第四十九話「ヘミングウェイ再びっっっっ」 1999年8月8日10:30 日本 珠洲 ヘミングウェイ海岸其の詩 |
昨晩の暗夜行路に打って変って、なんとも気持ちのいい海岸までの道のりであった。 窓を過る朝方の風は驚くほど澄んでおり、変化に富んだ景色はそこを通るものを飽きさせなかった。 谷間に青々と拡がる水田は、目にも鮮やかに風景に彩りを添えていた。 真っ青に晴れ上がった空の下、やにわに気勢をあげ始めた蝉の声が、いつもとは違った心地よさを演出していた。 小さな街をいくつか通り過ごした。 味わい深い郵便ポストが信号もない交差点にひっそりと立っていた。 茶褐色の板張りの塀や、黄色く実った夏ミカンの垣根が素朴な田舎の村の印象を深めていた。 昨晩通ったときには月明かりに水面が見えていただけだったが、山あいに抱かれたアクアマリン色の小さな湖は、目を見張るほどの輝きを見せていた。 最後の峠を越え、あとは一直線に珠洲蛸島町に降りていった。 小学校の角の交差点で直角に交わるお馴染の鉢ヶ崎海岸道路が見えてきた。 涼しかった山道から海岸通りに降りるなり、あっという間に海風の湿気を含んだ暑さが、団長の操るゼンソン号を取り囲んだ。 青く輝く海が見えた。途中の漁村に差しかかった時、遠くにヘミングウェイ海岸の青が見えた。 「さぁ〜今日という今日は泳ぎまくるぞ〜」MBXが海に興奮して生き仏のように叫びをあげる。 「おおぉ!!泳ぐぞぉおお」headsとあつこが同時に応じる。 ミケくんは、ムクんだ顔で煙草を銜えて、まだ調子が悪そうに海を眺めていた。 右手にビ〜チホテルが見えてきた。はやる気持ちで団長がすぐ脇の駐車場にゼンソン号を乗り入れた。 早くも、ビ〜チには大勢の海水浴客が来ており、駐車場はその車たちでひしめいていた。 トランクを開けて荷物を出している他の人たちを注意深くよけながら、どこかに停める場所はないかと彷徨った。 防砂林の中に木々を除けるようにして無秩序に作られた駐車場は、木の生えていないところなら、どこにでも停められた。 メインの場所にスペ〜スを確保できなかったカニカニ団は仕方なく、大木のまばらな密林のように背の高い雑草の茂る半分キャンプ場のような所に入った。 そこには、大きなテントを張って簡易テ〜ブルを設え、細いロ〜プで洗濯物を干している家族連れのキャンパ〜たちが居を構えていた。 そこへ土足で排ガスを撒き散らしながら進入するゼンソン号、 運良く入れ違い等で駐車場を見つけられたSakaやKMは、早くも車のトランクから荷物を取り出していた。 「お疲れ〜ミナサン、着きましたよ」団長がエンジンを切ると、そこは再び静かなキャンプ場に戻った。 Sakaたちとは少し離れた適当な木のそばにゼンソン号を乗り入れると、Core率の異常に高いゼンソン号はノラリクラリと這い出てきた。 地面が燃えるように熱くなっているのがスミ〜カ〜を通して伝わってくる 「今日も暑くなりそうだなぁ」荷物を抱えると眩しそうに目を細めて空を仰ぐMBX 手早く着替えを取り出し、すでに海の家にいっているSakaたちを追いかけるようにして、取るものもとりあえず慌てて駐車場を後にした。 林を抜けるやいなや、昨日にもまして目の前一杯に透明に晴れ渡った空が飛び込んできた。 昨日とはまた違った印象で、ずいぶん久しぶりのような気がしたのが不思議だった。 そちらの方がテラスハウスまで近かったせいもあり、シャワ〜設備のある反対側の脇から回って海の見える場所に出た。 何度見てもその感動は薄れることはなかった。 澄み渡った濃いグリ〜ンの海岸線は、とても忘れられない色だった。 「エメラルドみたい」あつこが両手を天に向かって大きく伸ばしていた。 昨日より幾分か風が弱く、波ひとつない凪であった。だがその分、焼けるような日差しがあっという間に砂浜を熱くしていた。 今日は一日中のんびりと海水浴の予定だった。 こんなに幸せでイイのだろうか?・・・・いや実はこの後が大変なのだが・・・ 白くペンキで塗られた木材を組んで作られたテラスハウスの前に文字通りテラスが広がっており砂浜まで繋がっていた。 遮るものなく目の前に海が見えるようになっており、テラスのどこに腰掛けても日本海全体を望めた。 あいにく今日もテラスの方は満席で、店内にあるテ〜ブルを3つ程占領してそこに陣取った。 昨日と同じ席にすわることになったカニカニ団は、店員の"またこいつら来たよ"の視線を真正面から受け止め 団長がウェイトレスの視線を外さないままに注文を飛ばした。 これがいわゆる『団長の鬼メンチ』であった。 最初の被害者はMac Fan片手にすっとぼけてOFFに混ざろうとしたミケくんであった。 Sakaたちは座るなり即攻で発注していたらしく、まもなく飲み物がテ〜ブルの上に置かれた。 早くということで、遅れてきた団員達たちは簡単に飲み物だけ注文して、手早く今遠征4回目 (石段のジュ〜スも入れて)の乾杯とメデタく相成ったのだった。 |