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第三十三話「おおっっSakaさん、それ現場監督ぅ♪」
1999年8月7日16:30 日本 珠洲 ヘミングウェイ海岸其の参
まだ太陽は、これでもかとばかりに降り注ぎ白い砂浜に乱反射してキラキラしていた。
遠目に松の防砂林が南国を思わせるシュロやソテツに見えるから不思議だった。
先に飛び出した三人も二の足を踏んでチョコチョコとその場で跳びはねている。
テラスハウス前は大勢の海水浴客で今年一番の大賑わいを見せていた。
「うがぁーメチャクチャ熱いっっす(j_j)」MBXの目に涙が浮かんでいた。
今年初めて砂に踏み出すと足下から感激と焦げるような熱さが上ってきた。
真っ青に済んだヘミングウェイの海はどこか現実離れして、その場で足が竦んだのは砂浜が熱かったからだけじゃない。
抜けるような青空と融けあって、それは目の前いっぱいに広がっていた。
寄せる波の音とともに吹き寄せる潮風が心地よかった。
皆で肩を組ながらエイサホイサと波打ち際にむかうのだが、悲鳴があちこちで上がる。
他の海水浴客がビニールシートやマットを広げ、日光浴をしている脇を悲鳴を上げながらカニカニ団が擦り抜けていく。
少しずつ少しづつ波打ち際が近づいてきた。次第に地球が本当に丸いのが実感できてきた。
「今年も来たぞーぉおおおお」そのまま一気に渚に躍り込んだ。
だれ一人として柔軟体操なんかしてるヤツはいない。
心臓が止まったら止まったでいいっっっ!!(・・・チョト嫌だケド)、そんな興奮状態であった。
それにしても、相変わらずの水の透明度には脱帽であった。1.5m以上ある海底の砂模様がハッキリと見える。
日本海独特の高塩分な海水は、比重の関係でウソみたいに身体が浮き上がる。
金曜サスペンスごっこなんてお手の物の浮き上がり方であった。
「ひと泳ぎして焼き肉Macかぁー!最高だねぃ」KMがプカプカ浮きながらラッコのように天を仰いだ。
それに応えるように笑い声が寄ってくる。headsも団長も大ハシャギで水を蹴立てていた。
「ミンなぁいるか?ちゃんと」兄ィがカメラを構えながら波打ち際に立っていた。
「おおっっSakaさん、それ現場監督ぅ♪」MaroがSakaの構えてるカメラを指さしていった。
「やっぱ、ヘヴィーデューティ仕様はこれよぉ」Sakaは嬉しそうにシャッターを切っていた。
真夏のこの時間はまだまだ太陽が出ているので、水中に潜ってみても驚くほど明るかった。
一時間ほど泳いだだろうか、さすがに陽も落ちてきたし、泳ぎ疲れたので名残惜しかったのだが、
カニカニ団はヘミングウェイ海岸を後にすることにした。
「まだ初日だし、今日はこれくらいでカンベンしてやろうっ」
団長が夕日に輝く海に向かって叫んでいたのが印象的だった。
まだあと一時間は陽は沈まないだろう、しかし、なによりも彼らの胃袋と能登牛の関係が非常に微妙になり始めたからだった。
ようやく強い日差しは和らいだが、オレンジ色に染まった砂浜に上がると、まだ夏の熱を仄かに残していた。


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