このサーバが登場した当時、1〜2ソケット用のXeonプロセッサは既にNehalem-EPの後継となるWestmere-EPに移行しており、CPUの処理能力については「もうお腹いっぱい」ともいえる状況になっていました。
そのため、4ソケットのサーバを導入する必要があるのは、ダウンすることが許されない極めて大規模なサービスか、あるいは科学計算を行う分野に限られるのではないかと思われます。
本稿執筆時点の2012年12月現在で、国内メーカーでXeonプロセッサの4ソケットモデルを販売しているのは、富士通と日立の2社まで減少しています。これは前述の2ソケットモデルの性能向上による、ハイエンドサーバ需要の減少が関係していることは間違いありません。
このような背景から、出荷台数が非常に少ないと思われるサーバですが、昨年のクリスマスに運良く導入することができました。
なお、記載されている内容については、私は一切保証しませんし、それに伴って発生した如何なる事故にも責任は負いませんので、あらかじめ御了承ください。
後期モデルの主なハードウェア面の特徴は、
機種名 | PRIMERGY RX600 S5 | |||||||||
型名 | PGR6052AA2 | |||||||||
CPU |
Intel Xeon プロセッサー(最大4個)
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メモリバス | 800MHz〜1066MHz(搭載するCPUにより異なる) | |||||||||
QuickPath Interconnect(QPI) | 4.80GT/s〜6.40GT/s(搭載するCPUにより異なる) | |||||||||
Intel Turbo Boost Technology | 対応 | |||||||||
Intel Hyper-Threading Technology | 対応(Xeon X7542を除く) | |||||||||
Intel Virtualization Technology | 対応 | |||||||||
チップセット | Intel 7500(Boxboro-EX)チップセット | |||||||||
システムボード | D2870 | |||||||||
メインメモリ | PC3-10600レジスタ付きECC DDR3 SDRAM、8GB(標準)〜1TB(最大・4CPU時) | |||||||||
画面制御機能 | リモートマネジメントコントローラ内蔵 VRAM:8MB | |||||||||
グラフィック表示機能 | 640×480/800×600/1024×768/1280×1024ドット | |||||||||
内蔵2.5インチベイ | 8(ホットプラグ対応) | |||||||||
搭載可能内蔵ストレージ |
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内蔵5インチベイ | 1 | |||||||||
内蔵光学ドライブ | DVD-ROMドライブ(標準搭載) または DVD-RAMドライブ(オプション) または Blu-ray Combo ドライブ(オプション) |
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拡張バススロット |
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ディスクアレイ | SASアレイコントローラカード(RAID 0/1/1E/0+1対応・標準搭載) または PG-248H3(RAID 0/1/1E/0+1/5/6/5+0/6+0対応・オプション) または PG-248J3(RAID 0/1/1E/0+1/5/6/5+0/6+0対応・BBU搭載・オプション) |
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SASインターフェース | SAS×8ポート(SASアレイコントローラカード標準搭載) | |||||||||
外付けFDD | オプション | |||||||||
ネットワークインターフェース | 4ポート(1000BASE-T/100BASE-TX/10BASE-T 択一) | |||||||||
インターフェース | ディスプレイ(アナログRGB)×2[前面:1・背面:1]、 シリアルポート(D-SUB9ピン)、キーボード(USB)、マウス(USB)、 USB(Ver.2.0)×5(キーボード/マウスで2個使用)[前面:3・背面:2] |
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キーボード/マウス | オプション | |||||||||
ハードウェア監視 | 標準搭載(LCDパネル)・ServerView Operations Manager & ServerView Agents 標準添付 | |||||||||
リモートサービス機能 | 標準搭載(オンボード、リモートマネジメントコントローラ) Management LAN 1ポート(100BASE-TX/10BASE-T 択一) |
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セキュリティチップ | オプション(TCG 1.2準拠) | |||||||||
冗長電源 | 標準搭載:2(オプション適用時:4) | |||||||||
外形寸法 | 176mm(4U)×482.6mm(突起部含む)×766.7mm(突起部含む)(高さ×幅×奥行) | |||||||||
重量 | 最大46kg(50kg(ラックレール含む)) | |||||||||
サポートOS |
Windows Server 2008 R2 Standard (64-bit) Windows Server 2008 R2 Enterprise (64-bit) Windows Server 2008 R2 Datacenter (64-bit) Windows Server 2008 Standard (64-bit) (SP2) Windows Server 2008 Enterprise (64-bit) (SP2) Windows Server 2008 Datacenter (64-bit) (SP2) Windows Server 2003 R2, Standard x64 Edition (SP2) Windows Server 2003 R2, Enterprise x64 Edition (SP2) Red Hat Enterprise Linux 6 (for Intel64) Red Hat Enterprise Linux 5 (for Intel64) VMware vSphere 4 |
なお、QSSC-S4RはIntel Xeonプロセッサ 7500番台を搭載する4ソケットサーバのリファレンスモデルとも呼べるもので、富士通以外にも日立、CISCO、SGIなどに対してカスタマイズを伴ったOEM供給が行われているほか、国内メーカーでは(株)ニューテック、システムワークス(株)、(株)日本コンピューティングシステム、海外ではCTL Corp.(アメリカ)、WinFirst(韓国)、TERA TEC(韓国)などに対して、ベースモデルがそのままOEM供給されています。
(1)PRIMERGY RX600 S5の前面
前面には2.5インチのハードディスクを8台まで内蔵できる2.5インチドライブベイのほか、バックアップデバイスを搭載するための5インチベイ、冷却ファン、IDカード、本体の状況を確認できるローカルサービスディスプレイ、電源スイッチとステータスランプ、スリムライン光学ドライブとRGBコネクタ、USB 2.0ポート、ラックから引き出す時に使用する取っ手があります。
QSSC-S4Rとの違いとしては、ローカルサービスディスプレイが搭載されるため、前面パネルが富士通仕様のものに交換されており、冷却ファンへの通風穴の形状が六角形になっています。
また、電源スイッチ周りのステータスランプも富士通独自のものに変更されていて、QSSC-S4Rでは左から「IDスイッチ・HDDアクセスランプ・システムステータス・冷却ファン障害・電源スイッチ」となっていますが、RX600 S5では左から「IDスイッチ・CSSランプ(利用者が交換可能な部品に障害が発生した場合に点滅あるいは点灯・日本市場ではCSSは非サポート)・前面保守ランプ(本体に異常が発生した場合に点滅あるいは点灯)・HDDアクセスランプ・電源スイッチ」という配列と機能になっています。
そのほか、QSSC-S4Rでは背面の4つのNICポートの状況を示すLEDがIDスイッチの左側に用意されていますが、RX600 S5ではその部分が前面パネルによって覆われています。内部にはQSSC-S4Rと同様のLEDが4つ並んだ基板が搭載されていますが、運転時にも全く点灯しないようになっています。
冷却ファン・IDカード・ローカルサービスディスプレイ・スリムライン光学ドライブ・5インチベイ
冷却ファン・ステータスランプ・2.5インチドライブベイ・電源スイッチ・RGBコネクタ・USB 2.0コネクタ
機種名は向かって左側の取っ手の下に小さく表記されている
ステータスランプには富士通独自のCSS(Customer Self Service)インジケータが用意される
前面パネルを取り外すとQSSC-S4Rと同一のNICのLEDが姿を現すが運転時でも全く点灯しない
前面パネルを裏側から見るとNICのLEDの穴も用意されているが塞がれている
(2)PRIMERGY RX600 S5の背面
本体の背面には
USB 2.0コネクタ・UnitIDスイッチ・管理用LANコネクタ・LANコネクタ・RGBコネクタ・シリアルポート・電源ユニット
PCI Expressスロット・電源ユニット
背面の右端にはアース線を接続するためのボルトが用意されている
(3)PRIMERGY RX600 S5の側面
本体の側面には、富士通製品であることを示すモデル名とシリアル番号が記載されたシールと、電源ユニットのステータスを示すLEDの内容を説明したシールが貼付されています。
なお、モデル名が書かれているシールには「MADE IN JAPAN」という表記が見られますが、マザーボードを含めて各部のコンポーネントは、前述の通り台湾のQuanta ComputerからのOEMです。
また、本モデルの公式なカタログにも「PRIMERGY本体の製造(部品受入検査・CPU組込み・装置組込み・最終組立て・出荷試験(品質管理))からサポートを、国内で実施しています。」と書かれていますので、実際には「ASSSENBLED IN JAPAN」といったところではないでしょうか。
電源ユニットのステータスを示すLEDの説明が書かれている
(4)内部全景
従来の4ソケットサーバと異なり、サーバの前方から順にファンユニット・メモリライザー・CPU・拡張カード用スロットというレイアウトでコンポーネントが実装されていて、本体のちょうど中央部にCPUの大きなヒートシンクと、それを保護するミッドブレースが位置するため、フルサイズの拡張カードは物理的に実装できません。
このサーバをメーカーが想定している用途で使用する限りにおいては、フルサイズの拡張カードが実装できなくても、さしたる問題にはならないでしょう。
しかし当方の運用環境では、グラフィックカードの増設を行うことは最優先事項となっているので、この「実装できるカードの長さの制限」というのは、かなり頭の痛い問題となります。
なお、トップカバーの固定方法は約3.5ミリの皿ネジ(インチネジ)1本だけとなっていて、今までのエンタープライズサーバと比べると、かなり簡素な方式です。
トップカバーを開けるには皿ネジを取り外し・・・
左右にある緑色のラッチを押し下げてトップカバーをスライドさせる
PRIMERGY RX600 S5の内部全景
トップカバーには搭載されている部品のリストが貼付されている
トップカバー裏にはメモリの増設方法やジャンパの位置などが記載されている
PRIMERGY RX600 S5専用品として作成されている
(5)電源ユニット
電源ユニットにはデルタ製の850Wの 80PLUS GOLD の認証を受けたものが使われており、障害発生時にはホットスワップが可能になっています。
この電源は100V・200Vのどちらにも対応できる電源で、標準では2台が搭載されていますが、最大で4台まで搭載することができます。
デルタ製の DPS-850FB(80PLUS GOLD)が使用されている
電源ユニットの内部には40mmのファンが4つ搭載されている
本体への接続コネクタ部はスリム化されている
(6)前面ファン
本体前面にはメモリおよびCPUを冷却するため、80mmのファンが4つずつ2列にわたって合計8個搭載され、PWMによって回転数の制御が行われています。2列あるうちの奥側の列は冗長構成を実現するための列で、手前側の列の4個のファンだけでも運転が可能になっています。
これらのファンに障害が発生した際には、ホットスワップが可能になっていますが、残念ながら本体のトップカバーを開けて交換することになります。
使用されているファンはDelta PFB0812DHE という1分間の回転数が9,000回転の超高速モデルが使用されています。PWM制御が行われていることもあり、POST時には若干の騒音を感じるものの、通常運転時にはそれほど騒音は発生しません。
しかし、本体に障害が発生した場合や、電源を入れたままトップカバーを開けるなどした場合にはファンが全開で回転するため、まるで飛行場のジェット機のエンジンのような轟音を発生させます。
この音は想像を絶するほど騒がしく、家庭内ではおそらく30分も耐えられずに逃げ出したくなると思います。
ファンは Delta PFB0812DHE という毎分9,000回転という壮絶なモデルが使用されている
ホットスワップが可能なコネクタによる接続になっている
向かって奥側となる2列目は冗長構成用という表記が見られる
さて、前述のように非常に高速なファンが搭載されていることから、冷却用の空気の整流と運転中のメモリライザーの交換時にあやまって指を怪我しないようにという2つの目的のため、実装されていないメモリライザーの位置には内側から樹脂製のエアーバッフルが取り付けられています。
エアーバッフルを取り外すとファンの羽がむき出しになるため非常に危険
エアーバッフルには取付時の向きを示す「UP」が記されている
(7)ローカルサービスディスプレイとIDカード
本体前面左側には、富士通独自のローカルサービスディスプレイとIDカードが実装されています。
ローカルサービスディスプレイは、本体の情報(モデル名・シリアル番号・BIOSバージョン・各LANポートのIP・インストールOS・設置場所・管理者名など)や障害発生時の情報が表示されるようになっています。
なお、このローカルサービスディスプレイで表示される本体の情報はリモートマネジメントコントローラ(iRMC)が保持している情報が表示されますので、一部の情報は利用者側で別途設定する必要があります。
IDカードについては、本体のモデル名とシリアル番号が記載されており、ラックに設置された本体を引き出すことなく、これらの情報を確認することが可能です。
ローカルサービスディスプレイ(利用時)
電源投入直後はモデル名が表示される
本体のBIOSバージョンも確認できる
POST中はコード番号が表示され画面表示が可能になる前の障害も確認できる
本体のモデル名やシリアル番号が記載されるIDカード
(7)2.5インチハードディスクドライブ
本機のハードディスクインターフェースはSASかSATAで、2.5インチのハードディスクあるいはSSDを8台まで内蔵することができます。また、障害発生時にはホットスワップによる交換が可能となっています。
なお、富士通独自のハードディスクトレイはQuanta(Intel)純正のものよりも奥行きが短いのが特徴で、格納される側のベイもトレイの長さに合わせて設計されているため、Quanta純正のトレイを流用することはできません。
当方が入手した個体は、トレイのみが8個実装されている状態だったので、ディスクについては Western Digital WD5000BEKT を2台搭載してミラーリングで運用しています。
なお、このドライブを搭載した直後にタイの大洪水が発生し、ハードディスクの値段が新品・中古問わず高騰しました。最近では洪水前の水準にかなり近づいていますが、未だにアドバンストフォーマット(AF)のハードディスクに移行することなく、現在に至っています。
富士通独自の2.5インチハードディスクトレイ
Western Digital製のSATAハードディスク WD5000BEKT(7,200回転)
(8)光学ドライブ
標準で搭載されているDVD-ROMドライブはTEAC製のDV-28Sで、SATAインターフェースのモデルです。
最大読み取り速度はDVDメディアが8倍速、CDメディアが24倍速となっていますが、書き込みが全くできないドライブだったため、すぐにパナソニック製のBDドライブ UJ-240 に換装しました。
富士通の部品番号が書かれたシールが貼付されている
光学ドライブはパナソニック製の UJ-240 に換装
緑色のプラスチック製ブラケットを使用して本体に固定される
ベゼルに書かれた Blu-ray Disc マークが誇らしげだ
(9)ミッドブレース
本体の中央部にはミッドブレースと呼ばれる、金属製のカバーが取り付けられています。ミッドブレースはヒートシンクおよびCPUの保護が主な目的と思われますが、メモリライザーを固定する際に使用する溝が作られています。
なお、このミッドブレースはCPUごとに部屋が分かれた構造になっているだけでなく、CPUを冷却して後部に排出された風がチップセットのヒートシンクの冷却に使われるよう、風向きを調整する羽根が作られています。
ミッドブレースにはCPU番号とメモリライザー番号が刻印されている
メモリライザー用の溝とメモリディバイダ(後述)用の溝が作られている
ミッドブレースの内側はCPUごとに部屋が分割されている
CPUの冷却に使われた風はミッドブレースの羽根によってチップセットのヒートシンク冷却にも使用される
(10)CPUとヒートシンク
RX600 S5 のマザーボードは1枚構成で、CPUはIntel Xeonプロセッサ 7500番台が最大で4基まで搭載できるようになっていますが、富士通が用意しているモデルラインナップには最上位のCPUとなる Intel Xeon X7560 を搭載したモデルは用意されていません。
仮に Intel Xeon X7560 を搭載したとしても電力的には全く問題ないはずなので、富士通が製造している上位のサーバファミリーである PRIMEQUEST シリーズの領域を侵食しないように、というマーケティング戦略上の理由によるものと思われます。
ちなみに、このようなモデル構成の事情については NEC Express5800 シリーズにおける「ラックサーバ」と「スケーラブルHAサーバ」の関係にも見て取ることができるわけですが、詳しくは次回以降のSV magazineでお話できると思います。
隣接するヒートシンクとの隙間は非常に狭い
ヒートシンクには4本のヒートパイプが使用されている
富士通の部品番号がIntelおよびCCI(ヒートシンク製造元)の部品番号と併記されている
重量級のヒートシンクだが固定に使われるのはネジ2本のみ
重いヒートシンクを取り外すとようやくCPUが現れる
VRMはオンボードで実装されている
Intel Xeonプロセッサ 7500番台が使用するソケットは LGA1567 と呼ばれるタイプのソケットで、同世代のIntel Xeonプロセッサ 6500番台や後継プロセッサの Intel Xeon E7シリーズでも使われています。なお、当方が入手した個体は Intel Xeon L7545 が4個搭載されていました。
今までの Socket604 とのピン数の違いは歴然
ソケットの構造そのものは他のLGAソケットと同様である
Intel Xeon L7545 SLBRH
Intel Xeon L7545(裏面)
それまでの4ソケット用となる Intel Xeon 7400番台と大きく異なるのは、メモリコントローラがCPUに内蔵され、Intel QPI(QuickPath Interconnect)マイクロアーキテクチャが採用されていることと、最大で8個のCPUコアを持つということ、そして NetBurst 世代のCPUに搭載されていた Hyper-Threading テクノロジーが復活したという点です。
開発中は Nehalem-EX というコードネームが与えられ、45nmプロセスで製造されるこのCPUは、1つのCPU内に2つのメモリコントローラを内蔵しています。1つのメモリコントローラにつき8本のDIMMスロットを使用することができるため、CPUあたりの最大DIMMスロット数は16となり、4つのCPUを搭載することによって最大で64本のDIMMスロットがサポートされます。
なお、CPUにメモリコントローラが内蔵されたことにより、今までのように「CPU個数はそのままで、メモリライザーだけを追加してDIMMスロットを増やす」ということが特定の条件下では不可能になりました。実装したいDIMMの本数に応じたCPUの個数を実装しないと、仮にメモリライザーを追加してDIMMを実装しても、本体から認識されませんので注意が必要です。
工場から出荷された直後の状態でも最低2個のCPUは搭載されていますので、32本のDIMMスロットまではメモリライザーの追加によって使用できますが、それ以上のDIMM本数を実装する場合には、メモリライザーだけでなくCPUの増設が必要となります。
CPUに内蔵されたメモリコントローラは、メモリライザー上に搭載されたメモリバッファを介してDIMMスロットに接続されており、CPUが複数個実装された場合には、それぞれのCPUがリング状のメモリバスで連結されます。そのため、どのCPUからでも任意のDIMMスロットにアクセスすることが可能となっています。
RX600 S5を含めてQuanata QSSC-S4Rをベースモデルとしている本体は、CPUの冷却をパッシブヒートシンクと前面に配置されたファンによって行いますが、マザーボード上にはアクティブヒートシンクが採用された時に備えて、ファン接続用コネクタのランドが用意されています。
なお、マザーボードのチップセットとCPUとのちょうど中間あたりの位置には Quanta QSSC-S4R としてのマザーボード名とリビジョンがシルク印刷されています。
Quanta QSSC-S4R の初期のマザーボードとしてはリビジョンが B や C が存在していた模様ですので、本機のリビジョン E というのは、かなり新しいということになります。
Quanta QSSC-S4R のマザーボードであることを示す DA0S4RMBEE0 Rev:E のシルク印刷
(11)チップセットとI/Oコントローラ
RX600 S5はチップセットとしてIntel 7500(Boxboro-EX)がマザーボード上に2つ実装されており、そのうちの1つの下にI/OコントローラのIntel 82801JIR(ICH10R)が接続されています。
Intel 7500チップセットにはそれぞれバネで固定する方式のヒートシンクが取り付けられていますが、このヒートシンクはCPUを冷却して排出された風を利用して冷却される構造になっています。
チップセットには銀色のヒートシンクが取り付けられている
Intel 7500 チップセット AC7500BXB(Boxboro-EX)
1個のチップセットに対して2個のCPUが接続されている
Intel 82801JIR I/Oコントローラハブ(ICH10R)
また、チップセットの周囲の四隅にはネジで固定する方式のヒートシンクのための穴と、アクティブヒートシンクが採用された時に備えてファン接続用コネクタのランドが用意されています。
チップセットの冷却にアクティブヒートシンクが採用された場合を考慮したファン接続用コネクタのランド
(12)メモリおよびメモリバックボード
RX600 S5では、メモリライザーを使ってメモリを搭載しています。メモリライザーは本体に最大で8枚搭載することが可能で、メモリライザー1枚につきDIMMスロットが8つずつ用意されています。
使用するメモリについては、メーカー側での設定はPC3-10600でRegisterd ECCのメモリとなっていますが、メモリバスの速度が最高でも1,066MHzとなっているため、実際にはPC3-8500のRegisterd ECCのメモリも使用可能です。
メモリの増設については前項で説明したとおり、工場出荷時の最低CPU個数の2個の状態ではメモリライザーは最高で4枚まで実装できますが、それ以上の枚数を実装する場合にはCPUの増設が必要となります。
メモリライザー上にはそれぞれ 1A・1B・1C・1D・2A・2B・2C・2D の8つのスロットと2つのメモリバッファが搭載されていますが、CPUから各DIMMスロットまではメモリライザー上のメモリバッファを介して次のように接続されています。
CPU1 | メモリコントローラ1 | メモリライザー1 | メモリバッファ1 | チャネルA 1A−2A |
チャネルB 1B−2B | ||||
メモリバッファ2 | チャネルC 1C−2C | |||
チャネルD 1D−2D | ||||
メモリコントローラ2 | メモリライザー2 | メモリバッファ1 | チャネルA 1A−2A | |
チャネルB 1B−2B | ||||
メモリバッファ2 | チャネルC 1C−2C | |||
チャネルD 1D−2D | ||||
CPU2 | メモリコントローラ1 | メモリライザー1 | メモリバッファ1 | チャネルA 1A−2A |
チャネルB 1B−2B | ||||
メモリバッファ2 | チャネルC 1C−2C | |||
チャネルD 1D−2D | ||||
メモリコントローラ2 | メモリライザー2 | メモリバッファ1 | チャネルA 1A−2A | |
チャネルB 1B−2B | ||||
メモリバッファ2 | チャネルC 1C−2C | |||
チャネルD 1D−2D | ||||
CPU3 | メモリコントローラ1 | メモリライザー1 | メモリバッファ1 | チャネルA 1A−2A |
チャネルB 1B−2B | ||||
メモリバッファ2 | チャネルC 1C−2C | |||
チャネルD 1D−2D | ||||
メモリコントローラ2 | メモリライザー2 | メモリバッファ1 | チャネルA 1A−2A | |
チャネルB 1B−2B | ||||
メモリバッファ2 | チャネルC 1C−2C | |||
チャネルD 1D−2D | ||||
CPU4 | メモリコントローラ1 | メモリライザー1 | メモリバッファ1 | チャネルA 1A−2A |
チャネルB 1B−2B | ||||
メモリバッファ2 | チャネルC 1C−2C | |||
チャネルD 1D−2D | ||||
メモリコントローラ2 | メモリライザー2 | メモリバッファ1 | チャネルA 1A−2A | |
チャネルB 1B−2B | ||||
メモリバッファ2 | チャネルC 1C−2C | |||
チャネルD 1D−2D |
本機はメモリアクセス性能を向上させるため、メモリアクセス時には同一のメモリライザー上に搭載された2つのメモリバッファに用意されたチャネルを並行して使用します。そのため、DIMMの実装には順番が決められていて、
1回目の増設時 「1Bと1D(=チャネルBとチャネルDを同時に使用してアクセス)」
2回目の増設時 「1Aと1C(=チャネルAとチャネルCを同時に使用してアクセス)」
3回目の増設時 「2Bと2D(=チャネルBとチャネルDを同時に使用してアクセス)」
4回目の増設時 「2Aと2D(=チャネルAとチャネルCを同時に使用してアクセス)」
という順番で「2枚単位のペア」で実装していきます。
このように「2枚単位のペア」のロックされた構成での実装になるため、マニュアルやカタログなどでは「ロックステップペアで実装」と書かれますが、このアクセス方法を見るとハードウェアレベルで最初から 2Way のインターリーブによるメモリアクセスとなっていることがわかります。
メモリバッファはSMB(Scalable Memory Buffer)と呼ばれ、Intel BD7510 が搭載されています。この Intel BD7510 のコードネームは MillBrook2 で、同じファミリーには初期バージョンの Intel BD7500(MillBrook1)や省電力バージョンの Intel BD7512(MillBrook2 LP) が用意されています。
なお、MillBrook1では使用できるDIMMの仕様に「16GBまで・LV-RDIMMは不可」という制限がありましたが、MillBrook2になると「32GBまで・LV-RDIMMも使用可能」に改良されています。さらなる省電力が求められた場合には、MillBrook2 LP を使用することにより、メモリバッファチップ自体の消費電力を減少させることが可能です。
ちなみに、本機の後継モデルとなる富士通 PRIMERGY RX600 S6 では LV-RDIMM が正式にサポートされ、電源ユニットなども含めて低消費電力であることが大きく前面に押し出されています。メモリライザーの部品番号が RX600 S5 とは異なることを考えると、MillBrook2 LP が搭載されている可能性があります。
メモリライザーには8つのDIMMスロットと2つのメモリバッファが搭載されている
メモリライザーの裏側は金属製のフレームによって保護されている
メモリライザーの上部にはホットプラグ時に使用するスイッチとDIMMの増設順を記載したシールが貼付される
銀色のヒートシンクを取り外すとメモリバッファが現れる
スケーラブルメモリバッファ Intel BD7510(MillBrook2)
なお、富士通純正ではないメモリを実装した場合には、BIOSセットアップメニューの Error Manager に「富士通製以外のメモリを認識したので、動作は保証されない」旨の警告が表示されるようになりますが、容量は本体から正しく認識されるので、使用することについては問題ありません。
ただし、実装できるDIMMの1枚あたりの容量は2GB以上という条件が課せられていて、それ未満の容量のDIMMは実装しても本体からは認識されません。ベースモデルである Quanata QSSC-S4R にはこのような制限は存在しないため、富士通の RX600 S5 用の増設メモリオプションとして用意されているDIMMの1枚あたりの最低容量が2GBである、というメーカー側の事情に合わせた独自仕様になっています。
利用できるメモリは2GB以上の容量のものに限られる
富士通純正以外のメモリを搭載するとBIOSセットアップメニューでエラーとして認識される
メッセージには「富士通以外のメモリが実装されていて保証外である」旨が表示されている
ちなみに、メモリライザーについても同じようなチェック機構が組み込まれていますが、こちらの方はDIMMよりも厳しい制裁措置が設定されており、富士通純正ではないメモリライザー(=Quanta QSSC-S4R用メモリライザー)を実装すると、メモリライザー自体は認識するものの、そこにDIMMを搭載しても本体からは全く認識されません。
(13)メモリディバイダとメモリラグ
本体内のメモリライザーが実装されるエリアには、隣接するメモリライザーとの間を仕切るメモリディバイダが実装されています。メモリディバイダはミッドブレースに用意された溝に差し込まれ、下側はメモリラグにはめ込まれて固定されます。
なお、このメモリラグはパワーディストリビューションボードからの電源ケーブルや、マザーボードからファン制御用ボードに接続されているケーブル、ハードディスクのバックプレーンに接続されているケーブルなどを保護する役割も持っています。
取り外されたメモリディバイダ
メモリディバイダには取り付け方向を示す矢印が書かれている
メモリディバイダを全て撤去するとメモリラグが見えるようになる
メモリラグには「PRESS HERE」というシールが貼られている
メモリラグ固定用のネジには脱落防止のワッシャが裏側から取り付けられている
メモリラグの下には電源だけでなく各種のケーブルが雑然としている
ケーブル類にはベースモデルである Quanata QSSC-S4R の部品番号が記載されている
メモリラグを取り外すと、電源ケーブルをはじめとして各種のケーブル類や光学ドライブ、5インチベイなどにアクセスできるようになりますが、今までのメーカー製4ソケットサーバと比べるとケーブル類がそのままになっている部分が多く、極めて「自作パソコン」的な雰囲気を漂わせているのが特徴です。
(14)SASアレイカード
本機は標準で RAID 0/1/1E などが構成できるSASアレイカードが実装されていますが、当方が入手した本体には RAID 5 などを構成できる PG-248H3 が搭載されていました。
このカードは LSI の MegaRAID SAS 9260-8i が元になっているカードで、コントローラとして LSISAS2108 が搭載されています。キャッシュメモリはカード上に512MBがメモリチップの形態で搭載され、6Gb/Sec でのデータ転送が可能となっています。
ただし、富士通製のオリジナルデザインのカードということもあり、MegaRAID SAS 9260-8i とはコネクタのレイアウト位置などがかなり異なっています。
カードからはアクセスランプ用のケーブルが延び・・・
マザーボード上の HD LED とシルク印刷されたコネクタに接続されている
ハードディスクドライブベイのバックプレーンにはL字のSATAコネクタで接続されている
富士通純正SASアレイカード PG-248H3 (D2616)
カードの設計と組み立てはヨーロッパの Fujitsu Technology Solutions で行われている
カードにはヨーロッパの Fujitsu Technology Solutions(以下、FTSと表記)で設計と組み立てが行われているという表示がされていますが、この FTS という会社は、子会社だった富士通シーメンス・コンピューターズが2009年1月に富士通によって統合され、新たに Fujitsu Technology Solutions という会社に改組されたという経緯があります。
FTS はドイツのアウグスブルグにあり、PRIMERGYシリーズの開発業務をFTSに集約して世界的に統一したモデルを提供することにより、富士通グループとして、全世界のIAサーバでのシェアにおいて10%を獲得することを目標としています。
そのような背景があるため、マニュアルなどの技術的な資料やBIOS・ドライバなどは、日本の富士通のサイトよりもFTSのサイトの方が早期に提供されるだけでなく、FTSのサイトでしか公開されていないものもあります。
他の国内のサーバメーカーが4ソケットサーバの提供に消極的であるのに対して、統一したモデルラインナップで全世界をターゲットとしてIAサーバを展開するように変化した富士通は、世界的なマーケットからの多種多様な需要に対応するために、Intel から発表される最新のCPUを搭載したサーバを順次提供していくと考えられます。
よって、今後もラックマウントタイプの4ソケットサーバが開発・提供されると思われますが、この方針は LGA2011 を使用した Intel Xeon E5-4600 シリーズの4ソケットサーバの提供が PRIMERGY RX500 S7 として既に始まっていることから見ても明らかでしょう。
さて、当方が入手したこの本体には PG-248H3 が搭載されていましたが、残念ながらバッテリバックアップユニットは実装されていなかったため、構成部品を調達して PG-248J3 相当に変更しています。
バッテリバックアップユニットは LSI MegaRAID SAS 9260-8i や LSI MegaRAID SAS 8880EM2 などで使用されている LSIiBBU07 が流用できますが、バッテリの実装位置はメモリライザーの横になるため、遠隔設置用の信号ケーブルも必要になります。これらの部品は国内での入手も無理ではありませんが、レイによって入手が容易な海の向こうから取り寄せることにしました。
なお、このバッテリバックアップユニットは、Intel製サーバー用の純正部品として Intel RAID Smart Battery AXXRSBBU7 という名称でも販売されています。
また、遠隔設置用の信号ケーブルは LSIiBBU07 と LSIiBBU06 で共用となっていることから、LSIiBBU07 が入手できない場合には、LSI MegaRAID SAS 8708EM2 などで使用される LSIiBBU06 で代用するという方法も考えられます。
反対側には2枚目のアレイカードのバッテリユニットを固定するための樹脂製ブラケットが用意されている
バッテリが固定されている場所からカードまでは距離が離れているのでリモートケーブルで接続される
リモートケーブルのコネクタに書かれた黒い丸印とカード上のコネクタの黒い丸印を合わせて接続する
今回は Intel の AXXRSBB7 を使用したが POSTのアレイ構成情報の表示でもバッテリは正常に認識されている
(14)I/Oライザー・管理用カード iRMC2
RX600 S5には、4ポートのネットワークコントローラと管理用のネットワークインターフェース、そしてディスプレイ出力とシリアル端子がI/Oライザーの形態で搭載され、専用のスロットに実装されています。
この I/Oライザーには、ギガビットのネットワークコントローラとして Intel 82576NS が2つ搭載されており、それぞれ2ポートずつを制御しています。
I/Oライザーには各種のコネクタが搭載されている
ネットワークコントローラ Intel 82576NS(Kawela)
4ポートのネットワークインターフェースを制御するために Intel 82576NS が2つ搭載されている
サーバ本体の管理用プロセッサとして ServerEngines Pilot 2 に加えて、Intel Remote Management Module 3(以下、Intel RMM3)に極めてよく似たモジュールが搭載されています。ベースモデルの Quanta QSSC-S4Rでは、Intel RMM3 はオプションとして設定されていますが、RX600 S5に搭載されているモジュールでは、BANK2 とシルク印刷されているところに部品が実装されていません。
なお、ライザーに搭載されているROMには「S4F iRMC」と書かれたシールが貼られており、富士通独自のファームウェアが入っていることがわかります。
背面には Intel RMM3 と同様のモジュールが実装されているが BANK2 がランドになっている
搭載されるROMには「S4F iRMC」と書かれたシールが貼られている
画面表示機能については、ServerEngines Pilot 2 に内蔵された Matrox G200e が使用されます。グラフィックメモリとしてSamsung製の K4T51083QG-HCE6(512Mb) が2つ実装されていますが、富士通が公表している仕様では8MBとなっています。
その他にはトップカバーの開閉状態を取得するためのマイクロスイッチや、POSTの進捗状況を点灯パターンの変化で示すポストコードLED、iRMC2が正常に動作しているかどうかを確認できるハートビートLEDなどが実装されています。
トップカバーの開閉状態を取得するマイクロスイッチ
POSTの進捗状況は POSTCODE LED の点灯パターンの変化によって確認することができる
本体の電源が入っていなくても iRMC2 が正常に稼働していればハートビートLEDが点滅する
なお、このI/Oライザーを抜いてしまうと、電源スイッチを押しても電源が入らなくなりますので注意が必要です。
(15)PCI Expressスロット
RX600 S5にはアレイカード用のスロットを含めて合計11本のPCI Expressスロットが用意されています。PCI Express は 2.0(Gen2) がサポートされており、x16のスロットが1つ(スロット5)とエッジフリーのx8スロットが2つ(スロット1とスロット2)用意されているのが大きな特徴です。
ただし、スロット5〜スロット9までを使用するためには、CPUが3番目のソケット CPU3 に実装されている必要があります。これは、2つあるうちの片方のIntel 7500 チップセットがスロット1〜スロット4および CPU1 と CPU2 に接続され、もう片方のIntel 7500 チップセットがスロット5〜スロット9および CPU3 と CPU4 に接続されているためです。
このようなハードウェア構成のため、富士通が公開しているカタログやシステム構成図では、最小構成であっても2個のCPUが最初から組み込まれており、2個目のCPUを3番目のソケットに実装して、マザーボード上の全てのスロットを使用できる状態で出荷されています。
ですから、スロット5〜スロット9が使用できなくてもよいのであれば、より小さい構成として「1個のCPU」+「1枚のメモリライザー」+「2枚のDIMM」という状態でも運転することは可能です。
なお、スロット10については、Intel 82801JIR I/Oコントローラに接続されているため、どのような構成であっても使用できます。
また、スロット7とスロット8についてはホットプラグがサポートされているため、いつもの樹脂製の枠が取り付けられていますが、ベースモデルの Quanta QSSC-S4R ではスロット1とスロット2もホットプラグ対応となっており、この部分も富士通仕様にカスタマイズされていることがわかります。
ちなみにRX600 S5は、2010年11月の時点では、拡張カードのホットプラグは非サポートの機能であることが富士通からの「PRIMERGY RX600 S5 ご使用上の注意」という追加文書を通してアナウンスされていて、2011年2月頃の「PRIMERGY RX600 S5 ご使用上の注意」ではホットプラグが非サポートである旨の記述が消えています。
長年の悲願だったx16スロットが搭載されている
スロット1とスロット2は工場出荷時からエッジフリースロットが採用されている
スロット7とスロット8はホットプラグ対応となっている
ホットプラグ対応のスロットでおなじみの樹脂製の枠
樹脂製の枠の下にはカード認識用のマイクロスイッチが実装されている
Quanta QSSC-S4R ではホットプラグ対応のスロット1とスロット2にはマイクロスイッチなどは実装されていない
また、富士通ならでは特徴として、拡張カード取り外しツールが各スロットに最初から用意されています。
この取り外しツールを拡張カードに実装することにより、カードの裏面が樹脂カバーで覆われるだけでなく、取り外しツール側に用意されたハンドルを使ってカードをスロットから引き抜くことが可能となります。
この取り外しツールは本機が拡張カードのホットプラグに対応しているため、カード交換作業時のショートや感電などの事故を防ぐことを目的としていますが、同様の取り外しツールは後継モデルとなるRX600 S6をはじめとして、歴代のRX600シリーズにも搭載されています。
カードをスロットから取り外す際には緑色のハンドルを使用する
拡張カード取り外しツールはホットプラグ非対応スロットにも用意されている
(16)マザーボード上のコネクタとランド
マザーボード上には上記の他にUSBやSATAをはじめとした各種のコネクタとランド、およびジャンパスイッチが存在しています。
なお、マザーボードに実装されているBIOSチップには「S4F BIOS 1.01」と書かれたシールが貼り付けられており、iRMC2に実装されているROMなどと同様に、富士通オリジナルの仕様にカスタマイズされたものが搭載されています。
BIOSリカバリ時にIDスイッチによる「緊急モード」と併せて使用されるジャンパ
光学ドライブが接続されるSATAコネクタとテープドライブなどの接続が想定されているUSBコネクタ
USBフラッシュモジュールを実装するためのピンヘッダ仕様のUSBコネクタ
TPM(Trusted Platform Module)用のコネクタ
マザーボードへの電源供給はグラフィックカードの補助電源のような8ピンのコネクタによって行われる
Customer Self Service 対象となっている部分に問題が発生した際に不良箇所のLEDを点灯させるためのCSSボタン
マザーボードの各所に特徴的な三角形のシルク印刷が見られる
System Information(後半)
Main
Advanced
Advanced - Advanced Memory Configuration
Advanced - Advanced Memory Configuration - Memory Interleaving
Advanced - Advanced Processor Configuration
Advanced - Advanced PCI Configuration
Security
Server
Server - Memory Status
Server - Memory Status - DIMM Status - Memory Riser 1
Power
Boot Options
Boot Manager
Exit
本機の各マニュアルでは既にサポートしているかのように書かれている内容であっても、実際には「現状では未サポートです」という、およそ信じられない状況になっている場合があります。
そのため、富士通のホームページに掲載されている「PRIMERGY RX600 S5 ご使用上の注意」の内容は、時間の経過とともに変化してきました。
(1)2010年6月の時点で未サポートの機能
(2)2010年7月の時点で未サポートの機能
(3)2010年11月時点で未サポートの機能
(4)2011年2月時点で未サポートの機能
自社の独自カスタマイズを行うことによって、他のメーカーとの差別化を図っているという事情はわかりますが、他のメーカーの製品では「発売された当初から特定の機能が未サポートになっている」ということはあまり目にしません。
未サポートとなっていた機能は徐々に実装されてきているものの、未だにサポートされていない機能もあるため、RX600 S5の発売からしばらくの期間は、富士通に対して少なからずクレームが出たのではないかと思われます。
ちなみに、本機の後継モデルとなるRX600 S6でも似たような状況が繰り返されていて、本稿執筆時点の2012年12月では「メモリのホットプラグ」が未サポートになっています。RX600 S5とRX600 S6では同系統のマザーボードを使っていながら制限事項に違いがあるということは、iRMC2 あるいはそれに関連する部分において、何らかの違いがあるものと思われます。
マニュアルには「レガシーなI/Oカードをサポートするのは、スロット1〜4とスロット10のみ」と書かれており、レガシーなI/Oカードのレイとしてグラフィックカードがあげられています。
逆にいえば、スロット1〜4および10であればグラフィックカードが認識される、ということなので、スロット1とスロット2がエッジフリーとなっていることから、これらのスロットがグラフィックカードの実装に向いています。
ただし、物理スロットの形状がx8のスロットなので、過電流によってスロットや端子の焼損などが発生しないように、補助電源を使用するグラフィックカードを選択する必要があります。
なお、補助電源のコネクタの向きが上向きのカードは補助電源ケーブルを接続した際にトップカバーが閉まらなくなりますので、補助電源コネクタが横向きのカードを選択するか、コネクタの向きを横向きに変更する改造が必要となります。
また、本体の中央部にはミッドブレースがあるため、実装できるグラフィックカードの長さは約23cmまでのものに限られます。さらに、隣接するスロットとの間隔はレイによって一般的なものよりも広いため、固定用のブラケットは1スロットに収まる形状でなければなりません。
ちなみに、グラフィックカードを実装した場合には、BIOSセットアップメニューでマザーボード側のVGAを切らないと、Matrox G200e からの出力が優先されてしまいます。
補助電源コネクタの向きを自由に変更できるように新たにケーブルを追加
追加する補助電源接続用ケーブルは6ピンを8ピンに変換した状態でハンダ付け
隣接スロット側のDVIコネクタを撤去して固定用ブラケットは1スロットに切断
固定を補助するためエプトシーラーを追加
補助電源は5インチベイ用に用意された4ピンの電源ケーブルを分岐・延長して作成
エッジフリーとなっているスロット1に実装された Palit GeForce GTX570
追加ケーブルのおかげで補助電源を接続してもトップカバーを閉めることができる
短いカードを使ってもミッドブレースとのクリアランスは1cm程度しかない
しかし、ここで大きな問題になったのは、どうやってLGA1567のCPU、それも8コアのものを4個入手するかということでした。国内ではおよそYahoo!オークションなどでも出品されることはありませんし、さりとて海外に頼るとしても、まともに購入しようとすると1個あたりの値段がが3,000ドル前後となり、これを1ドル80円のレートで計算しても24万円となります。おまけに、個数が4個となると合計で100万円近くかかる計算です。
さすがにCPUにそこまでの金額を投入することは無理なので、エンジニアリングサンプル品(以下、ES品)を使用して対応することにしました。海外のebayでは、本来は流通することなく廃棄されるはずのLGA1567のES品がいくつも出品されており、金額も製品版のプロセッサと比べると、およそ1/10くらいで落ち着いていました。
また、ES品ということで製品版には存在しない周波数や仕様のものもあったため、複数の種類を購入して動作チェックなどを行いつつ、最終的には8コアのものが搭載できれば、ということになりました。
当方が入手したのは以下の8種類のプロセッサですが、それでも「4個(+予備)ずつ購入しなければならない」という条件は、さすがに堪えました・・・。
INTEL CONFIDENTIAL Q2KY ES AT80604003786AA
INTEL CONFIDENTIAL Q2KR ES AT80604003777AA
INTEL CONFIDENTIAL Q3DA ES AT80604003777AA
INTEL CONFIDENTIAL Q3JY ES AT80604004869AA
INTEL CONFIDENTIAL Q3WP ES AT80604004869AA
INTEL CONFIDENTIAL Q3X5 ES AT80604004869AA
INTEL CONFIDENTIAL Q5DJ ES AT80615005757AA
気が付いてみると LGA1567 のCPUだらけになってしまった
これらのCPUの動作試験結果は以下のようになりました。この結果を見るとRX600 S5で動作可能なCPUは、Intel Xeonプロセッサ 7500番台(=Nehalem-EX)でステッピングリビジョンが3(B0)以降のものに限る、という条件があるようです。
QDF | 動作の 可否 |
動作 周波数 |
コア数 | スレッド数 | 3次 キャッシュ |
TDP | Stepping (CPU-Z) |
Stepping (HWINFO64) |
対応する 製品版CPU |
備考 |
Q1ZT | 不可 | 不明 | 不明 | 不明 | 不明 | 不明 | 不明 | 不明 | 不明 | POSTにおいてメモリの認識で固まる |
Q2KY | 可 | 1.73GHz | 6 | 12 | 12MB | 105W | 3 | B0 | Intel Xeon E7530 | Turbo Boost Technology は搭載されていない |
Q2KR | 可 | 1.86GHz | 8 | 16 | 18MB | 130W | 3 | B0 | Intel Xeon X7550 | Turbo Boost Technology がオーバークロックしない |
Q3DA | 可 | 1.86GHz | 8 | 16 | 18MB | 130W | 4 | A1 | Intel Xeon X7550 | HWINFO64ではQDFが Q1SQ と表示される |
Q3DJ | 可 | 2.26GHz | 8 | 16 | 24MB | 130W | 5 | C0 | Intel Xeon X7560 | HWINFO64ではTcaseの項目が表示されない |
Q3WP | 可 | 2.26GHz | 8 | 16 | 24MB | 130W | 5 | C0 | Intel Xeon X7560 | 同上 |
Q3X5 | 可 | 2.26GHz | 8 | 16 | 24MB | 130W | 6 | D0 | Intel Xeon X7560 | ステッピングリビジョンは製品版と同様 |
Q5DJ | 不可 | 2.40GHz | 10 | 20 | 30MB | 130W | 2 | A2 | Intel Xeon E7-8870 | POSTにおいてCPUの初期化時に固まる |
上記の表内において、POST中に固まった際のローカルサービスディスプレイの表示を以下に示します。
INTEL CONFIDENTIAL Q5DJ ではCPUが初期化できない
ちなみに、POSTの画面表示やBIOSセットアップメニューでは搭載されているCPUの名称が表示されますが、開発段階の早いES品を使用すると、開発中のCPUであることを示す文字列になります。
というワケで、Intel Xeon X7560 のES品を4個搭載することで、当初の計画通り 32コア・64スレッドの環境を作成することができました。
なお、本来であれば Tcase のセンサー情報が取得でき、製品版と同じD0ステッピングである Q3X5 を使用したいところなのですが、入手した Q3X5 の一部の個体にキャパシタの欠損などが見られたため、無傷で8個以上の数が揃っていたC0ステッピングの Q3WP を使用することにしました。
BIOSセットアップメニューでの表示も問題ない
Windowsのタスクマネージャでは64スレッドの表示となる
以下では当方の入手したRX600 S5に対して、Intel Xeonプロセッサ E7シリーズを搭載するために行った改造の内容と手順を記載しますが、この方法で改造を実施したことによってRX600 S5が鉄屑と化しても、当方は一切関知いたしませんので、あらかじめご了承下さい。 また、本件について製造メーカーである富士通に問い合わせることも絶対に避けて下さい。
ちなみに、下記の方法を確立する前に Quanta QSSC-S4R 化を行ったところ、マザーボードのBIOSは書き込めたものの、I/Oライザーのファームウェアの書き換えが「フロントパネルが開いている」などという意味不明なエラーによって行うことができず、やむなく再起動を行ったところ POST が画面表示前の段階で固まるようになり、一瞬にして鉄屑となってしまったのですが、それはまた別の機会に。
(1)ハードウェア仕様の比較
RX600 S6化の改造を実施するにあたり、以下に本稿執筆時点のハードウェア仕様を比較したものを示します。
PRIMERGY RX600 S5 | PRIMERGY RX600 S6 | |
CPU | Intel Xeonプロセッサ 7500番台 (Nehalem-EX) |
Intel Xeonプロセッサ E7シリーズ (Westmere-EX) |
ベースモデル | Quanta QSSC-S4R | Quanta QSSC-S4R |
メモリ | PC3-10600レジスタ付きECC DDR3 SDRAM | PC3-10600レジスタ付きECC DDR3 LV SDRAM |
要求するメモリコントローラ | MillBrook1以降 | MillBrook2以降 |
システムボード | D2870 | D3141 |
BIOSバージョン | QSSC-S4R.FTS.1.21.2870 | QSSC-S4R.FTS.1.03.3141 |
BIOSリリース | Aptio 3.6 R1.21.2870 | Aptio 3.6 R1.03.3141 |
QPI RC リビジョン | 1.32-RC01 | 2.00-RC02 |
Memory RC リビジョン | 1.32-RC01 | 2.00-RC02 |
CSM リビジョン | 2.60 | 2.60 |
ボードID | D2870 GS01 | D3141 GS01 |
シャシーID | 0258H | 0278H |
iRMC2バージョン | 5.65A | 5.65A |
SDRバージョン | 3.22 ID 0258 | 3.00 ID 0278 |
これらを比較すると、システムボードの番号が異なることに加えて、QPI RC(QPI Reference Code)とMemory RC(Memory Reference Code)に大きなバージョンの違いがあることが分かります。このことから「少なくともIntel Xeonプロセッサ E7シリーズを動作させるには、QPI RCとMemory RCのバージョンに2.00以降が必要らしい」ということが想像されます。
しかし、RX600 S5用のBIOSではQPI RCおよびMemory RCについて、今後もバージョン2.00がサポートされるとは思えない(=そうしないとRX600 S6との差別化ができない)ため、残る手段はRX600 S6用のBIOSを導入するという方法です。
なお、要求されるメモリコントローラがIntel Xeonプロセッサ E7シリーズからはMillBrook2となっていますが、これについてはメモリライザーのところで解説したとおり、本機についてはクリアしているので問題ありません。
(2)PRIMERGY RX600 S6用BIOSの導入
RX600 S6のBIOSはそのままではRX600 S5に導入できないため、若干の細工が必要になります。使用するBIOSアップデートツールは「オフラインアップデートツール」で、以下の手順で実施します。
BIOSの書き換えが正常終了し、OSの起動についても問題がないことを確認したら、CPUをIntel Xeonプロセッサ E7シリーズに換装します。なお、BIOS書き換え直後の再起動時とCPU換装直後の電源投入時にはCSSランプが点滅し、ローカルサービスディスプレイにはCPUが交換されたことを示すメッセージが表示されますが、OSのシャットダウンなどの正常な方法で電源を切ることにより、それ以降の起動時にはCSSランプは消灯した正常な状態になります。
BIOSセットアップメニューではボードIDが 3141 GS01 に変わっている
Intel Xeonプロセッサ E7シリーズではCPUに対して設定できる項目が増えている
(3)PRIMERGY RX600 S6用SDRの導入
RX600 S5とRX600 S6では前述の比較の通り、SDRのバージョンが異なっています。搭載できるCPUのコア数にそれぞれ違いがあり、センサー情報にも何らかの違いがあると考えられますので、SDRについてもRX600 S6のものに変更します。
なお、これもそのままではRX600 S5に導入できないため、パッチを当てる作業が必要になります。このアップデート作業にはiRMC2を使用し、以下の手順で実施します。
書き換え後のiRMC2のシステムインフォメーション表示画面(後半)
実装されているCPUやメモリの状態も正しく表示されている
iRMC2のインフォメーションを見るとSDRのバージョンがRX600 S6用になっていることがわかる
SDRはRX600 S6用となっているがSDRR ID(シャシーID)は 0258 のままになっている
(4)PRIMERGY RX600 S6化に伴う注意点
上記の改造を行うことにより、RX600 S5をある程度までRX600 S6の仕様に近づけることが可能になります。この改造を行うメリットは、なによりも Intel Xeonプロセッサ E7シリーズが搭載できるようになることです。それ以外にも、DIMMに対する富士通チェック(=BIOSセットアップメニューでの警告表示)は残りますが、メモリライザーについての富士通チェックがなくなり、Quanata QSSC-S4R用のメモリライザーが使用可能になるという利点があります。
しかし、良いことばかりではありません。改造を行うことによる不具合も見つかっていて「メモリライザーを増設した際に、CPU3に接続される2枚のメモリライザーが本体から認識されない」という問題があります。
メモリがアクセスされるバスの仕組みを考えれば「認識できるメモリの容量が減少する」ということと「インターリーブでの設定が2Wayに限定される」という不具合のはずですが、実際には影響がそれだけに留まるかどうか不明です。
その他に、Intel Xeonプロセッサ 7500番台のES品においては、使用可能なステッピングリビジョンが C0 以降に限定されるという事象もありますが、この改造が Intel Xeonプロセッサ E7シリーズを搭載するための改造であることを考えれば、それほど大きな問題ではないでしょう。
Emulex LP1050Ex-F2
設定は「1024x768」・「最高」
設定は「Character:ランダム」・「Resolution:Low(1280x720)」
しかし、本体内部の構造については台湾のQuanta ComputerがIntelと共同で開発したという背景があるためか、ケーブル類の取り回しなどに自作パソコンの雰囲気が色濃く残っており、今までよりも退行したイメージすらあります。
もっとも、このクラスのサーバのハードウェアに関するメンテナンスはメーカーの保守員が行うことが大半だと思われるので、あまり関係のない話ではありますが・・・。
また、本機は富士通の「静音PCサーバ」の開発方針に基づいた独自チューニングが行われていて、家庭で使用する際に最大の問題となる動作音もかなり低く抑えられているため、静音化改造を行った東芝 MAGNIA 7505R(=NEC Express5800/R140a-4)よりも静かです。
ともあれ、我が家での主な用途がインターネットとメールだけであるにも関わらず、導入を許可してくれた家人に深く感謝したいと思います。
我が家にRX600 S5が導入されてから半年が経過したころ、Yahoo!オークションで NEC Express5800/R140b-4 が出品されているのを見つけました。Express5800シリーズのラックマウントタイプの最後の4ソケットサーバということもあり、気が付いたときには落札していました。
そして、今回のコミックマーケットの出展日の2日前(=2012年12月29日)には、もう1台の NEC Express5800/R140b-4 を導入することに成功しました。
さて、話は数か月前にさかのぼりますが、LGA1567の8コアのCPUをeBayで物色していたある日のこと、RX600 S5に実装されているものと非常によく似たI/Oライザーが出品されているのを発見しました。
そのI/Oライザーの基板の色は紫色で、Intel のシルク印刷がされており、ROMが実装される場所がソケットになっていました。RX600 S5を含め、Quanta QSSC-S4R の系統のマザーボードであれば予備部品として使用できるのではないかという期待から、とりあえず確保しました。
それから2ヶ月ほどして、eBayで今度は LGA1567 のソケットが4つ実装されたマザーボードが出品されているのを見つけました。Quanta QSSC-S4R のマザーボードとよく似たレイアウトでありながら、基板の色が紫色という特徴を持っていて、ただならぬ雰囲気を漂わせていました。
このマザーボードが普通の製品でないことは一目瞭然だったので、すぐに確保しました。
これらは2009年5月にアメリカのサンフランシスコで開かれた Intel のプレスカンファレンスや、同年6月にドイツのハンブルグで開かれた ISC'09(International Supercomputing Conference 2009)の会場で展示されていた「Nehalem-EXの4ソケットサーバのプロトタイプ」の構成部品であると思われます。
ISC'09の会場で展示されていた Nehalem-EX を搭載した4ソケットサーバのプロトタイプ
(http://www.heise.de/ct/artikel/Prozessorgefluester-292128.html より転載)
ISC'09の会場で展示されていた Nehalem-EX を搭載した4ソケットサーバのプロトタイプ
(http://www.flickr.com/photos/mbuna/3655371028/in/set-72157620412559706/ より転載)
メモリライザーのプロトタイプは赤い基板が使われているようだ
(http://news.cnet.com/ “Intel, IBM discuss 8-core 'Nehalem' server chip”より転載)
会場で展示の際に使われていた筐体とメモリライザーについては、残念ながら発見できなかったので、RX600 S5 あるいは NEC Express5800/R140b-4 の筐体に暫定的に実装して稼働させることになります。
というわけで、次回は Intel 謹製の4ソケットサーバのプロトタイプ、あるいは NEC Express5800/R140b-4 についての解説になる予定です。どうぞご期待下さい。