第八話「こりが調布の大王なのね・・もしかしての巻」 1999年8月7日03:00 日本 関越自動車道練馬 |
ゼンソン号は時計仕掛けのように幹線道路の流れに飛び出した。 関越の入り口に近くなると心なしか車の量が増える。 湿気が多いのだろうか霧が立ちこめ視界が悪かった。 まだ濡れている路面を蹴るようにしてゼンソン号は谷原の交差点を越えると、ようやく関越自動道に入った。 と、その時後部座席からなにやら苦しそうなうめき声が聞こえてきた。 headsがとぎれとぎれにいうには、先程立ち寄った「花月」のラ〜メンに当たったらしい、 とゆ〜か体調も良くないうえの食べ過ぎとゆ〜噂である。 あっちゃんの気づかう声に気丈に応えるheads。 事は一刻を争う緊急事態であった。深夜過ぎの関越はことのはか走りやすかった。 所沢を越えたあたりでS.A.が見えてきた。 三芳S.A.に滑り込むと皆早くも疲れた顔をしてトイレやら、コ〜ヒ〜を買い求めに出てきた。 幸いなことにheadsのおなかは無事だったようだ。 三時過ぎなので当然、売店などやっておらず、S.Aはちらほらと長旅の家族連れがいるだけで閑散としていた。 コ〜ヒ〜の香りを楽しむように、始まったばかりの旅に思いを馳せた。 ほどなくしてheadsがもどってくる。まださすがにすぐに元気にはなれないようだった。 生暖かい風が吹き始め、真っ暗な夜空を見上げると今にも一雨来そうな雲行きだった。 運転席側で鍵を取りだしている団長の所へミケくんが話しかける 「そろそろ運転代ろうか?マスター」 一瞬団長の顔に迷いがはしった。(ミケくんに運転さすと、何か起きる)そう団長の顔は云っていた。 なんだかんだで、仕事終えるやいなやゼンソン号を取りに行きここまで来るのに結構疲れていたのだった。 「そ・・そうですね、お願いできますか?済みません」そういうと団長はミケくんの差し出した手にキーを落とした。 さっそく運転席に乗り込みミケくんは、エンジンをかけると再びゼンソン号が鋭く雄叫びをあげた。 すべてのドアが閉まるのを確認するやいなや、ゼンソン号は関越本線への滑走路に飛び込んだ。 その際、チョット大きくハンドルが周り、Rが思ったよりデカくなってしまったのだ。 あつこがすかさず叫ぶ「怖いよぉ〜」 初めてミケくんの運転テクニックを見せつけられる運命を背負ったMBX, heads, あつこはおろか、 いい加減慣れているハズの団長さえも目をつぶってシ〜トのグリップを掴んでいる白くなった手が目に入る。 それを見たミケくんが「うむ〜〜思ったよりスゴいパゥア〜だなさしがゼンソン号。お剃るべしっっっっっ」 引きつっていて誰も笑わなかった。 本線が横に来たときに右のサイドを確認してミケくんは一気にアクセルを踏んだ。ゴバァ〜〜〜〜ん 再びあつこがビビり声をあげる。「うわぁ〜(/。\)」轟音のなかミケくんがそれに答える。 「バカ野郎っっっ!合流は気合いだっっっっ覚えておけ」グングン加速して一気に本流に踊り込むゼンソン号 もう誰も彼らを止めるコトはできないのだっった。 本道にでて5分もしないうちに霧のせいかすぐさま視界が悪くなり対向車のライトも滲んでいた。 間もなく、一瞬にして不気味な轟音ともに大粒の雨がゼンソン号を包んだ。 屋根に大音響で降り注ぐ「雨音は初犯の取り調べ」のような激しさだった。 車内は突然のハプニングで大騒ぎだった。 「やはし、なにかアルんだおね〜カニカニ団の能登OFFはっっっ」 「マジでスゲぇ〜〜」headsの声が、やけに遠く聞こえる。 なにしろスゴい豪雨で10m位しか先が見えないのだ。 時速100Kmで走って急にそれだから恐ろしい話だった。 「こりが調布の大王なのね・・もしかして」 半分寝てた団長も座り直して口を開いた 「マジで落としたがいいっすよ」 それに応えるようにしてミケくんはアクセルを戻した、戻した、まだだめだ、戻した。 結局、安全な速度といったら20Km位しか出せないのだった。 手探り状態でノロノロ進むことを余儀なくされた。 この通り豪雨が、今回の旅行のスケジュ〜ルを大幅に狂わせる二番目のツマづきだった。 |