歴史を見守る者 |
去って行く遠征隊の姿を見送りながら、キロサトール・ミーロは呟いた。 「それでもなお進まれるか・・・・」 遠征隊が地平の影に姿を消した頃、自分の家に戻り暖炉の前の椅子に腰をおろし大きく息をついた。 そして家の中を見回すと再び独り言を呟いた。 「こちらのお客様も行ってしまわれたか・・・なんとも忙しい方たちだ。」 大王に昔話を語っている間にずっと感じられた気配もいつの間にか消え失せていた。 数本の薪を暖炉にくべ暫くの間、炎を見つめていたキロサトール・ミーロは、そのまま目を閉じると瞑想に沈んでいった。 |
古来からの言い伝えでは常に勝者が正義であった、だが後の世で必ずしもそれが正義であったと評された訳ではない。 己が正義と信ずる行いとて他者から見れば悪行と映る事もあろう。 それでも人は歩みを止めず同じ過ちを繰返す、歴史もまた然り。 古の民の行いは人にとっては正義であったかもしれぬ、しかしその古の民も滅んだ。 自然の摂理に逆らい増え過ぎた古の民を淘汰する方法は戦へと向かう道しか残されておらなんだ。 大いなる意志に背く者は淘汰もまたやむなしと言う事か。 |
何か予感めいたものがあったのだろうか、キロサトール・ミーロは大きなため息とともに瞑想を中断し呟いた。 「やがて大きく歴史は動くであろう、だかあえて語ることはするまいて、・・・何が正しく、何が正しく無いかは後の歴史が示してくれるだろうから・・・・」 |