プロローグ |
時は23世紀後半、人類はその歴史の中で今まさに頂点を極めようとしていた。 技術革新は人類が望みうるものを全て具現化し続け、文明もまた爛熟期を迎え、人は皆それらを当たり前のように享受し、そして慢心していった。 人類の欲望はとどまるところを知らず、ついには自然さえも技術の力で制御する理論を完成させたのだった。 神の領域への挑戦。 ある者は「人類こそが神となる」と言い、またある者は「神への冒涜」と批難した。 しかし、そんな論争も大勢を占める慢心した人類により闇へと葬られるのであった。 そして24世紀、人類はついに地球環境の改造に着手した。 だが、人類はまもなく手痛いしっぺ返しを喰らうことになる。 人類のエゴに凝り固まった環境改造は、多くの生物を絶滅の危機に追い込み、生態系の乱れは人類の食料事情をも一変させたのだった。 しかし一度頂点を極めてしまった人類はそれを認めることが出来なかったのである。 技術力で環境を修復しようと試みるのだが、結局は場当たり的な対処に過ぎず歪みを拡大させる結果に終始しただけであった。 そして消費するだけの文明は資源の枯渇により崩壊の一歩を踏出していった。 文明の崩壊は民衆の不安を煽り、政情の不安定を招いた。 人類は互いに疑心暗鬼にかられ、やがて大きな争いへと発展していったのだった。 「世界大戦」 人類は三たび愚かな選択をした。 だがしかし、人類はその勝者を知る事は出来なかった。 人類が最終兵器の使用を決定する直前、かつて無い天変地異が地球を襲った。 慢心した人類に地球が牙を剥いたのか。 いや、人類は自らの手でリセットスイッチを押したのだった。 そしてその瞬間、文明は消滅した。 そして時は遥か未来、世界中を巻き込んだ全面戦争と大崩壊と呼ばれた天変地異の後。 世界には種々雑多な生物達が細々と生き残っていた。 文明は、そう、今で言う産業革命直後くらいとでも言うべきレベルまで後退し、国家と呼べるものはせいぜい五指に余る程度、後は各々の種族が集落を形成するくらいのものであった。 やがて数百年の時が流れ、各々の種族は離散集合を繰り返し、やがてその中から二大勢力が台頭して来た。 ひとつは平和的に各種族を統合し多くの民衆の支持を集めた共和国。 そしてもうひとつは強大な武力をもって強引な統併合を繰り広げてきた帝国。 野心家シータ・ゲイル・ヨンが武力で支配するキノコ帝国は力と恐怖とで民衆を支配し、自らをシイタケ大王と名乗り全世界を支配下に置くべく強大な武力をもって共和国へと侵攻を開始したのであった。 一方の共和国は、様々な種族が寄り集まり帝国への対抗勢力として、平和主義者スギ・コケールの下に合議制国家スギゴケ共和国を築いていた。 その二大勢力は、各々の理想の違いから今まさに激突しようとしていた。 互いに拮抗した力を持つ二大勢力、このまま決着がつかず長期化の様相が見え始めたころ、そのパワーバランスは意外な所から崩壊した。 |