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最終話「別れの1分待つ」
1998年8月10日19時00分
ゼンソン号のエンジンが再び唸りをあげた。
Maroの車の後を追いながら千里浜ドライヴウェイの砂浜を蹴ってゆく。
さっきの短いトンネルを出たところでMaroが止った。また走り出したのでゼンソン号は慌てて後を追った。
「あれ?ココだったっけ・・」首をヒネる『カニカニ団』。
団長の携帯が鳴った。Maroだった
「今のトコ右って言ったじゃん」
世界で唯一大脳皮質を持たない団体、そりが『カニカニ団』だった・・・
たしかにMaroに教わった道はカンタンだった・・・と思う。
しかたなくMaroは途中まで付いてきてくれた。
「どこまで甘えれば気が済むんだ、『カニカニ団』」団長が笑う。
向こうに高速の入り口がようやく見えてきた。
薄紫の夕暮れ時に水銀灯が輝き始めた。
Maroも高速に乗ってくれていた。
当初の予定とは違うのだろうに、本当に世話がやけるぞ『カニカニ団』は。
金沢のランプが近づいてきたので団長がMaroに電話をかける。
Maroはここで降りてゆくのだった。 口々に隊員たちはMaroに聞こえるように叫んだ
「ありがとう、楽しかったよ!ありがとう!」
Maroの車が横に並んだ。
手を振るMaroの姿が見える。
僕らも手を振った。
道は一気に分かれていった。
あっと言う間にMaroの車が見えなくなった。
「寂しいなあ・・」誰かがそう呟いた。
そして単調なハイウェイをゼンソン号はマッハ0.16の超スピ〜ドで突っ走って行く。
連日の疲れが溜まっていたのだろう、心地よい揺れにまかせてミケくんはいつしかウトウトし始めた。
車のライトに照らし出された黒曜色の路面は先の見えない未来にずっと続いているのだろう、
銀色に輝く外燈が別れを惜しむ涙のように千切れては飛んでゆく・・
そして長く熱い夏の記憶は風のように過ぎていった。

終わり


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