第三十四話「焼き肉松玖シンフォニ〜」 1999年8月7日18:00 日本 珠洲 「焼き肉Mac」其の壱 |
思ったよりハスル(死語)して泳いだのだろうか、ここの高塩分性の海水のせいだろうか、浜辺に上がるとドっと疲れが出てきた。 気づくと、あれほどの賑わいくぉ見せていた砂浜には彼らと、犬の散歩に来た地元の人だけしかいなくなっていた。 浮力がなくなるとこうも身体が重く感じられるのであろうか、その場にヘタり込みそうに疲労感が襲ってきた。 しかし皆意気揚々で閉まりかけたテラスハウスに向かう。 なんだかメチャクチャに咽が乾いてきた。 ヘミングウェイ海岸に寄せる潮風はこれ以上ないほどに爽やかなメロディ−を奏でていた。 着替えするにも更衣室は時間が遅いので閉まりかけており、慌てて数人が着替えに行った。 しかし、ほとんどの野郎どもは海パンのまま砂の入ったスニ−カ−を履き、手持ちの荷物をもって駐車場に向かった。 振り返ると背の高い防砂林を透かして、うっすらと靄のかかり始めた海原が見えた。 二回の更衣室に行ったあつこたちが戻ってくるのを待って、今夜の宴会場にGO!! 夕暮れの海岸道路に出て、Sakaの案内で再び『焼き肉松玖』に向かった。 しかし、飛ばす飛ばす〜!ゼンソン号はやっとのことで、先程の駅舎の駐車場にたどり着いた。 そこにはクロネコの白のRX-7 カブリオレが薄明かりの中、寂しそうに主人の到着を待っていた。 「ばんわ〜、あわびさん来たよぉ〜」格子戸を開け、暖簾をくぐるなりSakaが叫んだ。 いかにも気っ風の良さそうな、そのあわびさんと呼ばれた男が応える。 「はいはい、準備は出来てるよ〜どうぞ〜!!」 あわびさんとは、焼き肉松玖のオ〜ナ〜のご主人のことだった。 明るく奇麗な店内に早くもタマラナくおいしそうな匂いが漂い始めていた。 ドヤドヤと店内に傾れ込むカニカニ団、すぐさまSakaが予約してある左手の座敷に上がり込む。 中には六人座れるテ−ブルが二つ設えてあり、それぞれに炭火の入った七輪が埋め込んであった。 炭火はおいしく焼ける分だけ手間がかかる。火勢は丁度よく、冷房の効いた店内に面白いコントラストを生んでいた。 天井からは吸煙ダクトが延びてきており、七輪を覆うようにその先が拡がっていた。 場所割りの時に喫煙者を非喫煙者に別れて落ち着いた。 心なしか喫煙組の方が能登牛にとって野蛮な顔触れのような気がする。 よく見ると彼らの歩いた後には海からついてきた砂が点々としていた。 当然座敷の座布団もジョリジョリ言い出した。 「うはぁ〜(゚o゚;) こりはマズいなあ〜何しろ海パンのままだモンなぁ」 さすがのミケくんも慌てて座布団をひっくり返してはたいている。 みんなもどれどれ?とばかりに身の回りの砂を払いはじめた。 と同時に飲み物のオ〜ダ〜が来たモんで、ついぞその件は忘れ去られてしまった。(焼き肉松玖のミナサンごめんなさいm(_ _)m 次々に色とりどりの飲み物が運ばれてくる。 カニカニ団はカンパイと同時にウナギ登りにレッドゾ〜ンに入っていった。 新宿を出発してから、まだ24時間経過していないのが信じられないような今日一日の充実ぶりだった。 そして最初の能登牛の皿がカニカニ団の目の前に運ばれて来たときに、心拍数はその頂点に達したのだった。 |