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第七十九話「さらば珠洲の灯よ、再び」
1999年8月9日15:00 日本 珠洲飯田
SAKAの家はそう遠くない、5分ほどで店の向いの道端にゼンソン号を横付けにしていた。
RX-7のトランクを開けApple IIを持ち上げるクロネコ、SAKAも手伝って店の奥に消えていった。
そしてSAKAへのともちゃんからお土産として預かってきている純正モニタがゼンソン号の荷台から積み降ろされた。
SAKAはつったっている女性二人に店を指さしていた「冷たい飲み物でも出すから、寄っていきなよ」
道路の向こうでSAKAがこちらに手招きしていた。
「我々はどうしましょうか?(・・)」団長がミケくんを見た。
「つーか、上がってねーか?戻ってこねーじゃんかよ(-_- )」東京組としては時間も気になるところだったが、
それ以上に冷たい飲み物も飲みたかった。
そうとなれば話は早い、我先にゼンソン号を置き去りにして伝統あるSAKA写真館に傾れ込む様はまるで山賊のそれだった。
冷房のよく効いた店内に一歩足を踏み入れると、そこはまるで別世界だった。
階段の脇からSAKAが顔を出して二階に上がるように手招きをしている。(=^.^=)/
靴を脱ぐのももどかしく階段を駆け上がると突き当たりのドアにプレートが貼り付けられており、こう書かれていた。
「ビデオ編集室」なんだか怪し気な部屋であった。(゚o゚;)
中からは団員達の笑い声が聞こえてくる。そっとドアをノックすると聞き慣れたSAKAの声が聞こえた。
「どうぞ、開いてるよ」
妙にかしこまって団長がドアを開けた。そこには最新設備のAV機器が所狭しと山のように積み上げられ、
仕事机の上には二台のモニターが怪しく光り輝いていた。そして今運び込まれたばかりのApple IIと純正モニタが仲良く並んで置かれていた。
「なんかちょっと調子悪いとか言っていましたけど…(^_^;)ゞ」団長の言葉に呼び覚まされたように専門家のクロネコがモニタを持ち上げる。
「どれどれ、ちょっと診てみましょうか」配線を確認してスイッチを入れる、確かに少し色合いがおかしいように思われる。
ちょっと飲み物をとってくると言い残してSAKAが下に降りていった。
手慣れた仕草でクロネコはモニタ背面をポンポンと叩いたり、なにやら呪文を口にしたりで、
まるでフィリピンかどこかの呪術師のような面持ちで、横倒しになったモニタの上に屈み込んでいた。
それを意味も無くじっと息を殺して見守るカニカニ団。
リズミカルな足音とともにジュースを満載したお盆を手にSAKAが戻ってきた。
「うちはだれも酒飲まないんだよね、ジュースでかんべんして、好きなのとってよ」お盆をテーブルの上に置いて笑った。
「どうなの?どうなの?( ̄◇ ̄ ;」その後心配そうにクロネコの傍らに寄るSAKA。
クロネコは難しそうに顔を歪めてドライバーで内部のツマミをコネ廻していた。
ソファーに腰を下ろすとさすがにすっかり疲れが出たのか、団員たちは死んだような目つきでジュースを啜っている。(━┳ ___ ━┳)y-゚゚゚
ひとしきり叩いて、ねじを閉め終え、クロネコは自信たっぷりに立ち上がって大きく伸びをした。ヽ(^。^)ノ
「これで多分映るんじゃないですか、電源入れてみましょう」
配線していざスイッチを入れてみると、緊張感を吹き飛ばしモニタには見事なまでの鮮やかな画面を映しだしていた。
「をを〜!」次々と無気力な歓声があがった。\(●^o^●)/
満面の笑みを湛えてSAKAが喜んでいる。「有り難う!クロネコさん、ともさんに良くお礼をいっておいてねヽ(^◇^)」
疲れもだいぶ癒えてきて、団員たちに活気が戻ってきた。
とりとめのない雑談が続きそろそろ帰りの時間と小松空港の場所が気になり始めていた。
「なに?小松空港?、こー行って、あー行けば着くよ」SAKAが身振りで宙に地図を描いた。
「わかんねーって、それじゃ兄ィ〜。カラスぢゃねーんだ〜ら」すぐさま団員からシュプレヒコールが沸き上がる。
笑いながら棚の上から地図を取りだし、それにつれSAKAの周りに人垣が出来上がった。
「なるほど、こう行ってこう行けば楽勝じゃんよ(・ω・)ノ」全然理解していない方向音痴日本一のミケくんが吠える。
「時速100キロで行けば二時間くらいですね(o^.^o)」逃げ遅れたビーバーの子供のような表情で団長が相づちを打つ。
「・・・まあ、とにかく大丈夫だよ」何が大丈夫なのかは、この際脇に追いやられていた。
飲むだけ飲んで笑うだけ笑ってSAKA邸を後にすることにした。
ゼンソン号が5人乗りだということもあって、女性陣はクロネコのRX-7に乗って七尾まで行くことになった。
都合3日間滞在しただろうか、懐かしくも愛おしい珠洲の街に別れを告げる時がいよいよやってきたのだ。
心なしかSAKAの表情が雲っているのが見て取れる、楽しく過ごした夏休暇の3日間、短くはあったが皆同じ気持ちだった。
カルガモ一家のようにゾロゾロと店をでると、一瞬にして猛暑に襲われ団員たちから悲鳴がでた。
ほんの少しの駐車でも炎天下では車内は焼けるような熱さになってしまう。
乗り込むやいなやエンジンをかけ窓を全開にして、吹きだした汗を拭った。
headsが名残惜しそうにSAKAと握手してからゼンソン号に乗り込んだ。
「今年はえらく暑いよねえ(;^_^A 」サンダルを鳴らしてSAKAが窓から覗き込む。
「ですねえ」シートベルトをしながら団長が笑った。
SAKAは大声で市役所を指さしながらクロネコに呼びかけた「向こうから出た方がいいよ」
突っ込んだ車の位置上、一旦隣接する市役所の駐車場を通り抜けてから、七尾への幹線道路に出る必要があった。
団長がハンドルを握り、RX-7を振り返って合図を送るとSAKAに別れの挨拶を口にした。
「それじゃぁ、SAKAさんお世話になりました」代わる代わる窓越しに握手を求める団員たち
動きだしたゼンソン号を追ってSAKAが走る。「おお!来年も来いよ、待ってるからな」
団員達も皆SAKAの顔を追った。「SAKAさーん、絶対来ますよ。ちゃんと休み取っててくださいよー」MBXの声がどこか途切れ途切れになった。
日溜まり溢れる市役所の駐車場をゆっくりと迂回して、幹線道路への出口に近づいていった。
後ろのRX-7の団員たちと手を伸ばして握手しているSAKAがいた。
左のウインカーを点滅させると、SAKAが忙しなく駆け寄って再び最期の別れを交わした。「じゃあ、お元気でSAKAさん」
「おう、お前らも事故るなよ、気を付けてなぁ」そういうとSAKAは屋根を二度三度叩いた。
手を振るSAKAに応えるようにクラクションを鳴らしゼンソン号はゆっくりと出ていった。
夏が来ると奴等が来る、奴等が去ると夏も終いか…、SAKAはひとりごちて立ち止まり、また大きく手振った。


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