中波送信機 |
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2004年7月製作
【使用真空管】 6BE6、6AV6
【寸法】 幅100mm、高さ110mm、奥行200mm
(突起物含まず)
【材質】 アルミシャーシ(ケースなし)
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中波送信機、というと大げさですが、要は中波帯のAMワイヤレスマイクです。
子供の頃(というと昭和40年代ですが)、電子工作を始めたばかりの頃に買った本に、誠文堂新光社の『初歩の製作技術』という本があります。 初歩のラジオの別冊として出ていた、『初歩の・・・』シリーズの一冊で、このシリーズには他に『初歩のラジオ技術』『初歩のトランジスタ技術』『初歩のアマチュア無線製作読本』などがありました。
『初歩の製作技術』は、ラジオというよりエレクトロニクス工作全般の記事構成になっており、どちらかと言うと、真空管よりもトランジスタを使用した製作記事のほうに重点が置かれています。 ただ、トランジスタといっても、殆どは昔のCANパッケージのゲルマニウム・トランジスタを使用した製作記事ばかりなので、今となっては真空管よりも部品の入手が困難かもしれません。
この本の中で、何故かAMのワイヤレスマイクだけは真空管を使用した記事が3例も掲載されており、それぞれ6BE6+6AV6の2球トランス式、12AU7の単球トランス式、12AU7の単球トランスレスとなっています。 この中から、かつてのラジオ少年の無線ごっこでは定番だった、6BE6と6AV6を使用したワイヤレスマイクを再現してみました。
この記事の執筆者は野川清三郎氏で、回路は、『実用真空管ハンドブック』の6BE6の項目に掲載されているものとほぼ同じです。 記事の原題は『2球ワイヤレス・プレーヤーの製作』となっており、マイクだけでなくレコードプレーヤやテープレコーダをつないで、DJを楽しもう・・・という趣旨でミキシングのやり方なども説明されています。
今回は、私としては珍しく、最初に部品をすべて集めてから作り始めました。 いつもは、必要なものをちょこちょこ買ってきては少しずつ作る・・・ということが多いのですが、最近は女房が「毎週毎週秋葉原ばかり行ってッ」とお冠ぎみなので、今回は1回で必要なパーツをすべて集めてしまいました。 製作記事には便利な部品一覧表もついていることですし。
製作記事ではバリコンのシャフトに直接つまみを付けていますが、見た目をよくするために(笑)フロントパネルとバーニヤダイヤルを取り付けました。 ボールドライブ機構は製造中止でもう手に入らないようですが、バーニヤダイヤルは是非とも残しておいてもらいたいものです。 できれば、昔あった中波帯の目盛付きのものも再生産して欲しいのですが・・・無理でしょうね。
シャーシもフニャフニャなので三角板で補強しています。ただ、高さが結構ありますので上2cmほどをカットしました。
並四コイルはミズホ通信の復刻版を使いました。 バリコンは、随分昔にストックしてあったアルプスの単連バリコンC613Aです。 2.5mHのRFCは、昔ながらの40mAのものをラジオデパート1Fのアイコー電子2号店で売っていました。 ここは、Webサイトで見ると、エアバリコンやボールドライブ機構なども扱っているようです。
並四トランスは、ラジオセンター1Fの東栄変成器で、今でも定番商品となっています。 こうして部品を集めてみると、バリコン以外は今の秋葉原でも比較的容易に集められる部品ばかりなんですね。
肝心の真空管はクラシックコンポーネンツで、NECの元箱(黄箱)入りのものを買ってきました。 この真空管のうち、6BE6の方にはNECから出荷された当時の検査票が入っていました。 日付は昭和40(1965)年9月24日・・・もう40年近く昔です。
検印は大屋さんと言う方になっています。この方も、もう引退されているでしょうが、まさかこの真空管が40年も経ってから使われるようになるとは思わなかったでしょう。
さて、実際の組み立てですが、部品点数が少ないので、シャーシの加工が終われば8割方完成したようなものです。 真空管ソケットの取り付け穴は、昔買ったシャーシパンチで簡単に開けられますが、それ以外のサイズの穴はリーマでせっせと穴を拡げなければなりません。 今回、手持ちのリーマが最大14mmまでのものだったので、ヒューズホルダを取り付ける15mmの穴あけのために、最大20mmのリーマを仕事場に近い東急ハンズで買ってきました。
・・・が、あまり使い勝手がよくありません。 聞いたことのないメーカの製品だったのですが、穴が綺麗に開かず、周囲がガタガタになります。 ヒューズホルダを取り付けてしまえば見えないので、さして問題はないのですが、ハンズも最近は工具の種類は少なくなったし、 置いてあるものも品質が今ひとつだし(その割りにはSnap Onなどの値段が馬鹿みたいに高い輸入ブランド物はしっかり揃えていますが)、困ったものです。 最近ではDIYの店というより単なる雑貨店みたいになっていますので、仕方がないといえば仕方がないのですが。 電子工作に限らず、自分の手でものづくりをやること自体、今の世の中では少数派になってしまっていることの証でしょうか。
アンテナは、製作記事どおりに作ってみました。ロッドアンテナの基部に、陸軍ターミナルのノブのプラスチック部分を割って、 中のネジだけにしたものをハンダ付けする・・・とありますので、 内田ラジオ隣の菊池無線電機で買ってきた、 120cmのロッドアンテナで試してみました。
ロッドアンテナも、シルバーメッキの下は真鍮材なので、ハンダ付けは簡単にできます。 ただ、見てくれが良くないので、白の熱収縮チューブをかぶせました。
完成後のシャーシ内部の様子です。手に入った0.01μFのオイルコンが、耐圧1000Vのものだったので、少々大きすぎるようですね。 平滑用のケミコンも耐圧500Vなので、ちょっとオーバースペック気味です。
また、パイロットランプに使ったネオン管は、わざわざ抵抗なしのものを買ってきて抵抗を外付けしてあります(笑)。
右の写真は、シャーシ上部のバリコンとコイルの部分です。 バリコンの取り付けは、写真ではちょっとわかりませんが、バリコンの前面を35mm×55mmのアルミの小板にビス3個で固定し、その小板をL字金具でシャーシに取り付けてあります。
並四コイルも、こうして見ると緑色のエナメル線で作って欲しいところですね。 ミズホ通信のWEBサイトには、緑色のエナメル線仕様の並四コイルの写真が掲載されていますので、ロットによってはこのカラーのものもあるのでしょうか。
前面のパネルには、バーニヤダイヤルの100分比目盛と実際の周波数との換算表を貼り付けました。 Illustratorでデザインしたものを、インクジェットプリンタ用のアルミ粘着シートに印刷し、透明フィルムでコーティングしてあります。
この表も、実測値ではなく、コイルとバリコンの仕様から計算した値で作図してありますが、大きな違いはないようです。 いずれにせよ、受信機ではありませんので、単なる目安ですが。
完成後、配線チェックをした上で、PCのライン出力をつないで、実際に稼動させて見ました。 ロッドアンテナを最大に伸ばした状態で、ダイソーの100円ラジオで受信してみました。
しかし、クリアに受信できるのは距離5m程度までです。 電波法上は問題ない出力には違いないのですが、やはりFMワイヤレスマイクに比べると格段に距離が出ないようですね。 ただ、実際に使うとしたら、真空管ラジオをPCのスピーカ代わりに使うといったかなりお馬鹿な用途になりそうなので、 1mも飛べば充分と言えば充分なんですが。(笑)
ちなみに、記事の中では、野川氏が 「・・・RFCは負荷抵抗ですが、RFCの代わりにコイルとバリコンで同調を取ると出力が大きくなり、オッカナイ役所のオッサンに大目玉を食いますので・・・」と、 やらないで下さいと言いながらしっかり、出力を上げる方法を説明したりしています(笑)。
PCの出力ではなく、マイクを繋いで本来のワイヤレスマイクとしても使ってみました。 繋いだのは、秋葉原で仕入れてきたクリスタルマイクです。まだ、クリスタルマイクも現役なんですね。 中身は、クリスタルイヤホンと同じく、セラミックかなんかになっているのかもしれませんが。
でも、今これを買う人って、どういう用途で買うんでしょうか。ワイヤレスマイクなら、今はECMとかを使うのが一般的だと思うんですけどね。 クリスタルイヤホンより需要が少なそうなのに、よく生き残っていると思います。
最後に、動作中の6BE6と6AV6です。ストロボを使って撮影しているので、ヒーターのオレンジ色の点灯はあまりはっきりとはわかりません。 40年の眠りから覚めて、立派に働いてくれています。
誇らしげに、「通信機用」と刻印されている彼らにとっては、ちょっと不本意な役回りかもしませんが・・・。
参考文献: 「初歩の製作技術」 誠文堂新光社 1967年?
(2004年7月19日記)
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