2システム構成の変更変更可(Default)変更不可
3ReservedReserved
4ReservedReserved
5本体パスワードの設定保持(Default)クリア
6不揮発メモリの内容保持(Default)クリア
7ReservedReserved
8ReservedReserved

 もう片方のSW2には「CORE FREQ」というシルク印刷がされているので、CPUのコア周波数を変更するためのものではないかと思われますが、詳細は不明です。
 また、これらのディップスイッチの近くにはリセットスイッチがあり、電源スイッチを実装するためのランドも用意されています。


グラフィックカードの増設

 今回もやって参りました、グラフィックカードの増設コーナーです。DL580 G4はオンボードでATI ES1000が搭載されているため、それを使って画面を表示しています。
 ただし、ATI ES1000 はATI RADEON 7000相当のグラフィックチップということもあり、高い解像度での描画速度の遅さは耐え難いものがあります。そこで、レイによってグラフィックカードを増設することにしました。

 なお、DL580 G4もPCI Express x8形状のスロットまでしか搭載されていないので、PCI Express x16のグラフィックカードを増設する場合は、スロットの端を切削してエッジフリー化を行う必要があります。


エッジフリー化を行ったPCI Expressスロット

 DL580 G4はMAGNIA 7505RやPowerEdge R900と同様に、PCI Expressスロットの A1 と B48 の信号線をジャンパ線によって短絡しておかないと、グラフィックカードを認識してくれないので注意が必要です。

 補助電源を使用しないグラフィックカードであればこれで改造は終わりですが、今回も補助電源を要求するカードを搭載することが確実なため、追加で改造を行いました。  このDL580 G4も比較的最近のサーバなので、「4ピンの電源ケーブル」などというものは用意されていません。そこで、基板に電源ケーブルをハンダ付けして、補助電源を作成しました。

 電源はハードディスクドライブベイが接続されるバックプレーンから取り出しました。これは、ハードディスクにはそれなりの電流が流れることが想定されており、PowerEdge R900での改造で既に実績もあるためです。


ハードディスクドライブベイが接続されるバックプレーン


電源端子の裏側に4ピンの電源ケーブルをハンダ付けする


内部フレームの取り付けにも支障は出ない


バックプレーンからの電源ケーブルは本体後部で分岐・変換される


補助電源ケーブルを8ピンと6ピンに分岐している

 本体の拡張スロットピッチは一般のコンピュータと同様なので、隣接スロットを占有するグラフィックカードでもブラケット部を1スロットに変更する必要はありません。ただし、本体の背面パネルにはブラケットの位置を固定するための突起があるので、それを撤去することになります。


隣接スロットの占有に邪魔な突起を撤去

 また、グラフィックカードの搭載試験を通して、DL580 G4はデュアルGPUのグラフィックカードしか認識しない仕様であることが判明したため、実装できるカードの選択肢が非常に狭くなりました。
 当方の環境では、NVIDIA Geforce GTX 295・ATI Radeon HD 4870 X2・ATI Radeon HD 5970 の3種類のカードについて、Windows Server 2003 で動作試験を行いました。


NVIDIA Geforce GTX 295(ASUS ENGTX295)


ATI Radeon HD 4870 X2(MSI R4870X2)


ATI Radeon HD 5970(ASUS EAH5970)

 このうち、NVIDIA Geforce GTX 295 については、ドライバをインストールしている最中にSTOPエラーで固まるという残念な結果に終わりました。
 残りの2枚については、ドライバは互換性の設定を Windows XP にすることで問題なくインストールが完了し、日常の使用では特に問題は見られませんでしたが、一部の3D系ベンチマークソフトが正常に動作しなかったので、ゲームによっては問題が出るかもしれません。

 ということで、ATI系のデュアルGPUカードなら動作する可能性が高いと思われますが、消費電力との兼ね合いもあることから、現時点では ATI Radeon HD 4870 X2 で運用しています。

 なお、隣接スロットを占有するグラフィックカードを固定する際、本体のラッチのみではカードの重量に負けてぐらつきが発生するため、カードのブラケットにエプトシーラーを追加して密着性を上げた方がよいでしょう。
 また、PCI Express x4-x8 バスエクスパンダを実装することにより、グラフィックカードも x8 の速度で利用できるようになります。


ブラケット部にはエプトシーラーを追加


バスエクスパンダ+ATI Radeon HD 4870 X2での運用に落ち着いた


BIOSのセットアップユーティリティでも正常に認識されている


音源カードの実装

 グラフィックカードの次は音源カードの実装です。通常であれば安定動作する可能性の高い X-Fi Xtreme Audio PCI-e MSI X38 Audio Card を選択するのですが、4本あるPCI Expressスロットはアレイコントローラとグラフィックカード、そしてそれぞれに対するバスエクスパンダによって消費されています。

 そのため、今回はPCIスロット用の音源カードである Sound Blaster Audigy LS を選択しました。このカードは3.3VのPCIスロットにも実装できるという特徴を持っているため、DL580 G4のPCI-Xスロットにも問題なく搭載することができます。


Sound Blaster Audigy LS


システム情報について

 現状では Windows Server 2003 を導入して試験運転を行っている段階で、システムの各種情報は以下の通りとなっています。


各種ベンチマーク結果について

 各種のベンチマーク結果は以下の通りです。ディスクアレイはライトバックの設定で動作しています。なお、FF14ベンチマークは正常に動作しなかったため、結果は掲載しておりません。


※その他の機種のCrystalMark 2004R3の結果はこちら(別ウィンドウで開きます)


設定は「1024x768」・「最高」
※その他の機種のゆめりあベンチの結果はこちら(別ウィンドウで開きます)


※その他の機種のCINEBENCHの結果はこちら(別ウィンドウで開きます)


参考文献

hp ニュースリリース「大企業の基幹システム構築に最適な、x86サーバのハイエンドモデル新製品」
http://h50146.www5.hp.com/info/newsroom/pr/fy2006/fy06-105.html

hp ニュースリリース「基幹システム向けハイエンドx86サーバで、業界最高性能を発揮する最新CPU搭載 新モデルを発売」
http://h50146.www5.hp.com/info/newsroom/pr/fy2006/fy06-171.html

ProLiant DL580 Generation 4 システム構成図(PDF)
http://h50146.www5.hp.com/products/servers/proliant/system_pdf/dl580g4.pdf

ProLiant DL580 Generation 4 User Guide (PDF)
http://bizsupport2.austin.hp.com/bc/docs/support/SupportManual/c00536530/c00536530.pdf

ProLiant DL580 Generation 4 Maintenance and Service Guide (PDF)
http://bizsupport2.austin.hp.com/bc/docs/support/SupportManual/c00536525/c00536525.pdf

Technologies for the ProLiant ML570 G4 and ProLiant DL580 G4 servers(PDF)
http://h20000.www2.hp.com/bc/docs/support/SupportManual/c00795607/c00795607.pdf


おわりに

 数年前のSV MagazineにてExpress5800/140Re-4にXeon 7100番台を載せようとして撃沈したレポートをお伝えしましたが、その時から「なんとしてもNetBurst世代の最上位機種をこの手に」という野望をずっと抱いていました。

 今回のDL580 G4の導入によって、その野望はめでたく達成されてしまったわけですが、最初から Xeon 7110M が搭載されていた個体だったこともあり、最上位プロセッサである Xeon 7140M への換装も非常にスムーズに行うことができました。

 メーカーが非保証のCPUの載せ替えを行って、自分が希望する仕様への変更に成功したわけですから、本来ならばもう少し喜んで然るべきなのでしょうが、今回はあまりにもあっけなく載せ替えられたので、ちょっと物足りなく感じてしまっているのも事実です。

 DL580 G4のCPUボックスについて調査してみたところ、Xeon 7041を搭載したモデルでも同じ基板を使用しているようですし、Opteronを搭載したProLiant DL585 G2では、適切なVRMを用意すればProLiant DL585 G5相当までのCPUアップグレードが可能らしいので、個人的には「hpはCPUのアップグレードに寛容なメーカーである」という印象を持ちました。あとは運転時の轟音が何とかなればよいのですが・・・。

 さて、昨年はゴールデンウィークが終わったあたりからCoreマイクロアーキテクチャの4ソケットサーバの導入に明け暮れていましたが、今年になってからは新しいサーバの導入は行われていません。

 今後はNehalem-EXを搭載した4ソケットサーバの導入を早期に実現したいところですが、出荷されている台数がそれなりに少ないと想像されることから、手元に来るのはもうしばらく先になりそうな感じです・・・というようなことを書いておくと、コミケ終了後に目的の機種を入手するチャンスが巡ってくることが多い気がします(ぉ。


連絡先

 本稿に対してご質問があれば、 kataama@fides.dti.ne.jp にメールを送っていただければ幸いです。

本稿に記載されている内容の無断転載・使用を禁じます。

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