もう二度と離れない 抱き合い誓った

        あの夜の雨音が聞こえた

永久に。(4)  
   

あらゆる、定義に向けて。あらゆる角度から。
自分の想いを理屈で説き伏せる。
全ては、己がかつて背負い、そして覚悟した罪への罪過。
彼が、裁きを下さなかったとしても。
己の罪をけして忘れぬように。許さぬように。
自分は、裁かれるべき存在だから。
私念など、まかり通ってはならない。

「・・・行けば、いいじゃねえか。逢いたいんならよ。」
頭に響いた声に、静かに、苦笑いを浮かべた。
己の、闇を映す鏡であった魂。
そして今は、己其の物。
「アレは、お前じゃなくて俺がやった事だろう?」
心の中にだけ響く其の声は。
お前には関係ない事だ、と。そう静かに。
もともと一つだった魂。そして今は器も同じ。
それ故に、お互いの想いも考えも。全て手に取るように流れ込んでくる。

苦しみも。悲しみも。喜びも。過去の痛みでさえも。

だからこそ、この魂の片割れを責める事など出来ない。
己が、遠い昔に忘れた記憶を。始祖の記憶を。
王天君はずっと背負ってきたのだ。
陰の、遂行者として。
己の知らなかったことまでも理解した上で。
やり方はどうであれ。結果はどうであれ。
何故―――お前の所為だ、などと。お前が悪いのだ、と。
罵声を浴びせる事が出来る。

「・・・・・・よい、のだ。もう・・・」

もう―――――疲れた。

己を戒める事で、犯した罪から逃れようなどと。
所詮、自己満足でしかない。

「――――わしも、もう、疲れたよ」

生き続けることに。
存在し続けることに。
彼を―――想い続ける事に。

あまりに重過ぎる罪への自意識。
一度全てを失って。
それを取り戻してくれたのは。もう一度、心から笑う幸せを教えてくれたのは。
他でもない、彼。
それなのに。又。
失った。失ってしまった。居場所を。彼を。
今度は何を失う。
もう―――――何も。
失う物すら、残っていない。

「――――――消えよう、王天君。もう、わしらはこの世界に必要ない。」

これが最後の甘えだから。
どうか、この心が壊れる前に。
正気でいられる内に。

「――――どうせ消えるんなら、
 最期の望みくらい叶えたってバチは当たんねえだろうが。」
否、と答える。もうそんな資格は無い。

「だったら、大人しくここで見てな。」
その言葉の意味を掴みかねて。
気づいた時には、太公望の姿になっていた。
そして、もはや慣れてしまった亜空間の中。
「な・・・にを・・・」
今まで、自分が。伏羲が立っていた場所には王天君が。

「お前があいつに用が無くても、俺にはあるんでね。」

その言葉に、声を失った。
焦りか、不安か、戸惑いか。
それとも―――――期待か。

「どうせ消えるんだったら殺されたって関係ねえだろ?」

止めるべきだと思った、のに。
自分に、その資格は無いのに。

何故  どうして でき な い。

「・・・・・王・・・天君・・・。」
どうせ消えるのなら。いっそ、愛した者の手で。この魂ごと。
そんな事が許されて良い訳がない、のに。

・・・・・楊・・ぜん・・・―――――――
亜空間を抜けた先。
現れたのは、拒み求めた彼、その人。

名を呼ばれて。
振り返ったその電紫の瞳は、変わることなく光を宿し。
こみ上げる想い。懐かしさ。記憶。
何もかも、あまりに残酷に蘇る。

「王・・・天君・・・。」
驚き。そして、いかりのソレに染まる瞳。
「・・・何故・・・・・」
王天君の目を通して映るその姿は、表情は。
この身を射抜くほどに無機質で。
まるで、自分がここから見ている事に気づいているかのように。

そして、自分が。太公望が無事だと聞いても。
その表情は、変わらない。動かない。
暗い、瞳。

わかっていたハズだ。
もう、きっと。否、絶対に。
彼にとって‘太公望’は過去の遺物でしかない。

わかって――――いたハズ だ。
なのに、どうして。

「――――――・・・・・。」

こんなに。苦しい。悲し い。

「今でも、俺が憎いか?」
強い意思に満ちた瞳は。ただ、静かに。
「・・・・・ええ。」
そう、示す。真っ直ぐに仇をを見据える眼で。

「なら、王奕も・・・伏羲も、憎むか?」

心臓が、鷲掴みにされたように波打つ。
嫌だ。もういい。聞きたくない。
聞きたく   ない。

他でもない彼から、存在を否定される言葉など。
拒絶される言葉など。
‘ならば、貴方が僕の父と師を 殺したのですか’

もう―――――二度と。

「今でも、お前のしたことを許す気は無い。」

 嫌    だ 。

「・・・それでも――――――――――――――」
拒絶の言葉が。返って来ると思って  いた。
「もう、あの人の全てを憎むことはしたくない。」

―――――驚き。喜び。込み上げる、想い。
許されるなど、思わなかった。
死ぬ為に、ここに。
死に場所としてここを選んだ のに。

もう、それだけでいい。これ以上はいらない。望まない。望めない。

「―――――その言葉だけで、わしはもう十分だよ」
己が一度決めたことを。くつがえす事は出来ないから。

ありがとう。そして

「さようなら」

永久に。愛して る。

「楊ぜん―――――――。」
愛した人が。
信じた人が。
貴方で、良かった。

未来永劫。
この星と共に。永久に。
愛しい人―――――――――。

――― To be continued ―――

久崎 歴さまより頂きましたV

<作者さまのコメント>

・・・・・・・・・・。(もはや何も言えない。)
ひ・・・一言で言うと、事態悪化・・・・(痛)
遠ざかるハッピーエンド。
てか、もう少し引っ張りながら書こうよ、奥さん。(誰)
かけた時間が二時間半じゃ所詮この程度・・・。(ちょっと待て)
突っ込みMAXです。すみません。
言いたいこと全部言ってたらキリ無いのでやめておきます。
既に、このコメントからして痛いです。
(後で見て赤面しそげです。)

もう、ラストまでとりあえず考えてあるので(とりあえずって何だ)
あと一話で終わるハズでございます――;;

第四段です。

とうとうラストまであと一話。
どうなるんだ楊太さん……
切ないー切ないよう(泣)
そして全ては歴さんに委ねられておるのですね(笑)
あ、でもでもほんとに御自由にお書き下さいね?マジでマジで。
続き、楽しみに待っておりますー(>_<)

歴さん、素敵な小説をありがとうございました<(_ _)>

柚木拝 02/08/30