脅迫 |
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」 帝国の研究施設にこの世のものとは思えない悲鳴が響いた。 「先生っ!しっかりして下さいっ!」 ドロゥムは目に涙を浮かべながら叫んだ。 そこには兵士に支えられ苦痛に身をよじるフンショウの姿があった。 「お前たち、解読作業をする気になったかな?」 卑屈な笑みを浮かべるエノキンの手には1本の小瓶が握られていた。 「卑怯なっっっ!!」 アレル・ギンは拳を震わせた。 「ひっひっひ、安心するがいい、この毒は致死性のものではないからな」 エノキンは手にした小瓶をウットリと目を細めながら見た。 「ぐうぅぅうあああぁぁぁぁっ」 その横でフンショウは悶絶し続ける。 「死ぬことは無いが、その苦しみは死よりも辛いであろうな。」 エノキンは冷たい視線をアレル・ギンに向けた。 「・・・わかった、解読はしよう・・・・だから先生を助けてくれ。」 アレル・ギンはガックリと肩を落とした。 「よろしい、これが毒消しじゃ、だが効き目は1日だけじゃ、解読を止めれば明日の毒消しは無いと思え。」 そう言うとエノキンは部下に命じ、一粒の丸薬をフンショウに飲ませた。 薬が効いたのか、フンショウはピクリとも動かなくなった。 「先生っっっ」 気を失ったフンショウに二人が駆け寄った。 「心配無い、気を失っただけだ、お前たちは解読作業を続けるように。」 フンショウを支えていた兵士が二人に言った。 「ふひゃひゃひゃひゃ、では頼んだぞ。」 そう言い残すとエノキンは兵士をつれて部屋から出て行き、部屋の外から鍵をかける音がすると足音が遠ざかっていった。 「・・・・しかたがない・・・・先生のためだ・・・・・」 アレル・ギンは憎悪の視線をエノキンが出て行ったドアに向けた。 一方、満足げな笑みを浮かべながら通路を歩いていたエノキンに密偵の1人が声をかけた。 「エノキン様、これからいかがなされますか?」 「うむ、儂はこれから大王様に報告を入れてくる、やつらが破片の解読を始めました、とな。」 「破片・・・ですな。」 ニヤリと笑い顔を見合わせるエノキンと密偵。 その時、後列にいた1人の兵士の視線が一瞬だけ厳しくなった。 無論、その兵士が変装したマッシュであることに誰も気付いてはいなかった。 そして兵士たちを下がらせると、エノキンは大王の居室へと足を運んだ。 |