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第二十八話「そだそだ〜〜まだカニ食ってねえ〜がぅがぅ〜」
1999年8月7日13:30 日本 穴水
先程の別所岳P.A.を出てからは、どの車もすこぶる快調だった。
穴水に着くまではそう時間はかからなかった。
此木ランプで一般道に降りてすぐにガスを補給するために最初のスタンドに立ち寄った。
先程よりも気温が上がったからだろうか、先を急ぎたい気持ちのせいだろうか、誰も車外には出ようとしなかった。
給油が完了するやいなや、4台の車は再び珠洲への道を急いだ。
勝手しったるMaroの道案内なので安心してついてゆける、迷子のようなカニカニ団にとっては久しぶりの安堵感であった。
穴水の町をそっと抜けるとゼンソン号のエンジン音が大きくなった。
また能登の大自然が彼らの前に迫ってきた。
山間部に入ると酸素の密度がまるで違っていた。
暑くはあるが空気は乾いており、鬱陶しさがなくなった。
幸いなことに道は思ったよりなだらかで直線が続いていたのでバイパスと変わらぬ速度を維持していた。
小鹿でも顔を出しそうな雑木林を縫うようにして4台はワルツを踊るようにリズミカルに走り続けた。
一通り素晴らしい景観を満喫すると、規則的な揺れにまかせて、気味が悪いくらいゼンソン号は静かになった
穴水から珠洲までは相当距離がある、なんでも来年開港予定の途中能登空港の建設現場を通り過ぎた。
横目で眺めながら、
「来年の能登遠征は飛行機か?」headsがまだ寝たりない表情で話し始めた。
「確かにすぐに着くんだろうな」MBXが少しでもよく見ようと前に乗り出していた。
「能登も便利になるかわりに、人が多くなるんだろうな」寂しそうに団長がいった。
「まぁ〜フクザツな心境だろ〜な、ココのシトたちも」建設現場を通り過ぎても話題は続いた。
「来年も、絶対に来るぞ〜、今年中にもう一度来たいっっっ」珍しくMBXが興奮して叫ぶように言った。
考えてみれば、MBXは能登半島に入るなり、ワンダフルを連発していた。
今回の能登遠征で一番感激しているのは確かにMBXに違いなかった。
彼は、皆が予定どおりに帰京しても、自分だけしばらく残ろうかと真剣に思っていたのだった。
しかし、全国に数あるカニカニ団の拠点のなかで、なぜに能登遠征ばかりが定期的に行われるのだろう?
それは、やはりSAKAやMaroたちの人柄や人徳のせいもモチロンだが、この圧倒的な大自然の素晴らしさも影響が大きい。
食べ物もウマいし(本当は単に食べ物だったりして・・・)
「カニ食いてぇ〜〜」誰かがそう云うと、犬消防車現象のように
「かに〜〜っっっかに食わせろ〜!!」
「そだそだ〜〜まだカニ食ってねえ〜がぅがぅ〜」
ゼンソン号は、けたたましく阿鼻叫喚の世界に入っていった。
気づくとゼンソン号は急な坂道を下って海の方に向かっていた。
しばらく海沿いの道が続いた。文句なしの海水浴日和だったので空と海の色はほとんど同じに見えた。
何を獲っているのだろうか遠くに浮かぶ船が、はっきりと見える。
潮の満ち引きまではワカらなかったが、贅沢でノンビリしたのどかな漁師町の景色が続いた。
ゼンソン号が最後の峠越えにさしかかった。
ここを越えると彼らの終着地である珠洲が見えてくるはずだった。
なんだか、とっても懐かしかった。
はるばる長旅の末にようやく故郷に帰りついた気分だった。
「兄イはドコで待ってるんだっけ?」ミケくんがツブやいた。
「たしか駅じゃなかったでしたっけ?」ハンドルを握る団長が答えた。
峠を下ると市街地に入っていくカニカニ団、先頭を行くMaroの車は確実に目的地に向かって彼らを導いていた。


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