kinokologo2.pngのあらすじ(笑)


手かがりを求めて

「だいたいは昼間に話した通りなんだがね、ヤーコブのやつが巧妙だったのはその準備が入念に時間をかけていたという事だったのさ。 アタシがそれに気付いたのはヤーコブの企みが完成した後だったって訳だよ。」
ダンドーリは悔しそうに言葉を切った。
「どうやら昼間の話しほど単純じゃなさそうですね。」
アトピーの言葉に頷くとダンドーリは話を続けた。
「元々この街にゃ地元の山や畑でとれる物くらいしか無かったからね、足りない物は他所から運んで来るってのは当たり前だったんだよ、でもヤーコブはこの街に有る物でも他所で安く買い叩いてわざわざ運んで来て相場よりも安く売り始めたのさ。」
「でも買う方の立場とすれば同じ物が安く買えるってのは有り難い話だろうな。」
「そりゃあそうでしょうエミール、でも逆を言えば地元の品が売れなくなる、つまり地元の生産者にとっては打撃ですよ。」
「アトピーさんの言う通りだよ、おかげで地元の農家たちは物が売れなくて生活に困るようになっちまったんだ、売れなきゃ生活出来ない、かと言って値段を下げたら採算がとれない、そうやって生産者を散々追い詰めてからウマイ話をもちかけたのさ。」
「ウマイ話し、と言いますと?」
「アトピーさん、アンタ物が売れないで困っている時に初対面のやつに私が買います、って言われたらどうするね?」
ダンドーリの問いかけにアトピーは暫しの間考え込んだ。
「んー、普通なら出来過ぎた話は信用しませんけど追い詰められた人なら話に乗ってしまうでしょうね。」
「普通はそうだろう、でもヤーコブはもっと巧妙だったんだよ。」
ダンドーリは意味ありげに言うと表情を曇らせた。
「なぁマスターよぉ、オレにも解るように説明してくんねぇかなぁ、ややこしいのは苦手なんだけどよぉ。」
「ああスマンね、じゃあかいつまんで話をするよ。」
ダンドーリはすまなそうに頭を掻きながら話を続けた。
「やつはね、生産者に自分の商品はこの街では売れない、と言うイメージを植え付けるために値段を下げるよう持ちかけたんだよ、そうする事によって自分が黒幕だとは気付かれ難くなるしね。 案の定、みんなは生活のため言われるままに値段を下げていったのさ、それでもヤーコブはこの値段じゃ売れないからもっと下げろと言ったんただよ、そして限界まで来た時にもうこれ以上はうちでは買い取れないと通告してきたのさ。」
「そいつぁひでぇな、なんて奴だ。」
ようやく内容を理解出来たニンが悪態をついた。
「ちょっとまってくれよマスター、じゃあ誰が地元の商品を買い占めたんだ?」
エミールは昼間に聞いたダンドーリの話しと今の話の食い違いに戸惑った。
「そこなんだよ、アタシもそのおかげで気付いた時には手遅れになっちまってたのさ、ヤーコブには仲間がいたんだ、やつは地元の商品に見切りをつけるフリをして、その裏で仲間に買い占めさせてたのさ、そうすれば自分の店に地元の商品が無くても説明はつくからね、しかも安く買い叩けるし。 実際のとこ皆はその手に引っ掛かっちまって奴の仲間に言い値で買い叩かれているんだよ、今でもね。」
そこまで説明するとダンドーリはため息をついた。
「はぁ、手がこんでますねぇ、仲間がいるのではちょっとやっかいですねぇ。」
そう言うとアトピーは何事か考え始めた。
重苦しい沈黙の中、ロイドがポツリと言った。
「買い占めた品は一体どこへ持って行ってるんですかね? 少なくともこの街じゃ売れないですよね。」
ロイドの何気ない言葉にアトピーはハッとなって顔をあげた。
「そ、それですよロイド、いい処に気付いてくれました、商品の流れを追ってみれば糸口が掴めるかもしれません。 すみませんがロイドとニンは両隣りの街に行って様子を探って来てくれませんか? 3日もあれば十分でしょう、私とエミールは顔が知られているかもしれませんから、別な方面から探りをいれてみますよ、ガタシュー親方にも頼みたい事がありますし。」
「ん?何でまた親方に?」
アトピーの言葉にニンは意外そうに首を捻った。
「ええ、親方なら地元の猟師たちに顔が利きそうですからね、ヤーコブのからくりが私の想像通りなら我々のこの干し肉が決め手になりますよ、たぶんね。」
そう言うとアトピーは意味ありげに笑った。
「まぁいいや、こっちは隣街を調べてくりゃいいんだな。」
「ええ、詳しい話は明日出発前にしましょう、二人には申し訳ないですがここを夜明けころに発って下さい、それからマスターにもやってもらう事がありますのでお願いしますよ。」
「アタシに出来る事なら何でも言っとくれ、ここまでしてもらって黙って見てるだけってのも申し訳ないからさ。」
ダンドーリはアトピーの言葉に力強く答えた。
「それじゃあ明日は早いからそろそろ寝ようか、明日からは忙しくなりそうだからな。」
エミールの言葉に一行は頷くと各々の寝床に潜り込んだ。
「それじゃあ灯りを消すよ、ミンナおやすみ。」
「マスターも良い夢を、おやすみ。」
ダンドーリがランプの灯を消すと間もなくあちこちから寝息が聞こえてきた。
一行は久し振りのベッドの感触を確かめる間もなく深い眠りにおちていった。


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