エミールの決意 |
そのころ、エミールたちはまだトーキョー遺跡に滞在していた。 この巨大な遺跡の見取り図を作成していたのである。 遺跡内部をくまなく歩き、残された古代技術の痕跡を目の当たりにするたびにエミールは心の中にある考えが次第に大きくなってゆくのを感じていた。 そして見取り図もほぼ完成しようという頃、エミールは思いきって決断をくだした。 「みんな聞いてくれ、俺はこのAOJIRUを破壊しようと思う。」 突然の発言に一向はエミールの顔を見た。 「どうしたんだ?急に、力が欲しいって言ってたじゃねぇか。」 「ああ、確かに力は欲しい、だがAOJIRUの力は大き過ぎるんだ、このままでは古代人の二の舞いだよ。」 ニンの言葉にエミールは首を振って答え、その言葉にアトピーは無言で頷いた。 「確かにAOJIRUを使えば帝国軍にも勝てるかもしれない、だがそのために関係の無い人たちも巻き添えを喰うかもしれないだろう? それにもしAOJIRUが帝国の手に落ちたらどうなる?」 「うーむ・・・・」 ニンには返す言葉が見つからなかった。 「自然を歪めてしまうほどの力は存在してはいけないんだ、だから破壊する。」 エミールはキッパリと言い放った。 「決まりですね、それでは破壊方法を探しに行きましょう。」 そう言うとアトピーは立ち上がった。 「その前に、まだ何か役に立つ物があるかもしれないぜ。」 ニンの言葉に一行は頷くと再び室内を調査を始めた。 そして机の中から1枚の金属プレートを発見した。 それには「全てを御するもの」の文字と古代人の絵が刻印されており、古代人の胸の部分に四角い窪みが刻まれていた。 「あぁっ!」 それを見たロイドが突然大声をあげた。 「何だよロイド、突然ビックリするじゃねぇか。」 ニンの文句を他所にロイドは言葉を続けた。 「アトピーさん、さっきの部屋の絵ですよ。」 そう言うとロイドは写しとった絵を広げた。 「そうか、胸の印しはこのプレートを胸の凹みにはめろと言う事か。」 「きっとそうです、行ってやってみましょう。」 ロイドはまだ興奮が収まらないようだった。 「そうだな、あの部屋に戻ってやってみよう。」 エミールたち5人は古代人の愛犬タロを連れて石碑の部屋へ戻って来た。 「いいか?始めるぞ。」 そう言うとエミールは起動キーを絵の人物の胸の部分にセットした。 唸るような音がかすかに高くなり、微かな振動を感じたその時、天井から機械的な声が響いた。 「起動きーヲ確認シマシタ、安全機構A-0081作動、制御きーガ不完全デス、全テヲソロエテクダサイ、起動命令解除。」 「なんてこった、これだけじゃ作動しないのか・・・・」 エミールは愕然となった。 「凹みはあと五ケ所ありますからねぇ。」 ロイドは肩をすくめた。 「それならばキーとやらを揃えるまで隠しておくしか無いでしょう、エミール、これはあなたが持っていて下さい。」 そう言うとアトピーは起動キーを外し、エミールに手渡した。 「そうだな、できれば帝国のヤツらより先に制御キーを手に入れて破壊できればいいのだが。」 エミールの言葉に一向は頷いた。 「それじゃあ早速その制御キーとやらを探しに行こうぜ。」 こうしてエミールたち5人と古代人の愛犬タロは、かつてトーキョーと呼ばれた遺跡を後にするのだった。 |