kinokologo2.pngのあらすじ(笑)


休暇

ベニテング部隊の迅速さの秘密は、その情報伝達の早さにあった。
自然を利用したゲリラ戦を得意としたベニテングは、以前から鳥類の帰巣本能に着目しており部下に研究を命じ、鳥類の中でも特に知能が高く従順で帰巣本能の強いと言われているカカリ鳥を情報伝達に用いていたのである。
高い環境適応能力を持ち、広範囲に渡って棲息しているカカリ鳥は街中でも頻繁に見る事が出来て目立たない、また以外と知られていない事だが、カカリ鳥には優れた個体識別能力があり、飼主を見分ける事が出来るのである。
そんなカカリ鳥をベニテング部隊は早くから作戦行動に取り入れていたのである。
そして、帝国軍が遠征の準備真っ盛りの丁度その頃、ブルーシャトーの村ではベニテングが情報を待っていた。
「隊長!来ました。」
情報通信担当の部下トリ・ユーフが一枚の紙片を持って飛び込んで来た。
「ユーフか、今度は何処からだ?」
「帝都です、マッシュからの連絡です。」
ユーフはそう言うとベニテングに紙片を差し出した。
「ほう、帝都で何か動きがあったか。」
ベニテングはそう言うと紙片を受け取り、目を通した。
「これでほぼ状況は出そろったと言うわけだな・・・」
そう呟くとベニテングは暫しの間考えこんだ、そしてふいに顔をあげるとユーフに問いかけた。
「今動かせる班はどれだけ残っている?」
「はい、ニセック・ロバーツの班、ハマッシとハルーシのメジ兄弟の班、ヤマウ・ルーシーの班が待機中です。」
「そうか、では返信だ、リークス班はそのままカーニリベに留まり遺跡の調査、エミールたちを発見次第追跡して動向を報告せよとな、マッシュはそのまま帝都でエノキンの監視、必要ならば増援を送ると、その他の班は現在の任務を続行せよ、以上だ。」
「はっ、了解しました。」
命令を確認し、出て行こうとするユーフをベニテングは呼び止めた。
「それからな、メジ兄弟にここへ来るよう伝えてくれ。」
「メジ兄弟ですか、何かやっかい事でもあったのですか?」
ユーフの表情が一瞬厳しくなった。
「なに、大王のいつもの病気だよ、今度は隣の大陸に遠征だそうだ。」
ベニテングは苦笑しながら答えた。
「隣の大陸ですか、こりゃまた難儀な事で、ではメジ兄弟を呼んでまいります。」
ユーフは笑いを堪えるような表情を見せるとベニテングの部屋を出ていった。
そしてユーフが出て行って暫く後、二人の男がベニテングの部屋にやって来た。
「お呼びですか、隊長。」
「なんかどえらいやっかい事があったとか、帝国が潰れでもしましたか?」
メジ兄弟の言葉にベニテングは思わず頭を抱えた。
「ユーフの奴、お前等にどんな説明をしたんだ・・・・」
「俺たちゃ何かすんげぇやっかい事が起こったってしか聞いてませんぜ、なぁハルーシよ。」
「つーかよ兄貴、俺たちにお呼びがかかるって事はやっかい事しかねーじゃんよ。」
その言葉通り、様々な分野で傑出した特技を有するベニテング部隊の中に置いて、彼等の特技はサバイバル、すなわち生き残る事であった、そして彼等はどのような過酷な条件下でも100%の生還率を誇っていた。
「あーわかったわかった、今からちゃんと説明するからよく聞け、お前等の班に長期休暇を命じる。」
「き、休暇ですかぁ。」
ベニテングの意外な言葉にハマッシとハルーシは毒気を抜かれ互いの顔を見合わせた。
「ち、ちょっと隊長、その休暇を命じるってのは何なんですか、休暇を与えるってんなら分かりますが。」
「別に間違ってはおらんぞ、お前等は私の立てた予定の通りに休暇を実行するのだからな。」
「はぁ・・・」
完全に毒気を抜かれて神妙な顔つきになったメジ兄弟にベニテングはニヤリと笑うと休暇の予定を話し始めた。
「まずお前達にはプロミスに向かってもらう、そこで暫く静養するがいい、滞在期間は大王とその本隊が到着するまでだ、その後は大王の本隊と共に北上しハークロクロを目指してもらう、その先はカーモカキーコを抜けて隣の大陸へ向かう、そこからは自由行動だ、お前達の判断で行動してくれ、おそらくエノキンの手の者も同行するだろうが接触はするな、奴等の行動を妨げてはならんぞ、やむおえぬ場合は事故を装おうなどして本隊に気付かれぬよう始末しろ、よいな、それから休暇の期間は大王の本隊がプロミスまで戻った時点、あるいは遠征隊が不慮の事故等で全滅するまでとする、休暇期間が終了したら直ちに帰還しろ。」
最初はあっけにとられていたメジ兄弟もベニテングの話が終わる頃には、いつもの不敵な表情に戻っていた。
「こりゃあまさに長期休暇じゃないですか、で、出発は何時ですかぃ?」
ハマッシはニヤリと笑うとベニテングに尋ねた。
「明日だ、装備の足りない分はプロミスで揃えればいいだろう、では思う存分楽しんでこい。」
「でも隊長、土産は期待しないで下さいよ、隣の大陸じゃ何が名物なのか俺たち知らねぇんですから。」
そう言うとハマッシは立ち上がりドアに手をかけた、後についていたハルーシはドアの前で振り返りベニテングに言った。
「隊長、俺たちこの休暇が終わったら本当に休暇を申請しますぜ。」
「ああ、無事帰ってこれたらな。」
口ではそう言いながらもベニテングは彼等が間違い無く無事に帰還する事を確信していた。


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