ホ-ムに降りるとそこには何故か見慣れた顔。

「……………師叔?」

うちへ帰ろう

(なんでこんな時間に?)


発車のベルに急き立てられる様に歩みを進める。
視線の先には同居人。
そしてその同居人はと言えば、何故か向かいのベンチに座り、こちらに気付く気配もない。

「師叔」
「…………」
「師叔?」
「…………」

「------師叔
「うおっ!?」

気付かない太公望の耳元で、意趣返しの様に囁けば、案の定顔を真っ赤にして振り返る。
「〜〜〜っっ!何するか楊ゼっ……」
「------」
「……楊ゼン?」
「はい」
「…………」
「…………」
「……なんでこんな時間に?」
「……それはこちらの台詞です……」


軽い脱力感を覚えながら、不思議そうな太公望の目の前に、ずいと時計を近付けた。
太公望の視線が、目の前の時計と、その持ち主とを行き来する。
そしてそのまま「ばっ」と音がする勢いで、ホームの時計へと視線を走らせた。
「………………6時……?」
「----40分です」
「…………」
「……どうしたんです?あなた今日四限までで------」
ふと、時計を見たまま固まっている太公望の膝上に目を向ける。
そこには何やら分厚い本。

「--------また、ですか?」
「…………」

そう言えば昨日、誰だかの新刊が出たとか騒いでいたような。
「ちょうど良いとこで着いてしまってな、そのまま……」
「-----この時間まで」
ぐ、と言葉を詰まらせる太公望。
「……良いではないか」
そうして軽く口をとがらせたまま、ごそごそと本をしまい始める。
「どうせ帰ってもおぬしはおらんのだし------なんだ、顔赤くして」
「……いいえ」
口元に手を当てて、一人赤面してる楊ゼンを横目に、太公望は身支度をすっかり整えていた。
「良いんですか?」
「うむ。おぬしも帰ってきたしな」
(本当に無意識なのかなあ……)
「……風邪か?」
「……いいえ。------では師叔」
「うむ」

二人仲良く帰りましょう------

〈終〉

目指せラブいちゃ。

とゆ訳で、ラブです。イチャイチャ話です。
しかし終わってみれば、よく分からないものになってしまいました(汗)

甘いです、よね?>自信なさげ

これはちょうどディアナ……もといダイアナ・ウィン・ジョーンズの『九年目の魔法』を読んでいた時に思いついたネタです。と言いますか、ほぼ実話……いやさすがに身内にバッタリとかはやってませんが(笑)ちょうどラストに差し掛かったときに駅に着いてしまい、止まらずそのまま読んでしまった阿呆は私です。前科○犯。……家帰ってから読めよ。>いやでも止まらんのです。カッ○えびせんなのです。

久々の小話でなんだか緊張。相変わらずネームのようです。つくづく物書きの方は凄いなあ、と。日々是精進。

柚木拝 02/11/08

【おまけ】

「そう言えば師叔」
「なんだ?」
「あなた駅、乗り過ごしたでしょう」
「…………なんでわかった」
「いや、反対側のベンチに座ってるからそうなのかな、と」
「------たった一駅だぞ?……なんだその笑いは」
「いえ(笑)凄い集中力だなって」
「……馬鹿にしとるだろ」
「とんでもない!純粋に喜んでるんです」
「……」
「おかげで一緒に帰れたんですから♪」
「……」
「師叔?」
「……わかった!わかったから……その満面の笑みはやめろ……(///)」>弱いらしい
「無理ですよ(笑)」>確信犯

乗り過ごした阿呆は私です……(死)