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第四十八話「狼煙館の朝は早い(どこだって同じだっつの)」
1999年8月8日08:30 日本 珠洲 狼煙館其の柔弐
最初に目を覚ましたのは間違いなくあつこだっただろう。
窓側の障子を通して真夏の朝日が早くも本気をだし始めていた。
冷房の低くうなる音に目覚めたあつこは、言い伝えによれば、いつもの通りに洗面に行き、そして歯を磨いたと云う。
部屋を出るときも、帰ってきた時も、他の三人のル〜ムメイトは溺死隊のようにグッタリと微動だにしない。
隣の部屋の竹の間からもまったく人の気配を感じられなかった。
たぶん、その後に起床したのはクロネコだったろう。
そして、たつゆき、MBXと次々に連鎖反応が起きていたに違いない。
最後に昨日の主役のKMが目をさましたころには、松の間では依然として3人は悪い夢を見ている捨て犬のように眠り込んでいた。
九時半、にわかに竹の間が活気づいてきた。カニカニ団の第二日目が始まったのだ。
しかし、松の間は死んでいた。
彼らは睡眠力と空腹力が微妙なバランスで拮抗していた。
十時を回るころイビキの音と、お腹が鳴る音とが同デシベルに達したとき、堰を切ったように次々と松の間に不気味な雄叫びがあがった。
いつもの学校に泊まり込んでの爛れた生活のせいだろうか、
カニカニ団Core四天王のうちのひとり『不摂生王 net_heads(* ̄∀ ̄)ニァ』が大きな欠伸とともに目覚めた。
そして、いつもメモリを全裸で取り換えていた生活のせいだろうか、
カニカニ団Core四天王のうちのひとり『獣王 ミケくん(<●> <●>;)』が大きな欠伸とともに目覚めた。
そして、最後まで意味なく寝込んでいたのは、いつも宿題をサボっていた生活のせいだろうか、
カニカニ団Core四天王のうちの最も極悪な『ポリタン大魔王 マスタ〜@カロリ〜(*^¬^*)/あぃあぃ』が大きな動悸・息切れ・眩暈とともに目覚めてしまった。
そして、あつこはとっくに起きて身支度を終え、浮輪をすでに膨らまして出発を待っていた。
隣の竹の間がにわかに騒がしくなった。早くも遥々珠洲の自宅からSakaが迎えに到着してたのだった。
「おい〜起きたかぁ?ミンナ。そろそろ行くぞぉ〜」つい昨日あっていたような何気なさだった(実際、数時間前まで会っていた:編集部注)
威勢よく大声で叫ぶとつかつかと部屋に入り、まだ眠気の残る団長の背中を叩き、早く着替えろと飛び回った。
本日がヘミングウェイ海岸の本番なのだった。遅れて到着する予定のHirokoも昼過ぎにはビ〜チホテルの長距離バス停留所に現れるだろう。
「朝食付かないんでしたっけ?狼煙館って」団長が眠そうな目を擦りながらもイキナシ核心を突いた。
「安くあげようとしたから、つかないヴァ〜ジョンなんだよ」Sakaが先に廊下に出ながらいった。
「旅館の朝飯ってメチャメチャおいしいんですよね。残念」口惜しそうに浴衣を着替えながらheadsが呟く。
「まぁまぁ〜、向こうについたらビ〜ルでも飲むべ」ミケくんは酒でムクんだ顔を洗いに出ていった。
廊下にに出ると、よく眠れて晴れ晴れとした顔のたつゆき、クロネコ、MBXとは裏腹に、
昨晩のトランペット行脚の重労働のせいで憔悴すれど不敵にもハイになったKMの顔が待っていた。
耳を突いて階下から快調なランチアのエンジン音が響いてきた。
やけに元気なSakaはすでにスタンバッているのだろう
そのテンションから、おそらく海パンも例によってすでに装着済みだとおもわれる。(見捨てり〜ツァ〜'98参照)
遅まきながら支度を整え、階段をおりるミケくんたち松の間組、早朝まで話し込んでいたために、玄関から差し込む朝日に目をしばたいた。
「うひゃ〜太陽が黄色い〜」外に一歩でるなり容赦ない熱と光に怯んでいる「弛まない不摂生の努力の賜物カニカニ団Core」たち。
目の前すぐに広がる大海原は、ゆっくり昇り始めた太陽を反射してプラチナ色に輝いて彼らを待っていた。
それぞれの車に乗り込み、一路珠洲は鉢ヶ崎海岸を目指して目もくらむ陽光の中に飛び出していった。
カニカニ団がその海岸通りの最初のカ〜ヴに差しかかる時、狼煙館の勝手口に佇む影があった。
男は黙ってニヤリとほくそ笑むと、小さくなっていく車影を眩しそうに見つめていた。


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