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第二十話「さらばっっっ、珠洲の街よ!」
1998年8月10日13時00分
それにしてもさすが団長、鬼のように喰う喰う・・カレ〜ライス、ビ〜ル、イカの姿焼き、
みんな腹が減っていたので、ここまではワカる。
団長が叫ぶ「たぬきうどん!」一瞬皆が耳を疑った。
おお〜〜!と歓声が揚がった。
『カニカニ団』はいつしかバルコニの一番眺めのイイ席に移動していた。
無心に料理を次々と消化してゆく団長の姿には、後続を突き放して次々とラップを重ねてゆくハッキネンのように鬼気迫るものがあった。
気温は30度はゆうに越えていただろう、だが湿気がなかったので爽かだった。
『カニカニ団』の日頃の傍若無人な行いがイイからだろう、この旅行中は不思議と晴天に恵まれていた。
皆疲れていたので、泳ごうとは誰も言わずにぼんやりと浜辺を眺めていた。
と、その時Sakaが叫んだ。
「ををっっっ!!あのねぇ〜ちゃんスタイルいいなぁ、だが姿勢が悪いな」
大きなお世話である。
しかし『カニカニ団』の視線はスグさまその女の子に集中した。
「おお!なかなか」いつのまにか手に入れたゆで卵を口にほお張りながら団長がうめく。
「俺、ああいうなまっちょろい水着って意外と好きなんだよなぁ」とSaka。
知らねぇ〜つ〜の。なまっちょろいとは日焼けしていなくて白いということらしい。
団長はゆで卵3個を平らげさらにトウモロコシに手を伸ばしていた。
潮風に吹かれながら海辺で飲むビ〜ルが驚くほどウマかった。
3時ころ少し陽が傾いてきて、さてどうする?ということになった。
東京までは6時間ほどかかるだろう、逆算するとそろそろ珠洲を発たなければならない。
それは皆んなワカっていた、いよいよ旅の終わりが近づいてきたのだ。
Maroは金沢の方にこれから用があり、『カニカニ団』の帰路と同じということもあり、途中まで一緒に行くことになった。
立ち上がると、どこまでも遠くで空と海が水平線で溶け合っていた。
名残惜しそうに砂浜を後にして、『カニカニ団』は車を停めてある駐車場へ向かった。
隣接している珠洲ビ−チホテルに途中寄った。
なんでもSakaがオミヤゲを秋葉『カニカニ団』に渡したいからだそうだ。
いろいろ迷って日本酒のセット(なんかすごく高そう)を選んでくれた。
車に戻るとずいぶんと涼しくなっていた。Sakaが途中まで車で先導してくれるという。
秋葉『カニカニ団』の隊員たちは代わる代わるSakaと握手をして別れを惜しんだ。
Saka、ゼンソン号, Maro,の順でホテルを後にした。
短いあいだとはいえ、懐かしい町並みが後ろへと流れていく、誰も彼もが無口だった。
さようなら珠洲の街よ俺達はお前を忘れない!!
その時先行していたSakaの車が止まった。ならってゼンソン号も止まった。
Sakaがゆっくりとこちらに向かって歩いてくる。
ここでお別れなのか・・・隊員達は涙をぬぐった。さようならSaka。
運転席のミケくんのところまでSakaが来た。暗い面持ちでSakaが重たい口を開く。
「あのさぁ〜、今ホテルから連絡があってさぁ、さっきのオミヤゲの酒、あれさぁ〜なんか
ディスプレ〜用のやつで中身はカラなんだってさぁ、なんか軽いと思ったんだおねぇ〜」
秋葉カニカニ団の隊員たちは、泣いたままズッコケた。
急遽ホテルに引き返すことになった。やはり最後までカッチョよくキメられない『カニカニ団』であった。
ホテルのロ〜タリ〜につくやいなや、可愛いオネぇ〜さんが、ちゃんと中身の入ったサケを持って来てくれた。
再び出発であった。
町外れの有料道路の入り口前でSakaとお別れだった。
また停車してSakaが律義にも降りてきてくれた。
「どこかでみたな、このシチュエ〜ション、デジャブ〜かっっっ?」
「今度は、何を忘れたんだ」
隊員達は固唾をのんでSakaを見守った。
「みなさ〜ん、ここでお別れです。皆に会えて本当に楽しかったよ。」
隊員たちは、窓から手を伸ばしSakaと再会を約束して握手をした。
Sakaは笑うと「またお会いしましょう」と言った。
Sakaは車に戻ると厳かに分岐路までノロノロとすすんだ。
なぜだか別れのシ〜ンはいつだって不器用でぎこちない。
Sakaは左の道へ折れ、我々は、まっすぐ有料道路へ直進した。
その時、小さくなってゆくSakaの車から突然静寂を破るクラクションが二度鳴った。
気を付けて行けよ、と言っていた。


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