kinokologo2.pngのあらすじ(笑)


知られざる宴

「班長、見つけましたぜ、全部で8個、どれも大型のやつばかりです。」
ハマッシの下に部下の一人が報告に現れた。
「そうか、それだけあれば十分だな、日が高いうちに厳重に密閉して奴らをよぉーく餓えさせておけ。」
ニヤリと笑うハマッシに部下は頷いて出て行った。
「どうやらワンナビーは見つかったようだな、兄貴。」
それと入れ違いにグリーンペペ部隊の同行を探っていたハルーシが姿を見せハマッシに話しかけた。
「ああ、大型の巣が8個だそうだ、で、奴らの動きの方はどうだ?」
「ほぅ、8個か、こいっぁ豪勢な宴会になりそうだな、奴らは相変わらずさ、遠征隊が調査済みの区域に潜んでるよ。」
そう言いながらハルーシは手製の地図を広げた。
湖を中心に東岸には神殿、南岸には湖岸に沿って神殿まで続く集落跡、そしてその対岸には鬱蒼とした森が広がっていた。
「奴らは今この辺りに居る。」
そう言ってハルーシが指し示したのは意外にも神殿から僅かの距離にある森だった。
「意外に近いな、だがそれだけにやり易いってもんだ。」
ハマッシはニヤリと笑うとハルーシの言葉を待った。
「遠征隊の連中はまだ神殿の近辺しか調査をしていない、つまり潜伏する場所は自ずと限られるわけさ、それに奴らはミドリダマシが自生している場所を選んでいるからな。」
「なるほど、木を隠すには森にってわけか、で? 手ごろな場所はあったのか?」
「ああ、奴らが潜伏している場所の背後に地下水脈と思われる洞窟を見つけた、使えるかどうかは今調べさせてるとこだ。」
「うむ、うまいこと袋小路になってりゃ好都合なんだがな。」
「ここが使えりゃ後はエサだけだな、どうする? 兄貴。」
ここでハマッシは考え込んだ。
確かに問題は誘い出す為のエサである。
仮にもベニテング部隊に匹敵する実力を持つ部隊が相手なのだから当然一筋縄ではいかないだろう。
いくら弱点を知っているとは言えまともに相対するのは危険が大きい。
「さて、どうしたものかな。」
ハマッシが思案にくれていると部下の一人が駆け込んで来た。
「班長、奴らが拠点を動かしました。」
「何だとっ、何があったんだ。」
先程までグリーンペペ部隊の様子をうかがっていたハルーシは耳を疑った、彼らは現在の場所に落ち着く様子を見せており、それを見届けたうえで報告に戻ったからである。
「はい、どうやら遠征隊が偵察要員を増やしたようで、奴らの潜んでいる場所にも再び調査が入る事になったようです。」
「で、奴らの動きはどうなっている?」
「奴らは偵察隊の動きに合わせて逐一場所を移動しています。」
「くそっ、これじゃ最初っからやり直しだ。」
部下の報告にハルーシは苛立ちを隠せなかった。
その時、それまで考えあぐねていたハマッシが突然口を開いた。
「偵察隊の動きに合わせて移動していると言ったな?」
「は? はい。」
「どのような配置でどのように動いているか分かるか?」
「はい、奴らは本隊を中心に数名を離れた場所に配置して偵察隊の接近を警戒しております、偵察隊の方はどうやら区画を区切って調査をしているようなので接近されるたびに一区画分移動しております。」
そこまで聞くとハマッシはニヤリと笑って言った。
「どうせミドリダマシの自生している場所なんだろう、サバイバルの基本に戻ろうじゃねぇかハルーシ、その場にあって利用出来るものは何でも利用するってな。」
「そりゃどう言う意味だ、兄貴。」
ハルーシはハマッシの意図が読み切れなかった。
「今オレたちが着ている服は何だ?」
「そりゃあ帝国軍の制服だろ・・・・・あっ!」
「そう言う事さ、オレたちが偵察隊に紛れ込んで誘導してやりゃいいのさ。」
「なるほど、そりゃいい、後は例の洞窟が使えるかどうかだな。」
と、その時、また一人の部下が駆け込んで来た。
「副長、バッチリですぜあの洞窟、縦穴部分が長いうえに滑り易い、ロープでも無きゃまず登れませんぜ、それにそんなに広くないし行き止まりになってますから最高の宴会場になりますぜ。」
その報告を聞いてハルーシはニヤリと笑った。
「これで材料は揃ったな、兄貴。 それじゃ本腰入れて接待の準備をするか。」
「あぁ、それじゃハルーシたちは洞窟の方を頼む、オレの方はちょっとばかし偵察隊の方にエサを撒いておくからよ。」
「よっしゃ、バッチリ仕上げてやっからよ、そっちは兄貴に任せたぜ。」
そう言い残すとハルーシは部下を連れて出ていった。
「さてと、それじゃこっちも準備にかかるか、おい、予備の制服を一着用意してくれ、それからミドリダマシの葉を少々とな。」
ハマッシは部下にそう命じると意味ありげに笑った。


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