途中お母さんの秋子さんが死んでしまうかもしれないってショッキングな出来事もありましたが、 これも7年前の出来事を暗示しているのかもしれませんね。 単なるゲームにしては重いテーマを含んでいるようですが、 エンディングは一転して、また幸せな4月。
はじめの予定では美坂栞をターゲットしたつもりだったのにいつの間にか真琴編でした(^^; 栞は「起きないから、奇跡って言うんですよ」ってのがキーワードのようですが、真琴編も まさしくその奇跡が起こっているのかも。 まるで人魚姫のような悲劇ですよね。
ストーリーが短めだから、台詞の繰り返しが余計に気になりました。 これはもう聞いたよってね。 だけど、ボタンでスキップしてしまうとストーリーから離れて しまいそうでちょっと心配な気もします。 序盤の名雪との登校で全く同じ会話が 繰り返されるのもちょっと辟易してくるかもしれません。
昨日はちゃんと喋らないのかと思ったら、今日は可愛い声だね。
前回は「今すぐ帰らせる」を選んで失敗しているので、昼休みまで放っておく。「分からない答えを探すために来ている」
何か食べるものを買ってきてやる。 「アイスクリームがいいです」
「日直くらい手伝ってあげてもいいのに」
栞と毎日会っていないと香里は出て来ないようです。 日直を手伝うと・・・?「栞? 私は一人っ子よ…」
昼休み外に出るとどんより曇って強い風が吹いている。
「アイスクリームのバニラ、二つお願いします」
中庭に戻って・・・見なかったことにしよう・・・。
「祐一さんっ、何事もなかったように戻らないでください」
雪の中、仕方なくアイスを一つわけて貰って頬張る。
食べないとお薬を貰えないんだよ(^^;
香里のことを聞くと不意に俯いてギュッと口を閉ざす。
「お姉ちゃんと同姓同名の人がいたんですね」
別れ際に、「あゆさんでしたよね。 あの、えっと・・・」
放課後、名雪が一語サンデーを食べるのを見ながら香里の家族のことを訪ねる。
「香里ってね…いつも明るく話すけど、時々悲しそうな顔をするんだよ…」
「祐一、…香里の力になってあげて。 わたしの代わりに、ね」
商店街に行ってゲームセンターで「モグラたたき」
「そんなこと言う人、だいっきらいです」
「うん、祐一君が悪いよ お久しぶりだねっ、栞ちゃん」
「あの…うぐぅって何ですか?」
火曜の午後、駅前での再開を約束して分かれる。
ちなみに栞の知っている場所にしても同じ展開
廊下に戻ると見知らぬ女の子がじっと見つめていた。
「あの…さっき一緒にいた女の子…美坂さんですよね」
「美坂さん…一学期の始業式に一度来ただけなんです…」
並木道にやって来た。
「運命…、確か、あゆさんがそう言っていましたよね」
「だって、あのときの祐一さんとあゆさん、面白かったですから」
林道が開け噴水のある公園に出る。
「私のお気に入りの場所です」「雪合戦だって出来ますね」
「そんなの決まってます。 デートですよ」
「私、絵を描くことが好きです」「絵を描いていると楽しいんです」
「…あ。それなら祐一さんの似顔絵描きます」
休日の無人の校舎
「…学校に、行きたいです」
「ここが私の席…、今は違いますけどね」
「1学期の始業式の日、」
「一つ前の席の女の子に、思い切って話しかけたんです」
「私も一人だから、これから友達になろうって…」
「そう…言ったのに…」
「その子…喜んでくれていたのに…」
「新しい学校で、新しい生活が始まる、その日に……私は倒れたんです」
「それっきりです」
「本当は、その日もお医者さんに止められていたんです」
「でも、どうしても叶えたかった夢があったんです」
「お姉ちゃんと同じ学校に通うこと…」
「お姉ちゃんと同じ制服を着て、そして一緒に学校に行くこと…」
「お昼ご飯を一緒に食べて、学校帰りに偶然会って、商店街で遊んで帰る…」
「生まれつき体が弱くて、ほとんど外に出ることも許されなかった、私のたった一つの夢」
「そのことを言ったら、お姉ちゃん笑ってました、安上がりな夢だって…」
「でもそんな些細な夢さえ、私は叶えることが出来なかったんです」
「…祐一さん。 私、だめです」
「祐一さんの気持ちに、応えることは出来ないです…」
栞の代わりに香里が現れる。
「…栞って誰…」「…あたしに妹なんて居ないわ」
「…相沢君は知らないと思うけど…」
「この場所って今はこんなに寂れているけれど…」
「雪が溶けて、そして暖かくなったら…もっとたくさんの生徒で賑わうのよ」
「休み時間にお弁当を広げるには最高の場所…」
「この街は、悲しいことが多かったから…」
「暖かくなったら、この場所で一緒にお弁当を食べるって約束したこと…」
「そして、そんな些細な楽しみをあの子が楽しみにしていたこと…」
「全部、悲しい思い出」
「…ちょうど2週間ね」「…妹のこと」
「相沢君、あたしに言ったよね…あの子のこと、好きだって」
「今でも?」「…そう」
「あの子、生まれつきからだが弱いのよ」
「あの子、楽しみにしてたのよ…」
「あたしと一緒に、あたしと同じ学校に通って…」
「そして、一緒にお昼ご飯を食べる…」
「そんな、本当に些細なことを…あの子は、ずっと切望していたの」
「あと1週間で、あの子の誕生日」
「次の誕生日まで生きられないだろうと言われた、あの子の誕生日」
「でも、最近は体調も少しだけ持ち直していた」
「だから、次の誕生日は越えられるかもしれない…」
「でも、それだけ」
「何も変わらないのよ。 あの子が、もうすぐ消えてなくなるという事実は」
「しってるわ」
「去年のクリスマスの日に、あたしが栞に教えたのよ」
「あの子、あなたのこと好きだから」
「あたし、あの子のこと見ないようにしてた…」
「日に日に弱っていくあの子を、これ以上見ていたくなかった…」
「居なくなるって…もうすぐあたしの前から居なくなるんだって、分かってるから…」
「普通に接する事なんて出来なかった…」
「だから…あの子のこと避けて…」
「妹なんか最初から居なかったらって…」
「こんなに辛いのなら…最初から…」
「最初から居なかったら、こんなに悲しい思いをすることもなかったのに…」
「…相沢君」「あの子、何のために生まれてきたの…」
一人、栞との思い出の場所を歩く。 公園で栞と出会う。
「ここは、夜の方が綺麗ですよね」
「…噴水、こんな時間でもちゃんと動いているんですね」
「こんなに綺麗なんですから、見ていたいじゃないですか…、…ずっと、ずっと」
「祐一さんには、謝らなければいけないことがたくさんあります」
「そして、感謝しなければいけないことも、たくさん、たくさん…」
「寒いですね」
「アイスクリームは好きです」
「でも、この季節に食べるものではないです」
「もっと暖かくなってから、食べたかったですよね…」
「祐一さん、ごめんなさい」
「私、祐一さんに嘘付いてました」
「本当は、もっともっと、重い病気…」
「たくさんのお薬を飲んで、もっとたくさんの注射をしても治らない病気…」
「そして…お医者さんには次のお誕生日を迎えることは出来ないって…」
「…言われてて…」
「病名…ですか?」「えっと…覚えてないです」
「何か難しい名前だったことは覚えていますけど」
「だって…病名が分かっても…どうにもならないことに違いはないですから」
「だから…」「名前なんて、そんなの意味ないです」
「もうひとつ、謝らないと…」
「私、祐一さんのこと、好きです」
「たぶん、他の誰よりも祐一さんのことが好きです」
「本当は、誰も好きになったらいけなかったんです」
「誰にも心を開いてはいけなかったんです」
「辛くなるだけだって…」「分かっていたから…」
「でも、ダメでした」
「どんなに迷惑がられても、私は祐一さんのことが好きです」
「…本当は、こんなこと言っても…何の意味もないのに…」
「悲しくなるだけだって、分かってるのに…」
「私…馬鹿だから…」
「…お姉ちゃんに嫌われるくらい…馬鹿だから…」
「ごめんなさい、祐一さん…」
「また嘘ついてしまいました」
「…それだけが、どうしても祐一さんに謝りたかったんです」
「ドラマだと、… ありがち…ですけど…キスシーンです… 」
「祐一さん、一つだけ約束してください」
「私のことを、普通の女の子として扱ってください」
「学校に通って、みんなと一緒にお昼を食べて…」
「好きな人と商店街を歩いて…」
「お休みの日は遠くまで出かけて…」
「夜遅くなるまで遊んで、お父さんとお母さんに怒られて…」
「でも、お姉ちゃんがかばってくれて…」
「私は戻ることが出来るんです」
「楽しかった、あの頃に…」
「元気だった、ただその日その日を精一杯生きていた、あの頃に」
「でも、一週間だけです」
「1週間後の2月1日…私は、祐一さんの前からいなくなります」
「それ以上の時間は、私にとっても、祐一さんにとっても、悲しい思い出を増やすだけですから…」
「ですから、1週間です」
「私の誕生日に、私は、普通の女の子であることを捨てます」
「そのあとは、お医者さんの言いつけ通り、病院のベッドで静かに時を刻みます」
「祐一さんとの思い出を、何度も何度も繰り返しながら…」
「…それでも、本当に私を受け入れてもらえますか?」
「本当に、私のことを、普通の女の子として……笑って話しかけてくれますか?」
「…なぁ、明日学校サボらないか?」
「どうしたんですか? 急に…」
「学校サボって、朝からずっと一緒にいよう」
「……」
放課後、商店街の百花屋に入る。
「私は、このジャンボミックスパフェデラックスをお願いします」
香里と名雪が店に入ってくる。
「きゃっ!」 「…祐一さん」「…祐一さん、苦しいです」「…祐一さん、恥ずかしいです」
朝。
白く光る粉雪が舞い落ちる街で、
約束の時間よりも早く着いた俺を、白い帽子を被った少女が遅いと言って笑っていた。
昼。
吹き荒ぶ木枯らしにコートの襟を合わせる人の行き交う街で、
お腹をすかせた二人がお互いの顔を見合わせながら、どちらからともなく笑い合っていた。
夕暮れ。
帰路を急ぐ大勢の人が、たった一つの色に染まる街で、
大きな流れに逆らうように、手を繋いだ二人が赤い雪に影法師を落としていた。
そして、夜。
「見てください祐一さん、息がこんなに白いですよ」
「…手、繋ぎませんか?」
「…一週間前のこと…後悔していませんか?」
「あの夜のこと…私、覚えています…」
「もしかしたら、これが奇跡だったのかもしれませんね…」
「お誕生日おめでとう」
そしてエンディングへ
違う世界へと踏み込んでしまったのではないか。俺はそう思った。
ここを通ってきたはずなのに、そこはもう俺の知る場所ではないような錯覚に捕らわれた。
顔を上げたその先に、幻想的な光景があったからだ。
非現実的、というほうが近かっただろうか。
でも、俺には、その少女の不自然な存在が、その場に違和感のないものとして映った。
でも日常的ではない。それを幻想的だと形容したのだ。
少女は夜の校舎に立っていた。
一振の剣を携えて。
「…私は魔物を討つ者だから」
夜の学校で:コンビニおにぎりを差入れ。
舞が気づいてくれるまで待つ / 一人で逃げ出す
舞の剣の先から、白い布を被った真琴がふらふらと出てくる。
「ねぇ、祐一…、こいつ…アブナイわ…」
夜の学校で:「…最近よくざわめくの」
夜の学校で:魔物はいっぱい居るが、いつかは退治できるらしい。
舞と一緒にいることを決心。
夜の学校で:牛丼を差入れ。 常に剣を握っていては食べられない(^^;
そして、奴らが襲ってくる。
牛丼を置いて逃げる / 牛丼を持って逃げる
もって逃げると、結局中身をぶち撒いてしまうが、
置いていくことで半分は無事に残る
昼休み、いつもの場所に向かうと・・・
ちなみに昼食をすっぽかしても夜には会えるようです。
夜の学校で:巻き寿司を差入れ。
「イエスのときは、はちみつクマさん。 ノーのときは、ぽんぽこタヌキさんって言うんだ」
胸を触ってみる / 馬鹿なことを考えないで帰る
胸に触れる直前に舞の剣の切っ先が祐一の喉に突き刺さる。
普通なら悩むはずもない選択肢ですがつい、誘惑に負けてしまいました(^^;
取りあえず日曜日に会えたら良いことにして先に進みますが、
こんな事したら、舞ちゃんじゃなくても嫌われちゃうですよね。
夜の学校で:モンブランを差入れ。
ケーキが喉に詰まるが、紅茶は手から滑り落ち、しゃっくりを始める舞。
そこへ不穏な音! 今日は苦戦だよ〜。
俺、邪魔してるよな / もっとがんばれよ
「…そうかもしれない。 …でも、嫌じゃないから」
夜の学校で:黄金色の納豆ご飯を差入れ。
舞が剣を置いた瞬間、やつは現れた! 剣は弾かれて舞は割り箸を持って構える。
納豆ご飯を捨て、剣を拾いに走る / 納豆ご飯を持って逃げる
必死のコンビネーションで魔物を手負いにし、舞の頭からきらきらと光のヴェールが神秘的に輝く。
納豆の糸まみれ・・・ほぇ〜〜っ!
舞踏会会場にもやつは現れた。
じゃ、場所を変えよう / 佐祐理さんを捜そう
「いや…佐祐理と落ち合わない方がいい」「魔物は祐一に…」
非常口を目前に大きな何かが飛んで床に打ち付けられる。 佐祐理だ!
舞は抜き身の剣を構え会場を破壊していく。
廊下で謎の女が絡んでくる。
「ねぇ、あれってどういうことなの」「どうして、倉田さんが生徒会に懐柔されたの」
「久瀬が外でデモンストレーションやってる」「どんな暴挙を振る舞うか分からないわよっ」
佐祐理さんは反体制の象徴として扱われているらしい。
「佐祐理の父親は議員をやっていて、それを理由に佐祐理は半ば強引に生徒会に入れられた」
「そういう親を持つ生徒を身近に置くことは、学園側にとっては有意義なことだと聞いた」
夜の学校で:久しぶりの差入れはお煎餅。
「祐一…、…そばにいて欲しい」「祐一が居ると…、…囮になる」
訊くか、そういうこと? / ずばり「好き」だ
夜の学校で:夜食と共に共に戦う決意を持ち込んだ。
舞に代わって打って出る / 剣を拾いに走る
「やったのか?」「俺も囮を立派に果たせたってもんだな」
「…手負いだったの、…だから、祐一は無事でいられた」
「残り4体」
昼休み、佐祐理は風邪で早退、舞が一人で待っていた。
学食で食べる / 保健室で寝る
いずれにしろ学食で牛丼を食い、佐祐理と舞の馴れ初めを聞く。
放課後中庭で木刀の素振り。 正面からバケツが飛んでくる。 そして第二段のたらい!
夜の学校で:携帯食。 時間潰しのしりとりが続かない。
魔物の挟撃を受ける。 右 / 左
「…二体を手負いと出来た」
あゆとの別れ
夜の学校で:携帯食とバナナ。 一匹の手負いの魔物を舞が切り裂く。
トレーニング中に佐由理が登場
いれてやる / 舞に訊く
どちらを選んでも舞の厳しい入部試験と「…邪魔」という一言で佐祐理は戻っていく。
「祐一は佐祐理の左手のことを知ってるの」「…手首に深い傷の跡があるの」
「私のそばにいるから、傷ついてゆく…」
夜の学校で:今日は現れない。
佐祐理がオオアリクイのぬいぐるみを見つける。
「絶対大丈夫です。 舞もこの子も喜んでくれます」
夜の学校で:コンビニ前の軽トラックで石焼き芋を買う。 「おならするなよ」
俺はくだらないことを思いついた / じっとしていよう
おならの音を出してみると、舞は10Mほど離れたところから、白い目で俺を見る。
様子を見てくる / 舞に訊いてみる
トイレの水を止めに行くと、祐一が魔物にやられてしまうが、
舞の言うとおりにしていると、2体のうち1体をしとめ、膝枕をゲット!
夜の学校で:古い剣を舞から受け取る。 片刃の日本刀だ。
残る魔物は3体。 今日中にやっつける!
攻撃 / よける
勢いに任せて地を蹴る / 走り抜ける
剣を掲げる / 床を転がる
舞が左腕と両足をやられている。 屋上に上って奴の来るのを待つ。
舞が飛び降りざまに斬りつけるが、逃げられてしまう。
舞の剣を受け取り、指示されたとおり中庭に駆け下りる。
斬りつける / 剣の背で受ける
中庭にでたところで、舞が飛び降りてくる! 全ての魔物を倒し牛丼を買いに行く祐一。
帰ってくると舞はいない。 そうだ、もう一体残っているはずだった。
こめかみに衝撃を受けよろめく。 細長い廊下があぜ道に見えてくる。
目の前には子供がいるのだ。
幼い女の子だ。
手負いだ。
片から血を流している。 背中までばっくりいっているのかもしれない。
過去にまで彼女の刃は届いたのだろうか。
「あ…」
俺は彼女を知っている…。
その女の子は確かに見覚えがある。
でも、どうして彼女が傷ついているのだ。
そんな陰惨な過去など知らない。
彼女がそんな深手を負っていたことなどなかった。
なかったはずだ。
少女は、長い時を隔て、今俺の目の前に現れ、そして何を伝えようとしているのだろう。
俺が探している人と、何か関係があるのだろうか。
待て…意識が混濁してきた…
誰かが俺に何かを訴えている。
それが分かる。
だかその手段はあまりに強引だ。
俺の手には負えない。
つまり、その受け取るすべが俺の方にないのだ。
それは俺を傷付ける。 人を傷つける。
鉄パイプを耳の穴に通すようなことはやめてくれ。
そんなものは通らないのだ!
がんっ!と激しく頭をぶつけたかと思えば、俺は冷たい壁に半身を預けていた。
「……」
瀕死のようだった、少女の虚ろな目だけが脳裏に焼き付いて、離れない。
だが、そのおかげで、俺は一つの疑問の回答を思い当たっていた。
俺を置いて、舞が一人でいってしまった理由だ。
それは…
俺に知られてはいけない結果を求めている。
それしかない。
思い出してみればいい。
奴らを倒してゆくと共に、舞はその四肢の自由を奪われていった。
そのことを舞も気づいていたのだ。
だから、最後に訪れる結果も知っていた。
最後の一体を倒したとき、自らも共に絶命するという結末を。
だから最後の一体は止めを刺さず、手負いのまま見逃したのだ。 俺に嘘をついてまで。
少女の陰鬱な死のイメージは、そのまま舞の末路に直結していたのだ。
いや、イメージだけではない。
もっと根拠を持って、彼女はその場にいたはずだ。
祐一…祐一…!
また声が聞こえる。
やめてくれ。 もう俺のそばに来ないでくれ。
頭が痛いんだよ…。
どうでもいいが、天井だけが見える。 どうしてだ?
いつの間に寝てるんだよ、俺は…
ジンジンと耳の辺りが痛む。
…祐一!
(わかってる。 もうやめてくれ。 後は一人でやる。)
俺は舞を追うことはしなかった。
手負いのコイツがそばにいる限りは、舞も無事なのだ。
それは少女。 ずっと昔に会っていた少女だ。
束の間の時を、あの場所で過ごした。
(そうか…この校舎は新校舎…)
(そしてあの日の、あの場所は、旧校舎を背負っていたんだな)
俺は肘を床につき、上体を起こす。
間接の節々が軋むように痛んだが、動けないほどではなかった。
立ち上がると、俺は冷たい壁に体重を預けながらに歩き始めた。
場所なら見当がつく。
旧校舎の向こうに落ちる夕日の角度が思い出せる。
俺はこの子を連れて、帰るのだ。あの時と場所に。
そこはいつだって、こいつらが帰りたくてやまなかった場所なのだ。
俺はもどかしいほどに言うことを聞かない体に鞭を打って、歩いてゆく。
……。
俺は一つの教室の前に立ち、そのドアを迷いもなく開け放つ。
……。
笑い声がした。
小さな女の子の。
そう。十年前のあの麦畑に少女はいたのだ。
「あ…」
と少女は声を上げた。
声を上げたかったのはこっちの方だ。
だって、その麦畑の中には何も見えなかったからだ。
そこから『あ…』なんて声が聞こえたら、びっくりするのはこっちに決まってる。
「あのさ…」
少女は麦の中から立ち上がると、こっちに向いて声をかけた。
「…遊びにきたの、ここに?」
恐る恐る、といった感じで少女は訊いた。
「いや、違うよ。 迷ったんだ」
「この辺りは、まだよく知らないんだ」
「でも、こんな麦畑があったなんて、驚いたよ」
「…どこからきたの?」
「さぁ…向こうのほうかな」
よくわからない方向を指してみた。
「合っているかどうか、わからないや」
「じゃあさ…」
「うん?」
「遊ぼうよ」
「どうして?」
「遊んでるうちに思い出すよ、きっと…」
「そうかなぁ…」
「そうだよ、きっと…」
「じゃあ、そうするかぁ…」
「うんっ」
再び少女の顔がぱっと和らいだ。
その日以来、ぼくは彼女とよく遊ぶようになった。
夕日の町中を歩いていると、いつしかその場所に辿り着いていたのだ。
麦畑は、広大な遊び場だった。
しゃがめばその姿を隠せたし、走れば麦の海を泳いでいるような心地よさがえられた。
少女はよく笑い、よく走った。
「他に友達はいないの?」
麦を倒して、寝転がっているときに訊いた。
「うん…あたしは普通じゃないから」
最初はその意味がわからなかった。
どう見ても彼女は普通だったし、普通の人以上に人なつっこく、こんなところで一人でいる理由がさっぱり理解できなかったのだ。
しかし後にその理由は、彼女の口から語られることになる。
「あたしには不思議な力があるの」
少女は、もっと幼い時は違う町に住んでいたらしい。
その時に一度だけ出演したテレビ番組が放映された直後、その町を去ることになったのだという。
その内容がどんなものだったかまでは訊けなかった。
でも、その少女の口調からも、その番組が彼女をどんな扱いにしていたか想像がついた。
当時の超能力を持てはやすような風潮に影を落とさせる、食いものにするような内容のものだったのだ。
魔女狩りの魔女としてかり出されたのが、彼女だった。
しかし、この土地にやってきても何も変わらなかった。
周囲からの奇異の目と畏怖の念を背負い続けなければならなかった。
だから、少女は町の子供たちが集まるような場所を避け、人知れずこんな場所で一人きりで遊んでいたのだ。
ただ僕だけは町の人と同じような目では見なかった。
実際、その力を目の当たりにしてもだ。
ただ、へぇ、と思っただけだった。
怖いのとは違う。 ただ、不思議だ、とそれだけだった。
「それは祐一君だからだよ」
それを口にして言うと、彼女は嬉しそうに答えた。
「ぼくが特別ってこと?」
「あたしにとってはね」
彼女が膝を曲げ、くるりと回転して立ち上がると駆けてゆく。
その追いかけっこの合図に、ぼくも飛び上がって後を追った。
麦の背が高くなってくると、少女の姿が埋もれてよく見えないことがあった。
彼女は背が低かったからだ。
追いかけっこにしても、隠れん坊にしても、それは不公平だったので、僕は彼女にハンディを付けることにした。
「おいで」
「……?」
「ほらっ」
ちょこちょこと近づいてきた少女の頭に、かぱっ、とカチューシャの飾り物をはめ込んだ。
大きな、ウサギの耳が垂れ下がる飾り物だ。
この間の縁日で手に入れたものだ。
「…ウサギさん?」
「そう。 ウサギは好きだった?」
「うん、好き…」
「動物は全部好きだけど…ウサギさんが一番大好き」
「そう、よかった。 これで僕と同じくらいの背丈だ」
「逃げてみて」
少女がばたばたと走ってゆくと、滑稽なほど絶妙に、その耳だけが麦の上に揺れて見えた。
「オッケーだ。 これで勝敗の差が縮まるよ」
でも実際は勝敗の差なんて全然縮まらなかった。
もとより彼女の方が運動神経がよかったからだ。
何よりそんなことは関係なく、少女はその耳をいたく気に入ったようで、いつだってそれを付けるようになった。
それはそれで僕にとっても嬉しいことだった。
自分のプレゼントにしては、よく似合っていたからだ。
「ねぇ…」
ごろりと転がると、空を僕たちの形に切り取って見ることができた。
後はそびえる麦の壁だ。 僕たちだけの秘密基地に思えて、こうして二人居るのが僕は好きだった。
誰が脇のあぜ道を通りかかろうが、僕たちは発見できない。 だから、二人きりで話をするにはぴったりだ。
「あたし…自分の力、好きになれるかもしれない」
少女が告げた。
「そう、それは良かった。 自分を好きになることはいいことだよ」
「祐一といたらね…」
「会って少しのぼくをそんなに信用されても困るけど…」
「どうしてだかわかんないけど、そう思うよ…」
「ふぅん」
結局その少女と遊べたのは夏休みの間の、二週間ばかりのことだった。
休みの間だけ、避暑地に遊びに来ていただけで、休みが終われば、こんな場所まで一人では遠出して来れなくなる。
最後の日も、彼女は僕があげたウサギの耳を付けたままだった。
「さようなら」
僕は言った。
「さようなら」
彼女は無表情で言った。
生暖かな風が吹くと、背のいよいよ高まった麦と一緒にウサギの耳が揺れていた。
結局その女の子とはそれっきりだった。
ただ、一つ覚えているのは会わなくなった翌日の夕方、電話があったことだ。
宿泊先の電話番号を教えた覚えもなかったのに、それは確かに彼女だった。
背の低い彼女が背伸びをしながら電話に貼りついている格好が目に浮かんだ。
「ねぇ、助けて欲しいのっ」
「どうしたのさ」
「…魔物がくるのっ」
「魔物?」
「いつもの遊び場所にっ…」
「だから守らなくちゃっ…ふたりで守ろうよっ」
「あたしたちの遊び場で、もう遊べなくなるよっ」
「昨日は言えなかったけど、今から実家に帰るんだ」
「だから、またいつか遊ぼうよ」
「ウソじゃないよっ…ほんとだよっ」
「魔物なんてどこにもいないよ」
「本当に来るんだよっ…あたし一人じゃ守れないよっ…」
「一緒に守ってよっ…ふたりの遊び場所だよっ…」
「待ってるからっ…ふたりで戦ってるからっ…」
それが本当の最後だった。
その後、少女がどうしたのかは知らない。
ただ、もし、その嘘が現実となることを願う少女がいて、
その時より始まった一人きりの戦いがあるというのなら、
そこには最初から魔物なんてものは存在せず、
ただ一つの嘘のために十年分の笑顔を代償に失い、
そして自分の力を、忌まわしき力を拒絶することを求めた少女が立ちつくすだけなのかもしれない。
一瞬の、ほんの数日の出会いから。
「……」
「……」
そして、今、出会ったときと同じようにして、舞はそこにいた。
「やめろ…舞っ」
聞こえているはずだ 俺の姿が見えているはずだ。
この校舎で出会ったときと同じ…彼女の目は俺を見ていない。
だが、今なら彼女の見ているものがわかる。
俺の後ろでおびえる、傷ついた少女。
それは彼女自身があの日に放った、力の一つだ。
その、とぎれとぎれの息の音も今の俺には聞こえる。
力は今でも舞の肉体と繋がっているから、この弱々しい呼吸はそのまま舞の心の鼓動となるはずだ。
彼女の最後に残した生命は、自らの心の臓に違いなかったから。
「……」
舞の手の中で柄が回り、剣が握り直される。
そして、体重を傾け、踏み込んだ。
自分の力と決別するために。
「舞っ!」
駆け出すその寸前で俺がその体を抱き留めていた。
もう何度もこうして受け止めてきた体だ。
堅固な鎧を着て、柔ら内面をひた隠しにしている。
「…祐一、邪魔」
「舞……」
「魔物なんてどこにもいない。 最初からどこにもいなかったんだ」
「お前が生み出していたんだ。 お前の力なんだよ」
「終わりだ、舞」
「終わったんだよ、お前の戦いは」
「お前は、あの時の遊び場所…」
「ずっとこの場所を守っていたんだな…」
「十年という長い時だ…」
「ずっと一人きりで戦ってきたんだな…」
名雪から貰ったウサギの耳を舞にかぶせる。
そしてエピローグは三人の生活・・・?
祐一の願い? そして舞の、佐祐理の・・・
第1の願い事「ボクのこと忘れないでください」
第2の願い事「今日だけ、一緒の学校に通いたい… この場所を二人だけの学校にして…」
第3の、そして最後の願い事「未来の自分… もしかしたらほかの誰かのために…送ってあげたいんだよ」
……。 夢。 ……。 夢を見ていた。 ……。 それは昔の夢…。 7年前の夢…。 あゆと出会って…。 そして思い出に深い悲しみを刻み込んだ日の夢…。 閉ざしていた記憶…。 忘れていた風景が、今、そこにあった…。 「…あゆのやつ、きっと怒ってるだろうな。」 ため息をつきながら、それでも全速力で町の中を走る。 家を出るときに時間を確認したが、すでに走って間に合うような時刻でもなかった。 「…遅刻、ってことになるのかな」 あゆとの約束の場所。 『それなら、明日の朝は、学校で待っているよ』 二人だけの場所。 そこは、二人だけの学校でもあった。 偶然、この街で出会った。 そして些細なきっかけで、毎日あの夕焼けのベンチで会うことになった。 あゆと会うことが、話をすることが、俺にとって本当にかけがえのない時間だった。 そして、あゆの笑顔が何よりも嬉しかった。 でも…。 そんな時間も、今日で終わる。 俺にとってこの街は、雪の舞う間だけの、つかの間の思い出でしかないから。 俺の住む街は遠くにあるから。 だから、少しでもたくさんの思い出を、残しておきたかった。 あゆとの思い出。 あゆの笑顔。 少しでも、長い時間…。目の前に、細い道があった。 周りを木々に囲まれた、寂しい場所。 雪を積もらせた木々が、森を形作る。 「……」 約束の場所…。 この奥に、あゆがいる…。 きっと、頬を膨らませて、拗ねた表情で待っている。 そして俺の姿を見つけると、非難するように、それでも笑顔を覗かせながら… 「祐一君、遅刻だよっ」 …と。 そして、いつもの他愛のない、そして、かけがえのない時間が流れる。 「…これも、渡さないと」 今日の日のために、小遣いを貯めて買った、あゆへのプレゼント。 その赤いリボンの包みを確認する。 商店街で、何時間もかけて選んだ…。 あゆだったらきっと似合うと思って最後に決めたプレゼントが、綺麗に包装されて、俺の手元にあった。 あゆは、喜んでくれるだろうか? いつもの笑顔を覗かせてくれるだろうか? そんな不安と期待の中で、俺は森の中に一歩を踏み出す。 靴底に、雪の感触を感じながら…。 最後まで、あゆの笑顔を見ていられると…。 その時の俺は、ずっと信じていた。 すぐ目の前に、深い悲しみが待っているなんて、考えもしなかった。 真っ赤に染まった、雪を見るまでは…。 「祐一君、遅刻だよっ」 あゆの拗ねたような声は、空から聞こえてきた。 森の開けた場所の、その中心にある、大きな木。 その枝の上に、あゆの姿があった。 いつものように、ちょこんと枝に座って、街の風景を眺めていた。 だけど…。 その時、風が吹いた。 木々を揺らす、強い風だった。 ただ、それだけだった。 「祐一く…」 その瞬間、全ての時間が凍りついていた。 風の音は聞こえなくなり、耳鳴りのするような静寂が辺りを包む。 背景は全てモノクロに変わって、白い雪がより一層白く見えた。 コマ送りのビデオのように、あゆの小さな体が舞っていた。 まるで、地面に向かって降り注ぐ、一粒の雪のように…。 そして、雪が地面に辿り着く。 ごとっ…。 音がした。 まるで重たい石を地面に落としたときのような、低くて鈍い音。 それは、雪ではなかった。 地面に横たわるものは、少女の体。 枝に積もっていた雪が、はらはらと少女の上に舞い落ちる。 少女は動かない。 少女は眠っていた。 雪を枕にするように、仰向けに、手足を投げ出して眠っていた。 ついさっきまであれだけ元気だったのに、今は穏やかに眠っている。 木霊のように響いていた少女の声も、今は聞こえない。 耳鳴りのするような静寂の中で、あゆが雪のベッドで眠っている。 ただ、それだけ。 赤い、雪の上で。 夕焼けに染まる雲のように、 真っ白だった雪が、赤に変わる…。 赤。 白黒だったはずの風景が、赤一色に染まっていく…。 その時。 俺は、耳鳴りの中で、微かな声を聞いた。 少女の声。 苦しそうな声。 俺を呼ぶ声。 その瞬間、凍った時間が動き出した。 「あゆっ!」 雪を蹴って、横たわる少女の元に駆け寄る。 足にまとわりつく不快な雪を払いのけて、少しでも早く、あゆの元へ。 「…祐一…くん…」 今度ははっきりと、その声を聞くことができた。 赤い雪の上で、微動だにしない少女。 その体を、抱き起こす。 「…祐一…君…」 涙混じりのような、聞き取りにくい声。 それこそ、まるで安らかな寝言のように…。 あゆの体が、微かに動く。 「喋るな! 今、病院に連れて行ってやるから!」 「痛いよ…すごく…」 「分かったから、だから喋るな!」 「あはは…落ちちゃったよ…」 苦しそうに呟いたあゆの表情は、笑顔だった。 「ボク…木登り得意だったのに…」 少女の閉じた瞳に、うっすらと涙が浮かんでいた。 「でもね、今は全然痛くないよ…」 白から赤へ。 雪の絨毯が染まっていく…。 「ボク…どうなるのかな…」 「痛くないんだったら、絶対に大丈夫だ!」 「…うん…」 頷くように、まつげが微かに揺れる。 「…あれ…」 「…あはは…」 「…体…動かないよ…」 「俺が、連れて行ってやるから!」 「だから、動かなくたっていいから!」 「…でも…動けないと…遊べないね…」 湧き出る水のように、伏せたまつげの先から透明な涙がにじみ出ていた。 「…祐一君…」 「…また…ボクと遊んでくれる…?」 「……」 返事をしたいのに、頷きたいのに、どうしても言葉が出てこない。 喉の奥に何かが詰まったように…。 たった一言が、どうしても出てこなかった。 だから、俺はあゆの小さな手を握った。 昨日と同じ、柔らかくて温かな手は、力無く垂れ下がっていた。 「…嬉しいよ…」 また、まつげが微かに揺れる。 「…約束…してくれる…?」 握った手に、力を込める。 「…だったら、指切り…」 そう言って、いつものように笑っていた。 「…えっと…」 その笑顔が、微かに歪む。 「あはは…手が動かないよ…」 「動かないと、指切りできないね…」 「ボク…馬鹿だよね…」 滲んだ涙が、ゆっくりと頬を伝う。 俺は、強引なくらい、あゆの手を握りしめて、 そして、小さな小指に自分の指を絡ませる。 「ほら、これで指切りだ…」 「ちゃんと…指切りしたぞ、あゆ…」 「…約束だから…」 「うん…」 「…約束、だよ」 それが精一杯のように、あゆが笑顔を覗かせる。 「あとは、一緒に指を切るだけだ…」 「……」 「ほら、どうしたんだ…」 「……」 「指切らないと、指切りにならないだろ…」 「……」 「切るんだよ、指を…」 「……」 「一緒に…切らないと…」 「……」 「…指切りに…ならない…」 「……」 「…あゆ…?」 あゆの手を握ったまま…。 俺の、あゆを呼ぶ声だけが、何度も何度も木霊のように響いていた…。 だけど、少女は動かなくて…。 もう、俺の名前を呼んでくれることもなくて…。 ずっと、ずっと…。 俺は、あゆの指を離すことができなかった。 雪の上にぽつんと取り残されたプレゼントの包み。 渡せなかったプレゼント…。 そして、それが俺の初恋だったことに気づく。 だけど、気づいたときには、もう、決して叶えることのできない思いだった。 俺は、ただ…。 赤い雪の上で、泣くことしかできなかった…。
「なぁ、あゆ」 「うん?」 「ほら、これ見てみろ」 「…なにこれ? プレゼントみたいな包みだね」 「みたい、じゃない。 間違えなくプレゼントだ」 「あ、そうなんだ。 誰のプレゼント?」 「別に…誰のってわけでもないんだけど」 「ふーん…」 「でも、もしよかったらお前にやる」 「え? ボクが貰っていいの? ホントに?」 「どうせ女物だから、俺が持っていても仕方がないしな」 「ホントにホントにボクが貰ってもいいんだよね?」 「要らないのなら、捨てる」 「全然要らなくないよ。すっごく嬉しいよ」 「だったら、大人しく受け取れ」 「ね? 開けてもいいの?」 「お前にあげたんだから、好きにしてくれ」 「うんっ」 「……」 「あっ…これってカチューシャだよね?」 「まあな」 「わっ、ありがとう、祐一君っ」 「これでも高かったんだからな」 「うんっ、そうだよねっ。あとで返せって言われても返さないからねっ」 「俺だって、返すって言われても受け取らないからな」 「そうだっ! 今度祐一君に会うときは、これつけて行くね」 「ああ、約束だぞ」 「うんっ、約束」 それは、幻だった…。 一人の男の子が、初恋の女の子にプレゼントを渡して…。 女の子が満面の笑みで受け取るという…。 そんな、悲しい幻…。 だけど、その時の俺は、現実より幻を選んだ。 悲しい現実を心の奥に押し込めて、安らいでいることのできる幻を受け入れた。 弱い心が潰れないように…。 思い出を傷つけないために…。
最後の願い事「…ボクのこと、忘れてください…」