日本の一般消費者向けインターネットビジネスは大きい曲がり角に立っている。インターネットの家庭普及率は米国の約1/2に到達し,年間成長率は米国を越えているが,アクセス人数と時間を考慮した総需要量(総接続時間)では,日本は米国の1/5である。その理由はPCの普及の遅れが挙げられるが,米国の定額接続料が2,000円程度の低額であるのに対し,日本の平均利用者の支払額は12,000円から14,000円であるのが大きい。
この高額な接続料は日米通商交渉の大きい論点であるが,ここ2〜3年の間に米国並みの価格になるとは考えられない。それよりも,固定回線に代替するアクセスラインが提供され始めることにより,NTT地域会社の接続料に競争原理が導入されるようになることが可能性として一番大きい。
一方,日本のISP(インターネット・サービス・プロバイダー)の数や充実度は決して劣るものではないく,日本語を用いたコンテンツの提供はプロバイダー間で覇を競っている。アジアの各国では,自国内のコンテンツが充実していないために,大部分のアクセスが米国に行っているのに比べ,日本では20%程度が米国を含めた海外であり,残りの80%は日本国内に閉じている。だから,プロバイダーにとって,この需要は大きいものであり,新しいビジネスチャンスを獲得するには,競合するアクセス手段の提供開始と相まって現在が最適な時期であると考える。
筆者は,日本における一般消費者向けインターネット市場は,今大きく展開を始める時期にあると考える。すなわち,次のようなビジネスチャンスがあると考える。
- NTTの固定回線に競合するアクセスラインの提供
- 無料インターネット接続ビジネスを含め,利用者に安価で有利なサービスを提供するプロバイダービジネス
- このプロバイダーと組んで,コンテンツを提供するビジネス
- さらに,電子商取引サイトを運営するビジネス
- この電子商取引ビジネスサイトの構築支援,およびこのサイトの運営支援を行うビジネス
このような多様なビジネスチャンスがあるが,一方で1995年に創設された「アマゾンドットコム社」が,本年4月26日に発表した1-3月期の決算で,売上げが倍増したにも関わらず売上げの約1/2の赤字を計上している現実を無視するわけにはゆかない。日本のインターネットビジネスを推進する経営者は,これらのビジネスチャンスとそれに伴うリスクを計算したうえで,充実を直前に迎えている「飢えた需要者」に対するインターネットビジネスを展開して創業者利益を享受できるチャンスである。