探索 |
そのころ地下数十メートルではエミールたちが、石版の光に導かれるように闇の中を進んでいた。 この地下空洞が使われなくなって、どれくらいの年月が経過したのだろうか、空気はかなり澱んでいた。 どれくらい進んだであろうか、いくつかの角を曲ったところで壁の穴から石版と同じ光が漏れているのが見えた。 「エミール、あれは・・・・・」 それを見つけたアトピーが叫んだ。 「よし、入ってみよう」 エミールの言葉に一行が恐る恐る穴の中に入ると、そこには地上で見た石碑が石版と同じ輝きを発していたのだった。 そしてそれを見たエミールは何かに憑かれたように石碑に近付くと碑文を読んだ。 「迷える魂に救済の青汁あれ」 迷える魂よ救済の青汁よ 輝く畝傍の行く末を按じ 永遠の眠りにつきなん 銀杏は綻び、また沸き立ち 汝の時を刻まん 今、汝? すると、突然石碑が輝きを増し、一行は一瞬目を背けた。 恐る恐る目を開けた一行は言葉を失った。 いつのまにか石碑の横には、あの神父が立っていたのだった。 そして石碑と同じ淡い光に包まれていて、手で触れようとしてもすり抜けてしまうのであった。 「あなたは一体・・・・・」エミールが声をかけると神父は 『お前が大いなる意志を継ぐ者か?』と問いかけた。 返答に困り、訳が解らず顔を見合わせる一行に再び神父が問いかけた。 『お前が大いなる意志を継ぐ者か?』 「そうです、僕が意志を継ぐ者です。」 考えた末に、意を決してエミールが答えた。 「ぉぃ、エミール、そんな訳がわからんのに答えて大丈夫か?」 アトピーが止めるのも聞かずにエミールは絞り出すような声で言った。 「僕は・・・・僕は力が欲しいんだ、じぃちゃんたちを救い出す力が・・・・」 すると神父は無表情のまま答えた。 『意志を継ぐ者よ、汝が真の意志を継ぐ者であれば詩は汝の道標となるであろう。』 「詩? 碑文のことか?それともこの石版の内容か?」 しかし神父はアトピーの疑問に答えること無く淡々と言葉を続ける。 『詩は意志を継ぐ者を導き、そして試練を与える。』 そして神父は石碑を指差すと、ひときわ大きな声で言った。 『詩は真の意志を継ぐ者に大いなる力を与えん、そして真の意志を騙る者に大いなる災いを与えん。』 そう言い残すと神父の姿は次第に透明になり、そこには石碑だけが残された。 あまりにも不思議な出来事にエミールたちはただ立ち尽くすだけだった。 「どうやら詩の謎を解かなくてはならないようですね。」 最初に我に返ったのはアトピーだった。 「しかし、どうやって? たしかに我々はアレル・ギン先生のおかげで古代文字の読み方は覚える事は出来ましたが・・・」 ロイドは投げやりな口調で答えた。 「ともかく何か手掛かりになるような物を探してみよう。」 エミールの言葉に一行は頷いた。 「それにしてもこの遺跡、結構広そうだな。 手分けした方が早くねぇか?」 ニンのいかにも体力派らしい提案に、エミールは苦笑しながら答えた。 「うーん、悪戯に戦力を分散させるのはどうかと思う、試練と言うのも気になるし・・・せいぜい二組くらいか。」 「それじゃあ僕とロイドは石碑とこの部屋の調査をしましょう。」 「頼むよアトピー、ニンと俺は周辺部を調べてみよう。」 そう言って歩き始めたエミールを、ニンが慌てて止めた。 「おいおい、エミールよ、ピリンはどうすんだ?」 ニンの言葉に呼ばれたと思ったのか、ピリンが顔をあげた。 その姿を見てエミールは、ふっと微笑んだ。 「どうする?ピリン。 ニンと一緒がいいか?」 その問いかけにピリンは頷いた。 「よーし、決まりだな、なーにイザって時は俺が守ってやるよ、なっピリン」 豪快に笑うニンの言葉にピリンは何度も頷いた。 |