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第二十一話「右や左のガソリン注入口様」
1999年8月7日10:00 日本 七尾その一
カニカニ団が新宿で待ちあわせしてからすでに9時間(MBXだけみなし10時間)が経とうとしていた。
のどかな海岸通りから左に入り次第に傾斜がきつくなってきた。
見上げると能登の険しい山々が眼前に迫ってくる。
坂道に差しかかるとゼンソン号のギアが跳ね上がり険しい音色に変わった。
緑深い山道を曲がりくねると七尾に入る最後のトンネルが見えてきた。
ひんやりとした古い、何だか出そうなトンネルを抜けると、峠の脇から一望に七尾市街を見下ろせた。
「七尾だぁ」思わずハンドルを握っていた団長が叫び声をあげる。
七尾を初めて訪れる団員たちも、これが噂に聞いた謎の都市かと正体見たさに押すな押すなの盛り上がりであった。
去年は、団長が嗚咽をこらえ切れなかった感動のシーンであったのだが・・・
団長が思わず「変わってないですねぇ〜」・・・あたりまえであった。
伝説の街七尾を目の当たりにすると今回もやはり全員の胸に幾許かの思いが込み上げてくる。
するすると滑るように市街地に降りてきたゼンソン号、ふとガスメーターを見るとずいぶんと減ってきている。
咽が乾いたということもあって、Maroたちとの感動の再開を果たす前に一休み入れるコトにしたのだった。
市街に入る寸前のところで団長は用心深くウインカ〜を出すと、ガスステ〜ションにゼンソン号を乗り入れた。
店員にガスの注入口はどっちだ?と聞かれて、相変わらず要領を得ないで彷徨うカニカニ団。
決まって右だ左だと大騒ぎになる。
毎回スタンドにくると、これの繰り返しであった。
右か左かの2つしか無いわけなんだから、来年は是非覚えてから出発したいモンだ。
咽を潤しゼンソン号を満タンにして、関西組の皆の待つMaro邸に向かった。
「Maroさんちに直接いっていいんでしたっけ?Maroさんちって知ってます?誰か」団長が
無言で首を振るミケくんの表情は、知ってるワケねぇ〜べよ。と云っていた。
「申し訳けないんですけど、Maroさんちに架けてもらえます?番号入ってますから」
もうそろそろだとスタンバっていたのだろう、Maroはすぐに電話に出た。
去年数々の思い出のあるフィッシャ〜マンズワ〜フで待ち合わせたがよかろうということになって、
一路、港へと向かうことになった。そこでMaroとYayoiが待ってるというのだった。
去年何度も迷っているので、幸か不幸かことのほか七尾の市街地の地理には詳しくなっていた。
ほどなくして、港への案内板を発見してフィッシャ〜マンズワ〜フの早くも込み合った駐車場に乗り入れた。
「ミナサ〜ン、到着しましたぁ」団長がそういうと、団員達の表情に安堵の色が広がった。
能登半島の中ほどに位置する七尾市は北の国とはいえ、車外に一歩でるとむっとするような熱気が襲ってきた。
すぐ前には陽炎を通して、賑わいを見せている港に隣接したみやげもの食品&レストラン街である
フィッシャ〜マンズワ〜フの巨大な姿が聳えていた。
眩いばかりの強い日差しを避けるようにして団員達はヨロヨロとその建物に向かった。
その巨大なフィッシャ〜マンズワ〜フの半分くらいもある大男が右手を高く挙げてこちらを見ていた。
一年ぶりの再会であった。みるみる懐かしさが込み上げてくる。
「二階の客と目が合う男」と云われる伝説のカメラマン、Maroその人であった。


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