2013.08.12

NEC Express5800/R140b-4(前編)

Written by かたあま☆彡  


はじめに

 今回は、前回の富士通 PRIMERGY RX600 S5(以下、RX600 S5) と同世代のサーバで、NehalemアーキテクチャのCPUを搭載する NEC Express5800/R140b-4(以下、R140b-4)を取り上げます。

 本サーバは NEC の一般的なラックマウント用サーバにおける最後の4ソケットモデルになる可能性が高く、本稿を執筆している2013年8月時点では4〜8ソケットのサーバは「スケーラブルHAサーバ」というカテゴリにしか存在していません。

 なお、記載されている内容については、私は一切保証しませんし、それに伴って発生した如何なる事故にも責任は負いません。また、前回の RX600 S5 と極めて似た文章が記載されている箇所が散見されますが、あらかじめ御了承ください。


Express5800/R140b-4 とは

 NEC Express5800/R140b-4 は、NehalemアーキテクチャのCPUである、Intel Xeonプロセッサ 7500番台を搭載する4Uサーバとして、2010年4月より販売が開始されました。
 しかしながら、2012年に入ってからはExpress5800のモデル一覧に表示されなくなってしまい、事実上の販売終了となったため、比較的短命なモデルだったといえるでしょう。

 なお、本機は北海道の国税連係データ受信サーバとしての導入実績があるようですが、その他にどのような場面で運用されているのかを示す資料は発見できませんでした。


NEC Express5800/R140b-4

 主なハードウェア面の特徴は、

 といったところです。詳しい仕様については下記の表をご覧下さい。

機種名 Express5800/R140b-4
型番 N8100-1601(※海外向けは N8100-1601F となる)
CPU Intel Xeon プロセッサー(標準は0個・最大4個)
Xeon X7560(8コア/2.26GHz/24MB L3)
Xeon E7530(6コア/1.86GHz/12MB L3)
Xeon E7520(4コア/1.86GHz/18MB L3)
メモリバス 800MHz〜1066MHz(搭載するCPUにより異なる)
QuickPath Interconnect(QPI) 4.80GT/s〜6.40GT/s(搭載するCPUにより異なる)
Intel Turbo Boost Technology 対応(Xeon E7520を除く)
Intel Hyper-Threading Technology 対応
Intel Virtualization Technology 対応
チップセット Intel 7500(Boxboro-EX)チップセット
メインメモリ PC3-10600レジスタ付きECC DDR3 SDRAM、なし(標準)〜512GB(最大・4CPU時)
メモリソケット数 64(メモリバックボード1枚あたり8ソケット、メモリバックボードは最大8枚実装可能)
メモリアクセス方式 ロックステップチャネルアクセス方式(メモリ実装方法に応じて2wayインタリーブモードもサポート)
メモリスペアリング 対応
メモリミラーリング 対応
メモリホットプラグ 対応(メモリボード単位でのホットプラグに対応)
画面制御機能 リモートマネジメントコントローラ内蔵 VRAM:32MB
グラフィック表示機能 640×480/800×600/1024×768/1280×1024ドット
内蔵2.5インチベイ 8(ホットプラグ対応)
搭載可能内蔵ストレージ
2.5インチ SAS 10,000回転 146.8GB・300.0GB・450.0GB・600.0GB・900.0GB
2.5インチ SAS 15,000回転 73.4GB・146.8GB・300.0GB
2.5インチ SATA 7,200回転 160GB・500GB・1TB
2.5インチ SSD 50GB・100GB
内蔵5インチベイ 1
内蔵光学ドライブ DVD-ROMドライブ(オプション)
または
DVDスーパーマルチドライブ(オプション)
拡張バススロット
PCI Express 2.0 (x16レーン) [x16ソケット]×1
PCI Express 2.0 (x8レーン) [x8ソケット]×5(うち4つはホットプラグ対応)
PCI Express 2.0 (x4レーン) [x8ソケット]×3
PCI Express (x4レーン) [x8ソケット]×2
ディスクアレイ SATA 3Gb/s : RAID 0/1/5/6/10/50 (必須オプション)
または
SAS 6Gb/s : RAID 0/1/5/6/10/50 (必須オプション)
SASインターフェース SAS×8ポート(SASアレイコントローラカード)
外付けFDD Flash FDD (オプション)
ネットワークインターフェース 4x 1000BASE-T LANコネクタ (1000BASE-T/100BASE-TX/10BASE-T対応, RJ-45, 4x 背面)
1x マネージメント用LANコネクタ (1000BASE-T/100BASE-TX/10BASE-T対応, RJ-45, 1x 背面)
インターフェース 2x アナログRGB(ミニD-Sub15ピン, 1x 前面, 1x 背面)
1x シリアル(RS-232C規格準拠/D-Sub9ピン, シリアルポートA, 1x背面, オプションで計2ポートに増設可)
8x USB2.0(3x 前面、2x 背面、3x 内部)
キーボード/マウス オプション
BIOS フェニックステクノロジーズ Phoenix SecureCore
リモートサービス機能 ServerEngines 2nd Gen Server Management Controller
電源 標準 2x 850W 80 PLUS Gold 対応電源
冗長電源 対応(オプション/ホットプラグ可)[2+1冗長/2+2冗長/3+1冗長構成をサポート]
冗長ファン 対応(標準/ホットプラグ可)
騒音値
(待機時 / 動作時)
55.8 dB / 55.8 dB
外形寸法 483.0 x 757.0 x 176.0 mm(ベゼル含まず), 485.0 x 783.0 x 177.0 mm(ベゼル含む)
質量
(標準 / 最大)
30kg / 47kg(レール含まず), 39kg / 56kg(レール含む)
インストールOS なし
サポートOS Microsoft Windows Server 2003 R2 Standard/Enterprise Edition
Microsoft Windows Server 2003 R2 Standard/Enterprise x64 Edition
Microsoft Windows Server 2008 Standard/Enterprise
Microsoft Windows Server 2008 Standard/Enterprise (x64)
Microsoft Windows Server 2008 R2 Standard/Enterprise
Red Hat Enterprise Linux Advanced Platform5.5以降
Red Hat Enterprise Linux Advanced Platform5.5以降(EM64T)
Red Hat Enterprise Linux Advanced Platform6.0以降(x86)
Red Hat Enterprise Linux Advanced Platform6.0以降(x86_64)
VMware ESX(TM)i 4.1


ハードウェアの構成

 それでは、R140b-4がどのようなハードウェア構成になっているかを見ていきたいと思います。
 このR140b-4はRX600 S5と同様、台湾のQuanta ComputerがIntelと共同で開発したQuanta QSSC-S4R(以下、QSSC-S4Rと表記)がベースとなっていて、いくつかの部分においてNEC独自のカスタマイズが加えられているわけですが、RX600 S5と比べてQSSC-S4Rにより近いハードウェア構成になっています。

(1)Express5800/R140b-4の前面
 前面には2.5インチのハードディスクを8台まで内蔵できる2.5インチドライブベイのほか、バックアップデバイスを搭載するための5インチベイ、冷却ファン、電源スイッチとステータスランプ、スリムライン光学ドライブとRGBコネクタ、USB 2.0ポート、フロントベゼルを固定するためのブラケットがあります。

 なお、QSSC-S4Rとの違いとしては、他のExpress5800シリーズを同一のラック内に搭載した際の見た目の統一を図るために、

 ということくらいで、NICポートのインジケータや冷却ファンへの通風穴の形状は元のままとなっています。


NEC Express5800/R140b-4 前面(フロントベゼル装着時)


機種名はフロントベゼルの中央に記載される


ベゼルを実装している状態でも各種のインジケータが確認できる


ベゼルにはセキュリティロックが用意されている

 このフロントベゼルを取り外すと、2.5インチのSASハードディスクを8台まで内蔵できるハードディスクドライブベイやスリムラインDVD-ROMドライブ、5インチデバイスベイ、ステータスインジケータ、RGBコネクタ、USB 2.0ポートなどにアクセスできるようになります。

 なお、家庭で使用する場合には、フロントベゼルを固定するためのブラケットは邪魔になると思いますので、取り外してしまった方がよいでしょう。


NEC Express5800/R140b-4 前面


冷却ファン・スリムライン光学ドライブ・5インチベイ


冷却ファン・ステータスランプ・2.5インチドライブベイ・電源スイッチ・RGBコネクタ・USB 2.0コネクタ


ベゼル固定用のブラケットの脇にN型番のシールが貼られている


QSSC-S4Rと同じNICインジケータやステータスインジケータがある

(2)Express5800/R140b-4の背面
 本体の背面には

 がそれぞれ用意されています。


NEC Express5800/R140b-4 背面


USB 2.0コネクタ・UnitIDスイッチ・管理用LANコネクタ・LANコネクタ・RGBコネクタ・シリアルポート・電源ユニット


PCI Expressスロット・電源ユニット


背面の右端にはアース線を接続するためのボルトが用意されている

(3)NEC Express5800/R140b-4の側面
 本体の側面には、ベースモデルが QSSC-S4R であることを示すシールと、電源ユニットのステータスを示すLEDの内容を説明したシールが貼付されています。


REV. N01 とは NEC向けモデル の Revision 1 という意味であろう


当方が所持するもう1台の R140b-4 では REV. N08 まで進んでいた


本体の側面にもN型番とシリアル番号が書かれたシールが貼られている(1台目)


本体の側面にもN型番とシリアル番号が書かれたシールが貼られている(2台目)


電源ユニットのステータスを示すLEDの説明が書かれている

(4)内部全景
 ベースモデルが QSSC-S4R ということで、前回の RX600 S5 と同様に、サーバの前方から順にファンユニット・メモリバックボード・CPU・拡張カード用スロットというレイアウトでコンポーネントが実装されています。


やはりトップカバーは皿ネジ1本で固定されている


ラッチの色が NEC のサーバであることを強く主張している


Express5800/R140b-4の内部全景


トップカバーにはモデル名・N型番・シリアル番号などが書かれたシールが貼られている


そのシールの下方には「日本で組み立てている」旨が小さく書かれているが・・・


本体側面に貼られた小さなシールが「本当は中国製なんだからね!」という雰囲気を漂わせている


トップカバー裏にはメモリの増設方法やジャンパの位置などが記載されている


BIOS関連のジャンパの説明は上からシールを貼る方法で訂正されている

(5)電源ユニット
 電源ユニットにはデルタ製の850Wの 80PLUS GOLD の認証を受けたものが使われており、障害発生時にはホットスワップが可能になっています。
 この電源は100V・200Vのどちらにも対応できる電源で、標準では2台が搭載されていますが、最大で4台まで搭載することができます。

 なお、RX600 S5やQSSC-S4Rの電源ユニットと比較すると、樹脂部品やラッチのゴムの色が濃い緑色に変更されていることから、NECから「少しでも青に近い色で」という指示が入ったのではないかと想像されますが、当方のもう1台の R140b-4 では明るい緑色(=通常色)の部品を採用した電源ユニットが搭載されていたので、途中でコストダウン優先に方針が転換されたのかもしれません。


電源ユニットは非常に細長い形状をしている


デルタ製の DPS-850FB(80PLUS GOLD)が使用されている


電源ユニットにもN型番のシールが貼られている


電源ユニットの内部には40mmのファンが4つ搭載されている


本体への接続コネクタ部はスリム化されている


通常モデルの電源と比較するとNECの涙ぐましい努力が感じられる

(6)前面ファン
 本体前面にはメモリおよびCPUを冷却するため、80mmのファンが4つずつ2列にわたって合計8個搭載され、PWMによって回転数の制御が行われています。2列あるうちの奥側の列は冗長構成を実現するための列で、手前側の列の4個のファンだけでも運転が可能になっています。
 これらのファンに障害が発生した際には、ホットスワップが可能になっていますが、残念ながら本体のトップカバーを開けて交換することになります。

 使用されているファンはDelta PFB0812DHE という1分間の回転数が9,000回転の超高速モデルが使用されています。
 PWMによる制御も行われていますが、RX600 S5のような「吸気温度の変化を反映させたファン速度の制御」は行われないため、電源投入直後から相当に騒がしくなります。それでも、無改造の Express5800/140Rf-4 よりは静かなので、家庭内でも日常的に使用できる範囲に収まっているといえます。


ファンのサイズと個数は通常と同じだが・・・やはり青い


ファンは Delta PFB0812DHE という毎分9,000回転という壮絶なモデルが使用されている


ホットスワップが可能なコネクタによる接続になっている


内側に貼られているシールもRX600 S5と同様である

 冷却用の空気の整流と運転中のメモリバックボードの交換時に指を怪我しないように、という2つの目的のため、実装されていないメモリバックボードの位置には内側から樹脂製のエアーバッフルが取り付けられています。


未実装のメモリバックボードの位置に取り付けられる樹脂製のエアーバッフル


エアーバッフルを取り外した状態で運転しないように注意

(7)2.5インチハードディスクドライブ
 本機のハードディスクインターフェースはSASかSATAで、2.5インチのハードディスクあるいはSSDを8台まで内蔵することができます。また、障害発生時にはホットスワップによる交換が可能となっています。

 ハードディスクトレイは、ベースモデルの製造元であるQuanta(Intel)純正のトレイを白色に変更したものが使われますが、このトレイは同世代の他のExpress5800シリーズのものと形状が違うため、不足分を調達する場合には注意が必要です。


いわゆるIntel製のサーバでお馴染みのトレイが使われている


Seagate製のSATAハードディスク ST9500420AS(7,200回転)


同世代の Express5800 用のトレイ(左)とは形状が異なる

(8)光学ドライブ
 光学ドライブはオプションで選択するようになっていますが、当方が入手した個体に搭載されていたドライブはTEAC製のDV-28Sで、SATAインターフェースのモデルです。
 最大読み取り速度はDVDメディアが8倍速、CDメディアが24倍速となっていますが、書き込みが全くできないドライブだったため、すぐにパナソニック製のBDドライブ UJ-240 に換装しました。


搭載されていた光学ドライブは TEAC DV-28S であった


型番末尾の「-WN5」に含まれる N の文字は NEC 向けということだろう


書き込みができないのは論外なのでパナソニック製の UJ-240 に換装


外からは見えないプラスチック製のブラケットまで青色に変更されている

(9)ミッドブレース
 本体の中央部にはミッドブレースと呼ばれる、金属製のカバーが取り付けられています。ミッドブレースはヒートシンクおよびCPUの保護が主な目的と思われますが、メモリバックボードを固定する際にも使用する溝が作られています。

 なお、このミッドブレースはCPUごとに部屋が分かれた構造になっているだけでなく、CPUを冷却して後部に排出された風がチップセットのヒートシンクの冷却に使われるよう、風向きを調整する羽根が作られています。


本体中央部に実装されるミッドブレース


ミッドブレースにはCPU番号とメモリバックボード番号が刻印されている


CPUの冷却に使用した風をチップセットのヒートシンクに誘導するための羽がある


ミッドブレースの内側はCPUごとに部屋が分割されている


各種のケーブルが這っている状態でもチップセットの冷却には影響はない

(10)CPUとヒートシンク
 R140b-4 のマザーボードは1枚構成で、CPUはIntel Xeonプロセッサ 7500番台が最大で4基まで搭載できるようになっています。


ミッドブレースを取り外すと巨大な4つのヒートシンクが姿を現す


隣接するヒートシンクとの隙間は非常に狭い


ヒートシンクには4本のヒートパイプが使用されている


IntelとCCI(ヒートシンク製造元)の部品番号が併記されている


重量級のヒートシンクだが固定に使われるのはネジ2本のみ


重いヒートシンクを取り外すとようやくCPUが現れる


VRMはオンボードで実装されている

 Intel Xeonプロセッサ 7500番台が使用するソケットは LGA1567 と呼ばれるタイプのソケットで、同世代のIntel Xeonプロセッサ 6500番台や後継プロセッサの Intel Xeon E7シリーズでも使われています。
 当方が入手した1台目の個体は Intel Xeon E7530 が4個、2台目の個体は Intel Xeon X7560 が2個搭載されていました。


使用されているソケットは LGA1567 となる


ロック用のレバーを受ける部分の形状が RX600 S5 とは異なるようだ


ソケットの構造そのものは他のLGAソケットと同様である


Intel Xeon E7530 SLBRJ


Intel Xeon E7530(裏面)

 それまでの4ソケット用となる Intel Xeon 7400番台と大きく異なるのは、メモリコントローラがCPUに内蔵され、Intel QPI(QuickPath Interconnect)マイクロアーキテクチャが採用されていることと、最大で8個のCPUコアを持つということ、そして NetBurst 世代のCPUに搭載されていた Hyper-Threading テクノロジーが復活したという点です。

 開発中は Nehalem-EX というコードネームが与えられ、45nmプロセスで製造されるこのCPUは、1つのCPU内に2つのメモリコントローラを内蔵しています。1つのメモリコントローラにつき8本のDIMMスロットを使用することができるため、CPUあたりの最大DIMMスロット数は16となり、4つのCPUを搭載することによって最大で64本のDIMMスロットがサポートされます。

 なお、CPUにメモリコントローラが内蔵されたことにより、今までのように「CPU個数はそのままで、メモリバックボードだけを追加してDIMMスロットを増やす」ということが特定の条件下では不可能になりました。実装したいDIMMの本数に応じたCPUの個数を実装しないと、仮にメモリバックボードを追加してDIMMを実装しても、本体から認識されませんので注意が必要です。

 工場から出荷された直後の状態でも最低2個のCPUは搭載されていますので、32本のDIMMスロットまではメモリバックボードの追加によって使用できますが、それ以上のDIMM本数を実装する場合には、メモリバックボードだけでなくCPUの増設が必要となります。

 CPUに内蔵されたメモリコントローラは、メモリバックボード上に搭載されたメモリバッファを介してDIMMスロットに接続されており、CPUが複数個実装された場合には、それぞれのCPUがリング状のメモリバスで連結されます。そのため、どのCPUからでも任意のDIMMスロットにアクセスすることが可能となっています。

 R140b-4を含めてQuanata QSSC-S4Rをベースモデルとしている本体は、CPUの冷却をパッシブヒートシンクと前面に配置されたファンによって行いますが、マザーボード上にはアクティブヒートシンクが採用された時に備えて、ファン接続用コネクタのランドが用意されています。
 また、マザーボードのチップセットとCPUとのちょうど中間あたりの位置には Quanta QSSC-S4R としてのマザーボード名とリビジョンがシルク印刷されています。


CPUの冷却にアクティブヒートシンクが採用された場合を考慮したファン接続用コネクタのランド


シルク印刷が DA0S4RMBED0 となっているので Rev:D ということがわかる

 さて、人間とはつくづく欲の深い生き物で、2台目の個体についてはCPUが2個しか搭載されていない状態では満足できるはずもなく、不足しているヒートシンクを入手することにしました。
 ベースモデルが QSSC-S4R だということは明白だったので、調達は不可能ではないだろうと考えていたのですが、実際には相当の手間と時間がかかりました。

 というのは、この本体がIntel製サーバのラインナップに存在しないことから、ebay にもヒートシンク単品では出品されておらず、また Quanta から部品を単品で取るということも日本国内からは無理で、さらには海の向こうの販売店を経由して調達しようとしても、2012年の中頃から QSSC-S4R のほとんどの部品が「取寄品(=品切れ)」ということになってしまいました。

 仕方がないので、今度はヒートシンクの製造元である CCI のサイトを調べてみたところ、製品の情報を記載したPDFは見つかったものの、どうやらエンドユーザーへの直販は行っていない模様でした。

 また、RX600 S5 用のヒートシンクを単品で調達するのも国内では無理で、ヨーロッパにある富士通の保守部品を専門に扱う販売店から RX600 S5 用や RX600 S6 用の部品として調達する方法であれば可能なようでしたが、通貨がユーロになることに加えて、やりとりの言語がドイツ語になってしまうと考えられたため、この方法も見送りとなりました。

 最終的に残った方法は、英語圏に対して QSSC-S4R がOEMされているメーカーにおけるヒートシンクの保守部品番号を何とかして特定し、それを単品で発注するという手段です。

 QSSC-S4R のOEM先のうち、部品を単品で供給していそうなメーカーは CISCO のみで、ヒートシンクの型番を調査したところ RC460-BHTS1 ということが判明しました。
 そこで、意気揚々と国内で発注をかけたものの、レイによって「入荷の見込みなし」という回答だったので、やむなく amazon.com から2個を調達することになりました。


CPUが実装されていないソケットには保護カバーが取り付けられていた


巨大な CISCO の箱に入ってヒートシンクが到着


これだけ大きな箱なのに入っているのは1個だけ


箱に貼られたラベルにも Qty.:1 と記載されている


CISCOの純正部品であることを示すラベルが箱に貼られている


台湾に輸出する際に必要な文書も同梱されていた


CISCO UCS C460 M1 のヒートシンクなのに何故か Intel の部品番号が・・・


標準で実装されているものとは部品番号が微妙に異なっている


CPUと接触する部分にはサーマルグリスを保護するための樹脂部品が取り付けられている


樹脂部品は蓋のような構造になっていてヒートシンクに両面テープで貼り付けられている

(11)チップセットとI/Oコントローラ
 R140b-4はチップセットとしてIntel 7500(Boxboro-EX)がマザーボード上に2つ実装されており、そのうちの1つの下にI/OコントローラのIntel 82801JIR(ICH10R)が接続されています。

 Intel 7500チップセットにはそれぞれバネで固定する方式のヒートシンクが取り付けられていますが、このヒートシンクはCPUを冷却して排出された風を利用して冷却される構造になっています。
 なお、チップセットの周囲の四隅には、ネジで固定する方式のヒートシンクのための穴と、アクティブヒートシンクが採用された時に備えてファン接続用コネクタのランドも用意されています。


Intel 7500チップセットはマザーボードに2つ実装されている


Intel 7500 チップセット AC7500BXB(Boxboro-EX)


Intel 82801JIR I/Oコントローラハブ(ICH10R)


チップセットの冷却にアクティブヒートシンクを使用する場合のファン接続用コネクタのランド

(12)メモリおよびメモリバックボード
 R140b-4では、メモリバックボードを使ってメモリを搭載しています。メモリバックボードは本体に最大で8枚搭載することが可能で、メモリバックボード1枚につきDIMMスロットが8つずつ用意されています。

 使用するメモリについては、メーカー側での設定はPC3-10600またはPC3-8500のRegisterd ECCのメモリとなっていますが、純正のオプションではPC3-10600の16GBのDIMMは用意されていません。

 また、メモリの増設については、工場出荷時の最低CPU個数の2個の状態ではメモリバックボードは最高で4枚まで実装できますが、それ以上の枚数を実装する場合にはCPUの増設に加えて、電源ユニットの増設とSDRの更新が必要となります。

 メモリバックボード上にはそれぞれ 1A・1B・1C・1D・2A・2B・2C・2D の8つのスロットと2つのメモリバッファが搭載されていますが、CPUから各DIMMスロットまではメモリバックボード上のメモリバッファを介して次のように接続されています。

CPU1 メモリコントローラ1 メモリバックボード1 メモリバッファ1チャネルA 1A−2A
チャネルB 1B−2B
メモリバッファ2 チャネルC 1C−2C
チャネルD 1D−2D
メモリコントローラ2 メモリバックボード2 メモリバッファ1 チャネルA 1A−2A
チャネルB 1B−2B
メモリバッファ2 チャネルC 1C−2C
チャネルD 1D−2D
CPU2 メモリコントローラ1 メモリバックボード1 メモリバッファ1チャネルA 1A−2A
チャネルB 1B−2B
メモリバッファ2 チャネルC 1C−2C
チャネルD 1D−2D
メモリコントローラ2 メモリバックボード2 メモリバッファ1 チャネルA 1A−2A
チャネルB 1B−2B
メモリバッファ2 チャネルC 1C−2C
チャネルD 1D−2D
CPU3 メモリコントローラ1 メモリバックボード1 メモリバッファ1チャネルA 1A−2A
チャネルB 1B−2B
メモリバッファ2 チャネルC 1C−2C
チャネルD 1D−2D
メモリコントローラ2 メモリバックボード2 メモリバッファ1 チャネルA 1A−2A
チャネルB 1B−2B
メモリバッファ2 チャネルC 1C−2C
チャネルD 1D−2D
CPU4 メモリコントローラ1 メモリバックボード1 メモリバッファ1チャネルA 1A−2A
チャネルB 1B−2B
メモリバッファ2 チャネルC 1C−2C
チャネルD 1D−2D
メモリコントローラ2 メモリバックボード2 メモリバッファ1 チャネルA 1A−2A
チャネルB 1B−2B
メモリバッファ2 チャネルC 1C−2C
チャネルD 1D−2D

 本機はメモリアクセス性能を向上させるため、メモリアクセス時には同一のメモリバックボード上に搭載された2つのメモリバッファに用意されたチャネルを並行して使用します。そのため、DIMMの実装には順番が決められていて、

 1回目の増設時 「1Bと1D(=チャネルBとチャネルDを同時に使用してアクセス)」
 2回目の増設時 「1Aと1C(=チャネルAとチャネルCを同時に使用してアクセス)」
 3回目の増設時 「2Bと2D(=チャネルBとチャネルDを同時に使用してアクセス)」
 4回目の増設時 「2Aと2D(=チャネルAとチャネルCを同時に使用してアクセス)」

 という順番で「2枚単位のペア」で実装していきます。

 このように「2枚単位のペア」のロックされた構成での実装になるため、マニュアルやカタログなどでは「ロックステップペアで実装」と書かれますが、このアクセス方法を見るとハードウェアレベルで最初から 2Way のインターリーブによるメモリアクセスとなっていることがわかります。

 メモリバッファはSMB(Scalable Memory Buffer)と呼ばれ、Intel BD7510 が搭載されています。この Intel BD7510 のコードネームは MillBrook2 で、同じファミリーには初期バージョンの Intel BD7500(MillBrook1)や省電力バージョンの Intel BD7512(MillBrook2 LP) が用意されています。

 なお、MillBrook1では使用できるDIMMの仕様に「16GBまで・LV-RDIMMは不可」という制限がありましたが、MillBrook2になると「32GBまで・LV-RDIMMも使用可能」に改良されています。しかしながら、R140b-4のメモリには LV-RDIMM の設定が存在しないため、省電力に関する恩恵はそれほどないといえるでしょう。


メモリバックボードには8つのDIMMスロットと2つのメモリバッファが搭載されている


メモリバックボードの裏側は金属製のフレームによって保護されている


メモリバックボードの上部にはホットプラグ時に使用するスイッチとDIMMの増設順を記載したシールが貼付される


本体に実装した際の固定用ラッチは当然のように青色に変更されている

 ちなみに、メモリバックボードについてはRX600 S5と同様にベンダチェック機構が組み込まれていて、QSSC-S4R用のメモリバックボードを実装すると、メモリバックボード自体は認識するものの、そこにDIMMを搭載しても本体からは全く認識されません。

 そのかわりに、RX600 S5 用のメモリバックボード(メモリライザー)は問題なく使用することができます。当方の環境で動作試験を行った限りでは、R140b-4用とRX600 S5用のメモリバックボードは相互に交換しても正常に動作していましたので、メーカーの保証が不要で、固定用ラッチの色が不統一でも気にしないということであれば、RX600 S5用を使ってもよいでしょう。


R140b-4用(青ラッチ)とRX600 S5用(緑ラッチ)を混在させての運用が可能

(13)メモリディバイダとメモリラグ
 本体内のメモリバックボードが実装されるエリアには、隣接するメモリバックボードとの間を仕切るメモリディバイダが実装されています。メモリディバイダはミッドブレースに用意された溝に差し込まれ、下側はメモリラグにはめ込まれて固定されます。

 なお、このメモリラグはパワーディストリビューションボードからの電源ケーブルや、マザーボードからファン制御用ボードに接続されているケーブル、ハードディスクのバックプレーンに接続されているケーブルなどを保護する役割も持っています。


メモリバックボードが実装されるエリアはメモリディバイダによって細かく仕切られている


メモリディバイダを全て撤去するとメモリラグが見えるようになる


メモリラグには「PRESS HERE」というシールが貼られている


メモリラグ固定用のネジには脱落防止のワッシャが裏側から取り付けられている


メモリラグの下には電源だけでなく各種のケーブルが雑然としている


ケーブル類にはベースモデルである Quanata QSSC-S4R の部品番号が記載されている

 メモリラグを取り外すと、電源ケーブルをはじめとして各種のケーブル類や光学ドライブ、5インチベイなどにアクセスできるようになりますが、今までのメーカー製4ソケットサーバと比べるとケーブル類がそのままになっている部分が多く、極めて「自作パソコン」的な雰囲気を漂わせているのが特徴です。

(14)SASアレイカード
 本機はSASアレイカードが必須オプションという設定になっていますが、当方が入手した本体には RAID 5 などを構成できる N8103-130 が搭載されていました。

 このカードは LSI の MegaRAID SAS 9260-8i が元になっているカードで、コントローラとして LSISAS2108 が搭載されています。型番は LSI MegaRAID SAS 9264-8i となっていて、キャッシュメモリもカード上に256MBがメモリチップの形態で搭載されているのですが、そのままでは SATA のハードディスクを接続した際に 3Gb/Sec までのデータ転送となってしまうため、ファームウェアを MegaRAID SAS 9260-8i のものに変更しています。


SASアレイカード N8103-130 とバックアップバッテリ N8103-124


SASアレイカード N8103-130


バックアップバッテリは専用の金属製ブラケットに樹脂カバー付きで実装されている


バックアップバッテリ N8103-124


金属製ブラケットの裏には Express5800 の別の機種に対応するための穴と番号の表記がある


SASアレイカードからはバッテリを接続するリモートケーブルが延び・・・


マザーボードを横断し・・・


本体前面から向かって左側の壁面に固定される

 なお、純正のオプションではリモートケーブルを使用する設定となっていますが、アレイカード上には直接バッテリを接続するためのコネクタとバッテリを固定するための穴が用意されていますので、N8103-117用のバッテリをそのまま流用することも可能です。


バックアップバッテリは N8103-130 の基板上に実装することもできる

(15)I/Oライザー・管理用カード EXPRESSSCOPEエンジン2
 RX600 S5には、4ポートのネットワークコントローラと管理用のネットワークインターフェース、そしてディスプレイ出力とシリアル端子がI/Oライザーの形態で搭載され、専用のスロットに実装されていますが、RX600 S5のI/OライザーにあるCSSと障害発生を示すLEDについては、上から塞がれた状態になっています。
 この I/Oライザーには、ギガビットのネットワークコントローラとして Intel 82576NS が2つ搭載されており、それぞれ2ポートずつを制御しています。


I/Oライザーには各種のコネクタが搭載されているがCSSと障害発生を示すLEDは塞がれている


ネットワークコントローラ Intel 82576NS(Kawela)


4ポートのネットワークインターフェースを制御するために Intel 82576NS が2つ搭載されている

 サーバ本体の管理用プロセッサとして ServerEngines Pilot 2 に加えて、Intel Remote Management Module 3(以下、Intel RMM3)に極めてよく似たモジュールが搭載されています。
 ベースモデルの Quanta QSSC-S4Rでは、Intel RMM3 はオプションとして設定されていますが、R140b-4に搭載されているモジュールでは RX600 S5 に搭載されている iRMC2 と同様に、BANK2 とシルク印刷されているところに部品が実装されていません。

 なお、ライザーに搭載されているROMには「S4R BMC」と書かれたシールが貼られています。


管理用プロセッサ ServerEngines Pilot 2


背面には Intel RMM3 と同様のモジュールが実装されているが BANK2 がランドになっている


搭載されるROMには「S4R BMC」と書かれた通常のシールが貼られている

 画面表示機能については、ServerEngines Pilot 2 に内蔵された Matrox G200e が使用されます。グラフィックメモリとしてSamsung製の K4T51083QG-HCE6(512Mb) が2つ実装されていますが、富士通が公表している仕様では8MBとなっています。
 その他にはトップカバーの開閉状態を取得するためのマイクロスイッチや、POSTの進捗状況を点灯パターンの変化で示すポストコードLED、EXPRESSSCOPEエンジン2が正常に動作しているかどうかを確認できるハートビートLEDなどが実装されています。


グラフィックメモリ K4T51083QG-HCE6


トップカバーの開閉状態を取得するマイクロスイッチ


POSTの進捗状況は POSTCODE LED の点灯パターンの変化によって確認することができる


電源が入っている状態で正常稼働時にはハートビートLEDが点灯する

 なお、このI/Oライザーを抜いてしまうと、電源スイッチを押しても電源が入らなくなりますので注意が必要です。

(16)PCI Expressスロット
 R140b-4にはアレイカード用のスロットを含めて合計11本のPCI Expressスロットが用意されています。PCI Express は 2.0(Gen2) がサポートされており、x16のスロットが1つ(スロット5)とエッジフリーのx8スロットが2つ(スロット1とスロット2)用意されているのが大きな特徴です。

 ただし、スロット5〜スロット9までを使用するためには、CPUが3番目のソケット CPU3 に実装されている必要があります。これは、2つあるうちの片方のIntel 7500 チップセットがスロット1〜スロット4および CPU1 と CPU2 に接続され、もう片方のIntel 7500 チップセットがスロット5〜スロット9および CPU3 と CPU4 に接続されているためです。

 ですから、スロット5〜スロット9が使用できなくてもよいのであれば、より小さい構成として「1個のCPU」+「1枚のメモリバックボード」+「2枚のDIMM」という状態でも運転することは可能です。
 なお、スロット10については、Intel 82801JIR I/Oコントローラに接続されているため、どのような構成であっても使用できます。

 また、RX600 S5よりもベースモデルの Quanta QSSC-S4R に近い仕様になっているため、スロット1とスロット2およびスロット7とスロット8についてはホットプラグがサポートされており、いつもの樹脂製の枠が取り付けられています。


全部で11本のPCI Expressスロットが用意されている


長年の悲願だったx16スロットが搭載されている


スロット1とスロット2は通常のスロットが使われているのでエッジフリー化を行った


ホットプラグ対応のスロットでおなじみの樹脂製の枠


スロット1とスロット2にもカード認識用のマイクロスイッチが実装されている

(17)マザーボード上のコネクタとランド
 マザーボード上には上記の他にUSBやSATAをはじめとした各種のコネクタとランド、およびジャンパスイッチが存在しています。
 なお、マザーボードに実装されているBIOSチップには「S4R BIOS R0026」と書かれたシールが貼り付けられていることから、Quanta から部品の供給を受けた時点でのBIOSバージョンは 0.26 だったのだろうと想像されます。


一般仕様のBIOSであることを示す「S4R BIOS」とCMOSクリアやパスワードクリアに使用するジャンパ


BIOSリカバリ時に使用されるジャンパ


光学ドライブが接続されるSATAコネクタとテープドライブなどの接続が想定されているUSBコネクタ


USBフラッシュモジュールを実装するためのピンヘッダ仕様のUSBコネクタ


TPM(Trusted Platform Module)用のコネクタ


マザーボードへの電源供給はグラフィックカードの補助電源のような8ピンのコネクタによって行われる


Customer Self Service 対象となっている部分に問題が発生した際に不良箇所のLEDを点灯させるためのCSSボタン


マザーボードの各所に特徴的な三角形のシルク印刷が見られる


BIOSセットアップメニュー

 R140b-4ののBIOSには Phoenix Technologies の Phoenix SecureCore が使用されていますが、これは Express5800 シリーズの従来のハイエンドモデルで使用されていたBIOSと同じ系列であり、他の QSSC-S4R をベースとしたサーバが全て AMI の UEFI である Aptio を採用していることから考えると、非常に特殊な仕様になっています。

 また、当方が所持する2台の R140b-4 のうちの1台については、マザーボードに AMI の BIOS を搭載している旨を記したシールが貼られていますが、実際に搭載されているのは Phoenix SecureCore です。

 これらのことから、R140b-4用のマザーボードも最初は AMI の Aptio が入っており、NEC からの強い要請に応じて Phoenix SecureCore を後から入れ直していると考えて間違いないでしょう。


AMI BIOS であることを示すシールが貼られているが実際には Phoenix SecureCore が入っている


Main


Main - Processor Setting(前半)


Main - Processor Setting(後半)


Advanced


Advanced - Memory Configuration


Advanced - Advanced Memory Configuration - Memory Riser Board 1


Advanced - PCI Configuration


Advanced - Advanced Chipset Control


Security


Server


Server - System Management(前半・1台目)


Server - System Management(前半・2台目)


Server - System Management(後半)


Boot


Exit


LGA1567を採用したサーバの展開におけるメーカー側の戦略

 さて、R140b-4のマザーボードを構成している部品はベースモデルである QSSC-S4R と同等のものが使われているので、R140b-4 の後期モデルや Express5800/R140c-4 などの型番で Intel Xeon E7 シリーズを搭載したモデルが出てくる、というのが通常のパターンであるといえます。

 しかし、実際には Intel Xeon X7560 を4基搭載したモデルが最上位として用意されたところまでで、そのまま販売が終了してしまいました。
 この背景には、R140b-4の販売終了が近づいていた2011年の10月頃から、NEC はスケーラブルHAサーバを大規模用途として前面に押し出すようになっていましたから、より大きな収益が見込めるモデルにのみ Intel Xeon E7 シリーズを搭載するという決定が行われたのでしょう。

 これと似たようなモデル展開のパターンが前回の富士通のRX600 S5でも見られましたが、各社ともにミドルからローエンドのサーバでは大きな利益が見込めない状況に陥っており、かといってラックマウントタイプで中途半端に高性能な機種を出してしまうと、その時は自社のサーバが導入されたとしても、その本体が入れ替えの時期を迎えた際に、他のメーカーの機種に変更されてしまう可能性が出てきます。

 そのため、メーカー側としては・・・

などの戦略を採用しているものと思われます。特にスケーラブルHAサーバの最上位モデルである Express5800/A1080a の説明には、
「予備CPUを無効(利用できない)の状態で導入し、運用開始後、必要な時にコア単位で有効化することが可能なCapacity Optimization(COPT)機能を搭載した「COPT対応モデル」をラインナップ。急な負荷増大への対応はもとより、必要段階までソフトウェアライセンスなどのコストを抑えることができます。(※http://www.nec.co.jp/products/pcserver/scalable/a1080a/index.shtmlより引用)」
という記述があり、「大規模用のシステムだからこそ、導入に必要なハードルを下げておき、将来にわたって囲い込む」という思惑が強く感じられます。


参考文献


おわりに

 さて、R140b-4 と前回の RX600 S5 を比べてみると、ベースモデルが同じ QSSC-S4R でありながら、R140b-4 はできるだけベースモデルの持つハードウェア機構を残しつつ、搭載する BIOS や本体各部に対する青色の指定などの細かい部分においてはガッチリと従来の Express5800 シリーズを踏襲するものとなっています。

 それに比べて RX600 S5 では、「スロット1とスロット2へのホットプラグ機能」に代表されるようなベースモデルに標準搭載されているハードウェア機構であったとしても不要と判断すれば搭載せず、逆にベースモデルに標準で用意されていなくても、それまでの PRIMERGY シリーズで搭載していたローカルサービスディスプレイについては、わざわざ前面パネルまで新たに製造して搭載するという力の入れようです。

 しかし、RX600 S5(および PRIMERGY RX600 S6)では UEFI の内容までベースモデルのものから独自の変更を加えているために、QSSC-S4R で普通にできることであっても「使用上の注意」という制限の形で現れてしまっているというのは、前回の SV Magazine でお伝えした通りです。

 その視点で考えてみると、R140b-4については基本的に日本国内を販売のターゲットとしていることもあり、今までの Express5800 シリーズのハイエンドモデルで実現されている機能を Phoenix SecureCore で実現することで、「今までと全く同じ感覚で運用・管理できるNECのサーバ」を目指したのでしょう。

 今回の R140b-4 は諸般の事情で原稿作成のための時間が極めて少なかったため、ハードウェアの解説までで前半ということになってしまいましたが、次回の冬コミに出る予定の SV Magazine Release 29 では、時間切れで本稿に書ききれなかった内容のほか、恒例のグラフィックカードの増設やCPUの換装に関する内容をお伝えできると思います。どうぞご期待下さい。


連絡先

 本稿に対してご質問があれば、 kataama@fides.dti.ne.jp にメールを送っていただければ幸いです。

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