第二十話「そゆやヤロ〜、個人で首領やってんだおね」 1999年8月7日10:00 日本 九殿浜 |
氷見市から5分ほど走ると海沿いの道に出た。海は遠くまで視界が開け、穏やかで不思議なほど凪いでいた。 車からの視線が低いせいで、海の色までは確かめられなかったが、外はうだるような暑さに違いない・・・ ここら辺から先は海沿いに趣のある集落が続いていった。 昔懐かしい『ハイア〜スの看板』やワケのワカらん薬の宣伝の潮風に錆びた看板が道路脇のそこかしこの古い船小屋に貼り付いていた。 今にも崩れ落ちそうな銅色の船小屋は厳しい冬の凍てつくような寒さを想像させた。 MBXが感動の雄たけびを揚げると、噎せるようにカメラのシャッタ〜を切っていた。 なんど来ても感動を禁じえないとはこのことだろう。海鳥だちが青空に高く舞い踊ってるのが見える。 窓を少し開けてみると、すぐさま潮のなんとも言えない香りが鼻孔をくすぐる。 道は海岸線に添って右へ左へと畝っており、運転に気を使うので景色を楽しんでる余裕が無いのが残念だった。 何回目かのセンタ〜ラインオ〜バ〜ランのあと、湾の入り江に集落が見えてきた。 漁船が所狭しと並べられており、波に従い不規則に揺れていた。 ふと、道路の先に目をやるとデカい鳥が平然とエラそ〜に止まっていた。 「なにあの鳥、ヨユ〜こきやがって、鷲かぁ〜」ミケくんは見逃さなかった。 「どれどれ?本当だデカいなぁ〜」ミケくんの指さす先を見てMBXが唸った。 「さしがにカッコイイ〜なぁ、鷲ってばぁ」ミケくんは勝手に鷲と決めて話を進めていた。 「カナかな団の紋章みたい、首領も連れてくればよかったね」headsが笑っていった。 「そゆやヤロ〜、個人で首領やってんだおね」話がズレて行く気配だった。 「カッコイイ〜ですねぇ〜鷲かぁ、近くで見るとスゴいやぁ」団長がタメ息をもらすように感心している。 次第に近づいて行くゼンソン号には目もくれないで鷲は休んでいた。 鳥の傍らを通り過ぎようとしたときにMBXがいった。 「鷲じゃないですよ、トンビですねぇ」 「(^_^;)ゞだはははは、トンビかぁ、ど〜りでマヌケだと思った。も〜団長ったら」 ミケくんは何気に人のせいにしようとしていた。 「ヒデ〜っっ、ミケくんが鷲だって勝手に決めつけたんじゃないですかぁ、あの鳥に無断で」 「わははは」 笑い声がさっきの鳥に聞こえただろうか、振り返ると鳥はすでに翔び立っていた。 風に煽られて、砂浜に干してある網がスロ〜モ〜ションではためいていた。 道路脇の堤の上でうたた寝をしている老人、かけ落ちた船小屋のすき間から打ち寄せる波頭が見えた。 ここだけ随分とゆっくりと時間が流れているような気がした。 海岸をなぞるように先を急ぐゼンソン号はどこかしら場違いな感じだった。 |