ディスクアレイ専用 SCSI-2 カード
SV-98/2-B04 インプレッション

はじめに

 とうとう SV-98/2-B04(ディスクアレイ専用 SCSI-2 ボード、以下 2-B04) を入手することができたので、使用感などをまとめてみようと思う。ちなみに、現在は後継として SV-98/3-B03 が販売されているので、2-B04 は型落ちということになる。

 参考までに、当方の使用環境は以下の通りである。

本体PC-9821 Xv13/W16(K6-III,445MHz)
MEMORY144M
HDDSEAGATE ST39102LW×4
CD-RYAMAHA CDR400c
SOUNDX-MATE PCM
NETWORKPC-9821X-B06(On Board)
VIDEOMGA-2064W(RAMDAC 220MHz)
OSWin95 OSR2

 本稿は筆者が独自に行った解析に基づいたものであり、本稿によって引き起こされた如何なる問題にも筆者は責任をとらないものとする。


ハードウェアに関して

 このボードは NEC が開発したのではなく Mylex 社が開発したもので、DOS/V 機用としては DAC960 という製品名で販売されている。ただし、2-B04 は単に DAC960 の ROM を PC-98 用に変更してあるだけではなく、その他にも PC-98 用にカスタマイズされているため、、ハードウェアの仕様は基本的には DAC960 に準拠する。ただし、DAC960 のバージョンとしては古い方の板が使用されている。これはボード上に実装されている Wide 68PIN の内蔵用コネクタの形状から判断できる(ような気がする)。

 ボードサイズはフルサイズで Intel i960(25MHz版) が搭載されており、他には Wide 68PIN の内蔵用のコネクタが2つ、そして 72PIN の SIMM スロットが1つ実装されており、内蔵用のコネクタが2つあるため、本ボード1枚で2チャネルを制御できる。ただし、2チャネルともハードディスクを接続すると転送速度が落ちるようで、具体的には1チャネル使用時 10MB(マニュアル公称値) であるが、2チャネル使用する設定にするとこれが半分の 5MB(マニュアル公称値) に低下する(らしい)。以上の理由から、使用するチャネルは1チャネルにとどめておくべきだろう。


SV-98/2-B04
(写真はバックアップ用のバッテリを実装した状態)

 また、SIMM スロットには工場出荷時には 72PIN 4MB のパリティありのファーストページの SIMM が実装されているが、これを容量の大きい SIMM と交換することにより、速度の向上が望める。ただし、実装できるのは 72PIN 32MB のパリティありのファーストページの SIMM(60ns) までである。この SIMM の容量を大きくすると、マニュアル公称値の転送速度である 10MB を超える転送速度が実現できる。

 上記の他に、ボード上には 50MHz のオシレータが実装されており、これを2分周したものが i960 の動作クロックとして使用されている。よって、これを高速なオシレータに交換することで、さらに高速化できるものと思われるが、i960 は通常時でもかなりの熱を持つため、クロックアップ時には強制空冷が必要になるものと思われる。
 なお、本ボードで実現できる RAID レベルは RAID1 または RAID5 のいずれかである。


接続用ハードディスク

 接続用のハードディスクであるが、接続する台数によって RAID レベルが違ってくる。ディスクアレイ構築に最低限必要なのは2台であるが、この状態では RAID1(ミラーリング) になってしまう。できることなら、RAID5(パリティ付きストライピング) が望ましいので、最低でも3台は用意したい。ただし、RAID5 の場合、1台ぶんの容量はパリティとして使用される(各ドライブに分散して書かれる)ので注意が必要である。

 また、異なる容量のハードディスクを使用した場合、アレイユニット合計の容量は、最低容量のドライブ×台数になってしまう。よって、可能ならば同モデル、同容量のハードディスクを複数台用意することをお勧めする。ちなみに、板の上に実装されている接続用コネクタは Wide 68PIN であるため、Wide のハードディスクを使用することが望ましいが、68PIN→50PIN の変換コネクタを使用することで、Narrow のハードディスクも使用できる。

 なお、IDE to UW 変換アダプタ(AEC-7720UW)は(今のところ)使用できないので、注意が必要である。詳しくはこちらを参照されたい。


本体へのボードとハードディスクの実装

 ここまでの材料が揃ったら、本体への実装に移る。なお、マニュアルなどには SV-98/2-U01(増設用ディスクアレイユニット) の中にハードディスクを実装することを前提に書かれているが、今回実装する本体は PC-9821 Xv13/W16(改) であるため、実装方法が SV-98 model2 などと若干異なるが、ご了承いただきたい。

 さて、もともと PC-9821 Xv13/W16 にはハードディスク専用ベイは、実装するためのプレートを増やした状態でも2つしか存在しない。そのため、RAID5 でディスクアレイを構築する場合、ハードディスクを最低でも3台実装する必要があるため、ファイルベイを1つ以上消費しなくてはならない。せっかくの5インチベイがハードディスクに占有されるのは、なんともやりきれないが、その代わりに強大なディスク装置が実現できるので、やむを得ないところだろう。

 いよいよ、本体の PCI スロットに板を実装するが、フルサイズであるため、実装に手間取るかもしれない。次に、接続に必要なケーブルを用意し、個々のハードディスクを接続する。

 なお、発熱の激しいハードディスクを使用する場合には、冷却には気を使う必要がある。冷却方法はいろいろあるが、当方は各ハードディスクの前面に4センチ角の FAN を[2個×ハードディスク専用ベイ数]と[3個×ハードディスク実装済ファイルベイ数]の組み合わせで実装した。さらに最下段のファイルベイの固定用ネジ穴に FAN を取り付けるための金具を実装し、その金具に8センチ角の FAN を実装し、ハードディスク後部に風が横から当たるようにしている。しかし、これでも冷却効果は充分とは言い難いため、PC-9821 Xv13 などのミニタワー筐体にディスクアレイを構築して内蔵する場合には、発熱の少ないドライブを使用することをお勧めする。

 さて、ST39102LW を3台使用してディスクアレイを構築していたので、4台目のドライブはスペアドライブとして使用するつもりだった。しかし、とある方面より「飼い殺しだ」とのコメントが出たので、現状の3台でのディスクアレイから4台でのディスクアレイに構成を変更して使用している。ただし、4台目はさすがに本体内に内蔵できないため、外付けの小型ケースに入れ、2-B04 背面のコネクタに接続している。

 また、PC-9821 Xv13/W16 系では、本体前面のハードディスクのアクセスランプは IDE のアクセスランプなので、ディスクアレイのアクセスランプにする場合には、LED ケーブルを本体に接続されているコネクタから取り外し、延長したうえで 2-B04 のアクセス LED 用コネクタに接続するとよい。


ソフトウェアの準備

 このボードは単にハードディスクを増設しただけではディスクアレイとしては機能しない。複数のハードディスクを1台のディスクアレイとして見えるようにするため、添付のコンフィグレーションディスクを使用する。

 このディスクから起動すると、ディスクアレイコンフィグレーション用のユーティリティが立ち上がる。最初に SCSI バスの検索が行われ、接続されているユニットを確認した後で、各種設定画面になる。なお、使用するハードディスクによっては、SCSI バスの検索を行う画面で固まることがあるので注意が必要である。

 実際に、当方の環境でも最初に ST39102LW を接続した時には SCSI バスの検索で固まっていた。それでは困るので、とりあえず ID=0 のハードディスクを ST34573N(コネクタは Wide に変換してある) に交換し、再び実行を試みた結果、SCSI バスの検索は通るようになった。通るようになったところで、ST34573N を ST39102LW に交換し、コンフィグレーションを実行したところ、問題なく実行できるようになった。

 さて、ディスクアレイを最初に構築する場合には、次のような手順になる。まず最初に、パックの定義を行い、接続されている複数台のハードディスクを1台のユニットとみなす作業を行う。なお、ここでパックに含めなかったドライブは、オンラインスペアディスクとなり、障害が発生した時に自動的に復旧に使われる(らしい)。

 パックの定義が終了したら、システムドライブの設定に移る。これは物理パーティションの設定とも言えるもので、ここで分割した台数がそのまま起動メニューに1台ずつ表示される。また、ここで RAID レベルも設定するが、RAID5 を選択した場合、確保する容量については注意が必要である。RAID5 はパリティ付ストライピングであるため、指定時の容量と実確保容量は以下の式によって確定する。

実確保容量=指定容量× ハードディスク台数−1

ハードディスク台数

 この時にデータの書き込み方式の設定も行う。方式は「ライトバック」と「ライトスルー」の2種類から選択することが可能である。速度は「ライトバック」の方が速いが、データを書き込む前に電源を落としてしまうと、データを失う可能性がある。

 システムドライブの設定が全て終了したら、続いてシステムドライブの初期化を行う。ただし、ここでの初期化は MS-DOS で行うようなデータの初期化ではなく、ディスクアレイとして動作させるための手続きとして行う初期化である。この初期化は、一度に複数のシステムドライブを指定することが可能で、当方の環境では5つのシステムドライブを同時に初期化できることを確認している。

 システムドライブの初期化が終了したら、コンフィグレーションを保存する。この時、コンフィグレーションは、ボード上の NVRAM とコンフィグレーションディスクに保存される。マニュアルには「コンフィグレーションが ROM と NVRAM で異なっていた場合の処置」という文言があるので、NVRAM 以外にも(まさか ROM に?)設定したデータが保存されているのかもしれない。

 ここまでの作業が終了したら、メニューから終了を選択し、コンフィグレーションディスクを抜いて MS-DOS を起動する。起動が確認されたら、FORMAT.EXE(正確には HDFORMAT.EXE か) を起動し、通常のハードディスクと同様に初期化・領域確保を行うが、非常に高速である。また、領域確保の時にシステムを転送しておくと、そのドライブから起動ができるようになるのが、2-B04 を使用してディスクアレイを構築した場合の特徴といえる。

 領域確保が終了したら、あとはリセットをかければよい。メモリチェックが終わり、しばらくするとハードディスク起動メニューが現れるが、そこには新しく「ディスクアレイ #n」という文字があるはずである。あとは「非常に高速なハードディスクユニット」という感覚で使用することが可能である。


某 Win95 上での使用

 本ボードは基本的に WinNT や Netware での使用が前提になっている。しかし、起動デバイスとして使用できることを考えると、その他の OS での挙動が気になるところである。そこで、当方ではこのボードを実装し、ディスクアレイを構築した上で、その中に Win95 をインストールして使用してみた。以下にはその結果を記しておく。

 まず、Win95 起動時に PCI RAID Controller が検出され、ドライバをインストールしようとする。しかし、DAC960 のドライバは PC-98 用の Win95 には用意されていないので、ドライバをインストールしないまま、使用することになる。すると、システムのプロパティには、「ディスクアレイのドライブには MS-DOS 互換のファイルシステムが使用されている」旨の表示が出るようになる。が、パフォーマンスには関係しないようである。どれぐらいの転送速度が出るかについては、PC-9821 Xv13/W16 のパフォーマンスを参照されたい。

 また、PC-9821 Xv13/W16 は ATX 電源を使用しているので、2-B04 を導入するまでは、Win95 の終了を選ぶと電源が切れるようになっていたが、これが「しばらくお待ち下さい」の画面で固まるようになってしまった。当方では 2-B04 の上には SIMM がバッファとして搭載されているため、うかつに電源を切るとデータを失ってしまう可能性が出てきた。これが直接の原因かどうか不明だが、2〜3回ほど「レジストリが破壊されたのでバックアップを使用して復旧する」旨が表示されたことがある。そのため、現在では固まった後で、しばらく待ってから電源を切断するようにしている。この方法に切り替えてからはレジストリが破壊されたという表示は出なくなった。


おわりに

 本ボードは SV-98 model2 用に作られたボードで、これをこのまま SV-98 model3 に実装しても使用できない、という問題点がすでに発見されている。この問題に対応したのが現行の SV-98/3-B03 ということなのだろう。

 しかし、上記の問題を除けば、PC-98 ハードウェアによるディスクアレイを構築することが可能なわけで、非常に面白いボードだといえる。最後に、当方の周辺で今までに 2-B04 の動作確認が取られている機種を列記しておく。

 動作確認機種が増えた場合には、本ページに書かれている内容を改訂していく予定である。


[2001年07月02日改訂]

複数チャネルの使用に関して

 マニュアルには2チャネルを使用すると転送速度が落ちると書かれているが、これはそれぞれのチャネルにパックを定義した場合のことを示しているようである。というのは、1つのパックを2チャネルにまたいで作成する場合には問題がないばかりか、1チャネルでパックを構成するときよりも若干速度が上がっているためである。
 つまり、1つのチャネルに4台のハードディスクを接続して1つのパックを構成するよりも、2つのチャネルに2台ずつハードディスクを接続して1つのパックを構成した方が速い、ということである。


バックアップバッテリに関して

 SV-98/2-B04 および SV-98/3-B03 においてはバックアップ用のバッテリは用意されていない。しかしながら、ハードウェア的には DAC960 なので、DAC960 用のバックアップバッテリである DBB960 は使用することが可能であり、これを搭載することで安心してライトバックで使用することができる。
 ただし、かなり古いバージョンの SV-98/2-B04(BIOSが長方形のもの) にバックアップバッテリを取り付けるときには、DBB960 側の取り付け穴の位置を変更する必要があるので注意が必要である。
 また、本来のAT用のコンフィグレーションメニューでは「バッテリを使用するかしないか」を設定する項目があるが、B-04 用のコンフィグレーションメニューには存在しないので、バックアップバッテリの実装は気休め程度にしかならないかもしれない。


SV-98/2-B04のSV-98 model3への搭載に関して

 一時期は搭載できないと思われていたが、どうやら搭載できるようである。プロダクトガイド上で 2-B04 と 3-B03 が併売されていた時期があったかどうか確認できないのでなんとも言えないが。


構成できる最大容量に関して

 認識および使用可能な最大値は確認できたので、2001年の夏コミで発売予定の「SV Magazine」で報告する予定である。


連絡先

 本稿に対してご質問があれば、 にメールを送っていただければ幸いである。

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