てわけで柚木さんに捧ぐ・・・
捧げられても困るだろう、こんなん(げっほごっほ)<最近咳き込みすぎです。
でも、あくまでも柚木さんのあの絵でもってご想像いただけるとこれでも楽しいと思うのよ・・・(自己満足の極み)。
途中から会話文だけで進んでます。つっこみ入れにくくなってしゃあないですわ。


 すぴー。くかー。・・・。
 普段の呼吸法がどうあれ、人の寝息とはそれなりに規則正しいものであるらしい。よくよくきっちり眠りに付いてますと自己主張する部屋の主はそのためか、カーテンの隙間から入る朝日にはとんと気付かないでいるようだった。
 床には、とっくに起床時間を過ぎている目覚まし時計が転がっている。
 時計が鳴ろうと玄関のチャイムが鳴ろうと祖父が怒鳴り込んでこようと幼馴染みがそこで頭を抱えようと、布団をひっぺがされるまで眠り続ける強者の名を、太公望という。
 これは、いつもの光景。

通学日和也

「師叔、危ないですから、真っ直ぐ歩いてください」
「・・・んあ?」
 つい先ほど祖父と怒鳴り合いの末に家を出てきたはずなのに、答える少年は既に眠りの淵を彷徨っているのが見て取れる。彼の後ろを歩く楊ゼンは、慌てて傾いだ体を支えた。
「昨夜は何を?」
「うー、ジジイと碁を打ち出したらお互い負けるのが嫌でずるずるとこー・・・」
「はいはい」
 遅くなったというわけで。そのくせ祖父がしゃっきり起きているのは歳のせいなのか。いや、昼間に寝ていそうだが。
「それにしてもおぬし、よくよく毎日迎えに来るのう」
 開ききらない目を擦りつつ、太公望がもそもそ喋る。ただでさえ幼く見られがちな容貌は、今なら「今年中学生になるんですー」と言っても十分に通用するだろう。来月には三年に進級するのだが。
「師範に頼まれてますので」
 太公望の祖父のことである。念のため解説すると、剣道場を開く元始天尊の孫が太公望、道場師範代に玉鼎、その甥に楊ゼンという図式。以上説明終わり(わかりやすすぎ)。
「んなもの無視すればよかろう」
「既に日課なんですよ。何年やってると思ってるんですか」
「かれこれ10年?」
「もうすぐそのくらいになりますね」
「まめだのー」
「なのにどうして未だにこの状態なんでしょうね・・・」
「なんでかのー」
 こくり、と首が下がる。慌てたように太公望は頭を振るが、肝心の眠気は一向に去る気配がない。
「真面目に考えてます?」
「楊ゼン」
 ふと、学生服に埋もれた少年は立ち止まった。
「はい?」
「春なのだ」
「・・・で?」
「春眠暁を覚えずとゆーであろう」
「・・・言いますね」
「てわけで」
「どこ行くんですか!」
 唐突に踵を返した太公望の肩を、逃さず捉える。ついに太公望は喚きだした。
「ねーむーいー!」
「暁っていうのは明け方のことです!とっくに日は昇ってるんですよ!」
「そんなん知るか!」
 毎日手を変え品を変え、よくもまぁこれだけぽんぽんとこじつける言い訳が出てくるものだといっそ感心したい境地だ。思いつつも楊ゼンは応酬する。
「これ以上遅刻したらいくら何でもまずいでしょうっ?」
「甘いのう、楊ゼン!何のためにわしがテストで上位をキープしておると思っておるのだ!」
「いくら成績優秀でも出席日数ってものがあるんですよ!」
「安心せい。わしの計算は完璧だ!」
「完璧って・・・」
 呆れて手を離した幼馴染みに、太公望はしてやったりという笑顔を浮かべた。どうしてだか素晴らしく得意気に彼は語る。
「後1日と五時間は平気だ。その上今日の一限生物は数字的にもばっちりおっけーだということで話がついておる」
 一体全体、「マッド」の悪名高き生物教師と何を裏取引したのかは知らないが。
「そこまでしてさぼりたいんですか貴方」
「当然」
 やれやれ。いつも通りの展開に溜息を吐きつつ、腕時計に目をやれば後10分。ゆっくり歩いても間に合うのは確かだが。
「ところで師叔」
「何だ?」
「どうやらきっちりお目覚めのご様子ですね」
 にっこり笑顔に太公望が思わず面食らうと、そのまま手を取って歩き出される。
「おいこら!おぬし今までわしの話を聞いておったのだろうな!」
「聞いてましたよ勿論。『眠いからさぼる』という主旨で間違ってないでしょう?」
「だーかーらー」
「起きたのですから、素直に行きましょうね」
「うううううううわかった!わかったから手を放せ!」
「嫌です」
「だーもーっ!」
 てくてくと、その光景を眺めながら歩く姫発は、前を行く二人を指差して言った。
「何であいつらいっつもあれで飽きねぇんだろうな」
「そぉゆーお年頃なんだろうってさ」
 親父が言ってたさ。どこか達観したように、やはり同じく学校へ向かう天化は宣った。
「平和さぁ」
「んっとにな」
 ところで、と思い出したように姫発は横を歩く友人を見た。
「お前、すげぇブレザー似合わねぇよな」
「文章なんだからそーゆーこた言わなけりゃわかんねぇさ!」

◆おちてない(涙)◆

楊さんがブレザーだっつーの書き忘れました。ごめんなさい。
・・・お粗末様でした。

ありがとうコノエさん〜!(>_<)

これは当時日記を書いた直後にコノエさんが書いて下さったものであります。
掲示板のリンクオンリーの、ある意味時間限定な小説でもありました(笑)
つかあの短時間でこんな素敵小説を生み出すコノエさんに益々脱帽。
あああ楊太さんの日常が目に浮かぶ〜!
要するにこの企画頁を改めて作るきっかけになった作品なのでした。

掲載許可をありがとうでした〜!<(_ _)>