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第四十四話「Rankerのその顔と仙台名物『萩の月』」
1999年8月8日01:30 日本 珠洲 狼煙館其の椀
Ranker は、その巨体を風に晒されながら取り憑かれたようにその林をジっと見つめていた。
再び、誰の目にもはっきりとわかるように林が一度揺れた。
立ち竦むRankerの首筋に汗がつたい落ちた。
森を駆け抜ける風の咆哮が獰猛な獣のような叫び声に聞こえた。
隣にいるあつこがその音に怯んだ。
MaroとKM、Yayoiそしてたつゆきが階段を降りて戻ってきた。
「どうした?、何かいるの?」KMが息を切らしてheadsに尋ねた。
headsは肩をすくめると言った。
「大方、猫かなんかじゃないですか?」
ミケくんにはある予感があった。
さっきからつけてくるあの男、ヤツに違いない・・・だがいったい何故。
「・・・なんかRankerさんの様子が危ないですよ」たまらずMBXが呼びかけた。
ゆっくりとRankerの巨体が階段を降りていった、一歩一歩無言で皆から離れていった。
たまらずミケくんとMaroがあとを追った。
「お・・・おいっRankerはん, いったいどうしたんよ?」Maroが後を追いながら問うた。
一方、先程の呼びかけに返事のなかったSakaの先行グループの安否も気づかわれた。
「Sakaさんどうしたんだろ? 俺、ちと上の様子見にいってきます」
headsとたつゆきがライトを受け取って階段を登っていった。
「Sakaさーーん、クロネコさーんっっ!!大丈夫ですかぁ?」
たつゆきが声を張り上げながら階段の先を照らした。
揺れるライトが小さくなるにつれ、次第に二人の足音が遠のいていった。
「どうも、なんか変だよね、Sakaさんといい、Rankerさんといい」団長がひとりごちた。
その場に残された団長も、KMもみんなが不安そうにRankerの歩み寄る先を見つめた。
ようやくMaroがRankerに追いついた、
「Rankerはん、いったいどないしたん?」
「かわいそうだよ、こんな所に独りぼっちじゃ」
振り返ったRankerのその顔はまるで仙台名物『萩の月』のように蒼白になっていた。
「Rankerはん・・・いったい・・」思わずビクっと立ち止まってMaroが口を噤んだ。
Rankerは無言で傍らの草やぶを指し示した。
いきなり急に物凄い突風に見舞われた。
林がまるで目に見えない怪力でなぎ倒されるように大きく撓った。
その指さした場所はひときわ深い林になっており、頼りなげな手摺を挟んで急な斜面となって山裾まで深い草木が生い茂っていた。
Sakaを探しに行ったheadsとたつゆきからは、まだ何の音沙汰もなかった。
階段の上の方を目を凝らして見てみたが、ただ漠然と暗闇が広がるだけで彼らの手がかりになるような物は見つからなかった。
Rankerは一歩一歩その生い茂った林の根元に歩み寄っていった。
「お・・おい知らんでRankerよ」Yayoiが困惑した様子でいった。
そのとき、また不気味な野獣の吠える声が岬に響いた。
今度はもっと近くでだった。
Rankerの肩が不気味に揺れて始めた。大きくうねるように息を荒くして上下していた。
MaroがRankerの肩を掴んだ
「おいおい、Rankerはん、いったい何が起こってんねんて」
茂みのなかの物、ミケくんには、それが何者かなのかは心当たりがあった。
「よしよし、助けてやるからね」Maroの腕を振り払うと、何かに取りつかれたような虚ろな目をしてRankerは手摺のところまで進んだ。
「マジでヤバいよぉ!Rankerさんっっ」MBXが荒れ狂う強風の中で叫んだ。
その時、団長の晒したライトに林の中で一瞬、二つの赤い目が光った。同時に雷のような怒涛が周囲に響いた。
悲鳴を上げて後ずさりするあつこ、異様な雰囲気に圧倒されて慌てるKMの持つライトが激しく乱舞した。
ミケくんの堅く握った手には汗が滲み出ていた。


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