第1限

ベースの起源

Part 1.


はじめに

私は自分のベースのことを全くと言っていいほど何も知らない。そればかりでなく、ベースと言う楽器そのもののことすら良く分かっていない。何で弦が太いの?何で音が鳴るの?何であんな形をしているの?そもそもベースって何なの?などなど疑問は山ほどある。
そこで、こんなことじゃ恥ずかしくてベーシストなんてやってられないっ、てことでベースに関する勉強をしようと思い立ったワケである。つまり、ベースレスンなどとエラそうに銘打ってはいるが、実際はこのページを書きながらベースのことを一から勉強していこうという、極めて自己満足な企画なのである。

■"ベース"とは...

さて、ベースとは英語でBass("バス"と発音)と書く。
「大辞林 第二版」(三省堂)によると、

 バス
[bass]
   (1)最低音域の男声。
   (2)楽曲の中の最低声部。
   (3)コントラバスの略。
   (4)同族楽器の中で最も低い音域を受け持つもの。

とあり、楽器も含むが、主に「低音域の〜」という意味を持つようだ。
そして、今バンドで主流なエレキベースは、正確には"ベース・ギター"と言う。
今時「オレのベース・ギターが・・・」なんて言う人はあまりいないと思うけど。

また、英語でBassと書くと前述したが、これはそもそもイタリア語の"basso"が語源で、

  バッソ [basso]
      低さ、低い所、短いもの、[音]低音(部)、バス

という意味からきているそうだ。
他にベース関連の言葉としては、

   ・バスーン 【bassoon】
      ファゴットのこと
   ・バスクラリネット 【bass clarinet】
      クラリネット族のバス楽器。普通のクラリネットより一オクターブ低音。
   ・バスドラム 【bass drum】
      大形の太鼓。胴を横にして置き頭の柔らかい撥(ばち)で打つ。大太鼓。
      ベース-ドラム。
   ・ベーシスト 【bassist】
      ベースの奏者。
   ・バスフィッシング 【bass fishing】
      ブラック-バスを釣ること。ルアー(疑似餌)を使用するのが一般的。

などがある。
ハイ、なんだかベースのことを勉強している気になってきましたね!
というわけで、Part2.に続く。


Part 2.

ベースの起源。ベーシストとして非常に興味深い題材であるが、ベースという楽器がどこで生まれどのように育ったのかを考察しよう。

現代ベース(エレキベース)

そもそも現代のベース(いわゆるエレキ・ベース)は、レオ・フェンダーという人物によって、1950年代初頭に生み出されたものである。この世界初のエレキベースはそれまでのウッドベースの代用を目指し、更にその弱点を克服し、新たな可能性を持った斬新な楽器として世に送り出された。現在では当たり前となった肩掛けスタイル、コンパクトなボディ、アンプによる大出力といったエレキ・ベースの基礎はこの当時にできたものである。

Fender Jazz Bass


ではこのエレキ・ベース、一体どのような変遷をたどってここまできたのだろうか。


ヴィオローネ

ベースの起源は一般には、ヴィオローネという"羊の腸で弦を張り、馬の尻尾の毛に松やにをぬった弓でその弦を引掻いて音を出す"という擦弦楽器にあると考えられている。(このヴィオローネという楽器の発祥については、中央アジアだとかエジプトからだとか、他にもインド、アラビヤ説などがあり、はっきりしていない・・・)

   ヴィオローネ


ヴィオローネは、ヴァイオリン族の前身ともいえるヴィオール族の"ヴィオラ・ダ・ガンバ"(膝のヴィオールと言う意味:下図参照)に属しており、最も大型の低音域を担当していた楽器で、16世紀から18世紀にかけてヨーロッパでもてはやされた。高貴で柔らかな音色が高く評価され、ルネッサンス・バロック時代の最も重要な弦楽器の一つとなった。このヴィオラ・ダ・ガンバ属はヴァイオリン属と異なり、フレットが存在し、
ボディの形状がなで肩で、弓の持ち方も異なっていた。また弦も3〜6本(6本が主流らしい)までとさまざまであった。

   ヴィオラ・ダ・ガンバを演奏する親父之図
(膝で挟んで支えているのが分かるだろう)
   

このヴィオラ・ダ・ガンバ属の楽器"ヴィオローネ"が、オーケストラの構成要素として、最低音域を受け持つ伴奏楽器に発展したものが次に紹介するコントラバスである。

余談だが、ドイツはベルリンのフィルハーモニーザールのとなりにある楽器博物館では、古楽器(弦楽器にかぎらず)が多数展示されていて楽器の歴史が見てとれるそうだ。ぜひ一度行ってみたいものだ。


コントラバス(ダブルベース)

コントラバスはヴィオラ・ダ・ガンバ属の楽器であることから、弦の数は3本から6本までと19世紀になってからも一定ではなく、サイズも大人の背丈ほどのものからチェロとほとんど変わらない大きさのものまで多種多様であった。現代では全長190cmほどの4弦ものが主流で、調弦は低い方から順に「E」「A」「D」「G」の4度調弦となっている。ヴァイオリン・チェロなどの5度調弦とは異なるが、これはチェロの倍近くもある弦長による3度の運指などの実質的な限界にあると考えられる。この他に、さらに「H」の低音弦を足した5弦ものも存在する。

   コントラバス

楽器の形状はヴィオラ・ダ・ガンバ族のそれを受け継いでおり、なで肩、平らな裏板などの特徴が見られる。奏法としては、アルコ(弓弾き)とピチカート(指弾き)の2種類がある。アルコには「フランス式弓」と「ドイツ式弓」の2種類があり、「フランス式弓」はヴァイオリン属の弓と形や持ち方が似ているが、ドイツやオーストリアなどで使われている「ドイツ式弓」はヴィオラ・ダ・ガンバ属の弓から発展したもので、アンダーハンドで握るところに特徴がある。

しかし、上述のようにヴィオラ・ダ・ガンバ族の特徴を色濃く受け継いでいる反面、コントラバスはフレットレスで、楽器を支える足がついているなど、バイオリン族の特徴も有しており、ヴィオローネの純粋な子孫とは一概には言えない側面もあるのだ。


ウッドベース(アップライトベース)

さて、もう一息で現代ベースと言うところまでやってきたわけである。
ここで登場するのがウッドベース。コントラバスが、19世紀末にジャズやブルースを演奏するためにその活躍の場所を変えたことによって、ウッドベースが誕生した。

   ウッドベース


コントラバスの写真と比べても分かるように、見た目上なんら変わるところはない。当然である、二つは同じ楽器なのだから。
ウッドベースという言葉は、コントラバスがジャズをはじめとするわりとポピュラーな音楽の演奏に用いられるときに使われているようである。その違いは形状にではなく主に音楽的な表現、スタイルにあるといえる。

ジャズのスタイルは、1900年から1920年頃にニューオリンズで黒人を中心にかたちづくられた。黒人体内に眠るリズム音楽と西洋音楽、そしてブルースやラグタイムなどの音楽が融合した結果の産物であるといわれている。
当時はダンスやパレード、葬式の際に小規模なブラス・バンド編成で演奏された。初期の頃はベースは管楽器が担当していたようだが、室内演奏などに洗練されていくにつれ、弦楽器であるウッドベース(コントラバス)が用いられるようになったようである。

ウッドベースはピチカート奏法が主で、他にロカビリーなどになると弦を指板に叩きつけるようなスラップ奏法なども用いられる。アルコ奏法はあまり使われない。

そしてこのウッドベースが劇的な進化(変化)を遂げ、現代ベース(エレキベース)へと移行するわけであるが、それははじめに書いたとおりである。
エレキベースの詳しい構造などは第2限で取り上げたいと思う。


以上がざっとしたベースの歴史の概要であるが、コントラバス、ウッドベースなどは現代でも使われており、その形、音色、用途も洗練されていて完成度が高く、現代ベースといえなくもない。ただ、エレキベースの方がやはり音色の多彩さ、小型化、電気的な音量増幅などなど、多様な現代音楽に合わせた特化部分を持ち、より現代的であるといえるのではないだろうか。




■参考文献(ホームページ)

  ・国立音楽大学楽器学資料館
  ・江戸川学園取手中・高等学校・音楽科
  ・LUTE
  ・YAMAHA-音楽博物館
  ・愛媛交響楽団のホームページ

  ・Fujimaru Bass Forum
  ・教育用画像素材集-オーケストラの楽器
  ・Music Park-おもしろ楽器館
  ・cafe montmartre

  ・内田修 Jazz Collection


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