TK-80
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TK-80 トレーニング・キット

【製造メーカ】 NEC

【発売】 1976年

【価格(当時)】 \88,500

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1976年、日本で最初に発売されたパソコン・・・というよりマイコンです。当時はキットの形で発売されました。型名の「TK」は、「Training Kit」の略です。 前年には、アメリカ・アリゾナのMITSから世界最初のマイコンキット、Altair 8800が発売されていました。

このTK-80は、私が組み立てたものではありません。6年ほど前、秋葉原のジャンク屋さんで入手したものです。 TK-80が発売された当時、私は中学1年でしたが、すでに半田ゴテを握って電子工作はやっていたとは言え、中学生の小遣いで簡単に買えるような代物ではありませんでした。 また、仮に小遣いを貯めて買えたとしても、8万円を超える価格では失敗したときのリスクが大きすぎました。

また、当時はアマチュア無線に凝っており、小遣いは殆ど通信機やアンテナなどの投資に消えていました。そんなわけで、TK-80は店頭でただ眺めるだけだったのです。

TK-80のCPU、NEC製のμPD8080Aです。最初の「実用的な」マイクロプロセッサ、Intel 8080の互換チップ(セカンドソース:ライセンス生産品)で、 元々TK-80はこのチップを普及させるため、エンジニア向けの教育・評価用キットとして発売されました。

ただ、厳密には互換品ではなく、NEC独自の機能が追加されており、上位互換品となっています。 このため、完全互換品として後にμPD8080AFが発売され、TK-80の後継機であるTK-80Eにはこちらのチップが採用されていました。

μPD8080Aは写真のように白いシリコン・パッケージですが、μPD8080AFは通常のLSIと同じく黒いプラスチックのパッケージに変更されています。 このため、TK-80と80Eはボードを見ただけで一目で区別できます。

私が入手したTK-80のCPUには、写真では読み難いかもしれませんが、鉛筆で「7班」と記入されています。どこかの企業の研修か、 学校の実習で組み立てられたもののようです。

2048ビットのROM(EEPROM)チップ、μPD454です。ROMは最大4個、1024バイト搭載できますが、標準状態ではモニタプログラムを収めたROMが3個(768バイト)搭載されており、 右端の空いたエリアに残りの1個、最大256バイトのユーザ・プログラムを書き込んだROMを取り付けることができます。

右の写真はRAM(SRAM)チップ、μPD5101です。μPD5101は1024ビットのチップですが、標準状態ではこれが4個、512バイト分搭載されています。 最大で8個、1024バイトまでメモリを拡張することができます。

ボード上にはRAMの取り付けパターンが8箇所用意してありますが、実装する場合には2個ずつ、RAM4とRAM8、RAM3とRAM7、RAM2とRAM6・・・の順に取り付けていきます。 入手したボードは標準状態のままで、RAM3、RAM4、RAM7、RAM8の位置にチップが取り付けてあります。

TK-80のアドレス空間は、標準状態(ROM768バイト、RAM512バイト)ではROMが0000番地から02FF番地、RAMが8200番地から83FF番地までを使用するようになっています。

システムコントローラ・バスドライバのμPB8228です。 アスキー出版局から4年前に刊行された、榊正憲さんの『復活!TK-80』に紹介されているTK-80の写真では、このチップは白いセラミックパッケージになっていますが、 このボードに搭載されているのは黒いプラスチックパッケージです。

写真を見てわかるように、このボードのチップの型式は、正確にはμPB8228Cのようです。 同じTK-80でも、時期により使用されているチップに微妙に違いがあるようです。

右の写真は、クロック生成用の水晶発振子です。周波数は18.432MHz、HC18/Uタイプのクリスタルです。

TK-80のクロック周波数は2.048MHzですが、この18.432MHzで原発振させた信号を分周して2.048MHzを作り出しています。 水晶発振子のすぐ右側にあるチップが、クロック・ジェネレータ・ドライバのμPB8224です。

それにしても、メモリ最大2Kバイト(ROM+RAM)、CPUクロック2MHz・・・今のPCのスペックから考えると、まさに隔世の感があります。

ボード上には「フリーエリア」と呼ばれる領域があります。ユニバーサル基板風のエリアで、自由に部品を取り付けることができるようになっています。 マニュアルでは、CMT(データレコーダ)用インターフェイスの回路と製作法、使用法が紹介されています。

このボードにも、何かのインターフェイスを自作したと思われるICソケットが2つ取り付けてあり、裏面からボードの各箇所に配線が施されています。 しかし、チップも何もついていませんので、何の回路かまではわかりません。

入力用の16進キーパッドです。 各キーはボード上に直接取り付けられているように見えますが、力のかかる部分ですので、アルミ板製ののサブシャーシに取り付けられた上で、メインのボードに裏からネジ止めされています。 さらに、その下にはキーボード用のサブ基板が取り付けられており、メインのボードとはリード線で配線されています。

キーパッドは、0からFまでの16進数のキーと機能キー9個、計25個のキーからなる入力装置です。 このうち、『RESET』キーは暴走時などのハードウェアリセットのためのキーですが、残りはモニタプログラムを制御するためのキーで、 これらのキーを駆使してメモリ上にロードしたユーザプログラムを実行します。

任意のアドレス+『ADRS SET』でメモリ上のアドレス呼び出し、命令コードあるいはデータ+『WRITE INCR』で表示されているアドレスに命令コードやデータの書き込み、『RUN』で表示されているアドレスからプログラムを実行・・・というような使い方をします。 ちなみに、プログラムは当然ながら16進数の機械語でなければ書き込めません。いわゆるハンドアセンブル、アセンブラ言語をあらかじめ紙の上で16進コードに書き換えてから入力します。

出力は8桁の7セグメントLEDです。今の7セグメントLEDと比べると非常に古めかしいデザインのものが使われています。

ここには、入力同様、0からFまでの16進の表示しかできません。 左4桁がアドレス部、右4桁がデータ部となっており、モニタプログラム実行時にはアドレスとデータが一目でわかるようになっています。

前出の世界最初のパソコン、Altair 8800や、同時期のIMSAI 8080では、 標準装備の入出力装置は、ビット操作のための横1列のトグルスイッチと、横1列のLED(7セグメントではない)のみで、2進数での操作になります。それに比べるとTK-80の方がまだ分かりやすいかもしれません。

さて、このTK-80ですが、実は入手以来、一度も動作確認をしたことがありません。『復活!TK-80』には、附属のCD-ROMにPDF形式のTK-80のマニュアル一式が収録されていますから、 動作させるための資料はあるのですが、やはり古いものと言うこともあり、また、専用のソケットが入手できないこともあって、いまだに通電したことがありません。

ちなみに、電源は+5V(1A)と+12V(0.15A)となっています。

今のところは、東急ハンズで専用のアクリルケース(\3,000くらいかかった記憶があります。納期は1週間くらいだったかな?)を特注して収めてあり、展示専用のオブジェと化しています。(笑)

参考文献: 榊正憲氏 「復活!TK-80」 アスキー出版局 2000年

(2004年7月19日記)



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