2010.12.31

DELL PowerEdge R900

Written by かたあま☆彡  


はじめに

 前回のSV Magazineでは、Coreマイクロアーキテクチャを採用した4ソケットサーバである東芝 MAGNIA 7505R を取り上げましたが、夏コミ終了後しばらくして、今度は DELL PowerEdge R900 を入手する機会に恵まれました。

 PowerEdge R900 はチップセットに Intel 7300を搭載している4ソケットのサーバで、MAGNIA 7505R の姉妹機と呼んでも差し支えない機種なのですが、ハードウェアレベルでどのような違いがあるのか等の情報も含めてレポートをお送りしたいと思います。
 ちなみに、ここ数年のDELLのハイエンドサーバは「Intelのリファレンスモデルと似ているけれども、微妙に違う」という傾向があるようで、

 という対応関係が見られます。

 なお、記載されている内容については、私は一切保証しませんし、それに伴って発生した如何なる事故にも責任は負いませんので、あらかじめ御了承ください。


PowerEdge R900 とは

 DELL PowerEdge R900はCoreマイクロアーキテクチャのCPUであるXeon 7200番台またはXeon 7300番台を搭載する4Uサイズのラックマウント型サーバで、2007年11月中旬に発表が行われ、最終モデルではXeon 7400番台を搭載したモデルも用意されました。


DELL PowerEdge R900

 主なハードウェア面の特徴は、

 といったところです。最終モデルでの詳しい仕様については下記の表をご覧下さい。

機種名 PowerEdge R900
プロセッサー インテル Xeon プロセッサー
X7460(6コア/2.93GHz/16MB L3)/E7450(6コア/2.40GHz/12MB L3)
L7455(6コア/2.13GHz/12MB L3)/E7420(6コア/2.13GHz/8MB L3)
E7330(4コア/2.40GHz/6MB L2)/E7310(4コア/1.60GHz/4MB L2)
マルチプロセッサー サポート(最大4プロセッサー)
3次キャッシュ 最大16MB
システムチップセット Intel 7300チップセット
フロントサイドバス 1066MHz
メモリ FBD 667MHz SDRAM、4GB(最小)〜256GB(最大)
ディスクコントローラ 最大搭載数5本(3.5インチ)または8本(2.5インチ)(ホットプラグ対応)
ネットワークコントローラ オンボード4ポートBroadcom NetXtreme II 5708
ギガビットネットワークコントローラ(TOE機能付)
RAIDコントローラ SAS 6i/R(オプション)
または
PERC 6/i:3.0Gb Port(256MBキャッシュ搭載)(オプション)
または
PERC 6/E:3.0Gb Port(256MBまたは512MBキャッシュ搭載)(オプション)
表示機能グラフィックス
コントローラ
オンボードATI Radeon ES1000グラフィックスコントローラ(32MB SDRAM)
解像度 最大1,600×1,200
ハードディスクドライブ
2.5インチ 6Gbps SAS 10,000回転 300GB・600GB
2.5インチ 3Gbps SAS 10,000回転 73GB・146GB・300GB
2.5インチ 3Gbps SAS 15,000回転 36GB・73GB
3.5インチ 3Gbps SAS 10,000回転 300GB・400GB・600GB
3.5インチ 3Gbps SAS 15,000回転 73GB・146GB・300GB・450GB・600GB
3.5インチ ニアラインSAS 7,200回転 500GB・750GB・1TB
3.5インチ SATA 7,200回転 2.0TB
テープバックアップドライブ
(オプション)
対応(外付けのみ)
拡張スロット PCI-Expressスロット 7本(x8:4本+x4:3本)
コネクタ/ポート 背面:シリアル×1、USB 2.0×2、モニタ×1
前面:USB2.0×2、モニタ×1 内部:USB2.0×1
外形寸法 172.7mm×447mm×701mm(高さ×幅×奥行)
重量 41.73kg(最大構成時)
ラックマウント 対応
電源定格出力 冗長構成のみ(1,570W×2基)100-240V対応電源
可用性 ホットプラグ対応メモリライザーカード、SDDC付きFBDメモリ、
メモリスペアローおよびメモリミラーリング(オプション)、
ホットプラグ対応PCI Expressスロット、ホットプラグ対応SCSIディスクドライブ、
ホットプラグ対応冗長化電源、ホットプラグ対応冗長化ファン、
ツールレスシャーシ、可用性の高いファイバチャネルとSCSIクラスタ(オプション)
ハードウェア監視システム 対応(プロセッサー、システムボードの温度・電圧監視、
ファンON/OFF監視およびオートリセット機能)、IPMI2.0準拠
サーバリモート監視 サポート(IPMI2.0準拠または、オプションのオンボードDRAC5)
サーバマネジメント
ソフトウェア
Dell OpenManage 5.3


ハードウェアの構成

 それでは、PowerEdge R900がどのようなハードウェア構成になっているかを見ていきたいと思います。

(1)PowerEdge R900の前面
 PowerEdge R900には他のPowerEdgeシリーズと同様のデザインの銀色のフロントパネルが用意されていますが、購入時のカスタマイズで「フロントパネルなし」を選択することもできるようになっています。
 そのためか、当方が入手した個体にはフロントパネルは付属していませんでした。  前面には3.5インチのSASハードディスクを5台まで内蔵できるハードディスクドライブベイやスリムラインDVD-ROMドライブ、ステータスインジケータ、RGBコネクタ、USB 2.0ポートがあります。


DELL PowerEdge R900 前面


ステータスインジケータ・電源スイッチ・RGBコネクタ・USB 2.0ポート・冷却ファン


SASハードディスクドライブベイ


標準搭載のDVD-ROMドライブ・冷却ファン

(2)PowerEdge R900の背面
 本体の背面には

 がそれぞれ用意されています。


DELL PowerEdge R900 背面


冷却ファン・USB 2.0ポート・RGBコネクタ・シリアルポート


冷却ファン・LANコネクタ・管理用LANコネクタ・UnitIDスイッチなど

 なお、PowerEdge R900はシリアルポートが背面に1つしか存在しないため、BIOSセットアップメニューで

 のいずれかに設定する仕組みになっています。なお、MAGNIA 7505Rで Serial port A: に割り当てられる本体内部のコネクタの場所はランドになっています。


本体内部に用意されているはずのシリアルポートはランドになっている

(3)内部全景
 MAGNIA 7505Rと似通った設計になっているため、内部はかなりの密度で各コンポーネントが実装されています。空間と呼べる部分はPCI Expressスロットの周辺だけとなっています。


トップカバーはラッチを持ち上げて取り外す方式が採用されている


PowerEdge R900の内部全景


PowerEdge R900の内部全景(CPU保護カバー取り外し時)


トップカバーの裏にはメモリの増設方法やジャンパの位置などが記載されている

(4)電源ユニット
 電源ユニットにはデルタ製の1570Wの平たい形状のものが使われていて、障害発生時にはホットスワップが可能になっています。この電源は100V・200Vのどちらにも対応できる電源で、標準で2台搭載されています。
 金属製のリリースレバーは黒色で、この部分は MAGNIA 7505R と異なる点となっています。


電源ユニットは平たい形状でリリースレバーが黒い


DELLのロゴが入ったデルタ製のDPS-1570CB(1570W)が使用されている

(5)前面ファン
 本体前面にはCPUおよびメモリを冷却するためのファンが左右に2つずつ搭載され、PWMによって回転数の制御が行われるようになっています。障害発生時にはホットスワップが可能ですが、本体のトップカバーを開けて交換するようになっています。

 使用されているファンはNidec VA450DCで、MAGNIA 7505Rに使用されているものと同じ1分間の回転数が5,300回転という爆音モデルなのですが、PWM制御の設定が異なっているようで、通常運転時は MAGNIA 7505R よりもはるかに静かです。


ファンは12cm・38mm厚・5,300rpmのファンが2つずつ実装されている


ファンは Nidec V34809-35(VA450DC) が使用されている


ファンからの配線とコネクタからの配線を途中で繋いでいるようだ

 あまりにも騒音がひどい場合には静音化改造も視野に入れていましたが、概ね Express5800 180Ha と同じくらいなので、今のところその必要はなさそうです。
 なお、ファン本体からコネクタまでの配線の長さには余裕があるので、静音化改造が必要になった場合にも、作業は容易に実施できると思われます。

(6)3.5インチSASハードディスクドライブ
 ハードディスクのインターフェースにはSASが使用されています。3.5インチのハードディスクを5台まで内蔵でき、障害発生時にはホットスワップ可能となっています。


3.5インチSATAハードディスク

 当方が入手した個体は、ダミートレイが5個実装されている状態だったので、ディスクは費用と容量を考慮して日立グローバルストレージ製のSATAドライブ HDS721050CLA362 を5台搭載しています。


HGST製のSATAハードディスク HDS721050CLA362(7,200回転) を搭載した

(7)DVD-ROMドライブ
 標準で搭載されているDVD-ROMドライブは東芝SAMSUNG製のTS-L462で、ATAPIインターフェースのモデルです。マザーボード上にはATAPIのコネクタは存在しませんが、SASバックプレーン部に用意されている専用コネクタに接続するようになっています。
 なお、SASバックプレーンにはマザーボード上に用意されているSATAコネクタからのケーブルを接続できるようになっており、SATAインターフェースのDVD-ROMドライブが用意されています。


DVD-ROMドライブは専用のマウンタを介して取り付けられている


ドライブは東芝SAMSUNG製の TS-L462 が搭載されていた


SASバックプレーンとの接続コネクタは専用形状になっている

 TS-L462はDVD-ROMは最大8倍速・CD-ROMは最大24倍速で読み取ることができます。書き込み機能についてはCD-RやCD-RWの書き込みには対応しているものの、DVDの書き込みは全くできないドライブなので注意が必要です。
 ベゼルにはGBASベゼルが採用されているため、最近のスリムドライブであれば容易に換装が可能です。

(8)CPUとヒートシンク・VRM
 PowerEdge R900のマザーボードは1枚で構成されていて、CPUはシックスコアのXeon X7460が最大で4基まで搭載できるようになっています。VRMユニットは4ソケット分が最初からオンボードで実装されています。


4つの巨大なヒートシンクが目立つ


CPU1およびCPU2で使用されるVRMユニット


CPU3およびCPU4で使用されるVRMユニット

 ヒートシンクについては、PowerEdge 6850以降のモデルから形状が変更されていて、部品番号も新たに設定されています。
 そのため、PowerEdge 6800用のヒートシンクが実装できないように、CPUソケットの周囲の樹脂製の枠には物理的な突起が作られています。

 当方が入手した個体はCPUが全く搭載されておらず、おまけにヒートシンクも2つしか付属していなかったので、手持ちのPowerEdge 6800用のヒートシンクが使えるように枠の突起を削りました。


CPUの周囲にはヒートシンクの固定に使用する樹脂製の枠が取り付けられている


PowerEdge 6800用のヒートシンクを取り付けられるように邪魔な突起を除去

 なお、搭載するCPUについては、レイによって海の向こうから Intel Xeon L7345 を4個ほど取り寄せて実装しました。


Intel Xeon L7345


Intel Xeon L7345 は正常に認識されている


搭載されているCPUの情報はPOST中に表示される

 ヒートシンクはバネで固定する方式を採用しており、CPU周辺のエアフローを安定させて効率的な冷却を実現するため、樹脂製のCPU保護カバーが取り付けられています。


エアフローを安定させるために樹脂製カバーが取り付けられる

 PowerEdge R900のマザーボードの中央付近にはDELLのロゴがシルク印刷されています。ボード上の部品の配置などはインテル製のマザーによく似ていますが、オリジナルの設計になっているようです。


マザーボードには DELL のシルク印刷がある

(9)チップセットとI/Oコントローラハブ
 チップセットとしてIntel 7300が採用されており、その下に

 が接続されています。


Intel 7300チップセット


Intel 6321ESB I/Oコントローラハブ

 また、Intel 6321ESB の下には

 などが接続されています。

(10)PCI Expressスイッチ
 PCI ExpressスイッチとしてIDTのPES24N3が採用されており、その下にx8のPCI Expressスロットが接続されています。
 1つのPES24N3で「24レーン・3ポート・x8までの速度に対応したPCI Expressスイッチ」という仕様から、マザーボード上に2つ実装されています。


PCI Express スイッチ IDT PES24N3


PCI Express x8 スロット付近にIDT PES24N3が2つ実装されている

(11)メモリおよびメモリライザーカード
 メモリはPC5300のFB-DIMMを使用しますが、運転時にはかなりの熱が発生するため、CPUの冷却に使用した空気の流れを使って冷却する構造になっています。そのため、メモリライザーカードにもエアフローを安定させるための保護カバーが取り付けられています。


メモリライザーカードにも保護カバーが取り付けられている

 PowerEdge R900のメモリライザーカードは障害が発生した際に不良が起きたスロットを表示するLEDが搭載されておらず、メモリライザーカード背面の絶縁用のカバーも省略されています。
 MAGNIA 7505Rには障害位置表示用のLEDが搭載され、背面の絶縁用のカバーも実装されていたことなどから考えると、これらの省略はコストダウンを優先した結果ではないかと考えられます。


障害が発生したDIMMスロットを表示するLEDは搭載されていない


背面の絶縁用のカバーが省略されている

 メモリライザーカード1枚につきDIMMスロットが8つ用意されており、8GBのDIMMを8枚実装することで64GBまで搭載することができます。工場出荷時の状態でメモリライザーカードは4枚フルに搭載されていますが、DIMMが全く実装されていないメモリライザーカードも運転時には実装しておく必要があります。


メモリライザーカードには8つのDIMMスロットが用意されている


メモリライザーカードは向かい合わせで実装される

 同じ容量のDIMMを16枚用意して、4枚ずつそれぞれのメモリライザーカードに実装することにより、メモリミラーリング機能が使用できるようになります。

(12)SASアレイコントローラ
 この本体にはSASのアレイコントローラが搭載されていますが、オンボードではなくPCI Expressカードの形態となっていて、本体の向かって左側のファンの後部に専用のPCI Expressスロットが用意され、そこに通常の拡張カードとは逆の向きで実装されています。


CPUのヒートシンクと本体のフレームの隙間にSASアレイコントローラが実装される

 このアレイコントローラからSASハードディスクドライブベイのSASバックプレーンまで、SFF-8484のケーブルが2本接続されています。
 この個体の導入当初は SAS 6/iR コントローラが実装されていました。このコントローラには LSI logic のLSI SAS1068e が搭載されていましたが「構築できるアレイの種類が RAID 0 あるいは RAID 1 に限定されてしまう」ということと「パフォーマンス向上に不可欠なキャッシュメモリが搭載できない」という看過できない問題がありました。


DELL SAS 6/iR コントローラ

 そこで、アレイコントローラを少なくとも RAID 5 が構築できるものに交換することにしました。
 通常であれば PowerEdge R900 にはオプションで DELL PERC 6i が用意されているのでそれを搭載するのですが、今回はあえてメーカーが非サポートとしている DELL PERC 5i を実装することにしました。


DELL PERC 5i コントローラとバッテリーバックアップユニット


DELL PERC 5i にはコントロールチップとして LSI SAS1068 が搭載されている


キャッシュとして256MBのPC2-3200 ECC Registeredメモリが搭載される

 このコントローラには LSI logic のLSI SAS1068 が搭載され、キャッシュとして256MBのメモリとバックアップ用のバッテリーが搭載されています。
 ディスクアレイの管理にはBIOSに含まれているコンフィグレーションユーティリティのほか、WindowsからはDELLが提供している OpenManage Storage Management やLSI Logicが提供している MegaRAID Storage Manager が利用できるようになっています。


LSI Logicが提供している MegaRAID Storage Manager のディスクアレイ管理画面

 なお、ファームウェアを LSI Megaraid SAS 8408E のものに入れ替えることによって、512MBのキャッシュメモリ(ただし1R×8で片面実装のもの)が使えるようになりますが、ウォームブート時に DELL PERC 5i が認識されないという致命的な問題が発生します。
 加えて MegaRAID Storage Manager において、バッテリーのステータス取得に失敗して「バックアップ用バッテリーが劣化しているので交換せよ」という内容の警告が表示されるようになりますので、ファームウェアの入れ替えはお勧めできません。

(13)I/Oライザーカード・DRAC 5
 この本体には管理用のプロセッサを搭載したカードであるDell Remote Access Controller 5(DRAC 5)をI/Oライザーカードの裏面に取り付けることが可能です。
 DRAC 5はオプションのカードとなるため、DRAC 5を実装しない場合にはベースボード管理コントローラ(BMC)による管理となります。


I/Oライザーカード・表面(DRAC 5実装時)


I/Oライザーカード・裏面(DRAC 5実装時)

 このI/OライザーカードはPCI Express x4スロットの向かって左側にある専用スロットに実装されるカードで、BMCとギガビット対応の4つのLANポートが搭載されています。

 標準で搭載されている4つのギガビット対応ポートのうち、DRAC 5を実装しない場合はそのうちの2つのポートが管理用LANコネクタと兼用となります。また、これらの4つのギガビット対応ポートは Broadcom Advanced Control Suite 3(BACS 3)を導入することで、仮想NICを構成することができます。


BMCには PK737 A00-00 E45A と書かれたシールが貼られている


BMCの他にはネットワークコントローラチップが4つ搭載されている


ギガビット対応ネットワークコントローラ Broadcom BCM5708


PCI Expressスイッチ IDT PES24T6


Broadcom Advanced Control Suite 3を使用して仮想NICを構成

 I/OライザーカードとDRAC 5の間は2本のフラットケーブルで接続されます。
 なお、DRAC 5の動作に必要となる電源もこのケーブルを通して供給されるため、PCI Express用の端子はどこにも接続されません。


DRAC 5との接続に使われるフラットケーブルは2本


フラットケーブルはロック付きのものが使われている

 I/Oライザーの裏面に取り付けられるDRAC 5の上には、各種のチップが搭載されています。


リモートによる多機能なサーバ管理を提供する DRAC 5


セキュリティ機能を備えるネットワークプロセッサ AMD AU1550


XILINX SPARTAN3 XC3S400 と Txas Instruments TVP7000

 なお、DRAC 5を実装するとPCI Expressスロットにグラフィックカードを増設しても、強制的にオンボードのグラフィックカードからの出力にされてしまいますので、構築時には「柔軟なサーバ管理」あるいは「広大で快適な画面表示」いずれかの選択を強いられることになります。
 当方の環境ではグラフィックカードの搭載が最優先事項なので、DRAC 5の搭載は見送られることになりました。

(14)PCI Expressスロット
 MAGNIA 7505Rには全部で7本のPCI Expressスロットが用意されていますが、ホットプラグには対応していません。このあたりの機能削減もコストダウンの一環なのでしょう。


PCI Expressスロットは全てホットプラグに対応していない


ホットプラグに対応していないので樹脂製の枠も存在しない

(15)ネットワークコントローラ
 PowerEdge R900のネットワークコントローラは、前述のI/Oライザーに搭載されているギガビット対応のBroadcom Broadcom BCM5708のみとなります。
 そのため、マザーボード上にはネットワークコントローラは実装されておらず、MAGNIA 7505RでIntel 82563EBが実装されていた場所はランドになっています。


Intel 82563EBが実装されるはずの場所はランドになっている

 なお、PowerEdge R900には標準でTOEキーが搭載されているため、Broadcom BCM5708のTCPオフロードエンジンが有効になっています。


マザーボードに標準で搭載されるTOEキー


BIOSセットアップメニューにも TOE と表示されている

(16)SATAコネクタとUSBコネクタ
 オンボードでそれぞれ1ポートずつ用意されていますが、MAGNIA 7505R とはレイアウトが若干異なっています。
 また、本体に標準搭載されるDVD-ROMドライブはATAPI接続なので、SATAコネクタには何も接続されていません。


マザーボードに1ポートずつ実装されているSATAコネクタとUSBコネクタ

(17)本体後部のファン
 メモリライザーカードを冷却するために設置されているファンモジュールです。本体の前面から吸い込んだ空気がCPUの冷却とメモリモジュールの冷却に使用され、このファンによって外部に強制的に吐き出される構造になっています。

 このファンは8cm・38mm厚のファンが2つ重なった状態で左右にそれぞれ実装され、障害発生時にはホットスワップによる交換が可能になっています。
 なお、このファンもPWMによって回転数の制御が行われるようになっています。使用されているファンはMAGNIA 7505Rと同じNidec UltraFlo H80E12BS1A7なのですが、前面のファンと同じくPWM制御の設定が異なるため、運転時の騒音はかなり軽減されています。

 なお、2008年9月以降に製造されたモデルでは、この本体後部のファンは搭載されなくなりました
 そのため、BMC のファームウェアを 2.27 以降に上げると、本体後部のファンは動作するもののシステムからは認識されなくなり、監視対象からも除外されるようです。


MAGNIA 7505Rと同様に Nidec UltraFlo H80E12BS1A7 が搭載される


2つ重なった状態でファンモジュールが構成される


Intel S7000FC4URとの相違

 さて、前回のSV Magazineでお伝えした MAGNIA 7505R は、Intelのマザーボードをカスタマイズしたものを使って構成されていましたが、PowerEdge R900は事前の予想通り「Intel S7000FC4URと似て非なるオリジナルのマザーボードを使っている」ことが判明しました。

 ここでは PowerEdge R900 と Intel S7000FC4UR との相違について説明します。
 既に本体の外観のレベルで PowerEdge R900 と Intel S7000FC4UR では異なる部分が多く見られますが、内部のハードウェア構成においても異なる部分が散見されます。

(1)システムBIOSとPLD1
 PowerEdge R900のシステムBIOSが格納されているチップとPLD1には、DELLの部品番号やバージョン番号の表記ルールに基づいたシールが貼られています。


BIOSが格納されているフラッシュROMには NX758 A00-00 00A4 と書かれたシールが貼られている


PLD1には JN255 A00-00 ADD9 と書かれたシールが貼られている

(2)管理用プロセッサとグラフィックコントローラ
 管理用プロセッサにも違いが見られます。PowerEdge R900では拡張カードの形態で搭載されたDRAC 5あるいはI/Oライザーカードに搭載されたBMCを使用しますが、Intel S7000FC4URではオンボードの Intel 6321ESB に内蔵されたBMCを使用します。
 グラフィックコントローラについてはIntel S7000FC4URと同様に、オンボードで実装されているATI ES1000を使用します。

 本来はオンボードで提供されるBMCがPowerEdge R900ではI/Oライザーが担う構成になっているため、マザーボード上で当該機能に関連するチップが実装される場所はランドになっています。


BMCが使用するフラッシュメモリなどが実装される場所はランドになっている


グラフィックコントローラは本来の場所にATI ES1000が実装されている


グラフィックメモリ hynix HY5PS5616218 FP-25(DDR2 SDRAM 32MB)

(3)オンボードSATAコネクタとSASアレイコントローラ
 オンボードのSATAコネクタはPowerEdge R900では1つしか用意されていませんが、Intel S7000FC4URでは6つ使用できるようになっています。

 これはSASアレイコントローラがIntel S7000FC4URではオプション扱いになっているためと考えられ、6つあるSATAコネクタのうちの4つはSATAのハードディスクドライブを接続し(※物理的な接続先はハードディスクドライブベイのSASバックプレーン)、1つはDVD-ROMドライブの接続に使い、残る1つのコネクタはユーザー側で自由に使える状態になっています。

 PowerEdge R900は購入時にカスタマイズが行われるものの、何らかのSASアレイコントローラが選択されることが確実で、オンボードのSATAコネクタもSASバックプレーンに用意されたコネクタに接続する用途しか想定していなかったため、余計なSATAコネクタは実装されなかったのでしょう。


5つのSATAコネクタが実装されるはずの場所はランドになっている


FSB設定ジャンパスイッチ用ランド

 マザーボード上にはMAGNIA 7505Rと同様にFSBが変更可能なことを予感させるシルク印刷があり、そのシルク印刷に書かれているジャンパスイッチ用のランドも近くに用意されています。


レイによって1066(266)MHzがデフォルトだが1333(333)MHzにも設定できるようだ


FSB変更用のジャンパスイッチを取り付けるためのランドも用意されている

 シルク印刷を見るとデフォルトの状態で1066MHzに設定されていることがわかります。このジャンパの設定によってFSBを1333MHzまで引き上げることが可能となるはずです・・・が、MAGNIA 7505Rでの改造においてはジャンパの設定を変更しても特に動作状況に変化が見られなかったので、今回の改造は見送りました。


グラフィックカードの増設

 皆さんお待ちかねのグラフィックカードの増設です。PowerEdge R900はオンボードでATI ES1000が搭載されているため、それを使って画面を表示しています。

 ただし、ATI ES1000 はATI RADEON 7000相当のグラフィックチップということもあり、高い解像度では描画速度が惨憺たる状態になるので、グラフィックカードを増設することにしました。
 PowerEdge R900もPCI Express x8スロットまでしか搭載されていないので、PCI Express x16のグラフィックカードを増設する場合は、スロットの端を切削してエッジフリー化を行う必要があります。

 なお、MAGNIA 7505RではPCI Expressスロットの A1 と B48 の信号線をジャンパ線によって短絡して、ようやくグラフィックカードが認識されたという実績があるので、今回は最初から信号線の短絡改造を実施しました。


エッジフリー化を行ったPCI Expressスロット


PCI Expressスロットの A1 と B48 の信号線をジャンパ線で短絡

 補助電源を使用しないグラフィックカードであればこれで改造は終わりですが、当方の環境では補助電源を要求するカードを搭載することが前提になっているため、追加改造を行いました。
 PowerEdge R900ぐらいの世代のサーバになると、ほとんどの部品がモジュール化されていて、およそ「4ピンの電源ケーブル」などというものは用意されていません。そこで、基板に電源ケーブルをハンダ付けして、補助電源を作成しました。

 電源はハードディスクが接続されるSASバックプレーンから取り出しました。これは、ハードディスクにはそれなりの電流が流れることが想定されているので、グラフィックカード用の補助電源をもらってもそれほど大きな影響は出ないだろうと判断したためです。


ハードディスクのSASバックプレーン

 本体を運転している状態でSASバックプレーンにテスターを当て、電源ユニットからの分配ケーブルが接続される端子の裏に4ピンの電源ケーブルをハンダ付けしました。


電源ユニットからの分配ケーブルが接続される端子の裏側から12Vを取り出す


電源端子の裏側に4ピンの電源ケーブルをハンダ付けする


6ピンの補助電源に変換するため2系統の電源ケーブルを作成


本体のフレームとSASバックプレーンの隙間から電源ケーブルを引き出す

 これで補助電源が確保できましたが、PowerEdge R900はサーバ機ということもあり、PCI Expressスロットの間隔が一般のコンピュータよりも広いレイアウトとなっています。
 そのため、2スロット用のブラケットが取り付けられているグラフィックカードの場合には、同じコネクタ配置となっている1スロット用のブラケットに交換する必要があります。

 また、筐体の高さが4Uに抑えられていることもあり、トップカバーを取り付けるとPCI Expressスロットの上部には空間がほとんどありません。そのため、補助電源コネクタを使用するグラフィックカードで利用できるのは「補助電源コネクタが横向きにレイアウトされているカード」のみに限定されます。

 これらの条件をクリアできるグラフィックカードとして、今回は ASUS EAH5870/2DIS/1GD5/V2 のブラケットを1スロット用に改造したものを実装しました。なお、ASUS EAH5870/2DIS/1GD5/V2 はコネクタの位置が変則的なので、他の1スロット用のカードのブラケットをそのまま流用することはできません。

 最近は RADEON HD 6xxx シリーズが新たに登場しましたが、このシリーズはリファレンスモデルが「隣接スロット側にもコネクタを配置する」というものなので、現時点で搭載が可能なのは RADEON 5xxx シリーズまでに限定されます。
 最も労力をかけずにアッパーミドルクラスのグラフィックカードを搭載するのであれば、MSI R5850 Twin Frozr II に玄人志向 RH5770-E1GHD/DP/G2 のブラケットを組み合わせるのが良いのではないかと思います。


1スロット用の改造ブラケットに交換したASUS EAH5870/2DIS/1GD5/V2


ASUS EAH5870/2DIS/1GD5/V2の補助電源コネクタは横向きなので問題なし

 なお、上記のカードの他に RADEON HD 4870x2 も実装してみましたが、本体のメモリに電気食いのFB-DIMMが採用されていることと相まって、一般的な商用100Vの電源供給では容量不足に陥る模様です。
 電源の容量不足が発生するとPOST時にメモリエラーが出てしまいますので、デュアルGPUのカードを使用して安定した運転を行いたい場合には、商用電源の電圧を200Vに昇圧することが必須条件になると思われます。


音源カードの実装

 グラフィックカードの次は音源カードの実装について説明したいと思いますが、とりあえず前回と同様に X-Fi Xtreme Audio PCI-e MSI X38 Audio Card を実装してお茶を濁しています。前回の MAGNIA 7505R の時に買っておいた予備がさっそく役に立ちました。


Sound Blaster X-Fi Xtreme Audio PCI-e MSI Edition


その他の拡張カード

 現時点でPowerEdge R900において動作が確認されている拡張カードは、AdaptecのUltra320 SCSIカード ASC-29320LPE とASUSのSATA 3.0カード PCIE GEN2 SATA6G です。どちらのカードも正常に動作しています。
 ちなみに ASC-29320LPE は MAGNIA 7505R に実装した時よりもPOST時のSCSIチェックの時間が短くなり、一般的なSCSIカードと同じレベルに収まっています。


Adaptec ASC-29320LPE


ASUS PCIE GEN2 SATA6G


増設した SATA ポートは eSATA ポートに変換


システム情報について

 現状では Windows Server 2003 R2 を導入して試験運転を行っている段階で、システムの各種情報は以下の通りとなっています。なお、Windows Server 2003 R2をインストールする場合には、SASアレイコントローラのドライバが必要になりますので、DELLのホームページからダウンロードして下さい。


各種ベンチマーク結果について

 各種のベンチマーク結果は以下の通りです。なお、ディスクアレイはライトバックの設定で動作しています。


設定は「1024x768」・「最高」


設定は「Character:ランダム」・「Resolution:Low(1280x720)」


参考文献

DELL PowerEdge R900 サーバ(PDF)
http://www.dell.com/downloads/jp/products/pedge/PowerEdgeR900.pdf

DELL PowerEdge R900 Spec Sheet(PDF)
http://www.dell.com/downloads/global/products/pedge/en/pe_R900_spec_sheet.pdf

Dell PowerEdge R900 ハードウェアオーナーズマニュアル(PDF)
http://support.dell.com/support/edocs/systems/peR900/ja/hom/GX8330D.pdf

Dell PowerEdge R900 システム テックシート(PDF)
http://support.dell.com/support/edocs/systems/peR900/multlang/ts/GX834A04MR.pdf

Intel Server System S7000FC4UR Product Guide
http://www.intel.com/support/motherboards/server/s7000fc4ur/sb/cs-028212.htm

Intel Server System S7000FC4UR Technical Product Specification Revision 1.0
http://www.intel.com/support/motherboards/server/s7000fc4ur/sb/cs-028208.htm

Intel Xeon Processor 7200 Series and Intel Xeon Processor 7300 Series Datasheet
http://www.intel.com/Assets/en_US/PDF/datasheet/318080.pdf


おわりに

 DELL PowerEdge R900は他メーカーの Intel 7300 チップセットを搭載したサーバよりも安価な設定で提供されていましたが、その代償として一部のコンポーネントがホットプラグできなかったり、一部の部品が省略されるという仕様になっています。
 いわば「可用性が落とされたサーバ」ということになるわけですが、企業によっては「あまりにも高いレベルの可用性や管理システムは必要ないが、少ない投資でハイパワーな仮想化対応サーバを導入したい」という案件もあったはずなので、そのような場面では悪くない選択肢だったのではないでしょうか。

 というわけで、MAGNIA 7505Rの導入から約半年を経て Intel 7300 チップセットを搭載した2台目のサーバが導入されたわけですが、気がついてみるとSCSIインターフェースを搭載したサーバよりも、SASインターフェースを搭載したサーバの方が多くなっていました。


積み上げられた 7505R / R900 / 140Re-4 / x445 の4台

 我が家に導入されるサーバは「NECのExpress5800シリーズ」や「NECに対してOEM供給されていたモデル」、あるいは「NECがOEM供給していたモデル」を念頭に機種選定を行ってきましたが、ここ数年でNECだけでなくIBM・HP・DELL・東芝と徐々に増えてきて「あとは富士通と日立のエンタープライズ機を導入すれば、だいたいのメーカーは網羅できる・・・」という段階に達しました。

 居間に設置されているこれらのサーバ群を眺めると、その瞬間は確かに満足するのですが、人間とはつくづく欲の深い生き物で、「同じ世代の本体ばかり持っていても仕方がないッ! 次こそはQPIアーキテクチャだッ! Nehalem-EXだッ!」と、次なるサーバの導入を虎視眈々と狙っています。


連絡先

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