第六十三話「花火だけで一万超!!( ̄◇ ̄;信じられない・・・・カニカニ団」 1999年8月8日21:00 日本 珠洲 ソバ屋其の弐 |
男は浴槽に張った湯の温度を慎重に手で測りながら、不機嫌そうに額の汗をぬぐった。 狼煙館に住み込みで働くようになってからは、毎日がこんな調子だった。 なんのためにはるばるこんな辺鄙な所まで来たのかと、ひとりごちた。 「それが終わったら、今度は夕食の支度の手伝いをお願いね」女将の声が厨房から聞こえてきた。 ゲシュケは舌打ちをすると、ノロノロと捲った袖を延ばして立ち上がった。 さんざ飲んでギョウザに舌鼓を打ったカニカニ団だったが、この店の本当の名物ははあくまでもソバなのだった。 去年は正直言ってビックリしたのだ、この店のソバは、腹がいっぱいになってからでもウマいのだ。 しっかりとした歯ごたえと、するりとしたしなやかな喉越し、からむつゆのダシも効いてて、正に絶品だった。 あれだけ食い散らかした後なのに、皆無言でソバを啜っていた。 とても12 人もこの座敷に居るとなど思えなかった。 満腹状態恒例の記念撮影のあと、どうしようかと云う話になって、顔を寄せて話し合った。 「おで、エフェクタ持ってきてるんよ」ミケくんが寝っ転がりながら唐突にいった。 「うわぁ、でたぁーマジで?」heads が驚きの表情で尋ねた。 皆は困った表情をしていた。 というのも前回のこともあるし、なにも能登半島先端に来てまでと誰もが思ったのだろう。 「花火は?去年もやったし、海岸でドーンと一発」団長の口から昨年の楽しい思い出が色鮮やかに出てきた。 「いいねぇー、ビーハナ」KMが今夜は吹かされてたまるかとばかりに、代替案を支持した。 「よし、んじゃ買いに行くかぁー!!サークルK に」Sakaが色めき立った。 「今年も族にはロケットやらせないぜー、買い占めたる♪」ロケット奉行のMaroが叫んだ。 九時を回ったころだろうか、長い間座っていたせいで誰もが足のしびれを庇いながら立ち上がった。 遅れてきたエアロビ東も満足げに頷くとオバちゃんに礼をいって、靴を履いた。 ここでも、また地元の名士であるSakaのおかげで、格安の料金になっていたのであった。 「さてさて、いっちょハデに行きましょうヘ(^^ヘ) (ノ^^)ノ」浮かれた声で団長が叫んだ。 子供の様にハシャギながら、古びた家並みを縫うようにして市役所の裏の駐車場に向かった。 ゼンソン号の乗組員は散り散りになって、分乗していた。 ミケくんはMaroのビッグホ〜ンに乗りこんでいた。 それぞれの車に手早く乗り込むやいなや、海岸通りにあるコンビニに向かった。 大分気温が下がった海岸通りの心地よい風がカン高いディ〜ゼルエンジンの音とともに窓から入ってくる。 「音デカいっしょ?トラックのエンジン積んでんから」察したのかMaroが笑っていった。 5分ほど走っただろうか、遠くに街灯の少ない暗い幹線道路に目的のコンビニが見えてきた。 去年と全く同じような進行状態だった。 泳いで、食って、花火あげて・・・・来年もやるんだろ〜なきっと 「花火ドコでやるよ?ところで」Sakaが皆が車から出てくるのを待って聞いた。 「ん、海岸しかないっしょ、ココでやる?♪」Maroがドアを閉めながら答えた。 気勢をあげて店内になだれ込むカニカニ団、花火とは関係ない雑誌や飲み物にたかり始めた。 まだ時間が少し早かったコトもあり、店内にはハデな打ち上げものを中心に品揃えが豊富だった。 色とりどりに所狭しと並べられた花火は眺めているだけで、心が踊った。 なんの思慮もなく買い物カゴに次々と投げ込まれる花火たち、カゴを持つ手がずっしりとした重量に悲鳴を上げる。 信じられないコトになんと一万円以上の豪華絢爛な打ち上げものがカゴの中で犇めいていた。 「マヂでこんなに買うのぉ〜?」それを見たあつこが驚いていった。 「うははは、去年もこのくらい買ったおね」Maroが涼しい顔で云ってのけた。 それほど広くない店内にカニカニ団が溢れかえっていた。 団長がサンドイッチを手に取って一心に見つめていた。 「まだ喰うんかいっっっっ!?団長(<●> <●>;)」それを見て驚いたたつゆきが目を丸くして叫んだ。 「いやいやいや、冗談ですよ、(^_^;)ゞ」団長はサンドイッチを棚に戻しながら笑った。 その冗談を誰も信じてはいなかった。 「合計で1万2345円です」レジの店員が驚愕の表情を隠しもせずにいった。 「花火だけで一万超!!( ̄◇ ̄;信じられない・・・・カニカニ団」初参加のMBXがどよめいた。 ひと時代前の過激派並の火薬類を手に入れたカニカニ団は本夏最大のイベント会場を求めて夜の海岸通りを彷徨った。 |