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第十二話「去年は今ごろ山走ってたおな、山・・・・」
1999年8月7日04:30 日本 湯沢
四人の意識が戻ると(爆睡してたあつこは最初から意識が無かった)暗黒がゼンソン号を包んだ。
単にトンネルの外に出ただけであった。
薄暗い光をとおして、右手の山より上越本線の軌跡が寄り添ってくるのがみえる。
湯沢の駅が見えてくるころには、隊員たちの中から早くも冬のスキ〜の話題が出始めた。
headsだけが浮かない顔で
「おれは年末からカンボジアっすよ、(j_j)行けなひ〜〜」泣いていた。
ここから関越道は右へ左へと魚野川を挟んで曲りくねり始める。
それにつれてトンネルも増えてくる。
真夏の朝焼けの中を山あいを縫うようにしてゼンソン号は走っていた。
ミケくんが、座席にお行儀悪く寝コロがりながら叫んだ
「去年は今ごろ山走ってたおな、山・・・・」
団長がハンドルを握りながら小声で付け加える
「走ってたとゆうより、(^_^;)ゞ迷走してたっていうか・・・ガス吹いて」
すぐさま、ミケくんが唸った。
「バカヤリ〜(`o´#)体験学習だっっ去年はっっ死にかける目にあうのものも早く一人前の大人になってもらおうとゆ〜親心だ」
力強かったが思ったよりウケなかったのでミケくんはおとなしくなった。
なぜか、みな起きていた。昔話に花が咲いた。
ちょうど去年の今頃はあ〜だったこ〜だったと、当時を知ってる生き証人であるミケくんと団長は、ここぞとまくし立てた。
身振り手振りを交えて、まるで一昔前のインチキ紙芝居屋の大袈裟なヨタ噺のように隊員たちには映ったであろうが、
厳然とした事実なのだった。(編集部注:事実なのだ)
前回とはエライ違いのカニカニ団夏の陣であった。
なんか、今回は調子イイぞ〜なかなか
夏休みを控えた中坊のように団長はゴゲキンだった。(編集部注:実際夏休みの中坊なのだが・・・)
長岡を目前にしたころ、さすがに休憩を入れるかということになり、ゼンソン号は越後川S.A.に滑り込んだ。
深い山間の高台に位置したS.A.でカニカニ団は一日目の朝を迎えた。
休憩所の自販機でコ〜ヒ〜を買いやけどしそうに熱いそれを啜った。
なんとも言えない香ばしい薫りが鼻をくすぐる。
白い湯気とうっすらと張った靄を通して遥か彼方に幻想的な朝日が見え始める。
「うん、これなら9時前には着くでしょう、あと四時間くらいですか」気づくと団長が微笑んでいた。
Sakaにハッパをかけられて今回は予定通りにと只ならぬ執念でココまで来たという緊張感が少しほぐれたようだった。
延々と身をかがめて旅をしてきたheadsが、朝靄の中でバッタモンのラヂオ体操のようにクネクネしていた。
「いい景色だなぁ〜」を繰り返し、MBXはやけに冷静な面持ちで真剣に景色を愉しんでふうだった。
あつこは眠い目をこすりながら、空気がうまいと深呼吸をしていた。
早朝ということもあって、旅行者はまばらで駐車場にも数台の乗用車を数えるくらいだった。
15分くらいそうしていただろうか、誰ともなくゼンソン号に乗り込み、そこはかとない旅立ちの気配が・・・
「団長は、寝てろよ」ミケくんが、そういうと団長はキ〜を渡した。
ドアを閉めながら
「またミケくんが運転すると豪雨だったりして・・・」
「カンベんしちくりお〜、ボチボチ行くべぇ〜!!」
笑い声が車内にこだました。
それをよそに団長はいつもよりキツくシ〜トベルトを締めていた。
ゆっくりとノッキングしながらヨロヨロとゼンソン号は本線誘導路に入っていった。


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