フォークオーバーホール


シールヒビ割れ

 オイル漏れや動作に違和感を感じるような事もなかったが、写真のようにダストシールにかなりヒビ割れが出ていたのでやや早いがオーバーホールをする事にした。用意した部品は以下の通り。名称は一般的なもの、純正部品の名称と価格はこちらを参照。なおシリンダボルトはマニュアルでは要交換とはなっていません。本当はピストンリングも必要なんですが、僕は注文時にシリンダボルトの番号を指定してしまったので今回は用意出来なかった。

  • ダストシール No.51173-26F00
  • オイルシール No.51153-26F00
  • スライドメタル(ガイドブッシュ) No.51167-01D00
  • ピストン(スライドブッシュ) No.51121-01D00
  • シリンダボルトガスケット No.51148-41310
  • シリンダボルト No.51147-16510
フォークモデル図

 フォークの取り外しとオイル抜きに関してはこちらで(一応)説明しているのでここでは触れません。

 フォーク単体にしたら分解する。フォークはモデル図の様にインナーチューブ(青)がアウターチューブ(黒)の中にあってシリンダ(灰)で可動範囲を制限されている。インナーチューブを外すためにはシリンダを固定しているシリンダボルト(赤)を外さなければならないが、図のようにシリンダはフォークの奥にあり、またチューブとは接しているだけなのでシリンダボルトをそのまま緩めるとシリンダと共回りしてしまう。そこで特殊工具のTタイプハンドルとフロントフォークツールを使用してシリンダを固定してからシリンダボルトを緩める。シリンダボルトはネジロックが塗布されているためアウタチューブのキャリパ取り付け部分を万力で挟んで固定して叩かないと上手く外れない。特殊工具はTレンチと19mmのヘックスビットソケットなので当然普通の工具で代用できますが、レンチの全長が45cm以上必要です(それでもKokenあたりで揃えれば純正より精度が良い上に安い)。

オイルシール

 シリンダを外したらシール類を取り外す。ダストシールはアウターチューブの上に嵌っているだけなのでマイナスドライバで抉ってやれば簡単に外れる。ストッパリングもアウターチューブの内壁の切り込みに引っ掛けてあるだけなのでこれもドライバでリングを引っ掛ければすぐに外れる。写真ではオイルシールが傷んでいるように見えるけど、リングの錆びが乗っているだけでシールそのものは至って綺麗でした。矢印の先にあるのがストッパリングで、このリング状のクリップでシールの位置が固定されています。

 次いでインナーチューブを引き抜く。オイルシールが割としっかりと嵌っているので力を入れて勢い良くやらないと抜けない。インナーチューブが抜けたらオイルシール、ワッシャ、スライドメタルを引き抜き、チューブ下端に嵌っているピストン(スライドブッシュ)を外し、インナーチューブからシリンダを取り出す。シリンダに付いてくるはずのオイルロックピースはアウターチューブに固着していた。本当はチェックしなければならない部品だけど、シリンダボルトからのオイル漏れは無かったので多少の不安はあったけどそのまま作業を進めた。

ピストン
スライドメタル

 分解が終わったら再利用する部品をパーツクリーナー等で洗浄し、チェックする。用意していなかったピストンリングに磨耗やキズは見られなかった。前述したようにオイルシールも十分使用可能な状態。ただ上の写真のピストンは表面のテフロン皮膜がかなり薄くなっていた。一方で下のスライドメタルの方はまだ使えそうな感じだった(蛇足:スライドブッシュはインナーチューブがアウターチューブに対して摩擦抵抗を減らし、ガイドブッシュは逆にアウターがインナーに対して働いていて常に摩擦を受けているため磨耗する、また作用する向きが違うのでテフロン皮膜の面も違う)。

 この差は重大ではないけど、テフロン皮膜の偏磨耗が酷い場合は組み方が悪いか、最悪フォークが歪んでいる可能性があるので調べましょう。とは言えフォークはブレーキング時にストロークしながら前後方向へ多少は曲がるので多少の偏磨耗はあっておかしくないですが。

シリンダボルト締め付け

 組み立てはまずインナーチューブにフォークオイル等を馴染ませたピストンを取り付け、シリンダーを通してからアウターチューブに挿入する。シリンダボルトのワッシャを新品に交換してボルトにネジロックを塗布してから取り付け。万力を使っていてもスタッドボルトがあるため長めの工具を使わなければならないので、30N/mのトルクをかけるのは結構コツがいります。

シール打ち込み

 チューブを組んだら同様にオイル等を馴染ませたスライドメタルとオイルシールをオイルシールインストーラーで打ち込む。写真のように上から叩いてインナーとアウターの間に挿入します。スライドメタルはワッシャをセットしてから打ち込み、次いでオイルシールを打ち込む。ストッパリングが嵌め込める位置まで打ち込むのは結構大変なのでので根気良く(力任せにやってしまうとオイルシールを傷めてしまう)均等に叩く。オイルシールインストーラーは純正の特殊工具ではなくアストロ製(4700円)のモノを使用しました。

 ストッパリングをアウターチューブの溝に嵌め込み、上からダストシールを押し込む。ダストシールは指定はされていないが保護のため薄くシリコングリスを塗布した。フォークオイルを入れる前にフォークをストローク・回してみてスムーズに動くかチェックする。問題が無ければフォークオイルを入れ、組み立てて(こちらを参照)終了。





2004年 1月27日作成
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