白い部屋









 「どうして過去の恥ずかしい記憶って 不意にポコンと思い出すんだろうな」



 ぼんやりと座っていると、そんな声が聞こえました。



 「忘れていたつもりだったんだ 普段は別に思い出しもしないんだ」



 何もない部屋にいるはずなのに。



 「だけどふとした瞬間に ほんとにちょっと珈琲カップを持ち上げた時とかに浮かぶんだよ」



 ここは何もない部屋なのです。真っ白の四角い部屋。窓もない部屋。

 テーブルも椅子もありません。目が痛くなるほどに白い部屋。

 私はそこに一人でいたはずです。



 「そんな行動何回もしているのに 思い出さない時の方が多いのに」



 振り返ると丁度私の斜め後ろに、両腕で作る輪っかぐらいの大きさの真黒なモノが、ふわ

 ふわと浮いていました。大きな、黒いしゃぼん玉。



 「そして その時の記憶と共に羞恥心が甦ってきて あまりの事に身悶えるんだ」



 そのしゃぼん玉はそう言うと、そのまま下に降りて行き、床にあたって割れるのかと思い

 きや、そのまま沈んで行きました。

 後には何も残っていません。ただ真っ白な床があるだけ。





 何も見るものがなくなったので、私はまたぼんやりする事にしました。



 白い白い部屋の中。

  





TOP  謎TOP  back  next